刃牙らへん 第1巻 | 物語の面白さを考えるブログ

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『刃牙らへん』第1巻を購入して読みました。

1991年の連載開始以来、タイトルを変え巻数をリセットしながら続いている「刃牙」の第6シリーズ。

 

『グラップラー刃牙』全42巻

『バキ』全31巻

『範馬刃牙』全37巻

『刃牙道』全22巻

『バキ道』全17巻

『刃牙らへん』第1巻~

 

数えてみたら、通算でちょうど150巻目に当たるのですね、本作は。

ちなみに、「外伝」と「外伝ピクル」は数に入れていません。「SAGA」はレーベルがヤングチャンピオンコミックスなので除外してあります。

 

まず浮かぶであろう疑問が、タイトルに関して。

『刃牙らへん』の〝らへん〟ってナンジャラホイ?

「刃牙の周辺の人たち」というほどの意味でしょう。

そのタイトルが示すとおり、第6シリーズは、主人公・刃牙を放置して、脇役にスポットを当てるお話になっています。

刃牙くんが最強格になってしまい、扱いが難しくなったため、主人公の関与しない戦いを描く方針を採用したもよう。

バトルものでよく言われるのが、主人公の戦いより、脇役同士の戦いの方が、勝敗が読めないから面白い、ということ。

それを実践してしまう板垣先生の発想と胆力よ!

実際、第1巻に、刃牙は登場しません。扉絵のみの出演という扱い。先生、本気だな。

 

主人公不在とはいえ、中心的人物はいます。

それが刃牙の異母兄、ジャック・ハンマー。

強キャラなのに、――いや、強キャラであるからこそ、これまで新キャラの強さを示す指標(いわゆる〝かませ〟)として扱われてきたジャック。

作者自らがそれを「不当な扱い」と認め、強キャラとしての復権を果たさせるべく、〝らへん〟の中心に据えたものと思われる。

しかし……ジャックもやっぱり、扱いが難しいキャラなんだよなあ。

その理由は、彼の使う技にあります。

噛みつき。

そう、ジャックは噛みつきを〝武器〟として用いるのです。

チタン製の歯(インプラント)に、ヤシの実の繊維すら噛み千切る咬合力を備えたジャックの噛みつきは、凶器に等しい。

しかも、数度の敗北を経て、噛みつくという行為の単純さからくる弱点を克服し、噛みつくまでのプロセスをシステム化した「噛道」(ごうどう)という流派まで立ち上げてしまったのだ。

最強の座へ昇りつめるべく、噛みつきという「弱者の非常手段」を恥じることなく採用し、「噛道」という理合にまで昇華させたジャック。

こうなると、対戦相手は身体欠損必至である。

――これが扱いが難しい理由。

懐かしの既存キャラが再登場するのは嬉しいものの、ジャックと戦って不具になるさまを見るのは忍びない。――読者として、ジレンマを感じる。

だからと言って、欠損を回避するために噛みつきを失敗させれば、ジャックの強さとキャラクター性に説得力を欠いてしまう。――このへんには作者としてのジレンマがあるものと思いたい。

ジャックというキャラクターをどのように扱い、物語を成立させるのか――。

それが『刃牙らへん』の(メタ的な)見どころと言えましょう。

 

ジャックの最初の対戦相手として名乗りをあげたのは、斬撃空手の第一人者・鎬昴昇。

鍛え抜かれた指先は、バスケットボールさえ破裂させる鋭利さを備え、対戦者の神経を切断する〝紐切り〟を得意技とする。

視神経が首に通っているというマンガならではのウソ知識を広めた第一人者でもある。

第1巻では、ジャック戦に向けた鎬昴昇の稽古の様子が描かれます。

斬撃 VS. 噛みつき――流血必至の戦いの行方はいかに?

待て、次巻!