前置胎盤は治る? | へその緒のはなし

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「へその緒」を研究する産婦人科医のブログ。
かつては、みんながお世話になったはずである「へその緒」の神秘的なしくみと、その異常への挑戦を語る。

「前置胎盤は、治ることがあるから・・・」とかいうことも時々耳にします耳

 確かに、前置胎盤の診断が撤回されるから、治ったという風に思って間違いではないと思います。

しかし、昨日もお話したように、胎盤は自ら移動しません。周囲との位置関係が変わったように見えるだけなのですビックリマーク



 例えば20週のとき、子宮口に胎盤の縁がぎりぎり接していて、実際の子宮の上で胎盤の縁と子宮口の距離が1mmだったとしましょう。しかし、そのころではまだ子宮は伸びきっていないので、そのたった1mmの部分も妊娠後期には2cm以上伸びるものなのです。

 1mmのときは、あまりにも小さいので超音波でそこまで区別できず、子宮口ぎりぎりに位置する(辺縁)前置胎盤や低置胎盤とか言われることでしょう。しかし、その1mmが超音波で区別できる3cmになれば正常な位置の胎盤と言われます。
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 でも、きっと胎盤は動いていないと思います

 あくまで、子宮が伸びているだけなのです。

 本当の胎盤の位置は、決まっているのでしょう。妊娠20週ごろでは子宮が小さいから、その本当の位置を超音波診断できないだけなのです。



 どの程度そんな見た目が変わるのかという研究論文はいっぱいあります。

たとえば、
20-23週に8650人の人を見たところ、99人(1.1%)の人が前置胎盤に見えたと。でも実際に分娩のときには28人(0.32%)が前置胎盤であったというものがあります(Becker)。

他の論文では、18-23週で1.5%が分娩時に0.14%(Taipale)とかいうのもあります。

もっと早い妊娠時期に観察した報告では、10-16週で4.9%だったのが分娩時には0.37%(Rosati)とかいうのもあります。

18週以降で観察した上の2つの研究に比べ(1.1-1.5%)、早い時期にみると前置胎盤に見える頻度が高い(4.9%)ことが分かりますねひらめき電球


 一昔前の研究結果ですから、超音波がより見えやすくなった今では、もうちょいいい成績なのではないかと推測されますビックリマーク




 でも結局、妊娠後期になるまで診断できないということなのです。

 超音波で前置胎盤のように見えたとき「前置胎盤です」と診断することは、定義からすれば間違ってはいないのです。

 後期に前置胎盤でなくなったときに、それまでの診断が間違っていたわけではないですし、治ったわけでもない(もともと前置胎盤でない)というのが本当のところなのです。



 妊娠中期に前置胎盤のチェックをする施設も多いかと思いますが、それを言うか言わないか、聞くか聞かないかがまた難しいところですね。



 前置胎盤かも・・・なんて言われたら夜も眠れないでしょ。

 医療者はうまく言わなきゃならないし、妊婦さんも正しく理解しなければなりませんね。





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