シャンクスは木にもたれかかりながら、目の前で誓いのキスを交わす新婚ほやほやの夫婦を見つめていた。

一番隊隊長マルコと二番隊副隊長ダフネの結婚は政府にばれないよう、白ひげ海賊団とその傘下のみしか伝えられてない。

だがその日、たまたまシャンクスは白ひげとエースの墓参りに来ていた。

部外者の自分が邪魔にならないよう、そっと気づかれないようにその場を離れたが、ウェディングドレスを着たダフネを見て、思いとどまった。

太陽の光を浴びた彼女は何よりも美しかった。

「…二年も見ない間に、またいい女になったな」

幸せそうな、でもどこか悲しげな笑顔を浮かべながら、仲間たちを一人一人抱きしめていく彼女を見てシャンクスはポツリと呟いた。

初めて出会った二年前、彼女は母親のアナスタシアにそっくりだった。

だが今は違う。

シャンクスは、自分の子供と頬を寄せ笑っている彼女を見た。

母親特有の、優しく温かい笑顔。

アナスタシアに、あんな表情はできない。

見れば見るほど、知れば知るほど、彼女はアナスタシアと全く似ていない。

「…あんたの育て方がよかったんだろうな…白ひげ」

空に向かって笑みを浮かべる。

答えは返ってこないが、今はそれで充分だった。

腰を上げ、背筋を伸ばす。

「いいもんだな、結婚式ってヤツは」

周りの温かい拍手の中マルコに抱き上げられ、嬉しそうにクスクス笑っている彼女を見て優しく微笑む。「幸せになれよ」







iPhoneからの投稿
「準備できたか?」

「待って、あと少し…と」

ダフネがようやくループ型のピアスを耳に通すと同時に、堪り兼ねた花嫁付添い人のビスタが部屋に入ってきた。

鏡の中に映るダフネを見て、ひゅーっと笛を吹く。

「こりゃあ…すげぇ」

ダフネは振り返り恥ずかしそうに頬を赤らめながら、にっこり微笑した。

化粧を施した美しい顔。カールした栗色の髪は一つに結ばれ、その上にはヴェールが被せられている。手にはブーケを持ち、そしてその華奢な体を包むのは、繊細な刺繍が織られた純白のウェディングドレスだ。

「派手かな?」

心配そうに尋ねるダフネをビスタは何も言わず抱き寄せ、額にキスした。

「綺麗だよ、ダフネ」

耳元でそう囁くと彼女ははにかんだ笑みを浮かべた。


ことの始まりは二週間前。

「結婚?」

ようやく息子を寝かしつけ、酒をちょっぴり入れた特製の紅茶を飲もうとしたダフネは手を止め、目を丸くした。


「誰と誰が」

「俺とお前がだよい」

「冗談でしょ」

マルコははぁーとため息をついて、首を振った。子育てに奮闘するダフネを手伝ったせいか、疲れた表情をしている。「いや、冗談じゃねぇ」

ダフネはカップを落とした。「なんで」

「親父の掟を知ってるだろ」マルコは肩をすくめた。「二年も船を開けた奴は、二度とモビー・ビックに戻れない」

「だけど、私もうすぐしたら海に…」

「嘘つけ」

マルコは手を振ってダフネの言葉を遮った。「お前、もう戻る気ねぇだろい」

ダフネは言い返そうとしたが、言葉が出てこなかった。

「だから」

マルコは身を乗り出した。「俺とお前が結婚したら、'1番隊隊長の妻'として席をおくことが可能なんだよい。それに…」マルコは小さな寝息をたてている子どもをチラッと見た。「…俺も、あいつの成長を見てやりてェ」

お前もあいつも、家族だからな、と笑う。

その瞬間、ダフネは腕を伸ばし、マルコを抱きしめた。

マルコは目を丸くしたが、ダフネの頬にキスをして、抱き返した。

優しく髪を撫でられると、ダフネは子どもの頃に戻った気がした。

「ありがとう」ようやく体を離して、ダフネは言った。「マルコには感謝してるし、大好きよ。だけど」悲しげに眉を八の字にする。「私にはエースが…」

「そんなこと、言われなくても分かってる」マルコは優しく彼女の頬を撫でた。「形だけでいいんだよい」

そう言って、ズボンから小さな小箱を取り出した。

開くとそこには美しい宝石が埋め込まれた指輪が。

「ヴァンゲル・D・ダフネ」

マルコは膝をついて、指輪を差し出した。「俺と結婚してくれ」

ダフネは指輪を受け取ると、マルコの頬にキスした。「喜んで」


そして今。

白ひげ海賊団とその傘下の船員全員がとある島に集まった。

父親役のビスタと、花嫁衣装に身を包んだダフネが現れると、周りからわぁっと声が上がった。

「簡単な式になるんじゃなかった?」

ダフネは笑顔を浮かべ、かつての仲間たちに手を振りながらヒソヒソ声でビスタに言った。

ビスタは肩をすくめた。「皆の案だ。お前に一生に一度の最高の式をしてやりたくてな」

ダフネは胸が熱くなり、ぎゅっとビスタの腕を握った。

「ありがとう」

「どういたしまして、お姫様」

ビスタは彼女の頬にキスし、手を離した。「ほら。夫のとこへ行け」

タキシードを着たマルコが笑みを浮かべながら手を差し出している。

ダフネはにっこり微笑んで彼の手をとりその隣に立った。

目の前に牧師役のジョズがいて、ぶっきらぼうに式を始める。

「で、アラフォーで子持ちの女と結婚するのはどんな気持ち?」

ジョズが話している間ダフネは悪戯っぽくマルコの耳元で囁いた。

マルコは肩を竦めた。「悪くねェ。でもまさかお前と結婚するとはな」

「新郎新婦、静粛に」

とビスタ。

「…後悔してる?」

ダフネが尋ねると、マルコはいや、と答えた。「結婚するなら、デブでブスな女よりお前がいい」

ダフネは吹き出しそうになり、代わりにマルコを肘で小突いた。「最低!」

「ちげぇねぇだろい」とマルコは舌を突き出す。「でもま…満足してるよ」

ふざけた様子から一変、真面目な表情になる。「お前は世界一綺麗な花嫁だよい」

ダフネはマルコの額に自分の額をこつん、と合わせた。「ありがとう」

次の瞬間マルコがいきなりダフネ抱き寄せ、周りを驚かせた。

「まどろっこしい式はやめだ、性に合わねぇよい」

ニヤリと笑い、ダフネを見下ろす。「エースの代わりになれねぇのは分かってるよい。だけど俺の命をかけて、お前とその息子を守ることを誓う」

それで充分だろ?と笑うマルコに、ダフネは微笑み返す。「ええ。充分よ」

「それではーえーもう誓いのキスを…」

突然のマルコの言動に動揺しつつもなんとか義務を果たそうとするジョズ。

皆が見ている前、マルコとダフネは見つめ合った。

「愛してるぜ、妹」

「私もよ、兄さん」


二人は顔を見合わせ微笑み合いゆっくりと唇を合わせた。

ホワイティベティの腕にいた赤ん坊がきゃっきゃっと笑うと、式の出席者が全員が立ち上がり、拍手を送った。


(ねぇ、親父、エース)

ダフネはマルコと唇を離して並んでいる二つの墓石を振り返った。

(ようやく私も前に進めそうよ)





あとがき

とうとう!
エース夢小説Keep on Tryingの夢主、ダフネが!!

結婚しました!マルコと!

形だけだけどね(笑)

まぁ、かけてよかったー!
これから前に進むダフネを書いて行きたいと思います!

次はマルコの子育て奮闘記か、ダフネの出産になると思います。

赤ちゃん名前何にしよう…

photo:01

「あ。」

「…!」

たまたま辿り着いた小さな島。

そこで、二年前に一度だけ会った少女に遭遇した。

この広い海ではそれはかなり珍しいことで、しかも彼女は死んだと報道されていた。

だがローはどこかで彼女が生きていることを確信していた。

そう簡単に死ぬタマではないと。

たった一度だけの出会いだけれど、彼は彼女を忘れたことはなかった。

流れるような艶やかな栗色の髪。長い睫毛に縁取られた海の波のような、鋭い青い瞳。

二年前とその姿はほとんど変わりない。

だがどこか…大人っぽくなった気がする。

「お久しぶり、トラファルガー・ロー」

彼女はにっこり微笑んだ。前のあの子どもっぽい笑顔ではない。

綺麗な、大人の女の微笑だ。

「…ダフネ屋」

二年ぶりに呼ぶその名。妙な感じがする。

見れば見るほど目の前の女と二年前の少女は違う。

「…その名で呼ばれるのは久しぶり」

一瞬、彼女の表情に影がよぎったが、それはすぐに消えた。「ここではデボラで通ってるの」

俺は目を丸くした。「お前…海に出てないのか?」

彼女はしばらくローを見つめて、頷いた。「ええ。エースが亡くなってから」

淡々と答えているつもりだろうが、彼女の手は震えていた。

その時、ローははっとする。彼女の中で、あの戦いはまだ終わってないのだ。

「それに…」
彼女は腕に抱いている布を開いた。

「この子のためにも」

彼女の腕にいるものを見てローは目を見開いた。

それは、小さな赤ん坊だった。

頬に散ったソバカスをみて、その子の父親がすぐに分かった。

「だから、こんな島にいるのか…」

ローは信じられないという目で彼女をみた。「この赤ん坊を守るために」

ダフネは悲しげに微笑んだ。「マルコたちが時々様子を見に来てくれるの。私とこの子が無事かどうか。今は間が悪いから」

ほとぼりが冷めたら、また戻るつもり。

そう言うが、彼女はもう海には戻らないだろう。

二度と。エースの血を守るために。

「抱いてみる?」

あれこれ考えていると、突然彼女が提案した。

「は?」

「いいから抱いてみなさいよ」

ぐいぐいと赤ん坊を顔に近づけるダフネ。

「待てッ…!ダフネ屋!俺は…!」

「何よ、怖いの?」

ニヤッと悪戯っぽい笑みを浮かべる。

暫くなんとか赤ん坊から逃げようとしたが、結局ローはその小さな生き物を抱くはめになった。

だくと、赤ん坊特有の汗の匂いがして、小さな胸から心臓の音が聞こえてきた。

途方にくれて、ダフネを見ると、彼女は穏やかな表情を浮かべて我が子を見つめていた。

その母親にしかできない優しい表情を見てローは思わず胸が高鳴るのを感じた。

今まで見てきたものの中で、一番美しい。

と…。

眠っていた赤ん坊の瞼が震え、ゆっくりと目が開かれた。

そこに広がるのは、海の波のような青。



「父親似でしょ」

赤ん坊を見つめながら、愛しそうに彼女は言った。

「…ああ」

ローは顔を上げてダフネを見た。

「だが、目はお前譲りだ」

そう言うと、彼女は驚いたようにローを見た。

そして嬉しそうに、笑った。




あとがき
二歳って赤ん坊か?と思いつつ書きました(笑)
ローって赤ん坊の扱い苦手そう…(~_~;)

これからミニシリーズばっかになりそうです…


photo:01


二年後のダフネ。21歳ですね。
次はダフネの結婚式編を……。