多和田葉子、犬婿入り | 新時代思考記

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多和田葉子「犬婿入り」(1993年)という文庫本を読み終えた。

最近、日本国内よりも、特に海外で評価の上昇している作家である。

多和田葉子「犬婿入り」は、私にとっての読書初作品となった。

 

結論から言うとこういう系統は大好きである。実に文体がぶっ飛んでいて、衝撃さえ受けた。

 

この文庫本には二話入っている。「ペルソナ」と「犬婿入り」というお話である。

「ペルソナ」は変わっている小説といえばそうだが、別に衝撃的ではなかった。対して「犬婿入り」の文体やストーリーは、今まで読んだことのないような感触で、凄いなァ凄いなァと思えるものであった。

 

実はこの「犬婿入り」は芥川賞受賞作である。芥川賞というと、過去には純文学の余り面白くない小説も受賞することから、多和田葉子氏のような変わった作家が? と意外に思えた。1993年時の芥川賞選考委員は、捨てたモノじゃない。

 

「犬婿入り」のようなこういった型に嵌まっていない、自由でぶっ飛んでいるような文章やお話が私は大好きだ。ちょっと狂気さえ感じてしまうような……そんなものがいい。そういう方が実は人間的であると言える。多くの文学ファンもそう思うのではなかろうか。

 

それにも関わらず、型に嵌まっていない一風変わった小説というのが、昔から現代まで、文学界にはちょっと少ない気がしている。

多数派である常識的で優等生的な文章など、魅力は少ない。

人にどう思われようと、勇気を出して本当の意味で斬新な文体を書く稀有な作家が、今も昔も、日本では求められる気がしている。

実のところ文学賞選考委員など、自己保身から来る判断で、自分よりも実力の有る作家を除外していたりして?

 

他の多和田葉子作品も早く読みたくなった。

次回の読書紹介も、多和田葉子作品についての記事になるかと思う。

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