怖い話します(選集) -8ページ目

怖い話します(選集)

ここはまとめサイトではなく、話はすべて自分が書いたものです。
場所は都内某所にある怪談ルーム、そこに来た人たちが語った内容 す。

※ このブログでコメント等にはお返事できません。
お手間ですが、「怖い話します(本館)」のほうへおいでください。

自分と同業の占い師のSさんから聞いた話。
彼は自分に比べればずっとメジャーで、某有名雑誌に占いコーナーを持ってます。
つい先日、飲み会の席でこんな話をうかがったんです。
「なあ、世の中に殴りたくなる顔ってのはあるよな」
「うーん、あるでしょね。でも性格の問題と違って顔が気に入らないからって、
 殴るわけにはいかないでしょ。嫌なやつなんですか?」(これ自分です)
「いや、行きつけのコンビニの店員だよ、深夜シフトの。
 店のマニュアル内容しか口をきいたことしかなかったんで、性格はわかんない。
 30代くらいで、なんかおどおどした感じなんだが、
 カウンターごしに顔を見てると無性に殴りたくなるんだよ」
このSさんは自分と同じく学生時代に柔道をやっていて、体重は100kgを超えます。

「殴っちゃダメですよ。でも興味深いなあ、どんな顔してるんです?」
「まあ、ナス型だな。頭の髪のある部分が小さくて、その下のほっぺたが膨らんでる。
 電球を下に向けた感じっていうか、マンガでもそんなキャラいるだろ」
「下ぶくれってことですね」 「ああ、それそれ。でな、正面に目鼻が集まってて、
 両頬の面積が広いんだ。しかも肉が柔らかそうにフルフルしててね、
 ああ、これを思いっきり張り飛ばしたらどんなに気持ちいだろうかって」
「うーん、それはぜひ見てみたいですね。あ、そうだ、下ぶくれの顔って、
 ボクシングのパンチングボールに似てますよね。ゲーセンにもあるやつ。
 あれを連想するんじゃないですか」 「わかんないけど、そうかもな。
 とにかくコンビニで物買って、会計を待ってる間、殴りたくて殴りたくて、
 自然とこぶしを握り締めてるんだよ。手のひらにじっとり汗をかくくらい」

「うわー」 「で、買い物が終わって店を出ると、ほっとするんだ。
 今日も殴らずに済んだって」 「別の店に行けばいいんじゃないですか」
「そうなんだけど、何かその顔を見たい気もあるんだよ。中毒してるみたいに」
「・・・・」 「でな、こないだその店員と居酒屋で偶然一緒になったんだ。
 俺が仲間と飲んでて、仲間は終電に合わせて帰っちゃったけど、
 俺は地元だし、飲み足りない気がして一人で冷酒やってたんだ。したら、
 その店員が3人づれで入ってきて、カウンターにいる俺をと目が合って頭下げた」
「興味深いですね、どうなりましたか?」 「俺は相当な量の酒が入ってたんで、
 10分ほどしてトイレに立ったその店員を、手招きして隣の席に呼んだんだ。
 で、少し世間話した後に、単刀直入に聞いてみたんだよ」
「何とです?」 「あんた、これまで殴られたことあるかって」

「おお、で?」 「そしたら、殴られそうになったことはたくさんあるけど、
 実際に殴られたのは1回しかないって。
 でな、その後に聞いたのがじつに変な話なんだ」
「ぜひ教えてください。ブログネタになります」
「そいつはどうやら自分の顔が、他人に殴りたいって気を起こさせるのを、
 知ってるようなんだ。子どものころから、
 とにかく理由もなく殴られそうになったことが、何度もあったって言う。
 相手は親兄弟以外のほぼすべての人、男も女も年も関係なく、
 ある程度まで顔が近づくと、こぶしを握ってプルプル震えるって。
 学校の先生、病院の医者までそうだったらしい。べつにケンカとかしたわけじゃなく、
 普通に話してる途中で。学校の先生なら面談中、医者なら診療中にな」

「ええ、Sさんみたいにですね」
「まあそうだ。で、相手がこぶしを振り上げようとした瞬間、
 いつも急に殴るのを思いとまる。それでそいつの顔を見て目をぱちくりさせる」
「殴られないで済む?」
「そう言ってたな。で、相手は驚きで放心したような状態になってる。
 そういうことが何度もあったんで、中学のときに相手に聞いてみたそうだ。
 そしたら・・・こっから信じられないような話になるがいいか?」
「いいです、ぜひ」
「そのときの友達が言うには、そいつの顔がサザエに見えたそうなんだ」
「サザエ・・・貝のサザエですか?」
「そうだ。それも人間の顔大の巨大サザエ」

「えー嘘でしょう。ありえないです!」 「だから信じられないって言ったろ。
 サザエってごつごつ とげとげしてるじゃん。それで驚きとともに、
 痛そうなんで殴る手が止まってしまう。ここでよ、
 心霊関係に詳しいお前に質問するが、これはオカルト的にどう解釈できる」
「えー、できないですよ、そんなの。まあ・・・むりくり言えば、
 サザエが守護霊になってるってことですかねえ」
「人間以外も守護霊になれるのか」
「・・・昔ペットにしてた犬や猫が守護してる、という霊能者の人はいますよ。
 しかし貝は聞いたことがない。それ以前に魚も聞いたことはないです」
「そりゃどうしてだ?」
「魚介類は霊魂がないか、あっても霊格が低いってことでしょうかねえ」

「そうなのか?」 「うーん、これはどっちかというと人間中心主義的で、
 万物みな霊を宿すってのが日本古来の考え方のような気もしますけど。
 キリスト教では論争がありましたし、輪廻宗教系では、
 人間にしか生まれ変わらないというのと、そうではないものがあります。
 人間以外にも生まれ変わる宗派は人気ないですけど・・・
 あの、さっき1回殴られたことがあるって言ってたそうですけど、
 それはどんなケースですか」
「ああ、高校のときで相手はボクシング部だったそうだ。
 事情はそれまでとほぼ同じだったけど、相手が人を殴りなれてるだろ。
 モーションが小さいしスピードがのって手が止まらなかった」 「それで?」
「その店員の顔はなんともなくて、相手の手がぶさぶさに裂けたそうだ。

 ちょうど巨大サザエを殴ったみたく」
「うわ・・・ さっきからちょっと気になってたんですが、
 その店員の人、そういう経験を積んでるなら、
 Sさんが店で殴りたいと思ってるのに気づいてたんじゃないですかね」
「ああ、そうかもしれん。さすがに俺の話は出なかったけどな」
「汗かくほどこぶしを握り締めてたんでしょ。ぜったい気がついてますって」
「だろうなあ」 「今度1回実際に殴りかかってみてくださいよ。
 実際に殴らなくてもサザエに見えるんでしょう。
 やってみれば本当の話かどうかわかりますよ」 「確かにそうだなあ。
 今度コンビニ行ったときに試してみる。俺は事情を知ってるわけだから、

 悪意があるとも思わないだろう。次会ったとき、どうなったか報告するよ」
 
 
 
 
 


 

 

今回は超ひさびさにUMA談義です。自分はオカルトのジャンルの中では、
UMA(未確認生物)が一番好きなんですが、なかなか書く機会がないんですよね。
さて、下の画像をご覧ください。これ、オカルト好きの方は一度は
どこかで見かけられたことがあるんじゃないでしょうか。

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通称「テコルートラの怪物」と言います。1969年、メキシコ、
ベラクルス州のテコルートラと呼ばれる町の海岸で発見されました。
漂着してから何週間かたっており、かなり腐敗が進んで、
あちこちの骨がむき出しになり、なかば砂に埋れていたそうです。

特徴としては、推定体長が22~26m、幅6m.体重24トン、
頭の重さだけで1トンあり、なんと3mを超す長さのクチバシがついていた。
クチバシの重さは600kg。体は硬い皮でおおわれ、羊毛のような毛があった。
テコルートラの町長セサール・ゲレーロが当局に調査を依頼した。
さまざまな説が出され、突然変異のクジラではないかとする意見もあったが、
結局、結論は出ないままだったようです。

クチバシと思われる画像  ナガスクジラの頭部


上の画像を見るかぎりクジラには見えませんが、これはおそらくクレーンなどで
吊り上げられている状態と思われます。ですから、
首の部分があるように見える。あと、クチバシは取り外されているようです。
で、これ、自分はやっぱりクジラなんじゃないかと考えます。

ナガスクジラなのか、マッコウクジラなのかはちょっとわからないですが、
クチバシに歯があったという記録がないので、ナガスクジラの可能性が高いかも
しれません。ナガスクジラは、体長20~26m、体重30~80トンなので、
大きさの要件は十分満たしています。

ここで、「ちょっと待って。クジラにクチバシはないよね」と思われた方も
おられるんじゃないでしょうか。そういう意見は多いんです。
でも、自分は逆に、「クチバシ」という証言があるものはクジラの可能性を
疑います。次にクジラの骨格図を掲載しますが、
上がマッコウクジラ、下がシロナガスクジラです。



どうでしょう。頭骨の前の部分の形が、クチバシに見えませんか。この骨が、
肉の部分が腐敗してむき出しになり、クチバシと誤認されるんだと思います。
マッコウクジラ類は、頭の部分に「脳油」と呼ばれるワックス状の物質が
入っています。これによって浮力を調節し、深海にもぐったりするんですが、
この部分は腐敗してなくなってしまいやすいんですね。

余談ですが、マッコウクジラの油は「マッコウ油」、
ナガスクジラからは「ナガス油」が採れます。この成分には違いがあり、
マッコウ油は人間の食用にはならないため工業用に、
ナガス油は食用も含めて広く利用されました。アメリカの小説家、
ハーマン・メルヴィルの書いた『白鯨』では、19世紀後半の捕鯨の様子が
出てきますが、当時の捕鯨の最大の目的は、鯨油を採ることにあったんですね。

で、クジラが何らかの事情で死ぬと、胴体は肉厚なので、
まず、頭部が腐って鯨油が抜け、頭骨がむき出しになりやすいと考えられ、
それがクチバシ状に見えるというわけです。次の画像をごらんください。
これは、2007年に中国の海岸で発見されたものです。
くちばしだけで1メートルあり、頭全体では約3メートル。

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ちぎれたような首からは骨が出ています。これを、プテラノドンなどの翼竜
じゃないかとする見解もありますが、ちょっとありえないでしょう。
この頭部はかなり重そうですが、翼竜の場合、
翼長10m級のものでも、体重は50kg程度しかありません。
それはそうですよね。重ければ滑空できなくなります。

これもおそらくクジラ類の一種なんでしょう。あと、画像はありませんが、
1925年、アメリカ・カリフォルニア州で、体長15mの巨大な生物の死骸が
流れ着き、この生物にも巨大なくちばしがあったが、歯はなく、
クジラのような尾がついていたとされます。
また、下図はロシアのサハリン島に流れ着いたものです。



さて、クジラ類の中には、骨だけでなく、外から見た口吻がクチバシ状に
なっている仲間がいます。アカボウクジラ類ですね。
アカボウクジラは、体長7m、体重2~3トン、
顔つきが赤んぼうのようなことから、この和名がつけられました。
体は細長く、漂着死体がシーサーペントに見える可能性があります。
下図は、オーストラリアの海岸で見つかったアカボウクジラ科の希少クジラです。



さてさて、ということで、漂着死体というとウバザメなどのサメ類が有名ですが、
自分はクジラ類もかなりあるんだろうと思ってます。
何だか夢を壊すような内容になってしまいましたが、
「クチバシ」という証言があったら、クジラの可能性を考えたほうがいいようです。
では、今回はこのへんで。

シロナガスクジラの全身骨格






 

借り物
うーん30年くらい前だね。俺は業界誌の会社にいたんだ。
編集は10人足らずで、あと営業職が30人くらい。それと専務以上の役員、
全部で50人を少し切るくらいの会社規模で、ほとんどが男子社員だった。
でね、今は会社総出での忘年会や慰安旅行なんてめったにないけど、
当時はまだまだ残ってたんだよ。
その年もクリスマス後に箱根への1泊2日の旅行があったんだ。
もちろん不参加なんて親の葬儀ででもないかぎりできない。
温泉ホテルに着いて一風呂浴び、浴衣に着替えて広間で宴会をやることになった。
で、余興があるんだよ。福引きとか、そういった賞品をかけたゲーム。

これがね、男ばっかだったせいか内容が年ごとにどんどん
エスカレートしていってね。危ない感じになってきた。


ほら、ちくわにワサビが入ったのがあって、
前に出たやつの中で表情を見て誰が食ったか当てるのとか、腰に万歩計をつけて

ドドドドって舞台で足踏みして、計測された数を競うとか。少なかったやつは
罰としてビールを一気飲みする。全力で動いた後だから心臓に悪いよ。

そういうゲームを幹事が2週間も前から準備するんだよ。
で、その年のゲームの中に借り物競走があったんだ。

もちろん子どもの運動会でやるような普通のじゃなくて、借りてくるのが
「ダッチワイフ」とか「金魚」とか、まず無理だろうってもんばっか。

とにかく何かそこらにあるもんを持ってきて、こじつけで説明するゲームなんだな。
で、借り物を書いた紙を拾った新入社員が、あちこち見回していたが、
◯◯さんの手を引いて座の中央に出てきた。

この◯◯さんというのは俺らの会社の社員じゃなく、

入ってるビルの管理会社の人で、俺らの階の担当者。
ほら編集部は校了があるから、徹夜が何日も続いて、いつも迷惑をかけてたんだ。

それでね、この年はお客さんとして来てもらってたんだよ。
そ◯◯のさんと手をつないだ新入社員が、紙を開いてみなに見せると、

「幽霊」って書かれてた。たちまち回りからヤジが飛んだよ。「◯◯さんが
 幽霊なのかよ」 「失礼があったら承知しねえぞ」 「今月の給料なし!」とか

すると、新入社員はまじめくさった顔で「今みなさんに見せますから」

そう言って、浴衣のたもとから数珠を取り出した。「こいつ、
 こんなもんいつも持ち歩いてるのか、危ねえやつだ」誰もがそう思ったが、

新入社員は意に介す風もなく、ホテルの仲居さんに照明を消すように言った。

でね、薄暗くなった中で、◯◯さんの手を片手でつかんだまま、

お経のようなのを唱え始めた。そしたら、◯◯さんの
背中のあたりが薄ぼんやりと光り始めた。冷た~い青い光。

そこに確かに見たんだよ。4・5歳くらいの血まみれの顔の女の子が、

◯◯さんの背中にしがみついているのを。座はね、
まさに水を打ったように静まり返り・・・仲居さんの一人が悲鳴を上げた。
「電気をつけろ!」って社長の声がして、すぐに明かりがつくと、もう幽霊の
姿はなくなってて、◯◯さんが真っ青な顔で目をつむりぶるぶる震えてた。

新入社員は得意そうな顔だったが、専務たちにどっかに連れて行かれた。
その後は、何も起きなかったようにして宴会は続けられたよ。
でも、◯◯さんは具合が悪いと言って早々に部屋に引っ込んじまった。
俺らは飲めるだけ飲んで、あとは各部屋に別れて麻雀とかだったな。

◯◯さんの話は誰もしなかったよ。あれはマジもんだったから。
でね、朝になって○×さんが朝食会場に出てこない。
まあ、朝飯も食えないほどに飲み過ぎたやつは他にもいたけど、
部屋に呼びに行ったら姿がなかった。
一足先に帰ったのかと思ってあちこち電話したが、消息不明。
そうしているうちに、地元の警察から連絡があって、
近くの林で首吊り遺体が見つかったがそちらのホテルの浴衣を着ている。

見に来てきくれないかってことで、副社長が行ってみたら◯◯さん
だったんだよ。その前の夜の宴会での話は誰もしなかったんだと思う。

とにかく自殺ってことで、それ以上警察も詳しい捜査はしなかった。
ああ、新入社員のほうは帰りのバスで顔に青丹をつくってしょんぼりしてたな。
役員の誰かに殴られたんだろ。・・・誰しも秘密ってもんがあるからね。

文字
中1のときのことですね。友だち2人と竹林で遊んでたんです。

迷路みたいで面白いじゃないですか。あの中でチャンバラみたいに
細い竹を振り回すと、あちこちに跳ね返って面白いんです。

ああ、すみません。それで、しばらく遊んでから、近くの小山に登ったんです。
直径20mほどの円形になってて草が短く刈られていたんで、
上からでんぐり返りしながら下りてくると面白いんです。
散歩コースになってましたから、ところどころに犬の糞とか落ちてて、
それがまたスリルがあって・・・ああ、すみません。
それで、でんぐり返りしてる途中で、友だちの一人がぼこっと落っこちたんです。

いや、ただの斜面だったのが、急に地面が陥没して。あわてて駆けよったら、
直径1mくらいの穴になってて、中は暗くて見えませんでした。

 

「おーい」って呼びかけたら、「いてえよー」ってくぐもった音の返事が
返ってくる。これはどうにもならないと思って、大人を呼びに行ったんです。

・・・このあたりは古墳の多いところで、
この間も奈良時代の装飾古墳を近所の年寄りが見つけたってことがあって、
そういうものに落ちたんだと思いました。
それでます、消防署からレスキュー隊員が来ました。
穴は大人の胴でも入る大きさだったんで、
ロープにつり下がった状態のレスキューの人が中に入って、

友だちを抱き上げて出てきました。友だちは泥だらけに
なってましたが、ちょっとした擦り以外に大きなケガはなく、

1日で病院から戻ってきました。穴のほうは緊急に発掘調査されることになり、
「高松塚みたいなのならスゲエ。俺らが発見者だな」とか話しましたよ。
 

翌日、落ちたやつとまた遊んだときに様子を聞いたら、「そんなに長くは
 落ちなかったけど、足が固い物にあたった。もし頭からなら危なかった。

 中は真っ暗だったけど、壁に字が見えて、それは緑色に光ってた」
「どんな字だったんだよ」って聞いたら、

「俺の名前がひらがなで書いてあって、それから日付があった。日付は
 1994年7月24日ってなってたぞ」これはそのときから2週間後のものでした。

「ありえねえよ。古墳の時代に漢字はあったかもしれないが、
 お前が読めるような今と同んなじひらがななんてなかったし、

 だいたい、お前の名前が古代人にわかるわけないだろ。それに西暦って
 明治からだぞ」 「まあそうだけど。そうだけど、でもよ・・・」

そいつは不服そうな顔をして首を傾げていました。

その古墳は重機を入れて平削されたんですが、
ごくありきたりのものでめぼしい副葬品や壁画などもなかったんです。
蓋の閉まった石棺があったんですが、中の被葬者は朽ち果てていて、

砂と灰のようなのしか出てきませんでした。もちろん、
友だちが言っていた名前など書かれてあるはずがありませんでした。

「あいつやっぱ頭を打ってて、マボロシを見たんだろうな」

こんなことを言い合ってました。古墳は埋め戻しせず、
市の史跡として誰でも入って見学できるように整備されました。
ごくごく簡単な作りです。ここの市は、
そういうむき出しになった古墳があちこちにあるんですよ。

それで、落ちたやつはそのときから、なんとなく元気がなくなったんです。

学校でも「俺、死ぬかもしれない」って休み時間にもらすようになりました。

別にイジメを受けてるわけでもないので「何でだよ?」って
聞いても答えない。それで、とうとう失踪してしまったんです。

夜になっても家に戻ってこないので親が捜索願を出し、
警察や学校でもあちこち探したんですよ。
それで見つかったのが翌日、あの古墳の内部でした。
閉じられていた蓋と石棺の縁の間に首がはさまって窒息死してたんです。
で、長い間警察が調べていましたが、他に人がいた様子はなし、
首以外にケガしてるようなとこもなしで、自殺って結論になったんです。
でも、中1生が一人であの蓋を持ち上げ、そこに首を差し入れるなんて、
できると思えませんでした。それと、亡くなった日付が、

そいつが古墳の中で見たって言った緑の文字と同じ日だったんです。
 
 


 

 
 
 
 
 

ほくろ
私の家族は、私が産まれるだいぶ前に沖縄から大阪に越してきたんです。
私が3歳のとき建築現場の事故で父が亡くなり、それからはずっとこちらで、
母と祖母、私の3人で暮らしています。
祖母は沖縄にいたとき、民間の霊能者のようなことをしていまして。
あちらには多いんですよ。その血を受け継いだせいか、
私が小さい頃からいろいろと不思議なことがありました。

これからその中のいくつかをお話しします。最初は小学校5年生のときです。
Sさんと友だちがいて、家が近所だったんです。私の家はせまかったので、
もっぱらSさんの家におじゃまして遊んでいたんですが、
あるときこんな話になりました。Sさんは鼻の下にやや大きめの
ほくろがあって、それが近頃とても気になるということでした。

 

ただ黒くなってるのではなく、その部分だけ少し肉が厚くなって
盛り上がってましたので、年ごろになってくるとやはり気になったんでしょう。

私はその部分を見ているうち、なんだか自分にとれるような気がしてきました。
それで手の甲でなでてみたんです。
そしたら「冷たい」と言ってSさんは後ろに下がりました。
そのときはそれだけのことで、また別の話題に移ったんですが、
その日からだんだんSさんのほくろが薄くなってきたんです。
黒ずみがとれ、肉の盛り上がりも埋まってあたりの皮膚と同じになってきました。
もちろん本人はすぐに気づいて、とても喜んでいました。
そのときは2人とも、当然ですが、私がさわったせいだとは考えませんでした。
そして1ヶ月ほどたつと、ほくろはすっかり消えてしまったんです。

ただ、私の目にはそのほくろの部分が、
何だかまわりより白っぽく見えるときがありました。

本人にそう言ってみたこともあるんですが、鏡を見て、「そうかなあ、
そんなことないよ」くらいの反応でした。3日後、2人でSさんの部屋で、ベッドの
掛け布団の上に寝そべって雑誌を見ていました。何気なくSさんの顔を見たとき、

ほくろがあった部分の皮膚がぴんと張りつめているのがわかりました。
顔の内部から何かが出てきて外に向かって押しているように見えたんです。

「えっ」と思って見ていると、それは小さな顔でした。Sさんの顔の中に
こびとがいて、ほくろがあった部分を覗き窓のようにして、
顔を押しつけていたんです。私が驚いて見つめ続けていると、Sさんが気づいて、

「どうしたの?私の顔に何かついてる」と聞きました。

正直に答えることができなくてごまかしてしまいました。
家に戻ってから、祖母に見たことを相談しました。
祖母は優しく、何でもを聞いてくれたんです。
私の話を聞いて、祖母はしばらく考え込んでいましたが、
「できるだけ近いうちにSさんをうちに連れてきなさい」と言いました。
うちは2間のアパートなので私がためらっていると、
「こっちに来てから力のあるところをあれこれ見つけたんだよ。外に出るから」
その週の日曜日、遊びに来たSさんと私を連れて祖母が向かったのは、

大阪の茨木市というところにある「疣水神社」でした。ここは正式な名前を
「磯良神社」といい、何でも神功皇后という昔の人が戦いに出るとき、

この神社で必勝祈願をしたということです。

顔を霊泉「玉の井」のご神水で洗うと、
たちまちにイボや肌荒れがして荒々しい男の顔になった。

そこで男装をして戦いに臨み、敵をさんざんに滅ぼした。やがて戦勝報告に
返ったとき、もう一度ご神水で顔を洗うと元の美しい姿に戻った、そういう
言い伝えがあるところなんです。3人でお参りをしてから拝了所でお水を受け取り、
「美人になるんだよ」などと言いながら、祖母がハンカチを湿してSさんの顔を
ぬぐいました。すると、イボのあった鼻の下が大きく盛り上がりました。

何か小さいものが中で暴れているように見えましたが、なおもぬぐい続けると、

それはだんだんにすぼまり、また元のようになったんです。そこから一本、
白い小よりの先が出ているように見えました。祖母はさりげなくそれを引き抜き、

私の顔も同じようにぬぐってくれました。その後3人でお昼ご飯を食べて帰ったんです。
・・・このことについて、祖母に何かを言われたということはなかったです。


中学校に入ってからのことです。私はソフトテニス部に入りました。

うちはお金がなかったんですが、母が無理をしてラケットなどの用具を
揃えてくれたんです。1年生の夏休み、2泊3日の合宿がありました。

私が通っていた中学校はスポーツが盛んで学校に合宿所があり、
休み中にいろんな部活が交替で使用していたんです。

遠征に出かけるわけでもないのでお金はかかりません。早朝のランニングから
始まり、午後は日が落ちるまでのハードな練習でくたくたになりました。

私は1年生だけの6人部屋で3段ベッドの一番上でしたが、

夜に友だちとダベるなんてまったく不可能で、疲れのあまりすぐに
寝入ってしまいました。ふと嫌な気配がして、夜中に目が覚めました。

私が寝ている壁のあるほうから手がひっぱられているんです。

誰かが手首を握っている感触がありましたが、そっちは壁なんです。

何かがいるスペースなんて絶対になかったんです。私の指をつかんでいる
手は小さく冷たく、この世のものではない感じが伝わってきました。

私は心を落ち着かせるように、大きく息を吸っては吐きを繰り返し、
頭の中に祖母の顔を思い浮かべました。
すると少し引っぱる力が弱まったように感じられたので、
そちらの腕に思い切り力を入れて胸の上に持ってきました。
起き上がり、体を丸めるようにしてはしごを下りて部屋を抜け出し、

電気がついている食堂まで行きました。そこには自動販売機や公衆電話があり、
時計を見ると1時を少しまわったところでした。家に電話をかけることの
できる時間は過ぎてましたが、祖母に連絡しようと思いました。


しばらく呼び出し音があり、眠そうな声で母が出ましたので、

無理を言って祖母に変わってもらいました。母もわたしの声の調子で、
何かよくないことが起きているのがわかったようでした。

祖母もろれつのまわらない寝起きの声でしたが、
私の話を聞いているうちにだんだんと普段の調子に戻り、
「わかった、わかった。手を引っぱるのはたいしたものではないと思うけれど、
 遠く離れてるから祓えないと思う。お前の体のほうならなんとかなるから、

 応急処置だけど3本目の手を生やしてやろう」こんなことを言って、
両手の指を組み合わせる印の結び方を何種類か教えてくれました。

「これで大丈夫だよ。安心してお休み」
こう言って電話は切れたんです。

部屋に戻るのは怖かったんですが、そっと上に上りました。
他の子はみな寝ていて、私が抜け出したのに気がついた様子はありませんでした。
ベッドに寝て、祖母に言われたとおり両手をお腹の上にのせ、指で印を組みました。
それから、壁側の腕の脇の下にもう一本腕が生えているのをイメージしたんです。
私のと同じような細い腕です。特に何事も起こらず眠くなってきました。

そのうちいつしか寝入っていて、夢を見ました。花園のようなところの
丘の上から私は下を見降ろしていました。女の子が遊んでいました。
中学生ではなく、小学校にあがったばかりくらいの小さい子です。その子が
花をまき散らしているところに一本の白い腕が宙を漂って近づいていきました。
腕はさりげなくその子の手を握り、導くようにして花園のずっと向こうまで
連れていき、斜面に下りて見えなくなりました。


目が覚めました。早朝トレーニングが終わり、
朝ご飯を食べてから先生に断って祖母に電話をしました。
夢の話をすると、「それはおそらく、そのあたりで亡くなった近所の子だね。
 ゆっくり休めるところに腕が連れていってあげたから、
 お前がそこにいる間はもうこないよ。
 合宿が終わった日に迎えにいくから、そのときに本式のお祓いをする」
こんなふうに言われたんです。
確かにその夜は何事もなく、夢を見ることもありませんでした。
合宿は3日目の昼前で終わり、校庭で待っていると祖母がやってきました。

2人で学校のまわりを歩き、ある交差点の前で祖母が立ち止まって
簡単な儀式をしました。私も手を合わせました。
それからお蕎麦を食べて家に帰ったんです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

田舎を舞台にした怖い話ってありますよね。怪談の一つのジャンルと
言っていいかもしれません。じゃあ、田舎って何で怖いんでしょう。
まあ、これにはいろんな理由が考えられるんですが、
自分は大きく2つあるのかなと思ってます。まず一つめは、因習と
いうやつです。都会だと、住んでる人が頻繁に入れ替わりますが、
田舎は昔から同じ一族で続いてる家が多い。で、それと同時に、
よそ者には理解できない、しきたりのようなものも残っている。
もう一つは、土地が古いってことです。都会では少しのスペースが
あれば開発されてしまいます。田舎には古墳や、いわれのよくわからない
石碑なんかがあちこちに残ってますよね。今回は、自分のところに
集まってきた体験談から、田舎を舞台にしたものをご紹介します。

プロバスケ選手 高野さんの話
一昨年の秋ですね。俺、大学でバスケやってたんですが、引退しまして。
ふつうなら就職活動を始めるとこですけど、監督の推薦でBリーグ入りが決まって
ました。だから、卒業まで体なまらせちゃいけなかったんです。けど、
少しはのんびりしようと思って、2ヶ月くらい田舎の実家に帰ってたんです。
田舎は長野のほうです。まわりを山に囲まれた谷底みたいな町で
何も面白いことはありません。俺ね、そこ抜け出したいと思って、
中学からずっとバスケ頑張ってきたんです。でもね、田舎だからこそというか、
たまに帰ると落ち着くんですよ。両親もその町にいます。
うちは分家でね、本家筋というのもあって、なんでも江戸時代まで庄屋を
やってた家柄なんだそうです。けど、戦後の農地改革で田んぼみんな

取られちゃって、その後の事業にも失敗し、今は金持ちということは
ありません。ただ、山だけは広く持ってるんです。
まあ、今どき山持っててもお金にはならないんですけど。
でね、その本家に信一さんって人がいて、長男で40代、
商工会の役員やってます。俺からみて又いとこにあたるのかな。
子どもの頃からよく知ってて、帰省してたときも毎日にのように
飲みに連れてってもらいました。でね、もうすぐ大学に戻ろうかってときに、
「明日、キノコとりにいかんか」って誘われたんです。
「いいすね、戻ったらキノコ鍋やりましょうよ」俺も軽い気持ちで
承知したんですが、まさかあんなことがあるとは・・・
翌朝、早いうちに信一さんの車で林道に入り、適当なとこに停めて

山に入っていきました。そこね、本家の持ち山なんです。山って、
下草刈ったり、木の枝落としたりしないとすぐダメになるんですよね。
本家のほうでも手放したいんだけど、買い手がいない。
信一さんは道も全部頭に入ってて、ずんずん山に入ってく。
俺、体力には自信あるのに、ついてくのがやっとでした。
で、ヒラタケとかマイタケを籠いっぱいにとって、さあ帰ろうかというときです。
急に寒くなって霧が出てきたんです。信一さんが「あ、こらいかんか」って
足を早め、ブナの森に入ったとき、「いかん、いかん、左見るなよ」
語気を強めて言ったんです。でもね、俺見ちゃったんです、
道から少し入った木にぶら下がってる影。「あ!」と叫ぶと、
信一さんはチッと舌を鳴らし、「お前、目に入れたんだな」って。

「しかたない、話しつけるか」そう言って立ち止まり、「見てもいいぞ」って。
それね、ぶら下がってたの俺だったんです。俺、身長は190cm近いんですけど、
その影もひょろ長くて、しかも首が長く伸びて縄がかかってました。
髪型もそのときの俺と同じで、ただ、着てるものは黒い作務衣みたいな
やつでした。信一さんは「すまんな、油断した。だが責任持って
 話つけるから心配すんな」そう言って、両手の指を複雑に組み合わせて
ピーッって鋭い音を立てたんです。「あれ、・・俺ですよね。どうなってんすか」
「いいから、動くな」信一さんは何度も指笛を鳴らし、
すると森の奥から何かが出てきたんです。不思議なもんでした。
人・・・の形はしてましたけど、身長は子どもくらい。三角の笠をかぶってて
顔はわからなかったです。ツギのあたった野良着を着てましたね。

それと、動きが変なんです。ぽんぽんと飛ぶように移動してくる。
霧のせいではっきりしなかったんですが、足が一本しかないように思えました。
「いいか、絶対ここ動くな」信一さんは手で俺を制して、
そいつのほうに近づいてって、森の中で何か話し始めたんです。
だいぶ離れてたので、何言ってるかはわかりませんでした。
信一さんはずいぶんへりくだった態度で何回も頭下げてたんですが、
やがて地面に手をついて土下座の格好で頭をすりつけて・・・そしたら、
そいつが「こここ、こお~~~」という甲高い声で叫んだんです。
すると、木にぶら下がってたもう一人の俺が、さわってもいないのに
ぶらんぶらん揺れだして。やんちゃな子どもがブランコ漕いでるようになって、
一番高いところで、ふっと消えたんです。

それと同時に、笠をかぶったやつもいなくなったんです。
信一さんは立ち上がり、手をパンパン払いながら戻ってきて、
「いや、びっくりしただろ。あれはくわしくは言えんが、山の者だ。
 昔からいる。この10年以上姿を見てなかったから、もうどっかにいったのかと
 思ってたが、まさかなあ、まだ出てくるとは」俺が口をはさもうとしたら、
「いや、聞くな、答えられんから。話はついた、大事ない。
 うちの家では常の祀りはかかしとらんから」そう言って、俺が背負ってた籠を
 降ろさせると、ブナの木の間において帰ってきたんです。
それから町中へ戻って、その晩も店に行って飲んだんですが、
信一さんが押し黙り気味だったんで、そのものが何かはとうとう聞けませんでした。
数日して、俺は大学に戻り、その後1年は何事もなかったんです。

でね、俺はBリーグのチームでデビューして、その試合に両親と田舎の友だち、
高校のときのチームメートとかに来てもらったんですよ。
活躍、というにはほど遠いゲーム内容だったけど、みんな喜んでくれて。
でも、招待してたのに信一さんは来なかったんです。
試合後、どうしたのか母親に聞いたら、足を悪くして入院してるって
ことでした。もともと糖尿病だったのが悪化したみたいで。
ああ、見舞いにいかなきゃと思ったけど、シーズン中は毎週2試合あって
どうにもならなかったんですよ。それから1ヶ月くらいして、
部屋の固定電話に夜、信一さんから連絡があったんです。
信一さんは暗い声で、俺が無沙汰なのをわびるのを制して、
「糖尿で右足切ることになった。まあ、しかたがない、

 病気は昔からだし、あんだけ酒のんだんだから、あきらめはついてる。
 義足つけてリハビリすればなんてことない。
 けどなあ、山で見たやつがいただろ。あいつな、あれだけ話したのに
 満足してねえんだ。もう一本ほしがってる」
「もう一本て?」 「・・・お前の足だよ」 「!!」 「だが、心配するな。
 俺の責任だからなんとかする。相打ちしてでもやるから」
わけがわからないまま、それで電話は切れ、あとは通じなかったんです。
実家に連絡したら、すぐに紙の人形が送られてきました。母親は、
神棚にそれを置くのがいいが、そんなのないだろうから、机の上にあげて、
毎日、酒と塩をそなえろって。やはりわけは教えてくれまでんでした。
俺ほらバスケ選手で、足は命でしょ。他に何のとりえもないから、

言われたとおりにしてたんです。遠征のときもプラスチックのケースに
入れて持ってってね。チームメイトには、「お前、何やってんだよ」って
からかわれました。ジンクスだと思われたんでしょうね。
試合のほうはレギュラーで出られるようになって、でも、足のこと
言われてたから、ケガだけは気をつけてました。で、また1ヶ月くらいして、
とんでもない知らせが入ったんです。義足でリハビリしてた信一さんが、
一人で山に入って、缶のガソリンをまいて山火事を起こしたって。
燃えた面積は広くなかったみたいですけど、信一さんは自分も火傷で
亡くなったんです。その夜ですね。葬式に出るために荷物をまとめてて、
ふっと紙人形を見たら、下のほうが切り欠くように
なくなってたんです。ハサミで切ったような鋭い切り口でした。