臍帯巻絡 | へその緒のはなし

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「へその緒」を研究する産婦人科医のブログ。
かつては、みんながお世話になったはずである「へその緒」の神秘的なしくみと、その異常への挑戦を語る。


 へその緒が、赤ちゃんのどこかに巻きついていることです。特に首に巻きついているのを頚部巻絡(けいぶけんらく)といいます。

 産まれてくるる時に頚部巻絡は、3人に一人の割合でいます。2回、3回巻いていることもあります。多くの妊婦さんが、へその緒のトラブルというと、おそらくこのことを思い浮かべるでしょう。しかし、卵膜付着のところでも話しましたが、全部を悪者にしてはいけない原則が大事です。ましてや3人に一人いるんですから。

 では、頚部巻絡の悪い状態は何なのかです。
私の調べた統計でも、他の大きな統計でもそうですが、

 何も巻いていない赤ちゃんにくらべて、首に1回巻きの場合は、緊急帝王切開になる確率は変わりません。

 しかし、2回巻き異常の場合は、巻いていない赤ちゃんにくらべて少し緊急帝王切開になる確率が上がることと、お産の時間が長くなります。

 緊急帝王切開になる理由は、赤ちゃんやへその緒がしめつけられることによって、心拍が下がったり、赤ちゃんの頭が下がってきにくいために、いい陣痛が得られないことによるものが多くを占めると思います。

 2回巻きと3回巻きはどれぐらい違うか?巻き数が多いほど悪い状況になりやすいと思いますが、どれぐらい違ってくるかは分かりません。

 巻絡もへその緒のひとつですから、時にはトラブルがひどい場合、胎児死亡の原因になることも事実です。例えば、5重巻いているとか、首を巻いて、足を巻いているとか、どうやってそんな巻き方になってしまったんだろうというぐらいのものです。そのため、分娩中の胎児死亡よりも妊娠中の突然死のほうが多いと思います。

 2回普通に首に巻いていて、それに問題がある場合でも、陣痛が徐々に強くなるにつれて、分娩監視装置で胎児心拍数の異常が徐々にでてくるでしょうから、そこで対処することができると思います。全く、心拍数異常を起こさない2回巻絡も多くありますから。

 超音波で巻絡を見つけたり、巻き数が分るだけでなく、大丈夫な巻きか、まずい巻きかを分娩前に判断できたらいいと思っています。そのあたりも今後研究しようと思っています。




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