半世紀ほど昔は、屋台を引きながらチャルメラを吹いて売り歩く夜泣きソバ屋がいた。コンビニの出店数も今ほど多くなく、夜中に響くチャルメラの音は五臓六腑に染み渡り、つい外に飛び出してしまう。
寸胴で丼を温め、食い終わるまで移動しないで待ってくれる。
それがある時期から、使い捨ての容器に変わり提供した途端に屋台が移動を始めるようになった。ふと気がつくと、屋台がいない。もうずいぶん向こうに行っていて、チャルメラが遠くから聞こえていた。電信柱の照明をスポットライトのように浴びながら1人たたずんでラーメンを食べている自分がいる。
延々と続く商店街。振り向くと遠くの電信柱の下にも数十メートルおきに、私と同じ状況の人が4、5人ポツンと立たずんでラーメンすすっている。
これはなかなかシュールな光景だった。
それから時代は変わり屋台も車になり、お持ち帰り専用。今では、デリバリーの時代となり、そんな店もめったに見なくなった。
今日はこの辺で。