胎児心拍数陣痛図は脳性まひを減らさない!? | へその緒のはなし

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「へその緒」を研究する産婦人科医のブログ。
かつては、みんながお世話になったはずである「へその緒」の神秘的なしくみと、その異常への挑戦を語る。

ちょっとあいてしまいましたが、へその緒、脳性まひ関連のお話しを。

 

 

へその緒の異常があると、分娩の時などにへその緒が圧迫を受けて、胎児心拍が下がってしまうことが知られています。

 

 

なぜへその緒が押しつぶされると心拍がさがるのか?

 

 

へその緒の中を流れる血液は、赤ちゃんの血液です。

胎児の心臓のから送り出された血液は、大動脈を通って両下肢に向かって別れた動脈の、その枝分かれが、へその緒の動脈(臍帯動脈)につながっています。

 

 

お庭で水撒きをしているホースを踏んづけると根本がふっとびますよね。

 

 

 

それと同じです。へその緒が踏んづけられると、流れが悪くなって、その圧力の変化が上流に逆もどって心臓に負荷をかけるのです。

 

 

心臓のポンプが血液を送り出せずに、心拍がさがるのです。

 

 

 

そんなへその緒は、容易に圧迫されてしまわないように弾力のあるゴムみたいなものでできていて、つよーい陣痛にでも押しつぶされない様になっているのです。

 

 

しかし、へその緒になんらかの異常があるということは、弱い部分があるということなので、ちょっとした圧迫などでも、心拍数をさげるようなことがおきやすくなります。

 

 

 

分娩中や、分娩間近では胎児心拍数陣痛図(分娩監視装置、CTG, NSTなどと呼ばれる)を使用することが多く、その時に心拍低下がおきれば、異常をはやめに発見できるかもしれません。

 

 

 

しかし、自宅でおなかの中でそんな出来事がおきていたとしても、気づくことはできません。

 

 

 

妊娠10か月で胎動が少ないと思って受診したら、赤ちゃんが亡くなっていたり、陣痛や破水で病院に着いて、胎児心拍数陣痛図をつけたら、心拍が下がっていて緊急帝王切開になったりということは、今でも一定頻度で起こるできごとです。

 

 

 

今から約半世紀前に胎児心拍数陣痛図が発明されましたが、2000年ごろには、脳性まひは減らさないどころか、帝王切開率だけが増えたという皮肉な結果が世界で報告されています。

 

 

 

 

胎児心拍数陣痛図は、赤ちゃんが元気であることを証明するのに優れた検査です。決してその検査が悪いということではありません。

 

脳性麻痺は、分娩中の心拍数低下(低酸素)をみつけるだけでは減らせないということなのです。それだけ、複雑多岐に、いろいろな原因が関連して発症する難しい問題だということなのです。

 

 

 

 

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