出席しました、Population Day Symposium | 女医の国際精神保健

女医の国際精神保健

精神保健および公衆衛生を軸に、韓国、ロンドン、ジュネーブ、ニース、フィジー、赤道ギニア、東京、インド。
他にも、旅行、馬術、音楽、写真などについて記載しています。

これ に参加しました。
発表者もすごいけど、聴衆もすごいのがポイント☆
このWorld poplulation dayは、世界でUNFPAが引っ張っています。

人口増加が引き起こすこと、人口増加の原因、人口増加のいびつさが話されました。

開幕は、Lancetの編集長で、毎回物議を起こす事で有名なRichard Horton
ワクワクする展開にいつもなるので、私は大好きです。
(それにしても、この世界を引っ張る学術誌LancetとWellcome TrustとLSHTMはいつもセットですね)
今回の導入部はDeath at intervals の紹介から入りました。
人が死なない世界を描く本のようです。誰も死なない世界では色んな問題が起きて、考えさせられる作品のようです。

人口増加の概念から一日が始まりました。
あらゆる世界の地域の人口の変化に着目し、原因を解説します。
主に人口が多いのは、アジアとアフリカで、貧困が背景にありますが、原因が少しずつ異なり、この50年での状況変化は各国で異なるので、現在問題を抱える地域への対策も地域ごとに政策が異なる話しでした。
例えば、バングラデッシュは貧困、人口問題の解決が少しずつ進んでおり、まずは女性への教育がないとそれらの問題が解決しないという原則が覆されているなど。
東アジアはこの50年でめざましい発展を遂げたって設定でそこから学べるものもある、との解説でしたが、本当?
東アジアは元々社会が整っていたけれど、戦争で全てを失って、再興したイメージなのですが。うむむ???

家族計画(避妊など)が必要な人に行き渡ること、出産の間隔を広げることが、母子の保健と人口増加問題の両方に有効な方法である解説もありました。
これらをMDGにつなげて、一つの大きな動きとして広める必要があると。
しかし、HIV/AIDが多額の予算を持って行く中では中々他の分野の活動が難しい現実があること。
エビデンスに基づいていたら、こんな不均衡にならないはずとの指摘もありました。

経済学的な解析もあり、どのような人口構成、人口動態があると、どのように経済活動が変化してきたか、しうるかが説明されました。
アジアの貯金の多さも指摘されました。これは大事な要素で、将来につながるもの。逆に、借金の多い場合は、将来の人々に負担を強制していることになるので、問題が長続きしてしまう。

エネルギー、水、食物をとりまく環境の今後の変化を検討する必要があることも話題になりました。
社会が豊かになると肉と乳製品の消費があがることも、小ネタ的に面白かったです。

公衆衛生からの着眼の討論もありました。(これは、自分の土台なので、話しも分かりやすいし、快適☆)
問題の解析、データの解説、全体の構成、引き出す結論とメッセージがすっきり頭に入ります。
一人目の出産から二人目の出産の間隔が2年だと、母の死亡率が13%減少し、3年だと25%減少するとのことです。
世界で1億3700万人の女性が適切な家族計画を受けられずにいるようです。

用語の使い方の問題点も指摘され、population controlは拒否反応を起こす言葉のため、birth spacingの方が良いなどの提案がありました。
拒否されてしまうと、その後のメッセージが政治家にも、一般人口にも届かなくなってしまいます。

いろいろな問題の程度が特定の人に強いことが解析され(母子の死亡率、気候変動の影響などなどが貧困者に特に強い影響を示すなど)、equityの話しはここでも盛んにでてきて、それを解決できる方策特に経済の仕組みを考えるのが大切だと強調されました。
この点はどの分野の人も話す共通の内容ですし、私個人としてもとても興味のある側面です。

たくさんの観点が展開された一日ですが、一番興味深かったのは、質疑応答の時間。
座長によっては、1時間くらいをこれに当てている場合もあり、いろんな立場の人が質問し、コメントします。
ナイジェリアの元保健大臣やDFID(イギリスのJICA), Wellcome Trust, ロッカフェラー財団など蒼々たる実際に社会を動かしている人々が会場中にいます。
すると、「さきほどネイジェリア政府の政策への批判がありましたが、その担当は私ですので、ご回答します」とか、「さきほどイギリス政府の方針への提言がありましたが、午後に議員および委員長と会議がありますので、そこへ提言できますので、必要であればもう一度御聞かせください」
こうなると発表側もきちんとした内容を発表する必要がありますし、聴衆も責任を持って建設的に批判する必要があります。
この真面目にプロ意識で敬意を持って、共通の課題に皆が取り組む会場は本当に心地よい☆

それにしても、人口動態や気候変動は、30年後の予想とか50年後の予想が多いです。
そのため、不確定要素を多く含んでいるため、そこに立脚した論理がぶれが大きいです。
印象としては、どこまでが科学で、どこから先が意見なのかが分かりにくいなあと感じます。
このスタンスだと、自分の好みの部分だけ持って政策につなげることは容易なような感じがするので、そのあたりも地球温暖化問題に国際的な歩調が整わない理由かなあと想像したりもします。
もちろん、原因を作る側と被害を受ける側が違う地域と集団なのが本腰が入りにくい理由なのかもしれませんし、他にも多くの要素があるとは思います。

保健や公衆衛生を大きな視点から見る事ができ、世界のリーダーに囲まれることができ、刺激的な一日でした。