車中泊
今みたいに自分のブログに載せるとかじゃなくて、地方新聞に投稿するんだ。
何回かは紙面に載ったこともあるよ。わりと健全な趣味だろ。
ハイエースは中古で買って、キャンピングカー登録ではないが、
サブバッテリーや寝台をつけて快適に車中泊ができるよう改造してたんだ。
当時は旅館とか使う金の余裕はなかったからな。
車を泊める場所はいろいろで、山中の林道脇のスペースとか、
港だったら使われてない感じの倉庫の横とか。
あとはぽつぽつとっできはじめていた道の駅の駐車場とかだった。
その気になれば一晩快適に過ごせそうなとこはけっこうあるんだよ。
トイレの非常灯以外の照明は消えていたから、誰もいなかったと思う。
暑い日で、まわりに民家も見えなかったからクーラーをかけててもよかったんだが、
窓を開けて寝ることにした。自作の網戸をつけてたんだよ。
夜中、外で物音がするんで目が覚めた。時計を見ると午前2時少し前。
俺の場合、車中泊は何度経験しても熟睡はできなかったね。
やはり体が不測の事態に備えて警戒してるんだろう。
で、シェードを少しめくって外を見ると、駐車場の真ん中で焚き火してたんだよ。
10人までいかなかったと思うが、人がいて大きな焚き火を囲んでる。
車は・・・なかったと思うがよく見なかったよ。
大きさは、たぶん直径3m以上はあったと思う。
白い眼球で瞳もあった。上のほうにはフサフサした髪の毛も。
・・・気球だと思うだろ。夜中に熱気球の会がなにかイベントでもやってるって。
俺もそう思いたかったけど、目玉の質感があまりに生物ぽかったんだ。
絶対にペイントしたものとかじゃない。
月の光を受けて目玉は地面と平行にくるくる回ってたが、
1m近い瞳の部分が俺の車を向いて止まった。
周りの人は黒くシルエットになってって服装とかわからなかったが、
こっちを指さしているような気がした。怒鳴り声も聞こえてきた。
で、目玉がふっと焚き火の上を離れてこっちへ向かって漂ってきたんだ。
「ここにいちゃいけない」そう思って運転席に行き、
フロントガラスのシェードを外してエンジンをかけ発進した。
駐車場を出て、街のほうへと県道を走ったよ。
20分ほど走ったら、車通りのある交差点に出たので路肩に車を停め外に出てみた。
目玉の姿は見えなかったがルーフから何か液体が垂れてる。
指で触ったら痛みがあって皮が剥けた。酸かなんかだったんだろうか。
後で見たら車のルーフは塗装がどろどろに溶けてた。
蟻
子どもの頃、小学生のときの話だけど、あんまり友だちがいなくてね。
裏の山に行って一人で遊んでることが多かった。
ほめられた話じゃないけど、そこで生き物を殺すんだよ。当時は面白いと思ってた。
6年生だったと思う。その時期はアリの巣穴を攻撃するのが楽しかった。
3時過ぎに家に戻ると、両親は勤め、祖父さんは畑に出てていないことが多かった。
なるべく大きな種類のアリのほうが殺しがいがあった。
そういうのは巣穴の入り口も大きいし。
気分を悪くしないでくれよ。見つけたら、まずライターガスを流し込むんだ。
あれって、先が細い管になってって押せばガスが出るだろ。
人差し指の先端を先に引っかけたまま、巣穴に下向きに吹き込むんだ。
そいつらにはロウ攻撃だ。ロウソクのロウをぽたぽた落として固める。
そうやってひとしきり出てきたアリを殺したところで、
最後に残りの漂白剤を巣穴に流し込む。そして爆竹を刺して爆破・・・
そんなことをやってたんだよ。
罪悪感とかあんまりなかったな。
その日は算数の宿題があって、授業の始めに先生に机の上に出すように言われた。
宿題とかはほとんどちゃんとやってたんだ。成績も悪くなかったよ。
でね、ノートのそこのページを開いこうとしたらくっついてた。
剥がせそうだったので、ノートの横から中に定規をさし入れて剥がした。
何かがぱらぱらっとこぼれた。大きめの山アリだったんだ。
ノートのページに10匹ほどのアリがはさまってつぶれてたんだ。
アリから出た体液全体が大きな一文字のようにも見えたが、わからなかったな。
飛ぶ
小学生のときの話。田舎に住んでたんだけど、畑作の盛んな地域だったんだ。
学校へ行くにも、道を通ることもできるけど畑の中をつっきって行くこともできた。
朝の登校時は集団登校だったけど、帰りは畑の中を通ることがよくあった。
そのほうが近かったんだよ。で、5月頃になると畑の中に棒を立てて、
そこにカラスの死骸を吊してるのを見るようになる。
でも、これは本物の死骸じゃなく模型なんだ。
昔はカラスを捕ることもできたけど、当時はもう野生動物を捕まえるのはダメで、
本物の死骸ならもっと長く保つ。
これは臭いとかも関係してるのかもしれないが。
でね、毎年見てるから慣れて何とも思わなかったんだけどね。
今から考えると、20歳にはなってないんじゃないかくらいのきれいな人。
ただ、このあたりは子どものときの記憶が長い間に改変されているかもしれないよ。
着物といっても、うちの祖母さんが着ていた煮染めたよな野良着じゃないんだ。
振り袖とも違うきれいだけど重々しい着物。
裾を畑の土に引きずってて、ああ泥で汚れてしまうなと思ったのを覚えてる。
女の人は俺に気がつくとにっこり笑って空中に指を出した。
その指でカラスの模型を指してクイクイと動かしたんだよ。
そしたら糸でだらんと下がってたのが、グンと空に飛び上がった。
俺はあっけにとれれて目が離せなくなった。
糸がぴんと張った先にカラスがいるんだが、
模型は模型のままで羽根を広げたりはしていない。やがて糸が切れて、
模型は空に放り出されたようになってかなり離れたところに落ちた。
で、カラスの落ちたトウモロコシ畑に入って探したらすぐに見つかった。
ただの何の変哲もない糸をつけた模型だったよ。
それで、怖いとは思わなかったけど、そこはしばらく通らなかったんだよ。
冬に入って作物が大根とネギくらいになり、畑の見晴らしがよくなった頃、








