カードの王様 全9巻 | 物語の面白さを考えるブログ

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『カードの王様』

著者:立野真琴

白泉社(花とゆめCOMICS)

 

「遊戯王」のまとめサイトを見ていたら、名前が挙がっていた 『カードの王様』。

トレーディングカードゲームをテーマとした漫画なのですが、コンボ技の説明が 『遊戯王』 の「決闘者の王国」編に似たノリだったので、猛烈に読みたくなって全巻ヤフオクで購入しました。

 

1巻の1刷が1999年。入手した品が6刷で2001年発行。

20年前の本とは思えないほど状態が良好でした。前の持ち主様に感謝です!

 

あらすじ:

従兄の風真保に勧められ、人気カードゲーム「CHAOS」に興味を持った水見まなみ。購入したスターターセットでレア中のレアカードといわれる「大魔道士サガン」を引き当ててしまい、各方面のデュエリストから狙われる日々が始まる。だが、周囲の仲間の協力や時折夢に現れるサガンが示すヒント、持ち前の強運にも助けられ、まなみは順当に勝ち進んでいく。そんな彼女の前に、サガンに酷似した男・荒木涼が現れた。

(ウィキペディアより引用)

 

 

作中に登場するカードゲーム「「CHAOS」だけど、ルールの詳細は最後まで不明。

読み取れた情報をもとに説明を試みると――。

 

・カードには天使・悪魔・神・魔道士・精霊・アイテムなどの種類がある。

・試合に使用するデッキは70枚。同名カードは3枚までしかデッキに入れられない。2枚もしくは1枚しか入れられないカードも存在する。

・基本ルールはポーカーと同じで、5枚の手札を入れ換えながら役を作っていく。

・同じ種類・レベル・種族・属性・現象などで役が決まる。

・役が揃ったら相手に攻撃を仕掛けることができる。カードにはレベルが記されており、レベルの数字が攻撃力となる。役や〝イベント〟によって、攻撃力は増減する。

・攻撃を仕掛けられた側は、一度だけ手札の交換ができる。役が揃えば、役を場に出して、相手の攻撃を「防御」することができる。また、「攻撃」に対して「攻撃」を返すこともできる。←このあたりの詳細が不明。「防御」で受けた場合と「攻撃」で受けた場合で何が違うのか? 役が揃わなければ、そのまま相手の攻撃を受ける。

・攻撃が通れば、その数値分、相手の持ち点が減る。持ち点は1000点で、0になると敗北。

・プレーヤーは天使軍と悪魔軍に分かれて戦う。天使と悪魔のカードは、自らの種族と異なる軍側で使用された場合、レベルが半分になる。神・魔道士・精霊は中立なのでレベルは変動しない。レベルの記されていないカードも存在する(アイテムカードなど)。

・カードの効果で〝イベント〟を発生させることができる。

 

勝負の醍醐味は、この〝イベント〟なんですよ。

「遊戯王」で言うところの魔法・罠・モンスター効果みたいなもので、自分や相手の攻撃力を増減したり、相手のイベントを無効化したりできます。

どうしてそういうイベントが発生するのか、その理屈の自由度が高くて、読んでいて楽しい。

自由度が高いと言っても、デタラメではもちろん駄目で、カードのモチーフとなっている神話・伝承・宗教などの知識をもとにして理屈を組み立てなければならない。

それが有効かどうかは、審判がルールブックに基づいて判断する。

ルールブックに載っていない事態も起こり得るが、そのときは、説得力があれば通る!!

な、何だってーッ!!! ルール、ガバガバやんけーッ!!!!

だが、それがいい。だから楽しい。

相手の繰り出す必殺イベントを、主人公がどういう理屈で切り返して逆転するのか?

そこが見どころ。

カードゲームのふりをした論破バトルという評があったけれど、言い得て妙。

もう少し穏当に評するなら、テーブルトークRPGの要素が強めのカードゲームといったところ。

以下、イベント返しの一例。

 

 

「ヘルハウンド」のスリーカードに「大天使ガブリエル」の効果を適用し、イベント「ガブリエルの猟犬」が発生。本来、単独でしか行動しない「ヘルハウンド」が群れをなし、相手の命を奪う。回避できない場合はゲームに敗北する即死コンボである。

それを「ピクシー」の効果で発生させたイベント「ピクシーの迷路」で回避したシーン。

ヘルハウンドに関する知識の中から「黒犬街道」というキーワードを探し当てたことにより、主人公は手札にあった「ピクシー」による切り返しを思いつきました。

この「言った者勝ち」感が初期の 『遊戯王』っぽくてたまらんのです。

 

少女マンガ+カードゲームという珍しい組み合わせの本作。

少年マンガだと、大会で優勝を目指したり、世界の危機をデュエルで救ったりしますが、こちらは少女マンガらしく、主人公・水見まなみを中心とした恋模様がストーリーの主軸となっております。

恋敵同士がデュエル! 私のために争わないで……。もう二人を止められない。今は黙って見守るしかない……的な世界観が、「遊戯王」に慣れた私にはとても新鮮でした。

冷静に考えれば、カードゲームで世界の破滅を止める方がオカシイわけで、絶対に負けたくない相手(恋のライバル)に意地を張る方が、人間心理としてははるかに自然なのでした。

読者視点で言うと、世界の命運を背負った主人公がデュエルする場合、基本的に負けないだろうと予想しながら読むものですが、懸かっているものが恋心だったら、負けても世界が破滅するわけではないので、主人公が負けるのは充分にあり得る事態であり、勝敗予想が難しくなる、という利点はあります。

バトルもので、脇役同士の戦いが面白いと言われるのは、勝負の行方が読みにくいからなんですよね。

勝負の行方と同時に、まなみちゃんの恋の行方も気になって、けっこうドキドキしながら、面白く読むことができました。