書店を出てすぐ隣のファミレスに入り昼食にした

ユミは早速購入した名付けの本を取り出し読み始めた

オレも名付けの本を読んでみた


ユミ
どんな名前がいいかなぁ。男の子の名前って難しいなぁ。

オレ
やっぱり画数って大事だよね。

ユミ
自分の知り合いの名前と被るのは避けたいし…私とれいじの名前から一文字貰うってのもあんまり…

オレ
読みにくい漢字とか変に奇抜な名前だけはどうかと思うね。

ユミ
う〜ん…迷うなぁ…アッ!…れいじ、アレはどうする?

オレ
ん?アレって?

ユミ
ほら!赤ちゃん男の子でしょ。こっちでは男の子が産まれたら半年、女の子だったら三ヶ月は嫁の実家で面倒みるって慣しがあるって言ったでしょ!

オレ
ああ、そういえばそんなコト言ってたね。

ユミ
お父さんはそういう慣しを頑なに守るひとだからなぁ。お母さんは今時そんなのどうでもいいのにって言ってくれてるのに。

オレ
お父さんは娘のユミが可愛くてしかたないんだよ。

ユミ
お父さんいい加減に子離れしてくれないかなぁ。こっちの慣しだからって妊娠5ヶ月で実家に戻されてサ、今度は赤ちゃん男の子だからってまた半年実家で生活するって、ずっとれいじと離れて暮らすのは淋しいよ。

オレ
そうだね。せっかく赤ちゃん産まれても家に帰って妻と子どもがいないってのはオレも淋しいなぁ。

ユミ
でも、れいじは仕事忙しいでしょ。出産して1.2ヶ月で家に戻って昼間は一人で赤ちゃんのお世話するのも不安だし…夜泣きとかしたら私もれいじも寝不足になっちゃうし…確かに赤ちゃんが6ヶ月ぐらいになれば落ち着いてくるだろうし、お世話も楽になるみたいね…

オレ
いつも仕事で帰りが遅くなるわけでもないけど、忙しくなると帰りは0時近くなる時もあるし…ユミの負担が大きくならないほうがいいかなぁ。

ユミ
どうする?れいじ。

オレ
う〜ん…どうしよう…


いろいろ決められないまま昼食を食べファミレスを出た

ファミレスから車で約40分のところに、最近、マタニティとベビー用品専門店がオープンしたと聞いていたのでその店に向かった

大型専門店だけに品揃えはかなり豊富だった

ユミは嬉々ととして店内をくまなく見て廻った

ユミは時々、"ねえ、れいじ!どっちの服ががいいかなぁ?" とオレに問いかけてくる

男の子用のベビー服を見比べているユミの表情は幸せそのものだ


ユミの笑顔とこの幸せを手離したくない…

なのに…オレは…


結局ユミは男の子用の三ヶ月児のベビー服を三着購入した

帰宅前に夕食用の食材を買うためにユミとショッピングセンターに立ち寄った


ユミ
お母さんから、お父さんとれいじの好きなモノ買ってきてって言われたよ!お父さんはお刺身があればいいから、れいじはなにが食べたい?

オレ
なんでもいいよ!

ユミ
なんでもいいじゃわかんないよ〜。

オレ
ユミが食べたいものでいいよ!


2人でこんなやりとりするのは久しぶりだ

やっぱりユミの笑顔には癒される…


前からベビーカーを引くユミと同年代ぐらいの女性と

おそらくその母親らしい女性とすれ違った


ユミ
アレ!ミホじゃない⁈

ミホ
エッ!ユミ⁈

ユミ
久しぶりだね〜!何年振りだろう?

ミホ
久しぶりだね!元気?成人式に会って以来じゃない⁉︎

ユミ
ホント久しぶりだね!赤ちゃんカワイイね!今何ヶ月目なの?ピンクの服着てるから女の子?

ミホ
そうだよ!女の子だよ!明日でちょうど2ヶ月になるよ!ユミはいつごろ出産なの?

ユミ
9月の4週目が予定日なんだ!ミホはダンナさんの転勤で東京に住んでるって友達から聞いたけど、いつからこっちにいるの?

ミホ
この子が産まれる1ヶ月前からカナ!ユミは?

ユミ
ゴールデンウィークからだよ。

ミホ
じゃあ、5ヶ月目からなんだ!エッ!ここの慣しどおりにしてるの⁉︎

ユミ
そーなんだよ!ウチのお父さんってば、そーゆーコトは頑なに守らせるんだよね。ミホんちはどーしてるの?

ミホ
ウチも最初はお父さんがそんなコト言ってたけど、お母さんがうまく言いくるめてくれたんだ。それにダンナさん一人で置いとけないし…大きい声じゃ言えないけど、浮気の心配だって…

ユミ
そーだよねぇ。いろいろ心配だよね。でも、ミホはいつ東京に戻るの?

ミホ
東京に戻るつもりはないよ。

ユミ
エッ!どうかしたの?

ミホ
そんなに驚かないでよ!なんにもないよ!東京ってね、なんでもあるから大人にとっては暮らしやすいところなんだけどね、いろいろ物騒だし、やっぱり子供を育てるところじゃないんだよね。だから、ウチのダンナさんはこっちの地方への転勤願い出す予定なんだ。出世の可能性は下がるけど、やっぱり家族が大事だし、子供にとって良い環境で育てたいじゃない。うまくいけば来年の4月には転勤できると思うよ。

ユミ
そーなんだ!ん?てコトは3月まではこっちにいるってコト⁉︎

ミホ
そーだよ!そこはこっちの慣し以上に滞在する予定だよ。この子、夜泣きが酷くてね〜。私も頑張ってお世話してるけど、ホントに寝不足になるし、疲れると動けなくなるから、お母さんと交代でお世話してるよ。やっぱり実家と親はありがたいね!ユミはいつまでこっちにいるの?

ユミ
実はね、お腹の子は男の子なんだ!だから、産まれてから6ヶ月はこっちにいるかも。

ミホ
そーなんだ!そこも慣しどおりなんだね。でも、やっぱり6ヶ月ぐらいは実家にいたほうがいいよ。私のお姉ちゃんは男の子産んで3ヶ月で帰ったけど、それから赤ちゃんの夜泣きが始まって、毎晩ダンナさんと交代で寝かしつけて大変だったみたい。きっちり6ヶ月いればよかった!ってお姉ちゃん後悔してたなぁ。

ユミ
やっぱり、そうなのかなぁ?

ミホ
そりゃあ、ダンナさんと離れて暮らすのは淋しいし、心配だけど、やっぱりちゃんと赤ちゃんのお世話したいし、ダンナさんと生活して家事と両立させるのはムリだと思うよ。

ユミ
そうだよねぇ…

ミホ
ゴメン、ゴメン!プレッシャーかけちゃったね。ユミ!携帯電話持ってるよね?電話番号教えてよ!あとメールアドレスも。

ユミ
いいよ!時々メールするから、いろいろ教えてほしいな!

ミホ
もちろんだよ!じゃあ、コレが私の携帯電話の番号!

ユミ
今、ワンコールするね!

ミホ
あっ来た来た!じゃあ、あとでショートメールでメールアドレス送るね!

ユミ
ありがとう!私もあとで送るよ。

ミホ
ユミ!赤ちゃん産まれたら見に行ってもいい?

ユミ
ぜひ見に来てね!ミホに会えてよかったよ!またね!

ミホ
こちらこそだよ!またね!



ミホ達と別れてからオレはユミに尋ねた

オレ
ん?同級生?

ユミ
うん!高校の時の友達。一緒の部活だったから、あの頃はなんでも話せて仲良かったんだ。ミホは地方の国立大行っちゃって、それからしばらく付き合いなくってね。ホント、会えて良かった!

オレ
良かったね!また、お付き合いしてくれるといいね。

ユミ
自分と子供が同級生ってなんかいいような?そうでもないような?不思議な感覚だなぁ!あっ!そーいえば、トシヒコくんって、今、アメリカに行ってるんだってね⁉︎


胸がチクン…とした…


オレ
あぁ…そうらしいね…

ユミ
向こうに1年ぐらいいるらしいね。トシヒコくんの奥さん淋しいだろうなぁ。

オレ
そうだねぇ…


心がざわざわする…

ユミに気づかれてはいけない…


ユミ
あれ!れいじとトシヒコくんって同級生だし、スゴく仲良かったじゃない?なんか、そっけなくない?

オレ
そんなコトないよ。アメリカにいるトシヒコとわざわざ連絡取る用事もないし、トシヒコの奥さんのコトも別に関心もないし…

ユミ
ふ〜ん…そうかなぁ〜?れいじさぁ、結婚式の二次会のコト覚えてる?


ドキっとした…

心臓の鼓動が早くなる…

なんで…?

ユミに悟られてはいけない…


オレ
まあ…覚えてるけど…なに?

ユミ
あの時、トシヒコの奥さんとれいじは奥のシートで二人でなんか喋ってたでしょ!私見てたのよ!

オレ
エッ…あぁ…あの時ね…


まさか…

ユミに見られてたのか…

ヨウコさんとの会話なんて言えるワケない…

のどがヒリヒリと乾く…

頭の中で会話のキーワードを素早く巡らせる…


オレ
あの時はヨウコさんかなり酔っ払っててサ、ヘンなコトばっかり言ってきてね。ユミとは結婚式の2ヶ月前から一緒に生活してたのをヨウコさんはトシヒコから聞いてたのか、"ユミちゃんとは週何回シてるの?" とか、"ユミちゃん仕事辞めちゃったんでしょ!すぐ子ども作るつもりなんでしょ!" とかサ。相手するのが大変だったんだよ。

ユミ
アハハ!そんなコト聞いてきたの⁉︎れいじは大変だったね!

オレ
そうだよ!ヨウコさんはトシヒコの奥さんだから無碍にもできないし、上手く会話を切り返すコトができなくて、あの時はしどろもどろになっちゃって…

ユミ
なぁんだぁ〜!心配して損した!ずっと時々思い出して気になってたんだ。

オレ
二次会終わった後にヨウコさんがこんなコト聞いてきて〜ってユミに報告しとけばよかったね。ゴメン。

ユミ
そんなコトで謝らなくていいよ〜!でも…絶対に私には嘘つかないでね!絶対だよ!


ユミはじっとオレの目をみつめる…

ユミのキレイな瞳にはオレしか写っていない…

そうなんだ…ユミにはオレしかいないんだ…

でも…オレは…


オレ
当たり前だよ!オレを信用してよ!

ユミ
ウフフ!なにムキになってるの?さあさあ!お買い物途中だよ!


ユミはオレの腕に自分の腕を絡ませて

自分の頭をオレの腕にくっつけた…