怖い話します(選集) -11ページ目

怖い話します(選集)

ここはまとめサイトではなく、話はすべて自分が書いたものです。
場所は都内某所にある怪談ルーム、そこに来た人たちが語った内容 す。

※ このブログでコメント等にはお返事できません。
お手間ですが、「怖い話します(本館)」のほうへおいでください。

高校2年生です。サッカー部に入ってました。2ヶ月前、部の大学生コーチの
山田さんの車で、休みの日にドライブに連れてってもらったんです。
行ったのは、俺とあと2年の部員2人です。行った先は○○県にある
廃墟になったテーマパークでした。山田さんがそういうの好きなんですよ。
それに、廃墟ならお金かからないですからね。車で2時間くらいでした。
日曜でしたけど、俺ら以外は誰も来てなかったです。
中へは、柵をこえて簡単に入れました。つぶれてから10年くらいになるの
かなあ。撤去する気もないらしくて、観覧車もコーヒーカップも
そのまま残ってました。山田さんはあちこちバシバシ写真を撮ってましたね。
ぐるっとひと回りしましたけど、おかしなことはなかったです。ただ、
その日は天気よかったですが、人のいない遊園地の廃墟はやっぱり不気味でした。

で、最後に、ミラーハウスに入ったんです。
ほら、たくさん鏡があって、通路を錯覚してしまうアトラクションです。
でも、鏡はほとんど割られてて、破片が散らばってて危険でした。
スニーカーで来てたので、ガラスを踏み抜けばケガしますよね。
それで、もう飯食いに行こうってなったんですが、俺が最後に出ようとしたとき、
奥のほうで何かがちらっと動いたんです。「え?」と思って見にいきました。
そしたら、1枚だけ割れないでいる鏡があったんです。ああ、これに
俺が映ってただけか、そう思って、鏡に向かって手を上げてみました。
そしたら、鏡の中の俺も手を上げたんだけど、何かおかしかったんです。
「ええ?」近寄っていきました。鏡がゆがんでて変に見えたのかと思って。
1mくらいまで近づくと、たしかに黄色いTシャツを着てる俺なんですが、

ニヤニヤ笑ってたんですよ。「え、俺笑ってねえよな」そう思ったとき、
急に体が動かなくなったんです。金縛り? いやでも、俺立ってたんですよ。
鏡の中の俺が、両手で自分のほっぺたを両側から引っぱりながら出てきて、
俺の横に来たんです。そして「あああ、久しぶりに外界に出た。
 ちょっと借りるからな」そう言って、スタスタ歩いて出てったんです。
どう考えても信じられない話ですよね。俺は体が動かなくて、
でもミラーハウスの中は暑いので、汗がダラダラ出てきました。
そうして、どのくらいかなあ、20分は固まってたと思うんですけど、
急に体が動くようになったんです。走ってミラーハウスの外に出て、
山田さんが車を停めてたとこまで行ったら、車がなかったんです。置いてかれた
と思ったら、急に背筋がぞくぞくっとなって、たまらなく怖くなりました。

スマホ持ってきてたので、山田さんは運転中だろうから、
仲間の一人にかけてみました。しばらくして出たので、「○○だ、まだパークにいる
 から来てくれ」って言ったんです。そしたらそいつは、「え、だってお前、
 車乗ってるだろ・・・あっ?!」 「どうした?」
「たった今消えた、さっきまでしゃべってたのに」 「どうしてかわからんけど、
 そいつ偽物なんだよ、鏡の中から出てきた」 「んなバカな」
「パークの入口にいるから、山田さんに言って戻ってきてくれ」 「・・・・」
それから20分くらいして、山田さんの車が来てくれたんです。
山田さんは「わけわからん。たしかにさっきお前乗ってたんだよ。
 それが、△△のスマホに電話が入った途端に消えたらしい。いや、その瞬間は
 俺は見てないんだが、走ってる車から飛び降りられるわけもないし」

それから、あらためて街に戻ったんです。そのときに、ミラーハウスの鏡の中から
もう一人の俺が出てきて、体が動かなくなって入れ替わった話をしたんです。
山田さんは運転しながら首を傾げて、「でもなあ、お前そのものだったんだけどな。
 着てるものも同じだったし、ずっとサッカーのことをしゃべってたぞ。
 ロナウドがどうしたとか」他のやつらも、「すごい早口で、うるさいくらい
 えんえんと世界のサッカーのことを一人でしゃべってた」
こんなことを言ってました。わけがわからないですよね。
でもまあ、そのときはそれで終わり、何事もなく1ヶ月が過ぎたんです。
でね、先月のことです。サッカーの県の予選で、俺らのチームは準決勝の試合でした。
俺はまだ2年で、スタメンじゃなくベンチだったんですけど。その日は、
チャリで学校へ行ってから、チーム全員、バスで試合場へ行く予定でした。

で、朝早く起きて家の洗面所で歯を磨いてたんです。そしたら・・・
俺は歯ブラシを咥えてるのに、鏡の中の俺がべっと歯ブラシを吐き出して、
それから俺に向かって指を突き出し、「また借りるから、お前は寝てろ」
って言ったんです。いや、それ俺の声そのものだったと思います。
で、俺はその命令にしたがわなきゃいけないと思ってしまって、
そのままフラフラと自分の部屋に戻り、ベッドに潜り込んじゃったんです。
これね、後で家族に聞いたら、普通に朝飯を食べてチャリで出かけたって
言うんですよ。そっから俺はずっと寝てたんです。起きたのは夕方でした。
枕元に置いてたスマホが鳴ったんです。ダルかったんですが、出てみると
山田さんでした。すごい剣幕で、「○○お前、今どこにいるんだ」って。
「家にいます、ずっと寝てました」って答えると、

「・・・本当なのか? いや、こないだのことがあったから本当かもしれんが、
 とにかく学校に来い」こう言われたんです。
家族は仕事に出てて誰もおらず、チャリもなくなってました。
しかたなく歩いて学校まで行ったんです。道々、何があったかを山田さんから
スマホで聞きました。試合が始まって、ベンチにいる俺は出たくてたまらない様子で、
ずっと体を動かしてアップしてたんだそうです。そして後半終了間際、
スコアが0ー0のときに3年生の先輩がケガをし、
監督が、俺がはりきってるのを見て試合に出したんだそうです。
俺は交代するや、ものすごい勢いで動き回り、パスを受けるとそのままドリブルして、
相手の選手を何人もかわしてゴールを決めた。チームは勝ったんです。
・・・そこまではよかったんですが、終了の笛が鳴ってみんながよろこんでると、

俺はピッチの真ん中でサッカーパンツを脱ぎ、フルチンになって芝生に小便をし、
そのまま観客席に走り込んでどっかに消えちゃったってことで・・・
だから試合には勝ったものの、監督はカンカンで、
県のサッカー連盟からもチームが注意をうけたみたいなんです。
はい、学校に着いたらみんな戻ってきてて、俺を白い目で見ました。
監督はまだすごく怒ってて、「わけを説明しろ」って言われたので、
「それ、俺そっくりだけど俺じゃないんです」って話したんです。
でも、信じてもらえませんでした。まあそうですよねえ。
説明の途中で、助けを求めるように山田さんやテーマパークに行ったときの
仲間をチラ見したしたんですが、誰も何も言ってくれなくて。
で、どうなったかっていうと、俺はあちこちいろんなところで

謝らされたあげく、強制退部になっちゃったんです。
チームの勝ちは取り消されなかったんですけどね。後で山田さんが俺のとこに来て、
「こないだのことがあったから俺は信じる。けどな、見てない監督がそんなこと
 信じるわけがないと思ったから黙ってたんだ。すまんな」
こんな話をしてくれました。・・・まあ、退部になったことはいいです。
そんなサッカーに賭けてたわけでもなかったし。でも、試合場で小便した
って話は学校中に広まっちゃったし、家族も学校に呼ばれました。
今度の職員会議で俺の処分が決まるんですが、たぶん停学だと思います。
チャリも見つかってません。もう散々ですよ。それとね、あのもう一人の俺、
まだ鏡の中にいるんじゃないかと思うんです。
また入れ替わられたらどうすればいいんでしょう。

小便ですめばいいけど、もっと大変なことをされたら。
え、まず鏡を絶対に見ないようにしろって。・・・でも、家の鏡は見ないように
できても、ガラスとかそういうのに映るのはどうしようもなくないですか。
それに、外に行けばトイレとかあちこちに鏡があるし。
え、もう一人の俺もやっぱり俺の一部で、潜在意識にテーマパークのもののけが
とり憑いて動かしてるって? そう言われると、あれ以来何もしてないのに、
毎日すごく疲れるんです。どうすれば元に戻るんですか?
もう一度テーマパークのミラーハウスに行って儀式をやる・・・
わかりました。なんとかお願いします。
いや、ここに相談に来てほんとによかったです。
とにかく次に何が起きるか、気が気じゃないんですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

今晩は、じゃあ、話していきます。去年の夏休みですね。
ああ、俺、ある大学の2年生なんです。お盆過ぎたあたりでしたね。
長い休みをちょっともてあましてたところ、清田って友だちから、心霊スポット探索に
行かないかって話があったんです。「金かからんのなら行くよ」
ふたつ返事で承知しました。話を聞いてみると、なんでも心霊系の雑誌の先月号に、
関東某県にある心霊スポットが紹介されてて、そこがすごい建物の雰囲気よかったから
ってことでした。心霊スポットの雰囲気がいいってのも変ですけど、
俺ら、専攻が建築学なんですよ。だから、ただの面白半分じゃなく、
実地見学もかねてってことです・・・まあ、こじつけなんですけどね。
その建物は、バブル期に建てられ、しばらく使われた後に放置されてる別荘だったんです。
これ、後になって調べたんだけど、そういう場所ってけっこうあるんです。

別荘地っていうと、軽井沢が有名ですけど、あの周辺に、
新しく開発されて、その後放置された別荘地ってあちこちあるんです。
もう別荘で過ごすお金の余裕がなくなって、かといって売ろうとしても売れない。
そのうちに管理費用も払わなくなって、電気や水道がきれた状態で放置されてる家。
それでも固定資産税はかかるから、まさに負の遺産ってわけです。
で、隣近所の別荘もみんなそんな感じで、放置された初期の頃に泥棒が入って、
中の金目のものはみんな荒らされてる。まあ、そういう場所です。
でね、中には有名建築家に依頼して建てたのもあって、
雑誌に掲載されてたのも、そんな一つでした。
「どうやっていくんだよ?」 「1泊2日。ワンボックスのレンタカーを
 借りていく。運転は俺がするよ。あと、岸島も来ることになってる」

「その別荘に泊まるのか?」 「いや、たぶん中はホコリだらけだと思うから、 
 車中泊を考えてる。3人なのにワンボックスを借りるのはそのためだよ」
「ははあ、体、痛くなりそうだな。でも、面白そうだ」
「だろ、その家を建てたのは、〇〇競技場を設計した建築家がまだ無名だった
 ころって話だぜ」 「ふーん、たしかに勉強にもなるな。
 俺はのるけど、建物の中に入るのは違法だろ」 「そうだけど、おそらく
 雑誌社のやつらも許可なんかとっちゃいない。それに山の中でまわりの別荘も
 すべて空だ。別に問題ないだろ」 「そうだな」
こんな話になって、8月の27日、午後から車で出かけたんです。
道中は3時間半ほどかかりましたね。もっと早く行けたんでしょうが、山の中に
入ってからナビがきかなくなって。その別荘地を見つけるのに時間がかかって。

でね、その建物、けっこうな高地にあったんです。植物相が変わってましたから。
道もガードレールはありましたが、険しい崖が多かったです。やっと見つけたのは、
白い壁の洋風の建物で、そうですねえ、教会のようにも見えました。
着いたときには夕方の時間帯でしたが、夏なのでまだ明るかったです。でね、
まず建物の周囲を回って写真を撮りました。2階建てで、外から見た感じでは、
部屋数は6から7だと思いましたね。あと、変だなあと思ったのは、
2階の屋根を突き破る形で、妙なものが外に出てたんです。どう説明すればいいのかなあ。
チューリップの茎をハサミで途中で切ったような感じ。
微妙にカーブした赤い色のそれが、3mほども空に伸び上がってたんですよ。
何なのかはまったくわかりませんでしたね。それで、車を置いた草地に戻ってくると、
別の大きな外車が隣に停まってて、残ってた清田が人と話してました。

それ見てね、ああ、マズイ、何かトラブルかって思ったんです。相手はやっぱり3人で、
女が一人入ってました。それがね、3人とも俺らと同じくらいの齢に見えたんです。
俺と岸島が近づいていくと、清田が「ああ、この人たちね、別荘の持ち主なんだって」
そう言いました。すると、その中の一人が、「あ、持ち主っていうか、
 親父が持ってる別荘なんです。でもね、使わなくなってからもう15年くらいたちます。
 僕ら、東京の大学生なんですけど、僕が子どもの頃に行った別荘の話をしたら、 
 見たいっていうから、ドライブがてら来てみたんです。道に迷っちゃって、
 すごく時間かかっちゃいましたけど」ああ、俺らと同んなじだと思いました。
「話は聞きましたよ。この建物、有名な建築家が建てたものなんですってね。
 知りませんでした。僕らもね、中をひと回りしたら帰るつもりですから、
 いっしょに中を見てみませんか」こんなふうに言ってくれたんです。

でね、その3人、言葉遣いとか、あと着てるものも高そうで、
俺らとはだいぶグレードの違う大学のやつらだと思いました。
「中の写真撮ってもいいですか」そう聞くと、「ああ、ぜんぜんかまいません」ってことで。
昔はさぞ立派だったろう洋風の庭を通って玄関口まで来ると、
やはり荒らされてて、玄関の扉のガラスが全部落ちてました。
そっから入れそうだったのが、別荘の持ち主だという人が鍵を出して開けたんです。
中はね、かなりひどいホコリで、足跡もいくつかついてました。
けど、スプレーの落書きなんかはなかったです。入ってすぐ、けっこう広い
ホールになってて、ぜいたくに空間が使われてました。
でね、その中央に不思議なものがあったんです。周囲が1m以上、
一抱えはありそうな球根状のものが地面から生えてて、

それが1階の高い天井を突き破ってて。あの、2階の屋根から見えたものの
下の部分なんだろうと思いました。 「これ、何ですか?」
向こうも首をかしげて、「何だろうなあ、植物の一部に見える。こんなの前は
 ありませんでした」そんな感じだったんで、近寄ってさわってみました。
そしたら、ごつごつして見えるのに、意外に柔らかく、暖かかったんです。
ドクン、ドクンという鼓動のようなものまで感じられました。
そしたら後ろにいた清田が、「わからんけど、それ、お前にとってすごく大事なものだと思う」
「え、何で?」 「いや・・・まあ」 「変なやつだな」1階を案内され、またホールに戻って、
2階への階段を上がりました。そのときに俺、何だか頭が痛くなってきたんです。
でね、2階の床からさっきの植物が突き出て、さらに上の天井を破ってました。
色が、1階では緑がちだったのが、赤黒く変わってて、中央部分にこぶがあったんです。

「あれ、あの3人は?」俺らのすぐ先を上ってた3人の姿が見えなくなってました。
すると岸島が唐突に、「あの3人は死んだよ。死んだ人なんだ。それに俺たちも」 
「え!?」 清田が植物のこぶの裏に回り込み、「来てみろよ、これ、お前みたいだぞ」
「何だよ、お前ら、さっきから何言ってるんだ」清田のいる側に出て 指さすほうを見ると、
植物のこぶには無数のしわが寄って、盛り上がった部分に顔が浮き出てました。
それ、俺の顔だったんです。「!?」ズキン、頭の傷みが強まり、岸島が近づいてきて、
「これで切れよ」と刃物を出し、清田が、「お前には助かってほしいんだよ」
そのとき俺は頭の傷みでわけがわらなくなってて、いつの間にか受け取ってた
刃物をやみくもに振り回してたんです。「うう、痛え、痛てえよう」
植物に刃があたったのか、突き出てる俺の頭がぱっくりと裂け、
大量の血がしぶきました。「ああ、痛てええええ」俺が覚えてるのはそこまでです。

こっからは後日談になります。俺は病院で目を覚ましたんです。
開頭手術を受けてから3日後のICUでです。それから、ゆっくりと回復していき、
自力でトイレに行けるようになったのは3週間後でした。
事故にあったんですね。時間帯からすると、俺らがあの別荘を出て帰る途中のこと
だと思います。ワンボックスカーが崖から転落し、
岸島と清田は即死だったようです。俺はかろうじて生きてましたが、
発見者の連絡で救急搬送され、硬膜外血腫ってことで、
緊急の開頭手術になったんですね。かなり生存確率は低かったみたいですが、
なんとか成功して、3ヶ月後に退院しました。幸いというか、後遺症は特にないです。
でね、清田と岸島の葬式はとっくに終わってたんで、墓参りと、自宅に線香を上げさせて
もらいに行きました。運転してたのは清田だし、俺が責められるということはなかったです。

あと、別荘であったあの3人なんですが、いろいろ調べたら、
俺らが事故った場所からやや離れたところで、その2年前に転落事故があって、
3人死んでたんです。顔写真は出てなかったけど、男2人、女1人。
それから、今年の夏休み、一人であの別荘に行きました。
金かかりましたけど、電車とタクシーで。中の間取りは、
俺が夢?で見たのと同じでしたけど、あの建物を突っ切ってた植物のようなのはなく、
屋根にも穴は開いてなかったんです。まあ、こんなところなんですが、
警察から俺の持ち物が戻ってきまして。ほら、俺、あの家の中の写真を撮った

じゃないですか。そのデジカメ壊れてなくて。でね、画像を見てみましたら、
写ってるのはどれも、赤く暗いぐちゃぐちゃしたもので、人間の体内、
もっと言えば、俺の頭の中なんじゃないかと思いました。今、ここに持ってきてますよ 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これね、俺が小5と小6のときのことがメインなんだけど、
じつはずーっと続いている話だと思う。だから、今も俺が住んでる△△市に来れば
道彦がいるから、ぜひ調べに来てくれよ。あれがどういうものなのか・・・
始まりは、最初に言ったように小5のときだ。
たしか夏休み前だったな。俺のクラスに転校生が来ることになったんだよ。
△△市は地方都市だし、ろくな産業もないから、転校生って珍しいんだ。
だから、担任から「転校生の人が来ます」って話を聞いたときは、
みな興味津々だったね。で、それから2、3日して、
朝のホームルームで、担任の後に背の高い男子がついてきて、
担任に紹介された後のあいさつで、「山田道彦です 1年間よろしくお願いします」
って名乗ったんだ。そのときの印象は、おとなしい感じで、

すごく恥ずかしそうにしてた。で、転校生って珍しいから、
最初は誰も話しかけたりしないんだよ。だから、道彦はしばらく、
休み時間とかは誰とも話をせずに自分の席に座ってた。
俺とは席が近くて同じ班だったんだよ。その週に調理実習があって、
そのときにはじめて道彦と口をきいた。やっぱおどおどした感じだったな。
でも、イジメられたりってこともなかった。
田舎の市だし、静かでのんびりした小学校だったからね。
で、そのときから、少しずつ道彦と話すようになっていった。
俺もどっちかといえば大人しいほうだったし、なんとなく気が合ったんだな。
あの頃、テレビでオカルト番組がけっこう流行ってたんだ。
俺はそういうの大好きで、子ども向けのオカルトの本なんかも買って持ってた。

で、道彦はそういうことにすごく詳しかったんだよ。

放課後、途中までいっしょに帰るんだけど、そのときに、生まれ変わりの
話なんかを道彦が教えてくれたんだ。ほら、ある町に生まれた子どもが、

自分は遠く離れた別の町で生きてた○○だ、とか言い出して両親の名前とか話す。
それに興味を持った大人が調べてみると、実際にその町で、
〇〇という子どもとその家族がいた記録が残ってるとか、そういうやつ。
前世の記憶って言ったらいいのかな。そういうのにすごく詳しかったんだよ。
「どうしてそんなこと知ってるの?」って聞いたら、
「興味を持って調べてるんだ。うちにはそういう本がいっぱいあるよ」って言う。

けど、道彦はオカルト以外のことはぜんぜん知らなかった。テレビのアイドルとか、
野球の選手とか、そういうのはまったくわからなかったんだ。


だから、俺がいなかったら、クラスで話す相手もいなかったんじゃないかな。
あと、道彦は昔のこともよく知ってた。例えば、子どもがみんな買う、
有名な漫画雑誌があるだろ。その頃は180円くらいだったと思うが、
「これ、20年前は40円だったんだ」みたいなこと。

だからなのか、勉強も、算数とかは普通だったけど、社会の歴史をやってる
ときだけは、積極的に自分から手をあげて発表したりもしてたし、

その内容は、先生も感心するくらいだったんだよ。
でね、そのうちに夏休みになって、俺は週に一度くらい道彦と遊んだ。
ほとんど外遊びだったな。夕方、公園の林に虫捕りに行ったり、
2人で自転車で、戦争中の防空壕を探検しに行ったこともある。そのときは、
道彦が案内をして、わかりにくい道をたどって、

山裾にある防空壕の穴に入ったりもしたんだ。で、あるとき、
またオカルトの話になって、道彦がドッペルゲンガーっていうのかな。
この世にいる自分そっくりの人間のことを話し出して。
で、俺が「そんなのありえないよ」とか言ったんだと思う。

そしたら道彦がめずらしく怒って、「これ家にある本に載ってるんだから、
 見においでよ」みたいに言った。それではじめて、道彦の家に行ったんだよ。

道彦の家は建売の団地みたいなとこで、古くなったけど今もある。
道彦が自分で鍵を開けて、中には誰もいなかった。
玄関からすぐの階段を上がっていくと、道彦の部屋があった。
中は壁2面が本棚になっていて、ずらっとオカルトの本が並んでた。
で、その多くが、大人が読む難しいやつで、中には英語ののもあったんだ。
 

あと、今から考えれば、これ大事なんじゃないかと思うけど、本棚の上に
変な機械があったんだよ。横1m、高さ30cmくらいの機械で、電極みたいなのが
たくさん上に出てた。で、前側に丸い時計みたいなのがついてるんだけど、

針が一本で、文字盤には数字はなく、全体に緑色に光ってすごく印象に残った。
「あれ、何?」って聞いたら、道彦はつまらなそうに「わからない、
 僕が生まれたときからあるんだ」って言ってた。それで、
道彦が下からジュースを持ってきて、俺は面白そうな本を棚から出して読んだ。
そうやって1時間ほどしたら、道彦が「そろそろお母さんが戻ってくるから帰って」
みたいに言って、2人で外に出て、俺が「じゃあね」って言ったとき、
大きな黒い車が道をやってきて、道彦はあわてて家に入ってったんだよ。
そんな感じで、5年生のときはちょくちょく道彦と遊んだ。

ただ、家に行ったのはその1回きりだったけどな。で、だんだん学年末が近づいて
くると、道彦はことあるごとに「時間がないなあ」みたいなことを言うようになった。

で、俺が「何の時間?」って聞いても黙ってる。あと、道彦はもともと背が
高かったけど、その頃には担任を追い越して、大人でも背が高いってくらいに
なってたんだよ。それから・・・6年生に進学して、クラス替えがあったんだ。

道彦とは別のクラスになって、俺も新しいクラスに慣れるのが大変で、
道彦と遊ぶことはなくなった。で、4月がもうすぐ終わるってときに、
道彦が殺されたんだよ。下校の途中で何者かに刃物で刺されたんだ。
これは大ニュースになって、新聞やテレビでももちろん報道したし、
静かな市がマスコミでいっぱいになった。全校集会もあったんだよ。
でも、犯人はつかまらず、今もって手がかりすらないんだ。
 

それから、時が流れて、俺の家は印刷屋だったんだけど、大学を出てから長男の
俺があとを継いだ。で、結婚して子どもができ、そこの市にずっと住んでるんだ。

でね、去年の夏。息子は小学校5年で、俺と同じ学校に行ってるんだけど、
「クラスに転校生が来た」って話したんだ。「ふーん、どんな子だ?」って聞いたら、
「名前はさとうみちひこで、背が高くて、すごくオカルトに詳しいんだよ」
それで、俺が小学生の時の道彦を思い出してね。でもまあ、偶然だと考えた。
それはそうだろ。それから2ヶ月くらいして、息子が、
「今日、みちひこくんの家に遊びに行ってきた。オカルトの本がたくさんあったよ」
みたいな話をして、場所を聞いたら間違いなくあの道彦の家だったんだよ。
それで俺は少し怖くなってきたけど、息子に「部屋に大きな機械がなかったか?」
って聞いてみたんだよ。そしたら「あった。お父さん、何でわかるの?

 あの機械って何?」こう問い返されて、答えることはできなかったんだよ。
それから、ちょくちょく息子にはみちひこのことを聞いた。
たいがいはありきたりのことしか返ってこなかったが、
新しい年になって、「みちひこくんが最近、時間がない、時間がないって言って、
 あまり遊ばなくなった」って話したんだ。
これ、俺が小学校のときとそっくりだろ。また、もやもやした不安を感じてね。
それが決定的になったのは、息子が年度末に持ってきた児童会の文集。
全クラスの集合写真が載ってるんだよ。それを息子から借りてみて愕然とした。
最後列に並んでるひときわ背の高い子が、名前は佐藤道彦で、
俺の記憶にある道彦と、多少髪型は違ってたけど、そっくりな顔をしてたんだ。
子どもなのに目尻にしわがあるとこなんか、瓜二つだった。

で、俺は自分の記憶を確認したくて、市の図書館に行ったんだ。
地方新聞の縮刷版を見るためだよ。そこで、あの事件のときの記事を確認した。
そしたら、道彦の顔写真がついてて、やっぱり今の道彦と同じに見えた。それと、
もう一つわかったのは、俺が小学校のときの約30年前に、やはり子どもが殺されてて、
事件は未解決。写真はついてなかったが、殺された子の名前が「鈴木道彦」。
もしかしたら、その前もあるのかもしれないが、そこまではたどれなかった。
なあ、どう思う? 数十年ごとに、この市に「道彦」って子が転校してきて、
翌年に殺される・・・そんなことがあるもんだろうか?
それで、今の道彦君に会いにいこうかとも考えたんだ。いや、会ってどうするって

わけじゃないんだが。まさか、「君、もうすぐ殺されるよ」って言うわけにも
いかないし、それでもし、「はい、わかってます」って答えられたら・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 

これは、これまで自分が見聞きした不思議な能力の話です。
ただまあ、すべては偶然による出来事なのかもしれません。
そこのところはご含みおきください。

その1
自分の本業は占星術師ですので、大阪で活動する占い師の仲間の会に
入っています。これは別にギルド的なものではなく、
ときどき集まって情報交換もかねた飲み会をするためのものです。
そこで、タロット占いをしているGさんという女性の方と、こんな話をしました。
「Gさんは、最近、占いをしてて何か不思議な体験ってありますか?」
「bigbossmanさん、ブログに書くネタを探しているんでしょ」
「まあそうです」 「ええ、ありますよ。それもつい最近」
「どんな?」 「ほら、私の場合、お客さんに若い女の子が多いでしょ」
「ええ」 「それで、1ヶ月ほど前に、中学生の女の子が4人で来たのを、
 一人ずつ占うことになったの」 「ははあ、恋占いですか?」
「まあそんな感じ。だけど、そのときちょっと変だったのよね」

「何が?」 「4人のうち、一番地味めの子がすごく気になったっていうか」
「どんなとこがです?」 「それが自分でもよくわからないんだけど、
 なんかその子のことを早く見なくちゃいけない気がして、
 最初にカードの前に座ってもらったの」 「はい」
「それで、カードを並べて、さてめくろうってときに、自分で考えてないことを
 言っちゃった」 「どういうことですか?」
「その子に向かって、あなた携帯持ってる?って」 「・・・」
「そしたらその子、持ってますってスマホを出したから、
 家に電話かけなさいって言ったのよね」 「どうして?」
「それが自分でもわからないの」 「で、どうなりました?」
「その子はとまどってたけど、家に電話かけて、でも誰も出なかったの。

 で、家に誰がいるのって聞いたら、お母さんだけですって」
「それで?」 「でね、その子に、お父さんに連絡して家に向かうように話しなさい
 って言ったの。それから、気がついたら私、席を立って車のキーを持ってたのね」
「・・・」 「で、その子ら4人を乗せて、その子の家に向かってたのよ」
「で?」 「その子は車の中でお父さんに連絡したけど、お父さんは、
 何で家に戻るのかってその子に聞いて」 「まあそうですよねえ」
「でも、その子はもちろん、私も理由がわからない」 「はい」
「そのうちに、30分くらいでその子の家に着いて、郊外の一軒家だったけど、
 玄関のドアには鍵がかかってなくて、開けるとすぐのとこで母さんが倒れてたのよ」
「う」 「それで救急車を呼んで・・・お母さんは命は助かったけど、まだ入院中」
「・・・」 「若いのに、心臓の発作だったのよね」

「うーん、それは不思議ですねえ」 「でしょ。私、そんな行動力、
 ふだんは持ってないから。そのときだけ、何か力に動かされる感じで、
 子どもたちを車に乗せてたのよね」 「うーん、そのお母さんの苦しんでる念が
 Gさんに届いたってことなんですかね」 「そう・・・かもしれないけど、
 その子自身は何も感じてなかったみたいでねえ」
「あ、そうだ。そのときのタロットの卦はどうだったんですか?」
「それが、後になって見たけど、お母さんとも病気とも関係ない
 ことしか出てなかったのよね」 「ははあ」
「で、その子の一家からは感謝されて、大魔法使いみたいなあつかいをされてる」
「それはそうでしょう、命の恩人なんですから」 「でもね、あんなこと2度とできない
 と思うし、その子から、先生占ってって言われるとプレッシャーがあるのよね」

その2 
武道係の雑誌の編集者をしているKさんと、モツ煮込みの店で飲んでました。
自分は学生時代にずっと柔道をやってたので、その関係です。
「Kさん、何か最近、不思議な話とかありますか?」
「ああ、bigbossman、あのブログに書くネタを探してるんだろ」
「まあそうです」 「うーん、そうだなあ。ああ、こないだ80歳を過ぎた
 古流剣術の先生の取材をしたんだ」 「はい」
「その先生は、そんな歳なのにものすごく元気で、今でも山の中に入って
 立木撃ちとかしてるんだよ」 「ははあ、それで」
「だから、取材の最後のほうで、健康の秘訣を聞いたんだ」
「ああ、読者が興味を持ちそうなことですもんね」
「そう。そしたらその先生、変わったことを言い出してね」

「どんな?」 「体の不調が出てきたら、他人にうつすって言うんだ」
「他人にうつす?」 「うん。例えば、ヒザの痛みが出てきたとするだろ。
 それを、おまじないみたいなことをやって他人にうつすんだ。
 具体的なやり方も聞いたよ。自分のヒザの痛みのある部分を何回かなでて、
 痛みの元をくるくると丸める」 「・・・」
「で、それを誰か、自分とは関係ない人間に向かって、後ろ向きで投げつける。
 すると、痛みがその人にうつるんだって」 「うーん、それ、信じたわけですか」
「いやまあ、そのときは信じなかった。だいたい、無関係の人に痛みをうつすって、
 もしできるんだとしても、ちょっとねえ」 「そうですね」
「だから、その先生のイメージが壊れると思って雑誌にも書かなかったんだ」
「うーん、おまじないに近いものですよねえ。

 ほら、小さい子がどっかをぶつけたりしたとき、痛いの痛いの飛んでけ~
 ってやるじゃないですか。あんな感じなんでしょう。ただ、
 その飛んでったものが人にうつるというとこが、新しいかもしれませんが。
 その先生は、どうやってそれ、発見したんですか?」
「ああ、そこまでは聞かなかった。ただ、痛みをうつすのは選挙演説のときに
 やるみたいだよ」 「??」 「その先生は、政治家はみんな悪いやつだと
 思ってて、地元の選挙なんかがあると立ち会い演説会なんかに行って、
 マイクでしゃべってる候補者に悪いところを投げつけるって」
「うーん。いろいろ信じられない話ですねえ」
「でも、実際に効果があるかもしれない」 「え、もしかしてやってみたんですか?」
Kさんはニヤッと笑って、「やってないけど、今、試してみようぜ。

 bigbossman、どっか体の調子悪いとこある?」 
「いや、病気のほうはよくなりました。ただ・・・最近、肩がこる感じがありますね。
 たぶんパソコンの打ちすぎだと思うけど」ここでKさんは声をひそめて、
「ほら、テーブル席にサラリーマンの2人組がいるだろ」 「はい」
「あの青い背広のほうに向かって、肩越しに投げつけてみろよ」
「肩こりをですか? いや、そんなのありえないですから」
「ありえないんだったら試してみてもいいじゃないか。こうやって、何度も
 痛いところをさすって丸めて、後ろ向きのまま、あいつのほうに投げてやる」
「・・・じゃあ、やってみますよ」ということで、Kさんに言われたとおり、
自分の体の悪いところを引っぱり出し、手でこねて丸める動作をし、
肩越しに投げてみたんです。もちろん、そんなこと効果があるとは思ってませんでした。

案の定、青いスーツのサラリーマンには何の変化もなかったんです。
Kさんとは、それから1時間近く飲んでいろんな話をし、その場をおごっていただいて
席を立ったんですが、ちょうど、さっきのサラリーマン2人も、
やや遅れて会計を始めたんです。で、自分はタクシーを呼んでもらって、
Kさんと別れて店の前で待ってました。そしたら、
自分が肩こりをうつしたサラリーマンが暖簾をくぐって出てきて、
首をコキコキと回し、連れに向かって、「さっきから何だか、ひどく首筋が
 痛いんだよなあ」って言ったんです。・・・まあ、これだけの話で、
偶然だとは思いますけど、寝て起きた翌日から、自分の肩こりが
ほとんどなくなってたんですよ。でもこれ、肩こりとかじゃなく、もし、

もっと深刻な病気でもうつすことができるんだとしたら、怖い気もしますねえ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あ、どうも、よろしくお願いします。俺・・・いや、僕、ある大学の3回生で、
ミステリーサークルに入ってるんです。でね、このミステリーっていうのは、
推理小説のことじゃなく、ミステリーサークルとかに使うほうです。
つまり、謎ってことですね。これまで、いろんな活動をやってます。
テント持参で、青木ヶ原樹海の遊歩道を外れたところに泊まり込んだり、
去年の夏休みなんかは、北海道まで遠征して、UFOがよく見られると言われる
廃墟で夜明かししたりもしたんです。結果? いや、それが、
写真もビデオも撮ったんですが、おかしなことは何もありませんでした。
でね、すごく残念に思ってたんです。もうすぐ僕は就職活動でサークルを
引退しなくちゃなんないし、とうとう本物の怪異に巡りあうことは
できなかったなって思って。それで、先月の終わりごろのことです。

授業が終わってすぐ、サークル室に顔を出したんです。
僕らの大学はサークルの数が多いので、10人も入れないようなせまい部屋
なんですが、1、2回生が4人集まって、テーブルで何か見てたんです。
「何だ、面白いもんがあるのか」そう聞いたら、1人が、
「あ、○○先輩、この写真見覚えありますか?」って手渡してよこしたのが、
かなり古そうに見える白黒写真だったんです。「いや、知らんけど」
「僕がここに来たら、テーブルにあがってたんです。
でも、誰も知らないって言うし」で、その写真なんですけど、
フィルムを現像したもので、今はもうそんなことしてないですよね。
しかも白黒で、僕もよくわかりませんが、昭和の初めころのものじゃないかって
思いました。写っていたのは家の内部なんですが・・・

写真の構図が斜めにかしいでたんです。ほら、カメラをぶら下げてたときに、
間違ってシャッターが押されてしまったみたいな。
斜めに畳が写ってて、その上に箱、茶箱くらいの大きさのものが
何個かありました。画面から切れててはっきりしないけど、
見えてるだけでも3つはありましたね。「うーん、昔のもんだよなあ。
 そこの棚に、卒業した先輩たちが活動してたころのファイルが入ってるから、
 中から誰か出したんじゃないか」 「でも、こんな古いものがありますか」
「そうだなあ。あ、これでも、ちょっとしたミステリーじゃないか。
 この写真は何で、誰がどこを写したもんなのか、みなで探ってみようぜ」
・・とは言ったものの、たんなるその場の思いつきで、実際は、
その場にいないメンバーが後で、「あ、僕の忘れものです」

ってオチだと思ってたんですけど。ともかく、その写真を視聴覚室に持ってって、
コピーしてみなに配りました。で、僕だけは実物を教科書に
はさんで持ち帰ったんです。その後、居酒屋のバイトに行って、
部屋に帰ってきました。翌日は授業がなかったん缶ビールを何本か飲み、
そのときにこの写真のことを思い出して出してみました。
そしたら、違和感を感じたんです。なんか大学で見たのと違う気がする。
でも、具体的にどう違うか言えないんですね。そもそもがそんなによく見た
わけでもないので、気のせいだとも思ったんですが。
写真に写ってるのは、さっき話したように畳があるので一般家屋でしょう。
箱はかなり大きく、表面は黒い木のように見えました。
あと、背景に和ダンスらしきものがちらっと写ってて、それだけ。

これじゃあ手がかりはないも同然ですよね。あきらめてシャワーを浴びて寝ました。
翌日、大学のサークル室に行きました。やはり後輩が何人かいて、
前日いなかったやつに写真のことを聞いても、「知りません」という返事。
そのうちに前日のメンバーのうち2人が来たんで、「何かわかったか」と
言ったんですが、首をふるだけでした。今はほら、ネット時代で、
画像検索すればすぐに出てきますよね。例えば写真を加工して、
幽霊やUMAを入れても、それが入ってない元画像が特定されちゃいます。
今度の東京オリンピックの最初のシンボルマークも、
画像検索から盗作疑惑が持ち上がったわけでしょ。ところが、
こういうフィルムの白黒写真って、どうやっても調べようがないんですよね。
ネット時代になって、謎や不思議がどんどん失われていってるんです。

そんな感じで、あきらめたというか、関心をなくしたというか、
写真のことは頭から消えてったんです。でね、最初に見てから5日目かな、
後輩から、「△△が授業に出てこないし部屋にもいないみたいだ」って聞いたんです。
そいつ、1回生で、あの写真をコピーして渡した一人なんです。
1回生は、僕らと違って毎日授業があるから、いないとすぐわかるんです。
「ちょっとマズいな」と思いました。僕らの大学はマンモス校で、
田舎から出てきたやつが、馴染めないでやめちゃったりすることも珍しくは
ないんです。「田舎に帰ったかとかかなあ、スマホで連絡取れるか?」
と聞いても、「できません」ってことでした。でも、それ以上どうにもできない
ですよね。僕らは身内じゃないから、捜索願いってわけにもいかないし。
いや、あの写真と関係があるとはまったく考えませんでした。

でね、その日もバイトから帰って酒飲んでるときに、ふっと写真のことを
思い出したんです。えっと、どこにやったか。あ、そうだ確か机の引き出しに・・・
出してみて、「え!」と思いました。ほら、箱があるって言ったでしょ。
その一番手前のやつのフタが、ほんの少しだけずれてたんです。
中は暗く、何が入ってるかはわかりませんでした。でもねえ、
写真が動くなんてありえないですよね。だから、自分の勘違いかと思って。
それで翌日、朝の9時前、最初に写真を見た後輩たちに連絡をとって
招集をかけたんです、4時にサークル室に写真のコピーを持って集まれって。
その時間になって4人ともやってきたんで、まず△△のことを聞いたら、
消息不明のままでした。それから、「なあ、この写真変だろ、フタがずれてるように
 見えないか」そう言って、それぞれのコピーと比べてみたんです。

やっぱり僕の持ってる1枚だけが違ってました。でもね、
それを元にコピーしたんだから、違うはずなんてないでしょ。そしたら、
1回生の一人がこんな話を始めたんです。「じつはですね、僕、進学塾が△△と同じで、
 大学合格が決まった春休みに、心霊スポット探索に行ってて。そこ、
 郊外にある民家の廃墟なんですけど、もしかしたらその写真かもしれないです」
「え、箱があったのか」 「いえ、全部の部屋回ったんですが、こんなのはなかったです。
 ただここ、ちょこっとタンス写ってますよね。それがなんとなく見覚えあるような気も」
「うーん、お前ら、その民家、荒らしたりしたか」 「・・・僕はそうでもなかったけど、
 土足で入ったのはそうだし、△△は大学合格でテンションが上ってて、
 そこらの壁や障子、それから仏壇とかも蹴ったりしてました」 「そこ、今もあるのか」
「それが地元に連絡取ったら、もう取り壊されてなくなったみたいだって言うんです」

これだけだと何とも言えないですよね。とにかく、コピーは全部集めてシュレッダーに
かけたんです。で、手元に残ったのは僕が持ってる1枚だけ。
その後輩には、民家から写真を含めて何か持ち出したりしてないか聞いたんですが、
首を振るだけでした。・・・これでほとんど話は終わりなんです。
△△は、その後3日たっても消息不明で、僕らが大学の事務局に話をして、
実家に連絡をとってもらいました。驚いた両親が駆けつけてきて、
部屋を確認して警察に捜索願を出したんです。その過程で、僕も両親と話したんですが、
写真のことは言えなかったんです。だって、関係ないと考えるのが普通ですからね。
あとは、僕が持ってる写真だけです。その騒ぎの間にも、
フタは少しずつずれてったんです。いや、怖いは怖いですけど、
どうなるのかと思って、時間があると見てたんですよ。

僕が見てる間は写真が動くなんてことはないです。ただ、寝て起きたときに見ると、
やはり前日よりほんのわずかずれてる。で、この写真、右手のほうから光が入ってて、
フタがずれるたびに、中がぼんやり見えてきたんですよ。
これ、手に見えませんか。えーとあの、屈葬って言うんでしょうか、
両手で膝を抱えた状態で、上向きに箱の中に裸の人が入ってるような。
はい、あれからさらにずれて、もうすぐ胸の上が見えそうですよね。
これもし△△だったとしたら、僕はどうすればいいんでしょうか。
民家の廃墟のことは確認しました。たしかに解体されてて、
空地になってるそうです。だからもし、この写真がその家の中だとしても、
行くことはできないんです。え、写真をここに置いていけって。
・・・やっぱりそうですか、わかりました、後のことはよろしくお願いします。