アメリカ先住民のオカルト | 怖い話します(選集)

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今回はこういうお題でいきます。これ、けっこうオカルト的には
重要な内容を含んだ項になると思います。さて、日本語で
「アメリカ先住民」と言った場合、普通は南米は含まず、アメリカ、
カナダの先住民を意味することが多いですね。(中米・南米は
通常インディオとされる)では、これを英語にするとどうなるか。

インディアンという呼称は使われなくなりました。この語はもちろん
インド人という意味で、正しくはありません。アメリカ・インディアンも
使われないですよね。コロンブスなどの征服者が先住民を呼んだ言葉で、
新大陸アメリカがインド大陸だと誤解されたことが起源ですから。
では、ネイティブ・アメリカン(Native Americans)ならいいのか?

コロンブスのアメリカ上陸


ここがねえ、すごく難しいんです。自分は以前アメリカに住んでいたとき、
先住民の居住地を訪問したことがありますが、ネイティブ・アメリカン
という言葉を出したら そこの人に怒られました。「我々はインディアンだ!」
と言われたんです。その人は、その呼称に誇りを持ってたみたい

なんですね。このようなことはエスキモーにもあります。

結局、アメリカ先住民は細かなたくさんの部族に分かれているので、
その部族名を使うようにしました。あと、マーク・トウェインの名作
『ハックルベリーフィンの冒険』には、敵役としてインジャン・ジョー
(Injun Joe)という人物が出てきますが、「インジャン」は
現代アメリカにおいては「ニガー」などと同様の差別用語です。

ドリームキャッチャー
およよy

ただし、マーク・トウェインを擁護すると、あの作品にはジョーの目から
見た白人社会の矛盾や差別、ジョーの白人社会に対する怒りが
よく描かれていたと思います。あ、こういうことを書いていると
また字数が足りなくなって、後半舌足らずになってしまいます。

さて、当ブログでは、アメリカ先住民について2つの記事を書いています。
一つは「ウェンディゴ wendigo」についてのもので、北アメリカの
オジブワ族やアルゴンキン語族系インディアンなどの間で信じられていた
精霊のことです。また、それらの部族に見られる精神疾患の一種を
「ウェンディゴ症候群」と言います。

アメリカ先住民の霊をあつかったホラー映画『マニトウ』
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精霊としてのウェンディゴは、一人で旅をしている人の背後を追いかけ
てくるが、目には見えない気配だけの存在です。ただ足音が聞こえたり、
腐臭がしたりする。でも、ふり向いても何もいない。ウェンディゴの
姿は、腐乱して骨がむき出しになった大きな雄鹿だとも言われますが、
はっきりはしていません。

ウェンディゴ症候群のほうは、最初は気分の落ち込みと食欲の低下が見られ、
その後、自分はウェンディゴにとり憑かれたという思いが頭を占めるようになり、
「このままではウェンディゴに変化してしまう」という強い恐怖と不安とともに、
次第に周囲の人が食べ物に見えるようになり、食べてしまいたくなる。

ウェンディゴ
キャプチャ

このあたりは、北アメリカの長い厳しい冬を過ごす中で、食糧不足に陥る
恐怖を擬人化したものと見られます。冬期のビタミン不足で、
精神状態に変調が起きた状態と考えてもいいかもしれません。
これに関する有名な事件として、カナダのアルバータ州で、1878年 の冬、

雪の中に孤立した先住民、スウィフト・ランナーと彼の家族は食料が尽き、
まず長男が餓死すると、ランナーはその遺体を食べ、さらに妻と残りの5人の
子供たちも殺して食べてしまうということが起きています。
ランナーは春になって逮捕され、当局によって処刑されましたが、
現代なら精神病という判断がなされたかもしれません。

スウィフト・ランナー事件の証拠品


さて、二つめ、ウェンディゴの名が西欧社会に広まったのは、イギリスの
ホラー小説家にして、秘密結社「黄金の夜明け団」に所属する魔術師でも
あったアルジャーノン・ブラックウッドが、ホラー短編『ウェンディゴ』を
書いて紹介してからと考えられます。ブラックウッドには、古代の精霊や
魔術を取り扱った作品が多いんです。

で、この後、新大陸から伝わってきたアメリカ先住民の文化は、
神智学協会などによって広められ、その神秘性によって一種のブームと
なりました。そこには西欧社会が忘れてしまった知恵と知識がある、
といった具合です。心霊主義(スピリチュアリズム)のほうで、
「シルバーバーチの霊訓」というのがありますね。

シルバーバーチ
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イギリスの心霊主義専門新聞『サイキック・ニュース』の編集者、
モーリス・バーバネルという人物が、シルバーバーチ(Silver birch)と
名のる高次の霊から受けたメッセージをまとめたものです。
シルバーバーチは英語で白樺という意味で、その霊はアメリカ先住民の
姿をとっていたとされます。(それ以外にも複数の転生を経験)

このあたりも、上記したアメリカ先住民文化のブームから来ていると
自分は見ています。西欧社会では、例えばこれ以外にも、インド文化や
東洋の禅、老荘思想などが流行りましたが、西欧知識人にとって、それらは
神秘的で魅力的なものとして映るんですね。ビートルズがインドに行き、
マハリシの寺院で導師に師事し、修行したのも有名です。

インドのビートルズ
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ただねえ、言わせてもらえば、インド文化というのはカースト制度と
切り離しては考えられないものですし、アメリカ先住民にもさまざまな
困難な問題があるんですが、それには目を向けることをしないんですね。
ただ、エキゾチックな新知識として喜んでいるという感じがします。

さてさて、では、なぜ西欧社会でこういう現象が起きるのか。最も大きな
要因は、西欧の精神世界を支配するキリスト教が窮屈で退屈だからと
思います。かつてビートルズのジョン・レノンは「イマジン」の曲の中で
「Imagine there's no heaven 想像してごらん、天国なんてないんだと」
と歌っていますが、根底には、キリスト教を中心とする社会の束縛から
逃れたい思いがあるんだと考えます。では、今回はこのへんで。
 

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