怖い話します(選集) -12ページ目

怖い話します(選集)

ここはまとめサイトではなく、話はすべて自分が書いたものです。
場所は都内某所にある怪談ルーム、そこに来た人たちが語った内容 す。

※ このブログでコメント等にはお返事できません。
お手間ですが、「怖い話します(本館)」のほうへおいでください。

車中泊

社会人になって数年目のあたり。ハイエースで写真を撮りにいくことが
あったんだよ。住んでるとこから近くの朝市とか、植物園なんかが多かった。

今みたいに自分のブログに載せるとかじゃなくて、地方新聞に投稿するんだ。
何回かは紙面に載ったこともあるよ。わりと健全な趣味だろ。
ハイエースは中古で買って、キャンピングカー登録ではないが、
サブバッテリーや寝台をつけて快適に車中泊ができるよう改造してたんだ。
当時は旅館とか使う金の余裕はなかったからな。
車を泊める場所はいろいろで、山中の林道脇のスペースとか、
港だったら使われてない感じの倉庫の横とか。
あとはぽつぽつとっできはじめていた道の駅の駐車場とかだった。
その気になれば一晩快適に過ごせそうなとこはけっこうあるんだよ。
 

で、ある道の駅の駐車場でのこと。季節は夏で、たしか山の巨木を撮りに
行ったときだよ。駐車場には7時過ぎに入ったが、もう店はすべて閉まってて、

トイレの非常灯以外の照明は消えていたから、誰もいなかったと思う。

駐車場に車はなく、駅の建物の近くに業務用らしい小型トラック一台が
あるだけだった。トイレや自販機までめんどうなく行けるあたりに駐車した。

暑い日で、まわりに民家も見えなかったからクーラーをかけててもよかったんだが、
窓を開けて寝ることにした。自作の網戸をつけてたんだよ。

買っておいた弁当を食べてたら9時を過ぎて、そしたら山に近いとこだから、
ぐっと涼しくなった。10時あたりには寝台に移動して寝た。

夜中、外で物音がするんで目が覚めた。時計を見ると午前2時少し前。
俺の場合、車中泊は何度経験しても熟睡はできなかったね。
やはり体が不測の事態に備えて警戒してるんだろう。

で、シェードを少しめくって外を見ると、駐車場の真ん中で焚き火してたんだよ。
10人までいかなかったと思うが、人がいて大きな焚き火を囲んでる。
車は・・・なかったと思うがよく見なかったよ。

焚き火の上に浮かんでいるものに気をとられたんだ。でかい目玉だよ。
それが焚き火の火がのびている上10mぐらいにぽっかりと浮かんでたんだ。

大きさは、たぶん直径3m以上はあったと思う。
白い眼球で瞳もあった。上のほうにはフサフサした髪の毛も。
・・・気球だと思うだろ。夜中に熱気球の会がなにかイベントでもやってるって。
俺もそう思いたかったけど、目玉の質感があまりに生物ぽかったんだ。
絶対にペイントしたものとかじゃない。
月の光を受けて目玉は地面と平行にくるくる回ってたが、
1m近い瞳の部分が俺の車を向いて止まった。

周りの人は黒くシルエットになってって服装とかわからなかったが、
こっちを指さしているような気がした。怒鳴り声も聞こえてきた。
で、目玉がふっと焚き火の上を離れてこっちへ向かって漂ってきたんだ。
「ここにいちゃいけない」そう思って運転席に行き、
フロントガラスのシェードを外してエンジンをかけ発進した。

うしろのシェードはとる余裕がなかったから、目玉が追ってきてるか
わからなかった。ただ車のルーフで何か異音がしてるような気はしたな。

駐車場を出て、街のほうへと県道を走ったよ。
20分ほど走ったら、車通りのある交差点に出たので路肩に車を停め外に出てみた。
目玉の姿は見えなかったがルーフから何か液体が垂れてる。
指で触ったら痛みがあって皮が剥けた。酸かなんかだったんだろうか。
後で見たら車のルーフは塗装がどろどろに溶けてた。


子どもの頃、小学生のときの話だけど、あんまり友だちがいなくてね。
裏の山に行って一人で遊んでることが多かった。
ほめられた話じゃないけど、そこで生き物を殺すんだよ。当時は面白いと思ってた。
6年生だったと思う。その時期はアリの巣穴を攻撃するのが楽しかった。
3時過ぎに家に戻ると、両親は勤め、祖父さんは畑に出てていないことが多かった。

いちおう宿題を済ませ、マッチとロウソク、台所漂白剤を薄めたのを入れた
小さいペットボトル、それから父親のライターガスのボンベ、爆竹なんかを
入れた箱を持って裏山に登るんだ。そこはけっこう高かったけど、
頂上まで行くわけじゃなし。登山道を5分も登ったあたりで
脇の薮に入ってアリの巣穴を探す。

なるべく大きな種類のアリのほうが殺しがいがあった。
そういうのは巣穴の入り口も大きいし。

気分を悪くしないでくれよ。見つけたら、まずライターガスを流し込むんだ。
あれって、先が細い管になってって押せばガスが出るだろ。
人差し指の先端を先に引っかけたまま、巣穴に下向きに吹き込むんだ。

ある程度入ったところでライターで火をつける。土の中だから、
派手な爆発とかはしないが、巣穴から青白い火が上がってアリがわらわら出てくる。

そいつらにはロウ攻撃だ。ロウソクのロウをぽたぽた落として固める。

熱では死なないんだが動けなくなるんだ。それから化学兵器を使う。
漂白剤の水だな。塩素はとても強力で水に触れたとたんアリは動かなくなるよ。

そうやってひとしきり出てきたアリを殺したところで、
最後に残りの漂白剤を巣穴に流し込む。そして爆竹を刺して爆破・・・
そんなことをやってたんだよ。

罪悪感とかあんまりなかったな。

アリが悪い宇宙人で、こっちはそれを攻撃する正義の部隊みたいに
考えてた気がする。あるときそれをやった翌日、学校でのこと。

その日は算数の宿題があって、授業の始めに先生に机の上に出すように言われた。
宿題とかはほとんどちゃんとやってたんだ。成績も悪くなかったよ。
でね、ノートのそこのページを開いこうとしたらくっついてた。

飲み物とかこぼしたんだろうかと思ったが、くっついた薄いノート用紙の
下が透けて見え、何か黒い字のようなのが大きく書かれているように思えた。

剥がせそうだったので、ノートの横から中に定規をさし入れて剥がした。
何かがぱらぱらっとこぼれた。大きめの山アリだったんだ。
ノートのページに10匹ほどのアリがはさまってつぶれてたんだ。
アリから出た体液全体が大きな一文字のようにも見えたが、わからなかったな。

飛ぶ
小学生のときの話。田舎に住んでたんだけど、畑作の盛んな地域だったんだ。
学校へ行くにも、道を通ることもできるけど畑の中をつっきって行くこともできた。
朝の登校時は集団登校だったけど、帰りは畑の中を通ることがよくあった。
そのほうが近かったんだよ。で、5月頃になると畑の中に棒を立てて、
そこにカラスの死骸を吊してるのを見るようになる。
でも、これは本物の死骸じゃなく模型なんだ。
昔はカラスを捕ることもできたけど、当時はもう野生動物を捕まえるのはダメで、

精巧な模型を買ってきて吊す。祖父さんに聞いたところだろ、
カラスは仲間の死骸をとても怖れる、だけど頭がいいから、
模型だと何日かすれば慣れて近づいてくるようになるそうだ。

本物の死骸ならもっと長く保つ。
これは臭いとかも関係してるのかもしれないが。

でね、毎年見てるから慣れて何とも思わなかったんだけどね。

ある日の帰り、秋頃だったと思うけど、畑の中に着物を着た
女の人がいたんだよ。当時は小学生でよくわからなかったけど、

今から考えると、20歳にはなってないんじゃないかくらいのきれいな人。
ただ、このあたりは子どものときの記憶が長い間に改変されているかもしれないよ。
着物といっても、うちの祖母さんが着ていた煮染めたよな野良着じゃないんだ。
振り袖とも違うきれいだけど重々しい着物。
裾を畑の土に引きずってて、ああ泥で汚れてしまうなと思ったのを覚えてる。
女の人は俺に気がつくとにっこり笑って空中に指を出した。
その指でカラスの模型を指してクイクイと動かしたんだよ。
そしたら糸でだらんと下がってたのが、グンと空に飛び上がった。
俺はあっけにとれれて目が離せなくなった。

糸がぴんと張った先にカラスがいるんだが、
模型は模型のままで羽根を広げたりはしていない。やがて糸が切れて、
模型は空に放り出されたようになってかなり離れたところに落ちた。

「あははははは」という笑い声がして、女の人のいたあたりを見ると、
もう姿はなくなってたんだよ。消えてしまったんだ。

で、カラスの落ちたトウモロコシ畑に入って探したらすぐに見つかった。
ただの何の変哲もない糸をつけた模型だったよ。

不思議だと思って家に戻って祖父さんに話した。祖父さんは嘘だろう
とは言わず少し考え込んでいたが、その道は通るなと注意された。

それで、怖いとは思わなかったけど、そこはしばらく通らなかったんだよ。
冬に入って作物が大根とネギくらいになり、畑の見晴らしがよくなった頃、

あのカラスがあったところは、やはり害鳥除けの目玉模様の風船に代わってたんだよ。
 
 


 

 
 
 
 
 

今晩は、Bと言います。仕事は星占いをやってるんですが、
それだけだと食っていけないので、歴史雑誌なんかに雑文を書いてます。
あとは趣味でオカルトの研究をしてるんですけど、今からする話は、
そっちのほうに関係があるんです。あの、コンビニDVDってありますよね。
コンビニでは見かけるけど、まともな本屋じゃ見つけるのが難しい。
グラドルとかが多いけど、中には心霊系もあります。ただ、心霊のDVDが出るのは、
ほぼお盆期間限定ですね。え、そんなのインチキだろうって?
・・・まあそうです。CGで雑な幽霊をつくって、心霊スポットのシーンに
埋め込めばいっちょうあがり。そういうのがほとんどなんですけど、
そんな中にもランクってのがあるんですよ。まずね、ネットで拾える
映像を集めて編集したもの。これはさすがに買う価値ないです。

次が、いちおうロケをして自分らで映像を撮ってくるんだけど、
行くのが近場の有名心霊スポットってやつ。例えば、東京だと、八王子城とか
千駄ヶ谷トンネルとか、関西だと深泥ヶ池とかね。さすがにつまんないって
わかりますよね。あと、新人の女性タレントが出てるやつもダメです。
その娘を売り出すためのプロモーションが目的になってたりして、
それだと心霊方面は期待できないのはわかるでしょ。
下手クソな演技を見せられるだけです。僕が唯一買う価値があるかなって思うのは、
編集部が自分らで調べた、人に知られてない心霊スポットでロケしてきたやつ。
そういうのは資料的な意味もあって、980円くらいなら買うようにしてるんです。
で、去年の夏ですね。その手のコンビニDVDを買いました。
そこそこ大手の出版社で出したものなので、それなりに信用できるかと思って。

全部で50分くらいで、4ヶ所の心霊スポット映像が入ってました。
なかなか面白かったですけど、最後の映像がパソコンで再生できなかったんです。
それは関東の〇〇県にある、バブルのころにできた廃遊園地が舞台でした。
何度題名をクリックしても、映像が開かないんですよ。
最初はこっちのパソコンが調子悪いのかと思ったけど、そうでもない。
で、どうしたかっていうと、そこの出版社に電話してみたんです。
「あ、どうも、コンビニで売ってた○○ってDVDを買ったんですけど、
 中に一部、再生できない映像があるんですが」 「あ、すみません。
 それ、映像制作の会社に外注したものなんです。お手数ですが、こちらに
 連絡してもらえますか」というやりとりがあって、改めてかけ直しました。
しばらく呼び出し音があって、あきらめて切ろうとしたときに相手が出ました。

「あの、○○ってDVD買った者なんですけど、最後の話が再生できなくて」
「・・・すみませんでした。こちらの手違いです。お手数ですけど、
 こちらあてに現品を送っていただければ代金をお返しします」
「え、返金してるんだ。そら大変だね。再生できるやつは送ってもらえないの?」
「それがですね、第4話は、こっちの元映像も再生できなくなっちゃってるんです」
「それ、パソコンに取り込んだ映像ってこと?」 「カメラもパソコンもどっちもです」
「へー、興味深いね。返金はいらないから、話聞かせてよ」 「いいですけど」 
「あの心霊スポットって、○○パークだよね」 「そうです」 「実際に行った?」
「はい、行きました。4時間くらいロケしてきましたよ」 「何が映ってたの?」
「それが、最後のほうに撮ったコーヒーカップ、あの乗るやつですけど、
 その中にたくさんの蛇に見えるものが映ってたんです」 「蛇?」

「いや、本物の蛇ではないですけど、なんというか、光の束みたいなのが無数に集まって
 からみあってる映像です」 「へええ珍しいね。そっちの編集部がつくったわけ?」
「いやそれが・・・ぶっちゃけた話をすれば、前の3つの話はこちらでCGを入れたんですが、
 それだけは本物というか、何の加工もしてないんです」 「ますます興味深い。
 そのカップの中には何もなかったんだよね」 「いや、カップの中はカメラマンしか
 見てないんです」 「ははあ、じゃそのカメラマンの人に話聞かせてもらえるかな。
 じつはね、こっちも同業者みたいなものなんです。会えますかね?」
「うーん、それがねえ、カメラは木山さんって言うんですけど、ここ1週間くらい
 連絡がつかないんです」 「え、携帯にも?」 「はい」
「それ、失踪ってこと?」 「いや、あの人、昔からお金が入ると、ふらっと海外に
 行ったりするし、連絡がつかないのもよくあるんで、失踪とは考えてないです。

 ただ、来週から次の撮影が入ってるんで、連絡取るのは続けます」
長々と説明しましたけど、こんな話をしたんです。ねえ、がぜん興味がわいて
きますよね。それで、次の土日をかけて関東遠征に行こうと考えたんです。
ただ、その光の束みたいなのは、単なる撮影ミスの可能性が高いだろうし、
無駄足になってもいいように、仲間を誘ったんです。僕と同じ共同事務所の
Yってイラストレーターです。この話をして、土日ヒマかって聞いたら、
ぜひ行きたいって言ったので、新幹線で大宮まで行き、そこでレンタカーを借りて、
その県に入ったのが3時過ぎくらいでした。それからさらに1時間半くらい、
途中道に迷ったりしながら、なんとか廃遊園地を見つけたんです。かなりの郊外に
あるんで、僕ら以外の車はなかったです。時間は5時近くになってましたが、
9月なのでまだ1時間は明るいだろうと思いました。

さすがに、人のいない遊園地は不気味でしたね。とにかく、鉄製のものはみな赤く
錆びてるんですよ。それが雨で流れて血みたいに見える。僕がビデオ、
Yがデジカメでそこらを撮りながら進んでったら、コーヒーカップの遊具は
入り口からわりと近いとこにありました。カップは全部で8つ。
この遊園地も、ありしころには両親と幼児がこのカップに乗って、なんて考えました。
それぞれ全部中を撮りました。何もない・・・いや、一番手前のカップに蛇の死骸・・・
だと思ったら、脱皮した抜殻が一つ入ってました。まあでも、遊園地内に植物が
侵入してきて、そこらじゅう草ぼうぼうでしたから、最初に見つけたときは
ぎょっとしたものの、不思議なことじゃないとも考えました。
でね、ここ、大事なとこなんですけど、僕らは画像も映像も全部モニターで見たんです。
光の束なんて映ってなかったし、もちろんそれ以外のものも。

1時間と少し遊園地にいて、コーヒーカップ以外も撮影しましたが、
それにも変なものは映ってなかったはずなんです。それから、僕らは車を飛ばして
東京まで戻り、一杯やってホテルにチェックイン。翌日は半日東京で遊んで、
こっちに戻ってきたんです。それでね、1日おいた火曜日の午後、共同事務所で
またYといっしょに遊園地の画像を見たんです。そしたら、ビデオ映像のほうです。
カップの一個の中に、あんまり明るくはない光の束・・・うまく説明できないんですが、
それがDVDの制作会社の人が言ってたとおりに、弱く光りながら何百本もからみあって
動いてる。それ、位置からして、あの蛇の抜殻があったカップだと思いました。
僕とYが同時に「あ!」と言ったとき、パソコンがフリーズしたんです。
まあ、マックは直りましたけど、動画のファイルは開けなくなってしまって。
はい、DVDと同じ現象が起きたってことです。

それで、今度は写真のほうを見たんです。そしたら・・・2枚目のカップの底に、
土下座するようにして倒れてる人がいたんですよ。ありえないでしょ。
そんなのがあったら、絶対にその場で気がつくはずです。
その人はザックを背負ってて、体がぐっしょり濡れてるように見え、
さらに上に草がかかってたんです。でね、この画像のほうは消えなかったんです。
今も持ってます。弱りましたよ、だって生きてるように見えないんですから。
Yと相談した結果、向こうの県の警察に通報しました。
説明に困ったんですが、「心霊スポットの撮影に行ってあちこち写真を撮った。
 そのときは気づかなかったけど、帰ってきてから見たら人が写ってた」
こう話したんです。大きくは事実と違わないですよね。で、念のために向こうの
警察が廃遊園地を捜索したら、コーピーカップの中で実際に人が死んでたんです。

もうわかりますよね。DVDの撮影をした木山っていうカメラマンでした。
死因は睡眠薬の中毒。木山さんのモバイルパソコンに、意味不明ながらも
遺書らしきものがあり、自殺って結論になったんです。僕とYは、地元の警察から
話を聞かれ、写真も見せて警察はコピーして持っていきました。
疑われてた感じはなかったです。どうやら木山さんには自殺の
動機もあったみたいで。こんな話なんですが、まったく意味がわからないですよね。
・・・でねえ、後日談とはまた違うと思うんですけど・・・
木山さんの死体画像を見つけたときから1週間後くらいですか。僕とYで、
壊れた映像ファイルをあれこれ いじってたんです。なんとか回復できないかと思って。
そしたらパソコンの上にふわっと、蛇の抜殻が落ちてきたんです。
さすがにありえないでしょう! 僕らの事務所は大阪の街中にあるのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はこのお題です。櫛は男性も使うでしょうが、
どっちかというと女性のイメージが強い日用品です。
今は男性でポマードで髪を固める人が少ないせいもあるでしょうね。
自分はパーマをかけていてブラシ派で、櫛を持ち歩いたりはしてません。

櫛の語源については諸説あるのですが、
櫛と串が同じというのは確かでしょう。どちらも尖端が尖った棒です。
古来、そういうものには霊力があると信じられていたようです。
神道で用いる玉串なんかがそうですよね。




「奇し くし(不思議だ)」という言葉とも通じますが、
先にこちらの意味があったかどうかはよくわかりません。しかし、
不思議な呪力を持つものと考えられていたのは
間違いのないところです。

前に取り上げた箒は、考古学的には古墳時代まで出土は
ありませんでしたが、櫛は縄文時代にはすでに存在していました。
まあ、縄文人の髪は長く、リンスや整髪料もなかったでしょうから、
現代人よりも必要な物だったかもしれません。

さまざまな形状のものがあるのですが、下の画像は、
細く削った尖った棒をヒモで何重にもからげ、
その上に赤漆を塗って固定してあるようです。
これは割に平べったい形で、髪をくしけずることができそうですが、

細長い形のものは、髪に挿してまとめる かんざしとして
使われていたようです。装飾品の意味もあったのでしょう。
『古事記』や『日本書紀』を読むと、
古代の櫛の呪力に関した話がいくつも出てきます。

縄文櫛


一番有名なのはイザナギ、イザナミの黄泉返りの部分でしょうか。
死者の国まで妻のイザナミを迎えに行ったイザナギは、
腐敗したその姿を怖れて逃げるが、イザナミは黄泉醜女など
眷属をつれて追いかけてくる。なんとゾンビ映画の元祖じゃないですか。

縄文時代のかんざし(櫛)


イザナギは、髪飾りから生まれた葡萄、櫛から生まれた筍、
黄泉の境に生えていた桃の実を投げつけ、なんとかこの世まで
戻ってきます。この櫛は竹製のものだったんでしょう。
葡萄はともかく、筍、桃、それぞれに強い退魔の力を持つものとして、
現代でも尊重されていますよね。

あと、クシナダヒメの話もよく知られています。『古事記』では
櫛名田比売、『日本書紀』では奇稲田姫と漢字表記され、
ここでも、櫛=奇し が同じ意味として考えられていたようです。
スサノオは、八岐の大蛇とあいまみえる前に、
姫を呪法で櫛に変え、自分の髪に挿して戦うことになります。

でもこれ、不思議な話で、なぜスサノオは姫をその両親と同じように
安全な場所に隠しておかなかったのでしょうか。
この疑問は当然持たれていまして、
民俗学的には「妹の力」として説明されています。

っっdf

戦いの場において、近親者である姉妹、あるいは恋人や妻の持ち物を
身につけることにより、男性の力が増すという考え方ですね。
これは近代まで受け継がれ、太平洋戦争のころも、母親や姉妹など、
近親の女性からやはり髪などを受け取って出征したという話もありますし、
博打場で女性の陰毛を持っていればツクというのもその類でしょう。

また、姫を他のものではなく櫛に変えたのは、
やはり櫛の呪力を信じたんでしょうね。
櫛は魔的なものに対抗する力が強いと考えられており、
イザナギ、イザナミの話からつながっているようです。

次は、ヤマトタケルの妻であったオトタチバナヒメ(弟橘媛)です。
ヤマトタケルの東征の途上、三浦半島ー房総半島間の走水海において、
タケルの暴言により海神の怒りを買って暴風雨になったとき、
船に乗っていた后のオトタチバナヒメが海に身を投げてその怒りを静める、

というお話です。前に少し書きましたが、この走水海に面した
洞窟遺跡では、刃物で解体されたとみられる人骨が出土しており、
なんらかの生贄的な儀式があったのではないかと推測されています。
その事実がこの記述に反映されているのかもしれません。

櫛はどこで出てくるかというと、海に沈んだ姫が持っていた櫛は、
7日後に海岸に流れ着き、その櫛を埋めて御陵を作り治めたのが、
当地の橘樹神社(川崎市)の由来とされています。
橘の木で作られた櫛だったのかはわかりませんが、
海神は姫の身体は受け取ったものの、
呪力を持つ櫛は返してよこしたということなんでしょう。
関連記事 『怖い古代史2(弟橘姫命)』

さてさて、こういう話をしてるときりがないのでまとめますが、
櫛は「九四」、つまり「苦死」に通ずるということで、
いろいろと扱うさいの作法があるようです。
苦死と関連したのはそれほど古い話ではないんでしょうが、

・櫛が折れると悪いことが起きる。その時はすぐ清水で洗うとよい
・櫛は落ちていても拾わない、苦を拾うに通ずるから
 もし拾う場合は一回足で踏んでから
・櫛の歯が欠けたものを男性が贈られた場合は、
 愛想が尽きたという女性からのメッセージ
・櫛を人に贈らない、もし贈る場合はかんざしと言う
などがあるようです。  関連記事 『身近な呪具(箒)』

弟橘媛

 

 

 

 

 

無職 木村晃吉さんの話
じゃあ話していきます。わたしは、3年前にJRを退職しまして、
現在は無職というか、隠居の身です。一軒家に妻と2人で暮らして
おります。10日ばかり前のことですね。妻が、家の裏をノラ猫が
通ってオシッコをするので何とかならないかって訴えまして。
家の裏というのは、わたしの家はブロック塀で四方を囲んでて、
建物と塀の間に、人ひとりが通れるくらいのスペースがあるんです。
雑草が生えないように、下はコンクリで固めてます。
猫くらいいいじゃないかと思いましたが、どうせヒマですので、
ホームセンターに行って猫よけシートというのを買ってきました。
ほら、プラスチック製のトゲがたくさんついてて、猫が嫌がるって
やつです。裏に回りまして、通路の幅に切ったやつを

敷いていったんです。正直、どれほどの効果があるかはわかりません
でしたが、妻に言われて何もしないわけにもいかなくて。
それでね、家を建てたのはもう40年も前なんですが、
土地がもともとヤチと言われたところで、湿気が多かったんです。
そこで、少し床下を高くしまして、あちこちに換気口をつくって
湿気を逃すようにしてたんですよ。シートを敷いていく途中の、
その換気口の一つが外れてて、ふとね、床下はどうなってるだろうと、
のぞき込んでみたんです。そしたら、その穴から30cmくらい奥に
何かがある。四角いものです。まあ、ほっとけばよかったんですが、
気になったので、中に戻って懐中電灯を持ってきて照らしてみたんです。
そしたら、下の土が両手ですくったくらい盛り上がってて、

その上に板が立ててあり、何か書いてある。板は10cmないくらい
でしたね。はうような姿勢になり、手を伸ばしてつかんでみたら、
板はけっこう深く土にささってましたが、取り出すことができました。
たぶんカマボコの板かなんかです。そこにマジックで字が書いてまして、
「○○○の墓」。「〇〇○」の部分は漢字3文字なんだけど、
そこは埋まってなかったので、かすれてしまって読めなかったんです。
土の中にあった「の墓」の部分はわかりました。何だこれ?
子どもの字だと思いました。わたしには2人息子がいたんですが、
一人は中2のときに踏切事故で亡くなっているんです。
20年くらい前のことです。・・・夜中に家を抜け出して踏切で
電車に跳ねられた。当時はわたしも妻もショックでしたよ。

ましてほら、わたしはJR職員でしたから。警察が事情を聞きに来まして、
自殺じゃないかって見てたみたいですが、家には遺書もないし、
自殺する動機なんてなかったはずです。その週末、はじめて野球部の
レギュラーとして試合に出るって張り切ってたんですよ。
結局、事故ということになりましたが、夜中に抜け出した理由も
わかりません。そんなことをする子じゃなかったんです。
それに・・・車が立ち往生したってわけじゃなく、息子は歩きで、
電車が通る直前に飛び込まないと、轢かれるなんてありえないですよね。
いまだに釈然としてません。それでね、亡くなったのは2人の息子の
兄のほうです。弟は現在、30歳過ぎで、就職して家庭を持ってます。
で、その板を見たとき、息子のどちらかが、子どもの頃に小動物でも

埋めたんだろうと思ったんです。縁日で買ったカメとかいろいろ
飼ってましたからね。ただ、気にはなりました、板になんて書いてあるのか。
それで、夜になって息子のところに電話してみたんです。
床下に何かの墓みたいなのがあって、板が立ってた。
何か漢字で墓って書いてあるが、お前おぼえてるか?って。
そしたら息子は少し考えてましたが、突然「ああっ!」って言いまして。
「それね、兄さんだと思う。列車事故の少し前に、小人の中国人を
 殺しちゃった、どうしようって言ってたんだよ。ずっと忘れてたけど、
 今言われて思い出した。兄ちゃん、すごいあせってて、
 殺したのはわざとじゃない、遊びのつもりだった。やつらの仲間に
 知られたら仕返しされる、みたいなことを言ってた記憶がある」

こんな話をしたんです。でもねえ、小人の中国人なんているわけがない
じゃないですか。妙な話だなあと思いました。むろん、そのことが息子の
死と関係があるとは考えなかったんですが・・・気にはなりますよね。
それで翌日、土盛りを掘り返してみたんです。手が届かないのが
難儀でしたが、スコップを使って何度か土をすくうと、赤いものが
出てきたんです。古い布で、かなり腐ってましたが、暗い色調の赤、黄、
緑の中国服のミニチュアのようなもの。でね、その下に骨があったんです。
そうですね、全長が7~8cmくらいでしょうか。小人の骨?
いや、それはわかりません。たしかに人間の骨にはよく似てましたが、
頭蓋骨がなかったんです。いや、どうしたもんか困ってます。
警察に持っていっても、トカゲとかリスの骨だと思われるんじゃないですか。

食品卸会社勤務 木村昇輝さんの話
はい、親父から電話がありまして、兄が亡くなった当時のことを思い出し
ましたよ。僕と兄は一つ違いで、中学の同じ野球部だったんです。
僕と違って兄は勉強ができたし、野球も上手かったんです。
2年生なのにショートでレギュラーになるって喜んでた矢先にあの
事故が起きたんです。いや、もちろん大ショックでした。
自殺する理由なんて思いつかない。ただね、親父から電話があって
当時のことを思い出したんです。あのとき兄に「兄ちゃん、レギュラーすごいね、
 ヒット打ってよ」とかしゃべったら、兄は笑って「小人と取り引きしたんだ」
みたいなことを言って。もちろん冗談だと思ってましたよ。
それから2日後の夜、兄が僕の部屋に来て「板ないか?」って聞いてきたんです。
かなりあせった様子をしてました。「どうしたの?」って聞くと、

「間違って小人を殺してしまった。あいつら仲間がいるから死体を埋めて
 祀らないと」みたいなことを言って。冗談の続きにしては真剣な顔でした。
大きな板じゃなくてもいいみたいだったので、「母ちゃんが台所にとってある
 カマボコの板じゃダメ?」って言ったら、「ああそうか」って。
それで9時ころかな、僕の部屋に来て「埋めてくるから、母ちゃんが来たら
 庭にいるって言え」って言って出てったんです。そのときのことを
よく思い出してみたんですが、手に新聞紙でぐるぐる巻きにしたものを
持ってた気がします。いや、何かはわからないけど、端から赤いものが
出てたような気も。なにぶん20年も前のことですからね、たしかに
そうだったとは言えません。その次の日の夜です。夜中に一人で家を出た兄が、
踏切事故に遭ったのは。いや、どういうことなのかは見当もつきません。

主婦 木村陽子さんの話
はい、主人が「骨が埋まってた」って言って、小さいバケツに入れたのを
持ってきて私に見せたんですよ。いえ、気味が悪いので、ちらっと見ただけですが、
ガイコツのおもちゃってあるじゃないですか。ヒモで吊るして操るやつ。
あれにそっくりなものが赤い布といっしょに入ってました。
ネズミとか、それくらいの大きさのものです。それで、「そんなもの捨てちゃい
 なさいよ。家の中に入れないでね」そう言いました。
主人は「これな、○○が埋めたらしいんだよ。踏切で亡くなる直前に」と。
はい、さきほど主人が話したように、○○は、私どもの亡くなった長男です。
このときは、「この人、事故から何十年もたって、何言ってるんだろう」
って思いました。もしかしてボケが始まったんじゃないかとも。
主人は、「警察とかに持っていっても不審がられるだけだろうから、

 △△大で調べてもらおうと思う」△△大は主人が出た地元の国立大学で、
家からほど近いとこにあり、主人とは学部が違いますが、考古学ではけっこう
有名らしいんです。それで、そのバケツは生ゴミバケツのフタを流用して、
外の芝生の上の物干し台の近くに置いてあったんです。翌日ですね、
私が洗濯物を干そうと思ってそこへ行ったら、フタが開いて横に落ちてました。
拾って、バケツの中を見ないようにしてもとにもどそうとしたら、
中からばっと何かが飛び出したんです。驚いて座り込んでしまいました。
それ、赤と黄色の中国服のようなのを着た小人だと思ったんです、それも2人。
小人はそれぞれ小脇に白い束を抱えてて、あっという間に私の横を走り抜け、
家の裏のほうへ回って見えなくなってしまいました。今でも信じられません。

おそるおそるバケツの中を見たら、あの骨はすっかりなくなってたんです。
 
 


 

 
 
 
 
 
 

バイト先の後輩から聞いた、そいつが小学校5年生のときの話。
その頃はまだいいとこの坊っちゃんで、いわゆるお受験を目指して
有名塾に通ってたんだと。週2回は夜で、母親が送り迎えする。

ただし土曜日のいわゆる土曜特訓ってやつは、
日中だし大丈夫だろうってことで、母親が趣味サークルなんかに
出かけて都合が悪いときには、電車で塾通いをしてたという。
家から駅まで10分、電車は乗り換えなしの三駅で、
降りたら駅前すぐに有名塾がある。携帯も普及してたし、
まあ男の子なら特に心配もなさそうではある。こっからはそいつの話。


「塾の帰り、午後の4時ころですね。一人で電車に乗ってたんです。
土曜日だし、そんな時間帯だから電車はガラガラに近くて、

座って塾の宿題を出してみてたんです。またこんなにあるのかって。
そしたら、次の駅で女の人が乗ってきまして。それが、季節はまだ
夏の終わりごろなのに、厚手のコートを着てマスクをしてるんです。


今だったらインフルエンザやら何やらでマスクしてる人もよく見かけるけど、

そんときは珍しく思いましたね。もちろん最初から注目してた
わけじゃないです。だけど席はほとんど空いてるのに、

両手でつり革をつたわるようにして俺の真ん前に立ったんすよ。

髪がストレートで長くて腰のあたりまであるし、不気味な人だなーと思いました。
いやいや、口裂け女とは思いませんでした。それって俺が生まれる前の話でしょ。

当時の小学生の間ではそんな話題は流行ってなかったです。そんときもまだ、
たまたま俺の前にきたんだろうくらいにしか思ってなかったんですが、

・・・それが下を向いてたら、上でモグモグした声がするんです。
その女の人がしゃべってるんです。それもこっち見ないで、車窓のほうに向かって。
「ぼうや、ぼうや、口裂け女って知ってる」こう繰り返してるんです。
 

ぎょっとして女の人のほうを見ました。口裂け女のことは、
知識として知ってました。図書館の妖怪図鑑にも載ってましたし。

んでも、俺に話しかけてるとは思わなかったんですよ。

女の人は相変わらず外を見たまま、「ガキ、お前に話してるんだよ。
 人の話ちゃんと聞けよ。口裂け女って知ってるか?」こう強い口調で言いました。

マスクごしだし、他の乗客に聞こえるような声じゃないんです。
「お前だよガキ、あたしは口裂け女なんだからね」
これで怖くなって、また下を向いたんです。

そしたら「ガキ、下見るんじゃない。こっち見ろ。見ないと殺すぞ」そう言って、
俺の髪のてっぺんをひとつまみ片手で握って、ぐんと持ち上げたんです。

・・・こんときに大声を出せばよかったんでしょうが、
そのときはできなかったんです。それに電車の中には、
離れたとこにじいさんとか数人がいるくらいで。

女の人は「目つぶるなよガキ、ちゃんと見ろよ」俺の髪を引っぱりあげたまま、
横顔が俺のほうに向くように、顔をかしげたんです。
んで、つり革からもう片方の手を離して両足を踏んばって立ち、
マスクの片方のヒモを外し、ガーゼを手で押さえたまま、
少しずつめくり上げていったんです。

するとガーゼの内側が真っ赤で、その見えるほうの頬に
大きな穴が開いてて口とつながってたんです。
穴はぶさぶさに赤黒い肉が垂れてて、穴から上下の歯が歯茎まで見えました。
そのときにはもう半泣き状態ですよ。
「ガキ、どうだ怖いかガキ、目つぶったら殺すからな」
こう言われても怖くて目をつぶってしまいました。

すると額になにかネチャッとしたものを貼られました。「ギャハハハハ、
口裂け女なんていると思うのかバカガキ、臆病なとこは親そっくりだな」
女の人は電車中に聞こえるような声で笑って、「いいかクソガキ、
 このことを親に言ったらお前を殺すぞ、お前の親もみんな殺す」


こう捨て台詞を残して「ギャハハハ」と笑いながら離れていったんです。
ちょうど駅に着いたところで、そのまま降りていったんだと思います。

俺はもう足もガクガクに震えてて、泣きながら額につけられたものを
剥がしてみたんです。そしたらスライムみたいなのでできた
ジョークおもちゃかなんかで、精巧に作られた上下の歯もついてました。

アメリカでハロウインのゾンビメイクに使うやつかもしれない、

これはだいぶ後で思い当たりました。気持ち悪かったんで
座席の下に丸めて捨てましたよ。・・・親に言うかどうかは、
子どもながらに迷ったんですが、けっきょく言いませんでした。

殺しにこられたら大変だと思って。

そしたらだれにも言わなかったのに殺しにきたんです。1ヶ月くらい後の深夜に。
家の玄関に軽自動車でつっこんで壊し、包丁を持って入ってきたんです。
大変でした。母親は片腕と胸に全治1ヶ月以上の切り傷を受けたし、
父親も危ないとこでしたが、音に気づいた近所の人が通報してくれて、
女は踏み込んできた警官にとり押さえられたんです。
このときは俺も起き出していて、女の顔も見ました。厚化粧してましたが、
傷なんてなかったすよ。・・・親父の浮気相手でした。
狂ってたんですね。刑務所にはいかずそのまま病院送りになりました。

その後は一家離散です。両親は離婚して、
母親がノイローゼになったんで、一人っ子の俺は父親のほうに引き取られました。
父親は会社にいられなくなって、もちろんお受験なんてとんでもない話で、
父親の実家のある地方の公立の中学から工業高校を卒業して、

そのまま逃げるようにこっちに出てきたんです。妖怪の口裂け女も怖いですが、
現実はそんなもんじゃないんだと思わせられました。
心が裂けた人間のほうがずっと怖ろしいです」