馬に乗らない人も読んでくれているので、
先日アップした 『試合後に感じる変化』 のなかでふれた
キャンター・ピルエット
という動きについて補足。
駈歩で、後肢を中心にして廻る運動、とでも言いましょうか。
馬術的により正確な定義はこちら。
* 以下のリンクから直には観られなくて、
YouTube サイトに移る必要があります。
フベルトゥス・シュミット氏が
国際審判員のウィッティーグ氏と行った
フォーラムの映像。
冒頭 2:26 までがキャンター・ピルエットの動きの説明になります。
その後、デモンストレーションと指導。
しきりと "Bend him" と言っているのは、
馬体を回転方向に少し湾曲させることで、
外側の手綱で馬が勝手に回転を急いだりするのを防ぐことができるから。
外方手綱が効きやすいように。
"make him loose inside" は
馬体を湾曲させるときに、内側の手綱を少し使うのですが、
内側の手綱を緩めても、
湾曲した姿勢(内方姿勢と言います)を保てる状態にする。
内方手綱はあくまでその姿勢に誘うために使うだけで、
引っ張り続けるのではない、という意味です。
6:15 あたりで、
それまでより円を小さくしたピルエットにチャレンジしてますが、
6:30 あたりの氏の解説で、
そのピルエットはそれ以前のワーキング・ピルエットより質がよくない
と言われています。
ワーキング・ピルエットでは、馬が1歩1歩、後躯に
馬のバランスをシフトして、後肢で馬と人の重さを支えられていた。
円を小さくしたとたんに後躯を横に逃がして
後躯で負重することがなくなってしまった、と。
そして、この馬の場合は、
ピルエットをさせることを急がずに、
まずワーキング・キャンター・ピルエットをたっぷりさせて
必要な筋力を鍛えることを勧めています。
ワーキング・ピルエットというのは後肢の円が大きい状態。
円が小さいほうが難易度が高いので、
競技では円が小さいほうが高い点がつきやすいです。
でも、円を小さくして質が下がったら、結局点は下がるので、
ベテランの選手はそのときどきの人馬の調子をみながら、
どの程度の円の大きさにするか臨機応変に対応するようです。
より完成度の高いデモンストレーションは、
さきほどの Part 2 のこちら。
そしてこちらのビデオの冒頭では、
シュテファン・ピータース氏が
クリニック参加者の馬に乗って、輪乗りの腰内から
徐々にワーキング・キャンター・ピルエットに持ち込んでいます。
彼の場合はプロなので、
質を落とさずにどこまで円を小さくできるか、
騎乗馬の能力をみながら試しています。
欧米のトレーナーは、
踏歩変換にしろ、キャンター・ピルエットにしろ、
質の低い運動をさせることは避ける人が多いと感じます。
1度質の低い動きを覚えさせてしまうと、
それを改善させるほうが大変だから、と。
馬が高得点をとれる質の高い動きしか知らなければ
あまり馬をサポートしてあげられない乗り手が乗っても
質の高い動きができて、乗り手に教えてあげられる馬になる。
踏歩変換を教えるまえにたっぷり反対駈歩をさせて、
馬が反対駈歩を正手前の駈歩と同じように
ゆったりリラックスしてできる筋力とバランス感覚をつけてあげてから
踏歩変換を教える。
同じように、
円の小さなキャンター・ピルエットを教えるまえに
それが出来る筋力とバランス感覚を
ワーキング・キャンター・ピルエットで身につけさせる
ということのようです。