目覚ましのアラームとセミの合唱で目を覚ました
相変わらず寝汗で体がベタつく
シャワーを浴びても体の重さはそのままで
食欲はなく野菜ジュースだけを胃に流し込んだ
昨夜のヨウコさんからの電話はなんだったんだろう…
ヨウコさんはオレに何を伝えたいんだろう…
疑問を抱えたまま家を出た
会社の社員用駐車場に着いて
ユミにメールしようと携帯電話を手に取った
なんとなくヨウコさんからメールが来ている気がしたが…
メールは来ていなかった…
ユミには当たり障りのないいつものメールをした
会社のデスクに座って仕事を始めた
昨日よりも忙しくないので
時折ヨウコさんのことが頭の片隅にチラついた…
ダラダラと時間だけが過ぎ
夕陽が沈んで辺りが夜になろうとする頃に
取り敢えず今日の仕事を片付け終わった
車に乗って携帯電話の着信を確認した
ヨウコさんからのメールや着信はなかった…
どうしたんだろう?
ヨウコさんからのメールが今日は来ない
なんで、こんなに不安になるんだろう…
気になって仕方がないが
自分から連絡する勇気がない…
帰宅途中にコンビニに立ち寄り
野菜ジュースとヨーグルトドリンクを買った
車に携帯電話を忘れていることに気がつき
車に乗って携帯電話を確認すると
ヨウコさんからの着信があった…
嬉しさと憂鬱の感情が同時に湧いてきた
かけ直すべきか…
取り敢えずメールすべきか…
頭の中にいろいろな考えが駆け巡る…
答えは探せず…そのまま帰宅した
帰宅してすぐにシャワーを浴びた
シャワーを浴びながらヨウコさんへの連絡をどうするか考えた…
スルーしていればやがて連絡はなくなるだろうか…
そうすればヨウコさんから離れるコトはできる…
でも…
離れてしまったヨウコさんは二度とオレのところには戻らないだろう…
ヨウコさんを失う焦燥感と
ショッピングモールの光景への嫉妬心と
ユミへの罪悪感で心が押し潰されそうだ…
浴室から出て体を拭いていたら
リビングに置いてある携帯電話の呼び出し音が聞こえてきた…
焦って裸のままリビングに向かい携帯電話を確認すると
ユミからの電話だった…
ホッとした安心感とほんの少しの落胆を同時に味わった…
ユミ
れいじ!元気?ナニしてたの?
オレ
元気だよ。さっき帰ってきて、今シャワー浴びてたんだよ。携帯電話が鳴ったから慌てて裸で出てきたよ。
ユミ
アハハ!そうなの?ちゃんと拭いて出てきたの?水滴とか床に落ちてない?
オレ
アレ!ヤバイ!ちょっと落ちてるかも。
ユミ
ちゃんと拭き取っておいてね。
オレ
ゴメン、ゴメン。ユミどうしたの?
ユミ
なんでもないけど、昨日と今日はメールしか来てないから、声が聞きたくなっちゃって。
オレ
そっか。昨日は忙しくてさ。今日もそれなりに忙しくて疲れちゃってね。最近ゴハンが食べれないからカナ?
ユミ
エッ⁉︎ゴハン食べられないって⁉︎どうかしたの?
オレ
(しまった!余計なコト言った!)
あっ…いや…この頃益々暑いし、疲れちゃって…でも、ヨーグルト食べたり野菜ジュースや栄養ドリンク飲んだりしてるから、大丈夫だよ。
ユミ
ホントに大丈夫?あんまり無理しないでね。
オレ
大丈夫だよ。心配かけてゴメン。ユミはどう?
ユミ
この頃またお腹が大きくなってきてね。お腹の中で赤ちゃん動き回るし、腰が痛くて。お母さんから、出産前はそんなもんだよって軽く言われちゃった。
オレ
そうなんだ。大事にしてね。
ユミ
うん。大事にしてるよ。ありがとう。れいじも自分のカラダを大事にしてね。
オレ
うん。わかった。
ユミ
それじゃあね。おやすみ。
オレ
おやすみ。
電話を切った途端ユミへの罪悪感がふつふつと湧いてきた…
ユミと一緒にいた週末はヨウコさんから離れようと思っていたのに…
ショッピングモールで見た光景が
ヨウコさんを失う喪失感を大きくさせた…
オレはいったいどうしたらいいんだ…
今夜もすんなり眠れそうにないだろう…
テレビをつけたままリビングの電気を消して
冷蔵庫から缶チューハイを取り出して喉に流し込んだ…
テレビの青白い光を見ながらボーッとしていたら携帯電話が鳴った…
…ヨウコさんからだ…
携帯電話を手に取った…
瞬間的にユミの笑顔が浮かんだ…
次にヨウコさんの悲しげな笑顔が浮かんだ…
そして、ショッピングモールの光景を思い出した…
携帯電話は10コール以上鳴っていたけど…
オレは電話に出ることが出来なかった…
オレはいったい何をしたいんだろう…
ヨウコさんにメールを打とうとしても
何も言葉が思いつかない…
2本目の缶チューハイを飲み干したところで…
またオレは海の底に沈んでいった…
水曜、木曜と惰性で仕事をこなした…
ヨウコさんからはメールも電話も来なかった…
このままヨウコさんとは離れていくのカナ…
せめてきちんとサヨナラを伝えたほうがいいのカナ…
そうしなきゃいけないコトはわかっているのに…
そうしたくないオレとそれができないオレがいる…
金曜日は既に朝から眩しいくらいの日差しが照りつけ
まさに真夏日となった
外にいるとすぐに汗ばんでくる
職場のデスクに座って朝イチの電話を取るとタカハシくんだった
タカハシくん
れいじさん、すいません。昨晩から調子悪くて…熱と吐き気でどうしようもないです。本日は会社を休ませていただくよう、課長に伝えてください。
オレ
そうか、それじゃ出社はムリだろう。課長には伝えておくから、医者に診てもらったほうがいいよ。お大事にね。
電話を切って、課長にタカハシくんの状態と休暇申請を伝えた
今日は金曜日で給料日で真夏日なんで
昼休みは同僚や後輩達が仕事終わりにどこに飲みに行こうかとウキウキと話しをしている
オレはその話の輪の中に入らず
デスクに座って突っ伏してうたた寝をしていた
午後は図らずもタカハシくん担当の取引先からクレームが入り
課長に頼まれてフォローに入った
ドタバタとあちこちに調整と連絡をして
取引先に課長と一緒に謝罪に伺い
18時過ぎに会社に戻った
課長が机の上のメモを見てオレを呼んだ
課長
れいじクン、スマン!明日オレの代わりに○○産業の創立記念パーティーに出席してくれないか?
オレ
エッ!オレがですか?
課長
本来ならタカハシくんが行くべきなんだが、体調の悪いタカハシくんに無理はさせられないから、部長から私に出席するよう依頼があってね。ところが、私は明日から家族で旅行に行く予定なんだよ。娘がスゴく楽しみにしてたから会社の用事を優先するわけにもいかなくてね。頼むよ!
オレ
そうゆうことなら仕方ありませんよね。イイですよ。場所は駅前の○○ホテルですよね。
課長
れいじクン申し訳ないね。ありがとう。○○ホテルの一階フロント前でいいと思うよ。今から部長に電話して報告するから、このまま少し待ってくれないか。
オレ
わかりました。
課長は部長に電話し、代わりにオレが出席することの了承を取り、待ち合わせの場所も確認した。
課長
部長の了承取れたから、れいじクン明日はよろしく頼むよ!やっぱりホテルのフロント前に直接集合となったからね。今日はいろいろ大変だったなぁ。どうだ、帰りに軽く一杯飲んで行こうか?
オレ
いえいえ、次の機会にさせてください。それに課長は明日から家族旅行なんでしょ。旅行の準備とかあるのなら今日はもうお帰りになられたほうがいいんじゃないですか?
課長
それもそうだな。悪いねれいじクン。それじゃそうさせて貰うけど、必ずどこかで穴埋めさせてくれよ。
オレ
わかりました。その時を楽しみにしています。
課長
じゃあ、お先に失礼するよ!
オレ
お疲れ様でした。
オレの職場のフロアには誰も残ってはいなかった
ガランとしたフロアにはオレ1人だ
今日は忙しかったなぁと思いながら
おもむろに携帯電話の画面を開いた
誰からも電話やメールが来ていなかった
ヨウコさんからの連絡が来なくなって3日経つ
ヨウコさんはオレを諦めたのかな…
オレもヨウコさんを諦めなくちゃいけないのかな…
こんな気持ちになるなんて…
あの時のヨウコさんの言葉を思い出した…
"…お互い夫や妻がいるんだもん…気持ちを通じ合わせちゃ…苦しくなるでしょ…"
気持ちが通じあってるかどうかは分からないが
オレはヨウコさんを失いたくはない…
けど…あれから…
ちゃんとヨウコさんと向き合う勇気がない…
ぐちゃぐちゃした気持ちのまま会社を出て
車に乗って家路を走った
アパートに近づくと来客用の共用駐車場に見慣れないナンバーの車が停まっていた
誰かがまだ車の中にいるようだ
共用駐車場のすぐ近くがオレの駐車場だ
オレは自分の車を駐車場に停め車から降りた
「れいじクン!」
オレを呼ぶ声がした…
聞き覚えのある声だった…
共用駐車場に停められた車のそばに女性が立っていた
ヨウコさんだった…