外から冷たい風が窓に突き刺さる。

風の音というのは自然が奏でる音で僕は好きだ。

この部屋には今、僕と美咲しかいない。

なんて幸せな時間なんだろう。

美咲は僕の家に来るのは久しぶりだ。

本当に数回しか来たことないから僕もいつ来たか忘れてしまいそうだ。

「ん・・・」

「おはよう美咲、気分はどう?」

「っ!?んー??」

「ああ、ごめんね、大声出されると困るから縛っちゃった」

美咲は苦しそうにこっちを見てくる。

胸がズキッと痛くなる。

「そんな目で見ないでよ・・・辛くなっちゃうだろ・・・」

そういい僕は美咲に目隠しをする。

泣いているのか、布がだんだん湿ってきていた。

「大丈夫、痛いことはしないよ、ちゃんとご飯だってあげるし」

僕は優しく微笑んだ、美咲には見えていなくてもわかると思って・・・。

「じゃあ僕、買い物行ってくるから・・・大人しく待っててね?」

そういい僕は玄関を閉めた。


美咲は、何が好きだったっけな、そう思いながら今日作るご飯を考えた。

「あの、富山さんですよね」

「え?」

振り向いた先には見知らぬ男が立っていた。

「あ、俺土田隆治っていいます」

(こいつが・・・)

僕は笑顔で答えた。

「そうですけど、何か?」

「あの、朝倉さん見てませんか?」

「?それを僕に聞くのは何か理由でも?」

「いえ、元彼と聞いたもので・・・知っているかと」

「そうですか、今日は大学見たきりですね」

ありがとうございました、と頭を下げ隆治は離れていった。

なんとも虫酸が走る男なんだろう。

僕は思わず睨んでやった。

あの男、元彼とか言ってたが美咲は僕の女なのに・・・。

ちょっと痛い目に合わせなきゃだめかな。

そう思いながら買い物を済ませた。


「ただいま美咲、いい子にしてたかな?」

美咲はピクリとも動かずにただじっと声のする方を見ている。

僕は美咲の頭にポンッと手を置き撫でた。

「さっきねー隆治って男と合っちゃってさぁ、美咲、僕のことどう言ったのかな?」

思わず手に力が入ってしまう。

「元彼なんてつまらない言い方んして・・・僕は元彼じゃないよ?彼氏、だよね?」

「んん・・・」

手に力が入りすぎたのか、美咲が苦痛の声を上げる。

「どうしてそんなつまらない嘘ついたのかなぁ?僕傷ついたよ~」

自分でもわかる、引きつった笑い。

幸い、目隠ししているため美咲にはわからなくよかった。

「痛い?でも今の僕の心はもっと痛いんだ」

「ううっ・・・んっ」

「っと、こんなことしてる場合じゃないや、ご飯作らなきゃ」

僕は美咲の頭にのっけていた手をどかす。

「うう・・・・」

泣いている、その度僕は心が痛い。


僕はオムライスを美咲の口に運ぶ。

「ほら、美咲、オムライスだよ?美咲がおいしいって言ってくれたオムライス、食べて?」

「・・・」

口を縛っていたハンカチを外したにもかかわらず、硬く閉じている。

「美咲、食べてよ、食べてくれよっ!!」

僕はムキになり、無理矢理口を開けさせた。

「やっやめてよっ!大声出すよっ!?」

「・・・美咲はそんなことしないよ、美咲は優しい子だからね、それは僕が一番よく知ってる」

「・・・」

美咲が黙ってしまった。

僕は優しく口にスプーンを持っていった。

「食べないと体に毒だよ?美咲」

美咲はそっと口を開けた。

「・・・おいしい」

「よかった、僕の作ったオムライス前からおいしいって言ってくれたから練習だってしたんだよ」

幸せだった。

美咲がおいしいって言ってから、いろいろ工夫したんだ。

たまごだって丁度いいやわらかさもわかったし、ケッチャップの量だっていい感じの量もわかった。

これも全部美咲のため・・・。

「ごちそうさまだよ、美咲、全部食べたね」

「・・・いつまでこうするの?」

美咲が震えながら言った。

「それはわからないなぁ、美咲、離したらまたどこか行っちゃうもん」

「もう優樹君から離れないから・・これ、外して?」

「ふふっ、それ何度聞いても説得力ないなぁ~何回離れないって言ったっけ?美咲」

僕は美咲に強く言い過ぎた。

美咲は泣き出してしまった。

「今度は・・・本当だから・・・結城君お願い・・・」

僕は心を痛める。

だから黙らせるため口を縛った。

「お喋りな美咲、あんまりお喋りが過ぎるのもよくないよ?」

僕は部屋を出た。


隆治にも痛い目を合わせなきゃ、僕の美咲を取ったんだからね・・・。

そもそも家を知らない、とりあえず学校に行ってみるか。

「あ」

土田隆治、僕のクラスにいた。

「どうも、土田さんですよね?」

「あ、君は富山さんじゃないですか、もしかして美咲を見たんですかっ?!」

僕は心の中で笑った。

今からどんな目に遭うかも知らないで・・・。

そして美咲なんて呼んじゃって

僕の美咲なのに。

「ここじゃなんですから、僕の家に来ませんか?」

「じゃあお言葉に甘えます」

焦っているのがひしひしと伝わってくる。

そんなに美咲のことが心配なのか。


「どうぞ」

「お邪魔します」

素直にも隆治が付いて来てくれて手間が省けた。

いろいろ設定も考えて部屋に誘き寄せようと思ってたが、こんなにも簡単に来るとは

よほど何処にいるか知りたいんだな。

「それで・・・みさ・・いや、朝倉さんは何処に?」

「まぁまぁ落ち着いて、お茶でも持ってきますので待っててください」

「はあ・・・お構いなく」

もうそろそろ、さようならの時間になる。

それだというのに僕は至って冷静だ。

これから初めて人を殺すというのに・・・。

震えもしない僕はすごいと自分でも感心してしまう。

僕はシンプルに包丁を手にした。


ガタガタ

隆治は物音に反応した。

部屋のどこかで何かいる音がする。

「・・・ペットでも飼ってるのかな」

そう思ったが動物の毛が見当たらない。

何か呻き声も聞こえるような気がする。

部屋のいたる所を探すことにした。

物の音や、声からして引き出しなどに入るような大きさではない。

僕は引き出しに手をかけた。

「っ!?・・・みさ・・き?」

「んん・・・ん」

目に映ったのは間違いなく美咲だった。

声に出す前に手が勝手に動いていた。

目隠しをとり、口を縛っていた布をとっていた。

「隆治君、なんで・・ここに?」

「美咲がどこにいるか、富山が教えてくれたんだ」

そう、と美咲が短く返事をした。

僕はホッと安心した。

でも・・・なんでこんなところに?

「りゅっ隆治君!!後ろっ!!!」

「え?」


僕は完全に頭に血が上っていた。

じっとしていれば優しく殺してやろうと思ったのに・・・。

なんでお前と美咲が話してるのか

それ以前になんで一緒にいるのか。

僕は知らないうちに隆治に包丁を刺していた。

「うっうぁぁぁぁあああああっ!!」

「キャー!!!!」

隆治の苦痛の声と美咲の悲鳴が一緒になった。

それだけでも僕は気に入らなかった。

「残念だなぁ・・・じっとしてたらよかったのに、世の中には知らなくていいこともあるんだよ?隆治君」

僕は外された目隠しをつけながら言う。

「あ・・・あがぁぁ・・・」

「ごめんね、美咲、見たくなかっただろ?ちょっと待っててね~すぐ片付けるから」

「ぁぁあああああ!!」

隆治が痛みに耐えている、いい様だ。

「痛い?隆治君、抜いてあげるよ」

そういい僕は包丁を抜く。

「刺してる間に抜いて僕を刺せばよかったのに・・・そんなこともわかんないくらい痛いのかな?それとも、ただの馬鹿かな?ふふっ」

馬鹿にしたように僕は隆治に向けて笑う。

「う・・・うううっ!!」

「あんまりそういう声だすと美咲が怖がるだろ~?もう、痛めつけて殺そうかと思ったけど

美咲に毒だ、そろそろさよならの時間だよ隆治君」

そういい隆治に再び刺す。

「うがぁあああああああああああああああああ!!!」

ブスッ

こんな音は漫画の中の効果音だ。

本当はこんな音じゃない。

なんとも表現しにくい音だ。

ドスッ

こんな音のような気もする。

何度も何度も突き上げては振り下ろす。

なのに僕は未だ冷静だ。

美咲が泣いてる。

そして、隆治も泣いている。

「い・・・いた・・い・・・よぉ・・・たったす・・・け」

既にもう息もまともにできなくなっていた。

あとは時間の問題だ。

いつ死ぬか、死目前だ。

「隆治君、知ってた?美咲は“僕のカノジョ”なんだヨ?君の彼女じゃな~いの」

「・・・ぁ・・・ぁああ」

「じゃぁね、隆治君、さよなら♪」

僕は最後の一振りで仕留めた。