辺り一面血だらけだ。

鉄の匂いが充満している。

「はぁ、もっと考えて殺すべきだったなぁ」

死体を片付けても匂いは変わらない。

「ううっ・・・ううう」

美咲が泣いている。

さっきのが怖かったのかな。

「美咲、何で泣いてるの?」

僕は美咲の頭を撫でる。

そしてそっと口を縛っていた布を外した。

「美咲?」

「ど・・・・して・・・・の」

「ん?何?」

「どうして・・・隆治・・は、悪くないのに・・・」

美咲が小さく口を開けて喋る。

今にも消えちゃいそうなくらい、小さな声。

「美咲はあの男をかばうの?何で?美咲は悪くないよ?美咲を誘惑したあいつが悪いんだよ?」

僕は笑顔で言う。

「あたしが悪いのに・・・どうして殺したの・・?ねぇ、優樹君・・・」

「どうして?邪魔だからさ、美咲と僕の仲を引き裂こうとしてる邪魔者なんだよ」

自分自身でもめちゃくちゃな言い方だと思った。

でも邪魔者なのは本当。

「殺さなくても・・・いい事じゃ・・ないの?」

美咲が睨んでくる。

まるで、僕を恨んでいるかのように・・・。

「何?美咲はあいつが好きだったの?美咲は僕の彼女なのに?」

「・・・」

「ねぇ、何か言ってよ・・・美咲っ!!!」

「ひっ!!」

僕は思わず美咲の頭を撫でていたはずの手に力を入れてしまった。

髪の毛を引っ張り、無理矢理視点を合わす。

「ねぇ~美咲?君は僕のモノ・・・だよネ?」

「あ・・・ぅぅう」

「ちゃんと答えないと、場合によっては痛いこともしかねないよ?」

「ゆう・・き、くん・・・」

「美咲は、どこにも行かない、そうだろぉ?ねぇ、ねぇねぇねぇねぇねぇっ

言葉に力が入る。

心のが焦っているのだろう。

美咲が「違う」って言うかもしれないってことに。

「やめ・・・痛いよぉ・・・優樹君・・ごめんな・・さい、ごめんなさいっごめんなさい」

謝り続ける美咲に、何故か腹が立ってきた。

それは要するに、「違う」と同じ意味を示してるから。

「ぁ、あはは、ぁはははははははははははははははっ!!!!!

狂っている。

一言ではそういうだろう。

でも僕にとっては、その一言にたくさん詰まってる。

僕は、いつの間にか意識が飛んでいた。


―・・・

「ん・・・朝?」

冬だというのに、強い日差しだった。

まだまだ寒い。

ベッドから起きると、椅子に美咲が座っていた。

「美咲?そんなところで寝たら風邪ひくよ?こっちおいで」

恥ずかしいのか、美咲はずっと向こうを向いている。

「まったく~美咲、僕が連れてってあげる」

美咲をひょいと抱き上げ、ベッドに横にさせる。

まだ寝ていたい・・・でも確か今日は授業があったはずだと僕は起きる。

美咲は寝ていたいのか、立ち上がろうとしない。

「美咲今日は行かないの?・・・わかった、じゃあちゃんと伝えとくから、え?ああ、わかった、夜ご飯はシチューがいいんだね、僕が作るから寝てていいからね」

美咲はありがとうと言った。

「じゃあ、行ってきます、美咲」

バタン

ドアが閉まる。


「ねぇ、あれ・・・」

「本当だ・・・あの人って・・・」

なんだか学校がうるさい。

授業の内容がまったく聞こえないじゃないか。

文句ばかりを心に思いながら、授業が終わった。

「富山ー、ちょっと来てくれ」

その教科の谷川に呼ばれた、何かあるのか?

「なんですか?」

「最近、お前の噂を聞いたものでな、ちょっと聞きたいことがあるんだ、ここでは何だからちょっと部屋を移そう」

噂・・・なんだろう?

僕は早く帰って美咲にシチューを作る約束をしてるのに・・・。

「富山、お前朝倉を見なかったか?」

「え?」

「もっと詳しく言おう、朝倉と土田、どこにいる?」

「なんで僕に聞くんですか」

少しムッとした態度で言う。

「富山、人を殺してないよな?」

「なんですか先生、僕が人殺しに見えるんですか?」

「土田、帰ってないそうだ」

「そんなの僕になんの関係もないじゃないですか」

「朝倉もだ」

「朝倉さんは僕の家で同居してます、今日は具合が悪くて休んでます」

早く帰りたい、その気持ちが焦りを出す。

「なんで同居してるんだ?」

「はぁ?美咲が言ってきたんですよ、一緒に暮らしてみようって・・・プライベートに答えなきゃいけないんですか?」

谷川が何を言っているのか理解できなかった。

「朝倉は行方不明なんだよ、なんで朝倉は富山の家にいるんだ?」

僕は思わず切れてしまった。

「何が言いたいんですかっ!?美咲なら僕の家にいるし、土田も見てないっ!ただのニュースの話だったら僕急いでるんで帰りますっ!」

ガラッっと勢いよくドアを開けた。

「富山、お前が犯人なんだろう?」

「・・・は?」

「この間、土田がお前と家に入ってくのを見たって奴がいたんだ、そしてその日を境に土田は行方不明」

「・・・」

「朝倉もその1日前から、お前と帰ってから行方がわからない・・・」

「何言ってるのかわかんないんですけど・・美咲なら僕の家に・・・」

僕の頭の中が真っ白になっていた。

「意味がわからない・・・だって・・・美咲はいるんだ・・・今も・・僕の帰りを待ってる・・・」

谷川が近づいてくる。

それに逃げるかのように、僕は教室から出て走った。

家に、美咲の待つ家に早く帰りたかった。


「美咲っ」

勢いよくドアを開け、美咲に抱きついた。

「なんだ・・・谷川のやつ・・・美咲ならいるじゃないか」

僕は後から理解した。

そういえば谷川は冗談をいう先生で有名じゃないか。

「馬鹿らしい・・・今すぐシチューを作るからね、待ってて」

コトコトいい音をたてて、いい匂いがする。

美咲がまだかと待っている、だけど時間をかけた方がおいしいから仕方なく待っててもらう。

急いでおいしくないものを食べてほしくないから。

「おまたせ、美咲」

美咲は甘えたがりで、食べさせてといつも言う。

ワガママだなぁと言いつつ、本当はすごく嬉しい。

やっと美咲は僕のことだけを見てくれるようになったんだと思った。

「おいしいかい?美咲、明日はオムライスにしよう、美咲の好きな僕が作ったオムライス」

うん、と美咲が言った。

「美咲、僕の美咲を勝手に殺した谷川をどうしようか・・・殺してもいいかなぁ、なんてね・・谷川の冗談でもうつったのかな」

僕はふふっと笑い、美咲といつの間にか寝てしまっていた。


今日は学校に行きたくない。

昨日冗談でも谷川に言われた言葉が引っかかって美咲と離れなくないんだ。

「美咲~今日はずっと一緒にいよ」

僕だってたまには甘えてもいいよねと、美咲に言っても

返事はない、照れているんだろう。

そんな美咲にビデオを借りてきた。

といっても前から借りてきていたやつだけど。

「美咲この映画好きなんだもんね、なんで好きなの?え?この男の人が好きなの?・・・美咲?外に行きたいって?ダメだよ、美咲はすぐに男とヤる癖があるだろ」

僕の声が部屋に響く。

「なんで・・・美咲、やっと僕のことを見てくれてると思ったのに・・・なんでだよぉぉぉおおおおおおおおっ!!!!

思わず手が出てしまった。

「あっ!ごめんよ、美咲・・・痛いのはもう嫌なんだよね・・・でも、2度目はないって言ったよ?美咲・・・」

僕は手を首に持っていった。



外から冷たい風が窓に突き刺さる。

風の音というのは自然が奏でる音で僕は好きだ。

この部屋には今、僕と美咲しかいない。

なんて幸せな時間なんだろう。

美咲は僕の家に来るのは久しぶりだ。

本当に数回しか来たことないから僕もいつ来たか忘れてしまいそうだ。

「ん・・・」

「おはよう美咲、気分はどう?」

「っ!?んー??」

「ああ、ごめんね、大声出されると困るから縛っちゃった」

美咲は苦しそうにこっちを見てくる。

胸がズキッと痛くなる。

「そんな目で見ないでよ・・・辛くなっちゃうだろ・・・」

そういい僕は美咲に目隠しをする。

泣いているのか、布がだんだん湿ってきていた。

「大丈夫、痛いことはしないよ、ちゃんとご飯だってあげるし」

僕は優しく微笑んだ、美咲には見えていなくてもわかると思って・・・。

「じゃあ僕、買い物行ってくるから・・・大人しく待っててね?」

そういい僕は玄関を閉めた。


美咲は、何が好きだったっけな、そう思いながら今日作るご飯を考えた。

「あの、富山さんですよね」

「え?」

振り向いた先には見知らぬ男が立っていた。

「あ、俺土田隆治っていいます」

(こいつが・・・)

僕は笑顔で答えた。

「そうですけど、何か?」

「あの、朝倉さん見てませんか?」

「?それを僕に聞くのは何か理由でも?」

「いえ、元彼と聞いたもので・・・知っているかと」

「そうですか、今日は大学見たきりですね」

ありがとうございました、と頭を下げ隆治は離れていった。

なんとも虫酸が走る男なんだろう。

僕は思わず睨んでやった。

あの男、元彼とか言ってたが美咲は僕の女なのに・・・。

ちょっと痛い目に合わせなきゃだめかな。

そう思いながら買い物を済ませた。


「ただいま美咲、いい子にしてたかな?」

美咲はピクリとも動かずにただじっと声のする方を見ている。

僕は美咲の頭にポンッと手を置き撫でた。

「さっきねー隆治って男と合っちゃってさぁ、美咲、僕のことどう言ったのかな?」

思わず手に力が入ってしまう。

「元彼なんてつまらない言い方んして・・・僕は元彼じゃないよ?彼氏、だよね?」

「んん・・・」

手に力が入りすぎたのか、美咲が苦痛の声を上げる。

「どうしてそんなつまらない嘘ついたのかなぁ?僕傷ついたよ~」

自分でもわかる、引きつった笑い。

幸い、目隠ししているため美咲にはわからなくよかった。

「痛い?でも今の僕の心はもっと痛いんだ」

「ううっ・・・んっ」

「っと、こんなことしてる場合じゃないや、ご飯作らなきゃ」

僕は美咲の頭にのっけていた手をどかす。

「うう・・・・」

泣いている、その度僕は心が痛い。


僕はオムライスを美咲の口に運ぶ。

「ほら、美咲、オムライスだよ?美咲がおいしいって言ってくれたオムライス、食べて?」

「・・・」

口を縛っていたハンカチを外したにもかかわらず、硬く閉じている。

「美咲、食べてよ、食べてくれよっ!!」

僕はムキになり、無理矢理口を開けさせた。

「やっやめてよっ!大声出すよっ!?」

「・・・美咲はそんなことしないよ、美咲は優しい子だからね、それは僕が一番よく知ってる」

「・・・」

美咲が黙ってしまった。

僕は優しく口にスプーンを持っていった。

「食べないと体に毒だよ?美咲」

美咲はそっと口を開けた。

「・・・おいしい」

「よかった、僕の作ったオムライス前からおいしいって言ってくれたから練習だってしたんだよ」

幸せだった。

美咲がおいしいって言ってから、いろいろ工夫したんだ。

たまごだって丁度いいやわらかさもわかったし、ケッチャップの量だっていい感じの量もわかった。

これも全部美咲のため・・・。

「ごちそうさまだよ、美咲、全部食べたね」

「・・・いつまでこうするの?」

美咲が震えながら言った。

「それはわからないなぁ、美咲、離したらまたどこか行っちゃうもん」

「もう優樹君から離れないから・・これ、外して?」

「ふふっ、それ何度聞いても説得力ないなぁ~何回離れないって言ったっけ?美咲」

僕は美咲に強く言い過ぎた。

美咲は泣き出してしまった。

「今度は・・・本当だから・・・結城君お願い・・・」

僕は心を痛める。

だから黙らせるため口を縛った。

「お喋りな美咲、あんまりお喋りが過ぎるのもよくないよ?」

僕は部屋を出た。


隆治にも痛い目を合わせなきゃ、僕の美咲を取ったんだからね・・・。

そもそも家を知らない、とりあえず学校に行ってみるか。

「あ」

土田隆治、僕のクラスにいた。

「どうも、土田さんですよね?」

「あ、君は富山さんじゃないですか、もしかして美咲を見たんですかっ?!」

僕は心の中で笑った。

今からどんな目に遭うかも知らないで・・・。

そして美咲なんて呼んじゃって

僕の美咲なのに。

「ここじゃなんですから、僕の家に来ませんか?」

「じゃあお言葉に甘えます」

焦っているのがひしひしと伝わってくる。

そんなに美咲のことが心配なのか。


「どうぞ」

「お邪魔します」

素直にも隆治が付いて来てくれて手間が省けた。

いろいろ設定も考えて部屋に誘き寄せようと思ってたが、こんなにも簡単に来るとは

よほど何処にいるか知りたいんだな。

「それで・・・みさ・・いや、朝倉さんは何処に?」

「まぁまぁ落ち着いて、お茶でも持ってきますので待っててください」

「はあ・・・お構いなく」

もうそろそろ、さようならの時間になる。

それだというのに僕は至って冷静だ。

これから初めて人を殺すというのに・・・。

震えもしない僕はすごいと自分でも感心してしまう。

僕はシンプルに包丁を手にした。


ガタガタ

隆治は物音に反応した。

部屋のどこかで何かいる音がする。

「・・・ペットでも飼ってるのかな」

そう思ったが動物の毛が見当たらない。

何か呻き声も聞こえるような気がする。

部屋のいたる所を探すことにした。

物の音や、声からして引き出しなどに入るような大きさではない。

僕は引き出しに手をかけた。

「っ!?・・・みさ・・き?」

「んん・・・ん」

目に映ったのは間違いなく美咲だった。

声に出す前に手が勝手に動いていた。

目隠しをとり、口を縛っていた布をとっていた。

「隆治君、なんで・・ここに?」

「美咲がどこにいるか、富山が教えてくれたんだ」

そう、と美咲が短く返事をした。

僕はホッと安心した。

でも・・・なんでこんなところに?

「りゅっ隆治君!!後ろっ!!!」

「え?」


僕は完全に頭に血が上っていた。

じっとしていれば優しく殺してやろうと思ったのに・・・。

なんでお前と美咲が話してるのか

それ以前になんで一緒にいるのか。

僕は知らないうちに隆治に包丁を刺していた。

「うっうぁぁぁぁあああああっ!!」

「キャー!!!!」

隆治の苦痛の声と美咲の悲鳴が一緒になった。

それだけでも僕は気に入らなかった。

「残念だなぁ・・・じっとしてたらよかったのに、世の中には知らなくていいこともあるんだよ?隆治君」

僕は外された目隠しをつけながら言う。

「あ・・・あがぁぁ・・・」

「ごめんね、美咲、見たくなかっただろ?ちょっと待っててね~すぐ片付けるから」

「ぁぁあああああ!!」

隆治が痛みに耐えている、いい様だ。

「痛い?隆治君、抜いてあげるよ」

そういい僕は包丁を抜く。

「刺してる間に抜いて僕を刺せばよかったのに・・・そんなこともわかんないくらい痛いのかな?それとも、ただの馬鹿かな?ふふっ」

馬鹿にしたように僕は隆治に向けて笑う。

「う・・・うううっ!!」

「あんまりそういう声だすと美咲が怖がるだろ~?もう、痛めつけて殺そうかと思ったけど

美咲に毒だ、そろそろさよならの時間だよ隆治君」

そういい隆治に再び刺す。

「うがぁあああああああああああああああああ!!!」

ブスッ

こんな音は漫画の中の効果音だ。

本当はこんな音じゃない。

なんとも表現しにくい音だ。

ドスッ

こんな音のような気もする。

何度も何度も突き上げては振り下ろす。

なのに僕は未だ冷静だ。

美咲が泣いてる。

そして、隆治も泣いている。

「い・・・いた・・い・・・よぉ・・・たったす・・・け」

既にもう息もまともにできなくなっていた。

あとは時間の問題だ。

いつ死ぬか、死目前だ。

「隆治君、知ってた?美咲は“僕のカノジョ”なんだヨ?君の彼女じゃな~いの」

「・・・ぁ・・・ぁああ」

「じゃぁね、隆治君、さよなら♪」

僕は最後の一振りで仕留めた。



僕は半分走りながら家に駆け込んだ。

まだ心臓がドキドキしている、気持ちが悪い。

ベッドに横になり天井を見つめた。

「美咲・・・」

今度で何回目だろうか、そして、何人目だろうか。

あいにく、人が誰かと“している”ところを見て興奮するような奴じゃないから

美咲が誰かと“している”ところを見てもただ悲しみを増すばかりだった。

とりあえず美咲の家に行くと言ってしまった以上行かなければならない。

走ったときに汗をかいた服を脱ぎ捨て、着替えた。


ピンポーン

「あ、優樹君いらっしゃい、美咲ならもう部屋で待ってるわよ」

「どうも、では」

美咲のお母さんに挨拶して僕は2階の美咲の部屋に入った。

「美咲?」

「あっ、ちゃんとノックして入ってよね!ビックリするじゃない」

「ごめんごめん」

まださっきのことが離れなくて、頭の中をグルグル回っている何かが邪魔で思考が回らなくなっている。

気持ちが悪くなってきた。

「-それでここなんだけど・・・優樹君大丈夫?気分悪いの?」

美咲の顔が近くにある。

それだけでもう僕は気が参っちゃいそうになった。

「美咲・・・今日クラブに行ったって言ってたけど、何してたの?」

「え?資料室に行って油絵の絵の具を持ってきたのよ、ほら、机の上にのってるでしょ」

「僕の組の男子と、変なことしてないよね?隆治って人なんだけど・・・」

美咲はきょとん、とした顔で言った。

「優樹君?どうしたの?変なことって・・・あたし絵の具を取ったあと先生にレポートもらいに行ったから美術室にはいなかったよ?」

「そ、そうなんだ、じゃあ見間違いだったのかな」

僕は正直ホッとしてしまった。

美咲じゃなかった、似ていただけなんだ。

本当のことを言えば焦りすぎてよく見てなかった、だから似ていただけなんだ。

「もう、あたしと見間違えるなんて~」

「ごめんよ、あまりに似てたような気がしたからさ」

膨れ顔に僕はさっきまでグルグルしていた気持ち悪いものがなくなっていくような気がした。

「そうだっお茶出してなかったね、もってくるからまってて」

「別にいいのに、なくても」

「ううんせっかく来てくれたのに出さないのは悪いし」

そう言って美咲は部屋を出て行った。

「いいのになぁ」

ふと美咲の部屋に目に入るものがあった。

見た感じ写真のようなものだ。

僕は手に取り見てしまった。

「あ・・・みさ・・・き?」

ガチャ

「!?」

「優樹君?何してるの?」

「え・・・えっと」

僕はとっさにズボンの後ろのポケットに写真を入れてしまった。

「えと、この昔の美咲の写真見てたんだ、前から見てたけどやっぱ何回見ても可愛いなって思って」

僕は机の上の子供の頃の美咲の写真を指差した。

「また見てるの~?やめてよ~恥ずかしいんだから、ほらお母さんがカップケーキ焼いてくれたから食べよ?」

「あ、じゃあもらいます」

何もなかったように、勉強を教え帰ろうとした。

「帰っちゃうの?結城君」

「え?」

「泊まってきなよ~」

美咲が腕を掴んで言う。

「悪いけど、帰ってやることあるからさ」

そういい僕はそそくさと出ていった。

「ちぇ~まぁまた明日ね」

「うん、また明日」

美咲が笑顔で僕に手を振る。

心が痛んだ。


何度見てもこの写真は美咲だ。

誰か知らない男と写っている写真。

本当は今すぐにでも切り刻んでやりたい。

でも何か証拠になりそうだと思い残してしまっている。

部屋に遊びに行ってから数日過ぎた。

やっぱりどうも、隆治って人と付き合ってるらしい。

僕がいるのに・・・これで何度目だろう。

一度痛い目を見せたほうがいいのだろうか。

でも世界で一番好きな美咲を泣かせたくない。

だったら・・・。


大学の帰りに美咲に僕の家に寄ってもらいたいと言い、家の前で話すことにした。

「本でしょ?おもしろかったかな?今度また見たいのあったらいってね」

「あ、うんありがとう」

「それにしても寒いね~」

そういい、美咲は身震いをした。

「寒いんだったらコート貸すよ?」

そういい僕は美咲にコートをかけた。

さすがに11月後半にもなると風が冷たい。

僕だって手がかじかみそうだ。

そして、言い出した。

「美咲、僕に何か隠し事してない?」

「え?してないよ~優樹君最近変だよ?」

美咲は微笑みながら僕に言う。

「別に変じゃないよ、美咲、正直に話して?僕だってこんなこと聞きたくないんだけど」

まるで頭の上に?のマークがあるかのような顔をして僕を見ている。

「美咲、僕の他に付き合ってる男いるよね?隆治って人、この間美術室で“していた”人も美咲と隆治でしょ?」

「な、何を?」

「嘘つかなくていいよ、僕もう知ってるからさ、美咲、もう浮気しないって言ってたのに」

「・・・」

「本当はこんなことしたくないんだけど・・・ごめんね」

僕は美咲のみぞおちに拳を入れた。

「うっ・・ゆう・・・き・・・くん?」

「ごめんね、美咲・・・こうしないと君は僕から離れるだろ?」

美咲の目が完全に堕ちた。