高村薫、視線の先は国内回帰 | 新時代思考記

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高村薫「作家は時代の神経である 2020→2021」(2021年)という単行本を読了した。サンデー毎日に連載された時評を再構成したものである。

高村氏がこの連載中、何となく嘘っぽい情報と真っ向から対峙して、苦悩して書いている姿が目に浮かんでくる。

この本にはコロナの話題を中心として書かれているが、実際、コロナという流行病はどこまでが本当で嘘かということは、未だにはっきりとしていない。コロナは、どことなく嘘っぽい印象が付き纏う。

そういった真偽の苦悩をしながらも執筆する高村氏に共感しながら読み進めると、結構面白い読書体験となった。

一方、一流の小説家のように言語感覚が優れていても、コロナ情報の真偽については明確に分からないものだ、という事実に残念に思った。

 

 

日本国民の注目は今までの長い間、海外の動静に関して、どうしても目が向きがちだった(巧妙に、目を向けさせられていた)。

最近となっては、徐々に日本国内へと視線が向けられ、漸くグローバルではない、昔の日本の正常な状態に戻ってきた、という感じがする。

 

様々な産業や経済などの事柄について、大きく言うと「国内回帰」しているように思っている。

大企業の工場も海外から撤退が相次ぐ。

海外のことを心配するよりも、まずは国内のことを憂慮し目を向けるのは、或る意味当然だ。

寧ろ、そうではなかった今までが異常だったのだ。

 

これまでのように利権の確保を優先し、大きな革命的変化を嫌う者にとっては、非常にしんどい事態かも知れない。

しかし時代は変わり、未だに正すことなく、そしてこれからもそういった個人利益優先ばかりの者は、大混乱の中に取り残される運命にある。

遠い海外事情よりも、我々の身近な国内問題の解決にこそ、まずは優先的に尽力する、という傾向は、とても良い意味があるのではないか。

 

簡単に言えば、海外の貿易品を買うよりも、日本国内生産品である。

外国産製品の高いネームバリューよりも、純国産品という、価格だけではない、いわば情の繋がりへと価値観も傾向も移ってゆく。

この情の繋がりの方が、詰まらないブランド力よりも、結局のところは利益としても優れているようになっている。

目には見えない情の力が巡り巡って、日本の国の為になる、という大事なことに、漸く日本人が気付くこととなる。

製品に加えて、文化的なものについても、全く同じことが言えると思う。