町田康「しらふで生きる」(2019年)という単行本を読み終えた。
断酒、禁酒について、いろんな角度からいろんな表現を駆使して詳しく説明される。
それら考察の仕方が、笑いを求めてふざけているのか、反対にまともで真剣な気持ちでやられているのか、これが分からないのが町田康の文章らしさである。もしかすると、彼にとってはどっちでもないのかもしれない。
本書の後半以降、もう禁酒のことについてはもういいよ、違う話題にしようよ、とまで私が思ってしまう程に、半ばしつこい説明が続く。
それでも、つい「ぷっ」と噴き出してしまうような面白い町田節はこの本でも健在であり、しつこいとは思わせながらも読者を最後まで読み切らせる。
独特の言葉で語るのが町田康。その独特さは、他に類を見ない。よく有りがちなパターンの言葉を酷く嫌い、自分の言葉で語りたいとする信条が、彼には強くある。使い古された在り来たりの言葉は使うことはない。
そういった頑固さと、言葉のずば抜けたセンスと、何といってもユーモアがふんだんにあるのが、町田康文学の特長である。
(全218ページ)