私が精神科を選んだ理由 | 女医の国際精神保健

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「なぜ精神科なの?」
これもよく聞かれます。
というわけで、ここにも書いてみます。

私が、精神科を選択することを決めたのは、医学部6年生の時です。
医学部の5年生、6年生は病院実習で、それまで教科書で学んだ事を元に、病院で実際の患者さんや環境を前に学びます。
たくさんの科で実習しながらも、あまりピンとくるものはありませんでした。
最後の最後に回ったのが、精神科でした。

「私の肩にフランス人が住んでいます」
「住んでるのは、随分前からなので、それは良いのですが、彼が最近私の悪口をいうのです」
「どうにかなりませんか?」
と、教授の初診外来を見学している際にある患者さんが訴えました。
私は、本当に驚いて、見学をしていましたが、精神科の教授は着々と問診を重ね、診断を患者さんに伝え、治療計画を立てていきます。
教科書で読んだ「妄想」とはこういうものか、と初めて教科書にあった精神症状と、実際に患者さんが困る内容がつながり始めました。

その後、イギリスへ交換留学する機会があり、そこでも精神科で実習を行いました。
イギリスは地域医療も進んでいて、また精神科看護師の仕事内容も進んでいました。
日本の精神科病院を中心にみてきた私にとって、それらの取り組みは大変新鮮でした。
患者さんは基本的に自宅や地元に済み、定期的に看護師の訪問を受けます。
看護師が変化を捉えると、病院に戻って、精神科医に相談することができ、必要があれば、精神科医が訪問するか、患者が受診するかで、医学的評価をうける仕組みになっています。
「同じ症状、診断、治療なのに、社会の解釈によって患者の取り扱いがこんなに違う」
と考え、公衆衛生や福祉の観点からも興味深いと考えるようになりました。

臨床でも興味深い、研究でも、そして、福祉や教育や司法の観点でもと考えていくと、精神科を取り組む分野は大変広く、
「これは絶対に飽きない!」
と考え、精神科専攻を決心しました。