森田療法の本を一つ読んでみました | 女医の国際精神保健

女医の国際精神保健

精神保健および公衆衛生を軸に、韓国、ロンドン、ジュネーブ、ニース、フィジー、赤道ギニア、東京、インド。
他にも、旅行、馬術、音楽、写真などについて記載しています。

 

 

図書館で見かけたので借りてみました。
「森田療法」って言葉は医学部でも講義に出てきますし、海外の精神科医との会話でもmoritaは診療に使うのかって聞かれたりします。
でも、日本の精神科において、正式にやり方を学ぶ機会は特になく、診療に使っている医師を見かけることもありません。
でも、vipassanaの10日間修行コースに参加したり、先輩精神科医がマインドフルネスに取り組んでいるのを伺ったりすると、森田療法もかなり共通点が多いように感じています。

 

 

 

 

上記の本ではしっかり訓練を受けた医師が10回の外来で森田療法に取り組む外来森田療法について記載がされています。

もっと新しい本もあるようなので、さらに進化しているかもしれません。

例を挙げながら説明がされますが、「うーん、そういう患者さんもいたって感じかな?」という感じで、うまくいった例に見えて、あまり実践的な想像はつかない感じです。そして、どんなにやる気があっても10回でそんなに変化するのか??という感じが拭い切れません。

でも、最初の診断の考え方とか、診察中の患者とのやりとりの感じとかは、私の今の精神科外来にとってもヒントがたくさんありました。

神経質と神経症の考えをおったり、脅迫障害や不安障害と神経症の関係を考えたりも、参考になりました。

 

症状の変化、行動の変化、心境の変化を治療者も患者も追えるように言葉にしたり書いたり行動を変えて取り組んでみたり。

自己と外界の関係を中心に行動や実際の関わりを用いて治療をしていきます。

 

森田療法に力動的精神療法を組み合わせる方法についても記載もありました。後者は自己の内的な世界を対話を中心に治療を進めていくものです。

例えば「健康な心とは他人に対して愛情を持つことができ、人の幸福を喜び、不幸を悲しむことができる」というためには他人の存在をきちんと意識して、他人を見ることができるようになり、現実世界はいろんな性格や要素から成り立っていることが分かり、それを事実として受け入れることができるようになります。

 

森田療法的対話で取り上げるべきテーマが挙げられており、これは日常生活でも外来でも取り入れられると感じましたので、下記に列挙します。

 

適応不安:自己の心身の状態が環境に順応しないという不安

例えば、離婚したことのある自分が今度の結婚でうまくいくか?とか既に評価を受けているやり方を変えて新しい方法で仕事に取り組めるか?など。

自然は人間のためにできた訳ではなく、当然自然の中で人間は不都合も受けるし危険な目にもあう。社会は個人のためにできている訳ではないから、競争もあるし、社会情勢の煽りもある。したがって、適応不安は実態を持った不安として常にありえるので、常にあるものと認め、具体的に対策を立てる。

 

完全主義:観念的な理想に現実を合わせようとすること。ここにとらわれずに、8割できていれば前に進めるようにする。

 

過去へのこだわりと先取り不安:神経質な時は、目の前の現実ではなく、過去や未来への不安に観念がいってしまうことがある。その点に気づき、今ここの現実に向き合えると余計な不安は消える。

 

生活史・家族関係からくる対人関係パターン:不安の根源が自分の劣等感だったり「夫は明るくこだわらない人、それに比べて私なんて」という思考だったり。それに振り回されて取り組むことを回避すると苦手意識が大きくなり苦手も増えてしまう。思い切って場面に参加すること。

 

平等感・客観性:他の人に比べて劣っているという劣等感が不安を増強していることもあり、対人恐怖を煽ることもある。同じことで困っている人たちの中で困りを話題にすると、「自分だけではない」などの感覚や他人の状態を聞くことで同様の自分を客観視できて楽になる。

 

人間性の事実:事前に頭で考えすぎずに、実際にやってみると神経症に振り回されない。体験し、それを体感で理解すること。

 

関わることと愛情:神経症の思考になるとマイナス思考になり、色々なものを避ける傾向にある。その結果、関わりがなくなり、そこで生まれるプラスも無くなってしまう。関わりとは仕事などに加えて、動物や子供の世話などが含まれる。何かに関わろうと決めた時に神経症の症状は薄れる。