素潜りで獲れない魚が食べたくて…
カヤックを始めた動機は、良いポイントにカヤックで渡って釣りがしたかったから・・・
そんな不純な動機で今の仕事でもあるシーカヤックを始めたくらい、実は僕は釣りが好き。
大学生の時も「釣り研究同好会」という、名前だけはなかなか硬派なサークルに入っていたくらいです。
素潜りを覚えて魚突きを始めてからはほとんど釣りもしなくなっていたのですが、縁あって西表島の釣りガイドの方と知り合うようになり、その話を聞いているうちにまたまた釣りがしたくなってきたのがちょうど昨年の今頃。
色んな釣りがある中で、ここにきていきなりハマったのがデイープジギングという、水深100m以深の深場をメタルジグで攻める釣り。
これが面白い!
スロージギングというメタルジグのおかげで多種にわたる魚が釣れ、深海魚も釣れてしまうこの釣りは、浅海の魚しか知らない僕には未知の世界でたまらない、かつ、美味い魚が釣れるとあって大いにはまってしまいました。
でも海況がよく、仕事もなく、そしてメンバーの休日の予定が合わないと行けないので、実際は一年に2~3回行ければいい方なんですけどね。
そんなこんなで先日、ひさびさに行ってみました!
朝はべた凪の無風!最高のコンディションでしたがじわりじわりと風が出てきてまあそれなりの波になってきました。そして海のコンディションはよかったものの、フィジカルのコンディションが・・・!
みなさん、釣りに行く前日の深酒は厳禁ですぞ!基本ですが・・・!
行って、一発目、いきなりこいつを釣り上げました!
水深180mからのイソマグロ8.5㎏!
イソマグロとしてはまだまだのサイズですが、えらい揚げるのに疲れました~!(楽しかったけど)
こいつを釣り上げたら疲労困憊し、腕がパンプアップ。しかもここにきて船酔いに・・・。
一時間ほどグロッキー。
僕がそんなグロッキー状態のさなか、僕が密かに今回の釣りのメインターゲットにしていた赤い魚が連続ヒット!
オオクチハマダイ7㎏!
身も赤くて柔らかいが、煮つけが最高との噂のこの魚。
チョ~カッケーッ!羨ましい~
あまりの引きの強さにリールが巻けないFさんと、それを「早く上げろー」とゲキを飛ばすキャプテン小渕さん。良いな~このダブルヒットに加わりたかった・・・。
その後もいろいろな魚が釣れました。左はヤマブキハタ。右はヒメダイ。ヤマブキハタは深海のスジアラ?といった感じでネットではあまり評判良くなかったけど小渕さん的にはかなり美味いらしい。ヒメダイは黄色い線虫のような寄生虫が多かったな。
ポイント移動して一発目のフォール直後、巻きはじめにダブルヒットしたホウセキハタモドキ。食べごろサイズの良いミーバイです。
おおーっと!こいつは何だ!?タチウオ??リュウグウノツカイ???
こいつもダブルヒットで釣り上げられました。
深海性のタチウオで、ヒレナガユメタチというそうです。大きい方は204㎝ありました。
西表の深海・・・すげーのがいるなー(ちなみにこいつは200m以深でした)。
ちゃんと小さいながらも尾びれがあるのはタチウオと違うところ。こういうちょっと原始的なところがそそられます・・・
血抜き風景。これは血抜きと言うのだろうか??でもまぁ、サイズがデカいのでしょうがないのです・・・。
ジギング中に魚影が見えたのでFさんがペンシルベイトをキャストすると、いとも簡単にこいつが喰らいついてきました・・・!リールがチャチかったのか、取り込みが下手だったのか(笑)散々船中をかき回して釣れたビックサイズマヒマヒ。こんな立派なのになぜか外道感がたまりません(爆)
当たりは少ないように感じたのですが終わってみれば以上の釣果。
色々な魚が釣れるのでひじょうに面白い釣でした。
今シーズン(年内)にもう一回くらい出撃したいところですな~。
今回お世話になったのはこちら
チャーターボート&ガイド 島道楽
西表島で釣りをしたい方。餌釣りの初心者からGTフィッシング、ジギングまでの上級者の方々までサポートしてくれますよ。白浜を起点にカヤックなどではなく船でいろいろまわりたい方、こちらにご連絡してみてください。
KOMPAS来島 ~その弐~
10月18日に続き、翌日19日は社長も参加して仲良川を行きます。
なんでも仲良川は社長にとって思い出深い場所なようで、毎年のように必ず行っているとのことです。
なるほど・・・ここはひとつ、ガイドの力量が試されてるって奴ですね、がんばります!
前日と違ってこの日は少し雲が出てきました。
でもこの山々に雲がかかる感じ。幽玄な雰囲気が漂い、かえっていい感じです。
川も中ごろになると、青空も出てきて皆さんのテンションも揚がってきました。
潮はちょっと悪かったけど気にならない程度。何より後ろから追い風があるので意外にスイスイ進みます。
休憩を取ろうと思っても、みんなガンガン漕いで行きます。
まぁ、あとで聞いたら「なんで休憩しないの?」と思っていたようで、こりゃまた失礼しました(笑)
上流域に入るとサガリバナ、ガジュマル、オオバアコウ、フトモモ、センダンなどの樹が目立ってきます。
オーバーハングの下をのぞくとたくさんのクロダイが泳いでいます。
中に入るとヒンヤリとした空気。日差しが強く空気は軽い。良い気候になってきたな~。
昼前には船着場に到着して、ここからは約30分ほどのトレッキング。
前回の台風で葉が落ちたのか、妙に萌木色の葉が目立ちました。ただ雨が少ないのか苔が乾き気味。
雨がそろそろ欲しいところ(この後、台風27号の影響で雨は降りました)。
目的地のナーラの滝に到着!
あとで気付いたのですが、みんなの集合写真を撮るのを忘れました・・・。
せっかくなので有志のお客さんと水のカーテンの中に入りましたが・・・さすがにもう冷たい!!寒がり+西表暮らしですっかり冷たいものに免疫がなくなった僕にはもう無理な水温でした。
昼飯は私も好物の「やさいソーキそば」。
社長から「美味い!」とのお墨付きを頂きました。ガイド業ができない年齢になったらそば屋でも開こうかな…(笑)
食後にコーヒー飲んでまったり過ごして2時間くらい滝のふもとにいました。いやはや、のんびり。
帰りはちょっとばかし雨がぱらつきましたが、下りの流れと下げ潮に乗って順調に漕ぎ進んでいきます。
仲良川は潮の流れを意識してツーリングを行うのがスムーズにツアーを行うコツです。風はまぁ、何とかなります。
今回、見かけた生き物たち。左上から軍隊蟹ことミナミコメツキガニ、緑と蛍光イエローが美しいサキシマカナヘビ。左下が秋を伝える飛ばないクワガタ、チャイロマルバネクワガタ、そして特別天然記念物であるカンムリワシ。
やはり西表島に来たからには様々な生き物に興味を持っていただくと面白味が増す気がします。
最後の白浜港への怒涛の向かい風パドリングの前に干潟に上陸して休憩+マングローブ観察。
こういう広大な干潟が残っている場所も日本国内では少ないのかもしれませんね。
コンパス様御一行とはこのツアー後、さらに星砂海岸に連れて行って星砂を見てもらい、お別れとなりました。
また来年もぜひお越しください。
ps:ちなみに僕が松山にあるコンパスをうかがった時の様子はこちらから。
http://ameblo.jp/driftwoodbeech/entry-11228686663.html
KOMPAS来島 ~その壱~
10月18日、19日の二日間、愛媛県の老舗アウトドアショップ「アウトドアーズ・コンパス」のお客様がツアーに参加してくれました。
アウトドアーズ・コンパス Outdoor,s KOMPAS
毎年4月に西表島ツアーを企画しているショップなのですが、今年は諸事情で10月に開催することに。
ツアー引率者の一人、楠さんとガイド赤塚の縁があって今回は当ショップを利用してもらいました。
二日にわたって海と川をめぐるということで初日の18日は海へ!
あいにくのミーニシ(北東風)が吹いていましたが天気は快晴!風裏を巡り、お客様たちの意向もあってのんびり、ゆったり、た~ぷり・・・なツアーに。
まずは最近お気に入りの内離島の西側でシュノーケリング
真っ白い砂地の上に点在するサンゴがきれいなポイントです。
水深も浅いのであまりシュノーケリング慣れしていない人でも比較的安心してエントリーできるところが気に入っています。ソラスズメダイの群れが水面まで浮上して何とも優雅ないい感じです。
昼ごはんは別の場所で食べる予定でしたが、思いのほかシュノーケリングを皆さん楽しんでおり、そのままこの浜で昼食に。
見た目は悪いが絶品と噂される(?)当店自慢のゆし豆腐モズクそば。久しぶりにガソリンストーブが出番を迎えました。普段はガスですがこの人数だとガソリンじゃないと火力が足りない・・・。
ご飯を食べて、いざ出発!
舟でしか行けない集落、舟浮を目指します。目的はお客様が前日に行って大変気にいたという「ぶ~ちゃん」。
しかし舟浮湾は湾だというのに、とんでもない蒼色を見せてくれます。まさに南海の海の色。
写真は今回の旅を企画してくれた楠さん。瀬戸内カヤック横断隊隊士でもあります。ガイド赤塚と同い年の貴重なカヤッカー仲間です(笑)
舟浮でまったりした後は、西表島でも珍しい海蝕洞窟へ。
昔、内離島の炭鉱で採れた石炭をコークスに加工していた集落、元成屋という場所にあります。
ここの浜にカヤックをあげて歩いて探検!
こんなでかい石炭がいまだに転がっています。
洞くつ探検が終わると、怒涛の向かい風の中白浜に向けて漕ぎ進みます。
漕いだ距離はそうでもないのですが、様々な環境を巡ったおかげでだいぶ色々なところに行った感がありますね。さすが舟浮湾、おもしろいところです。
海の部はこれにて終了。
続いて翌日は仲良川に向かいます! (続く・・・)
秋風が吹けば…山に行こう
台風の影響で北東風が強い日が続いています。
でも天気はかなりご機嫌。
日差しが強くて暑いくらい。でも風は爽やか。気持ちが良い。
こんな日はカヤックを使うよりは、トレッキングで山に行くのがバジャウ流。
西表島でもエントリーがしやすくて、でも多種多様な環境が整っているユツン谷。
バリエーションルートも多くありますが、今回はオーソドックスなルートから滝を目指します。
最初に驚くのはこのコウシュンモダマの大木!
左:イリオモテヒメラン。かなり株を発見 右:オオゴマダラ。求愛の時期
ルート上には様々な動植物が見て取れます。
何も知らずに入るよりも、図鑑片手に持って山に入ればかなり楽しめますよ。
もちろんガイドと一緒に歩いていれば、自分じゃ見つけきれない生き物との遭遇も。
季節の変わりめなのか、冬の花であるサツマイナモリ、アリモリソウ、そしてイリオモテソウなどもいよいよ花が咲いてきました。
今回の目玉はこのコノハチョウですかね。こんなにきれいに写真が撮れたのは初めてでガイドもテンション急激に上がりました(笑)
このきれいなチョウチョ、翅を閉じると名前のごとく、木の葉そっくりになるんですよ。沖縄県指定の天然記念物です。
山が深くて、谷も深い。それだけ豊かな水量を誇るユツン川。滑床の上を流れる水が岩をとかし
そんなこんなで写真撮りまくりながら歩いて2時間かけて目的地、三段の滝に到着!
水がないと迫力に欠けると言いますが、このダイナミックな岩の壁はそれだけでなかなかの迫力です。
滝の上の絶景はこれまた最高。
晴れた日のここからの眺めは、海から見るとはまた違う海の青さを際立たせますね。
お昼御飯もあつあつテビチそば。
もちろん島の野菜もふんだんに使っておりますよ。
カヤックがメインの当店としては、このフィールドにはよく海が荒れた時に行きます。
だから雨の日の潤った光景をよく目にするのですが、晴れた日のこの光のさし方はまた独特でたまりませんね。やっぱ、晴れているって最高のファクターかな~。
風があって海は時化ているけど晴れているという今回のトレッキングはなんかガイドも気持ち良くて最高のツアーになりました。
何よりこれからの季節、気温も湿度も下がってくるのでますますトレッキングが気持ちいいコースになります。沢沿いには可憐な花も多く見れるようになってきましたしね。
西表島の森、ぜひ探索しに来てみてください。
ご案内いたしますよ。
果報は寝て待て
10月5日からキャンプツアーを計画していたHさん。
台風23号が来てしまいツアーは中止・・・。お客さんも辛いし、ガイドも辛い~。
でも「どうしてもやりたい!」というHさん、9日まで八重山に滞在ということで台風が過ぎるだろう8~9日の日程で再度調整させていただきました。
ところが台風24号が今度は発生・・・。
「台風が発生しちゃったので、今回はやはりあきらめてキャンセルしようかと・・・」
「いやいやいや!大丈夫です!!問題ないですよ!!」
24号は沖縄本島と奄美諸島の間を通過する予報、八重山には問題なし。那覇経由の飛行機でもなければ問題なくツアーは行えます。ガイドの一声で何とかHさん、踏みとどまりました(笑)
どうですか、この青空!
途中で入ったマングローブの中も木漏れ日がさして最高の天気です。
「もう、本当、キャンプがしたかったんで・・・」
「諦めなくてよかったでしょ~」
長野からおこしのHさん達はなんと新婚さん!
なかなか来れない八重山で、どうしてもキャンプをしたかった。
そうと聞いちゃ、こっちも気合が入りますよ。
それにしても、諦めずにガイドを信用して晴れるのを待ってくれてガイド冥利に尽きるツアーです。
24号のうねりがかなり入ってはいるものの、リーフの中は漕ぐ分には穏やか。
水も入れ替わったせいか透明度抜群です!
夜はガイドが獲った魚を刺身にして一杯。
夕食を囲んでゆんたくをしていると、何やらガサゴソ音がする・・・。
「ヤシガニだ!」
「でかっ!!」
思わずガイドも仰け反った特大サイズのヤシガニ。
ハサミが壊れ、足が一本なく、これといって逃げる気配もなし。その貫禄はただ事ではなくとても食べる気にはなれませんでした・・・(そもそも茹で上げられる鍋がなかった)。
月が沈むと空は満点の星空。
「一週間こっちにいて、初めて星を見ました」
「長野もきれいだけど、ここはちょっと次元が違いますね~」
嬉しいこと言ってくれますね。八重山の星空は一級品。砂浜に寝っころがって空を見上げ泡盛を飲む贅沢。たまりません。
本土に比べ時差がある西表島は日の出が遅い。
6時50分に太陽が現れた。
だんだんと世界が明るくなる。その色の移り変わりは見ていて飽きない。そして飽きない程度に移り変わって行く。
翌日も快晴。
台風が来ていたとは思えない爽やかさ。
凪の海と、緩やかなうねりが心地よい。
新しいイリオモテヤマネコの足跡。
やまねこも台風の時は腹をすかしながらじっとしていたのだろう。砂浜を広範囲に歩き回っていた。
餌を探していたのだろうね。
行きとは違うマングローブの川に入り、上流にある滝でリフレッシュ。
シュノーケリングで潮まみれになった体、もちろんふろにも入っていなかったからスッキリするね。
偶然が重なって、いいタイミングでキャンプツアーを開催することができました。
最高の新婚旅行になったかな?
Hさん、またのおこしをお待ちしております。
キャンプツアー恒例の記念写真。
最高のキャンプ
ツアーをしていて、いろいろなお客さんと話をする機会があるのだが、僕が西表島以外でもカヤックを漕いでいることを知ると、ほぼ聞かれることがある。
「今までで一番よかった場所はどこですか?」
さすがに一番を探すのは難しいことだけど、話が「キャンプした場所」となると思い当たる場所がある。
2009年5月、僕はニュージーランドの北島のUpper North Islandという場所を1000㎞漕いだことがある。
マウントマンガヌイという場所を出発し、グレートバリアアイランドという島を経由してベイオブアイランズまで北上した。
でも時化た日が続き、一週間ほど悪天に苦しめられた末、目的の日程で最終地まで行くことができないことがわかり僕はここでこの旅をあきらめることにした。
デポしていた車を取りに行くとなんと盗まれ、あげく警察に聞くと燃やされていたという笑えないオチが待っていた。
意気消沈してお世話になっていた現地ガイドの家にお世話になっていた時、ツアーの手伝いをしないかという誘いを受けた。そしてそのあいだ、旅の続きを行うことを決めた。
残っていたのはニュージーランド北島の最北の半島、ファーノース。
順調にパドリングをして、かといって無理もせず、自分のペースで着実に進むことを心得ていたつもりだったが、内心焦っていたのかもしれない。
予定のゴール地手前、最大の難関であるケープレインガの次に難所とされたノースケープを越える際に僕は最大のミスを犯した。
それまで30㎞に及ぶ長距離の砂浜を漕ぎぬけ、岩礁帯に入り、いよいよノースケープを越える際、その岬の先端にあった島を遠巻きに漕いで行けばいいものをショートカットするために島と岬の間にある浅瀬を漕いで反対に抜けようとしてしまったのだ。
波が打ち付け、その引き波の際には岩が露わになるような浅瀬にもかかわらず、僕は突入した。タイミングさえ間違わなければ大丈夫だと判断したのだ。だが何かが引っかかりタイミングが微妙にずれてしまった。引き波に乗った僕はそのまま反対側に出ることはできたものの、ありえない衝撃をハルに受け、「バリバリ!」というすごい音がした。同時にカヤックの中に大量の水が入ってくる事がわかった。
スポンソンが両サイドに入っているフェザークラフトは完全に沈むことはない。このまま進もうと思った。だが冷静に考えてみてそれはあまりにも無謀だし、装備が浸水することによる問題もあった。
近くにあったビーチに緊急上陸するも、そこは急峻なダンパービーチ。ぶち当たるように上陸し、満水のクソ重いカヤックを何とか潮上帯まで引きずりあげると荷物を全部だしてカヤックをひっくり返した。
とんでもない裂傷だ。自分の体の様に痛い。雨が降ってきたのでブルーシートをかぶせ、乾いたタオルで拭き、急いで修理を開始した。
2時間ほど接着際の硬化を待つ。そのあいだ、この先の予定を海図を見ながら考える。
焦ったもしょうがない。やっちまったものはしょうがない。
しかしそこは無人の浜。背後には崖。海が時化、閉じ込められたら脱出は不可能だ。
ここでのビバークはありえない、先に進むべきだ。
4時に再出発。とんでもないダンパーに何度もカヤックを転げまわされる。引きずってもびくともしないカヤックを波はやすやすと跳ね上げ、転げまわす。海に殺されると思った。
波の合間を縫って何とか沖で再乗艇し、先を急ぐ。
断崖絶壁。向かい風。崩れる波。
状況は最悪だった。だけど漕げばしっかり自分が進んでいることが理解できたから不安はなかった。
何とか日没前までに海図にある浜までは行きたい・・・。
18時を過ぎ、太陽は沈み、漆黒に包まれつつあった。
でもどこか安心していたのは天気がよく、月が出ていたことだ。完全な闇でなく、月明かりさえあれば何とかなると思っていた。
真っ暗な浜辺から波の打ちつける音だけが聞こえる。
波打ち際はどこか?波はどんなタイミングで入ってくるか、サーフィンの用意はいつするべきか・・・?
そんなことを考えていたらいきなりバウが下に向かって落ち込んでしまった。あわてて体をひねってひっくり返るのを耐えると横から強い衝撃を受けた。波だ、ハイブレイスでサーフィンしながら浜に上陸すると、無我夢中でカヤックをつかみ浜の上まで駆け上がった。液状化なのか砂は柔らかく、波の力でグイグイ海の中にカヤックが引かれるような感じで、闇夜のなかカヤックをなくさないようにと必死でつかみ、なんとか持ち上げた。
そこがトム・ボーイング・ベイという湾のビーチだった。
息を切らしながら砂まみれになってカヤックをやぶの中に移し、全身ずぶ濡れでガタガタいいながらテントを立てて乾いた服に着替えるとなんとか生きた心地がし、お湯を沸かしてお茶を入れるとやっと自分がいる場所を冷静に見ることができるようになった。
まるで宇宙だった。
広大な砂に囲まれた場所に空には満天の星と、一際明りを感じる月の存在。
飯を炊いて腹にためると、いっぺんに疲労感が押し寄せてきたのだが気分が高揚して寝たいとは思えないでした。
全身全霊をかけて漕いで、何とかたどり着いた先にあったこの素晴らしい景色。
自分が遭難直前であったっとか明日の出発のこと、破けた船体布のことなど不安要素はあったのだが、「今、とりあえず生きている」という安堵感とあの予想もしなかったニュージーランド、ファーノースの景色に軽いトランスを起こしていたのかもしれない。今、思い返してもあの時の高揚感が忘れられない。
最高のキャンプは環境があればいいというわけではない。
その時自分が行ったカヤッキングの素晴らしさ、たどり着いた行程に関係するということが知れた素晴らしい夜だった。
皆さんにもそのような最高の経験をしてほしい。
自分のツアーでそのような体験をしてもらえれば光栄だが、できればツアーではなく自己の責任のもと行うカヤッキングで経験してほしい。
上げ膳据え膳のツアーではこの感動はどうあがいても伝えられない。だけどもしツアーに参加してシーカヤックに目覚めたのであれば、カヤッカーとなり自分でカヤックを漕いでこの感動を味わってほしい。
それこそが長距離を漕ぐシーカヤックの醍醐味だからだ。
ハリゴヒャクキュウジュウゴホン
ハリセンボンというフグがいます。
体の体表がハリだらけで、怒ったり危険が迫ると膨らんでハリを立てて防御するおなじみのあの魚。
沖縄ではアバサーと言って、重要な食用魚です。
毒がないので全部食べられる。
皮を剥いだ状態で、何ともみすぼらしい格好で市場に行くと売られています。
ブツ切りにしてから揚げや汁にして食べます。
肝をといて作る「アバサー汁」は絶品ですね。
そんなハリセンボンですが、通常剥いだ皮は捨ててしまいます。
しかし何年か前に奄美大島にいったとき、現地の人がハリセンボンの皮が美味い、ハリをのぞいて食べるというのです。
まさかー、と、ともったのですが冗談ではなく本当のようです。
沖縄でも海人などごく一部の人は食べているらしく、これはなんか興味をひきました。
先日、ハリセンボンを入手したのでけして暇ではないのですが、このハリセンボンのハリをのぞいて皮を食べてみることにしました。
ハリセンボンと言ってもいろいろ種類があり、沖縄ではアバサーとひとくくりにまとめていますが「ハリセンボン」「ヒトヅラハリセンボン」「ネズミフグ」やや近似種で「イシガキフグ」という4種類あります。
糸満などに行けばそれぞれ〇〇アバサーと、呼称があるのでしょうがとりあえずアバサーで。
今回のはアバサーでも美味い(肝が大きい)とされるヒトヅラハリセンボンです。
皮を剥いで、普段は捨ててしまう皮の部分を軽く茹でます。
縮んだ皮が丸まってなんともかわいいハリセンボンボールができます。
ちなみに身の方はバラバラにして、大きな肝臓は臭みのぞきのために泡盛につけます。
今回はレバーの様にためしに牛乳につけてみました。
頭の部分は固いですがコツをつかむとけっこう楽にバラせます。デカいままだと食べる人のひんしゅくを買います・・・。内臓は肝以外基本捨てますが浮袋はモチモチしておいしいので適度な大きさに切って。
ラジオペンチを使って根気よく引き抜いていきます。
10本単位にまとめてあとで数えやすくします。
ハリは根元から取れます。けっこう皮が固いままだと難しいかも。これも抜く向きとか、角度があってコツを覚えるまでが大変です。しっぽの方が根元が複雑に絡まって大変でした・・・。
結局全部抜き終わったのは2時間かかるか、かからないか。
数えたら595本もありました・・・!
ネットを見るとけっこうやっている人がいて400本くらいとのことが多かったのですが自分でやってみたら600本近く、びっくりしました・・・。
まるでマキビシのようなこのトゲは鱗が変化したものだと言いますが…本当かよ??
皮はブツ切りにして他の具材と一緒にアバサー汁に。
僕はニンニクとゆし豆腐を入れます。こいつはマジで美味いっすよ~。
肝心の皮の味ですが、予想通りというかなんというか、コラーゲンのかたまりと言った感じでプルンプルンで美味い。
けどあの労力を考えると・・・
またやるか??
心機一転
気付いたら、ブログ放置。
月日が経つのは早いもので、前に投稿したのはちょうど一年前くらいになる。
SNSが流行ったこともあるし、ブログだと誤ったこともやすやすと書けないのでどうしてもmixiやfacebookに走っていた傾向がある。
昨年、自分のショップを開いたのですがそのツアー報告もフェイスブックに頼りっきり・・・。
あれは写真をアップするのも、文章も気楽に書いたりアップできるので僕には向いていると思っていたんですけど、いろいろ思うところがあってブログを再開しようかな~と思った次第。
毎日毎日更新していたら大変だし、文章のクオリティーもテイゲーになるし、なによりうちのショップにあまりお客さんが来ていないのがバレテしまうので(笑)、最低でも月に一本、月刊方式で書いていこうかな~と思っております。
ツアー紹介も同じようなネタばかりになるし、釣りと魚とカヤックのうんちくばかりだとは思いますがよろしくお願いいたしますー。
で、今日は9月1日です。
防災の日にちなんで何かためになることでも書ければ良いのですが、それよりも夏が終わってしまったという気持ちの方が強い人が多いのではないでしょうか?
鬼門と言われる8月、通常はかきいれどきの稼ぎ時なんですが、何故かバジャウトリップは8月が弱い。
そんな印象を昨年を受けたんですが今年はなかなか繁盛したんじゃないでしょうか?
これもひとえに新空港効果?八重山ブーム効果?きいやま商店内地でブレイク効果?でしょうか?
ちょっと8月後半、台風も来たりして天候がすぐれませんが典型的な夏の沖縄の気圧配置により、今年の8月はとても天気が良かった。
もう、時間と場所さえそろえばべったべたのべた凪状態がいろんな場所で遭遇できました。
今回はそんなツアーを写真で振り返るというところで勘弁してもらいましょうか・・・?
これらの写真、みんな違う日にちに撮られた写真です。
こんなべた凪の海を見られるタイミングもなかなかないですよね。すごいガイドも興奮しました。
9月も気圧配置がばっちりあって、台風さえ来なければチャンスがあります。
カヤックに乗って、「勝手にシュノーケリング状態」の海に漕ぎだしましょ~。
やるせない日もある
中途半端でのろまな台風が、ぶくぶく太ってチンタラ向かってきている。
もう一つおまけで優柔不断ときている。
14号と15号。
飛行機も出て、船も出ているが、脱出のことを考えて英知ある人たちはキャンセルをし、時間に余裕がある、もしくは当たって砕けろ精神の方たちはそれでも遊びに来てくれている。
ともかく、離島というのはこういう時に不便なものです。
いくらネットがつながって、物流があって情報も物も運ばれてきても、ひとたび台風が来れば一時的にでも止まってしまう。
それはもう、こっちの人たちは慣れていることなのだけど。
遠く離れたところから来た僕らには、時々つらいことがある。
先日、ある人の訃報があった。
大変お世話になった人だった。
仕事のことでも、遊びのことでも、大人の男のあり方も、尊敬していた。
そんな人がなくなった今、自分が遠くにいることが残念でならない。
そういうことを覚悟して、今の生活をおくっているつもりだったけど。
なんか今日一日、物思いにふけってしまいます。
内地に戻ったら、お香を上げに行きます。
手段はいろいろ
西表島にある沖縄県で最も長い河川、浦内川。
この川は橋が河口付近にかかっていて、そのふもとにある桟橋から遊覧船が出ていて、上流にある軍艦岩まで行くことができる。
ここから森の中を川沿いに歩き、日本の滝100選に選ばれている(らしい)マリウドの滝の見える展望台まで行ける。
この滝も昔は滝上まで行くことができたのだが、現在は立ち入り禁止。理由はくだらないので割合。
そこから先にさらに歩いて行くとカンピレーの滝にたどり着く。
一般の観光客はここまで。Uターンして軍艦岩まで戻り、遊覧船にて帰っていく。
ここから先は西表島縦走道という、一応営林署が作ったトレイルがあり、島の反対側にある大富集落に抜ける道まで伸びている。西表島で冒険をしてみたい人の登竜門的コースだ。
そんな縦走道の入り口は森の中を歩いて行くのだが、浦内川自体は流れを弱め、長いトロ場が続く。
国土地理院の地図を見ると、そのトロ場に流れ込む支流の本流のすぐ近くに滝マークがあることが確認できる。
「この滝を見たいっ!」
そう思っている人は多いもので、何人かの人が縦走道を外れ、川を泳いでこの滝に向かっている。
僕はこの長く続くトロ場を見て、ここを何か舟を持ってきて、漕いで遡ることはできないか?と、考えていた。
最近、「パックラフト」という小型の持ち運びができるゴムボートがあることをご存じだろうか?
一部の人にはすでに認知されてミズスマシのような川旅に使われているのだが、このパックラフトの存在を知って僕はピンときた。
「これで浦内川を上ろうっ!」
僕が使っているフェザークラフトにもパックラフトが存在する。
ベイリーという、フェザークラフト社の社長の愛犬の名前がついたそのゴムボートを借りて、僕はその計画を実行した。
浦内川を軍艦岩までカヤックで行き、そこからパックラフトを担いでカンピレーまで。そしてパックラフトを膨らませてさらに奥へと進むのだ。
「手段としてのカヤック」を提唱している(?)僕からすれば、これはかなりトキメク企画だった。
さらに仲間内でもこの区間にある滝はまだ誰も攻め落としていない滝が3つあり、このまだ見ぬ滝に行けることに高揚していた。
カンピレーの滝上まで行ってベイリーを膨らませ、いざ出発する。
カヤックに慣れている身にはくるくる回って直進性はあまりないが、簡易スケッグも装着できるのでまるでなしよりはちゃんと進んでくれる。
両岸は急な崖になっており、川沿いに歩いて行くには無理がある。
流れこそほぼないが、透明度もそこそこあり、沈んだ流木が底に見える。魚止めの滝があるせいか、泳いでいる魚の姿は見えない。ただ、テナガエビとハゼの仲間はいくらでもいる。
張り出したオキナワウラジロガシやフトモモが川面を覆い、ツルアダンが亜熱帯の森を髣髴とさせる。森の中からはサンコウチョウやヒヨドリ、リュウキュウアカショウビンの声が聞こえてくる。
漕ぐだけでも十分、楽しい。
そして支流についた。河原にパックラフトをあげ、軽装で沢の奥へと入っていく。
滝の音が聞こえてきた・・・。
「おおおおっ・・・・!!」
地図で見て想像はしていたが、かなりの高低差がある滝に度肝を抜かれた。さすが浦内川だ。
しかし、感動もつかの間…どこかで見たことがあるような気もする。
気のせいだろうと2つ滝を見ると、かなり満足して帰路についた。暑い日で、少し熱中症にかかりそうなくらいクラクラした。
後日、フェイスブックを見ていたら友人の写真に見たことのある滝が写っているではないか!
「あ、まさか!」
そう、それはあの支流の滝だった。
彼らは僕が行く3日前ほどに軍艦岩からマリウドの滝まで直登する…ということをやっていたのは知っていたが、まさか縦走道から出て、川を泳いで滝を見に行っていたとは聞いていなかったのだ。
「やられた・・・」
初登頂ならぬ、初滝にはならなかったが、カヤック、徒歩、パックラフトを用いての遠征に少し満足している自分もいた。
色々な手段を考慮して一本の線を引き、目的を達成する。
そんな遊びをいろいろやってみたいと思う。