クラッシック音楽を劇中で使ったアニメとして、アニメファンが真っ先に思い浮かべるのは、『新世紀エヴァンゲリオン』 でしょうか。
私の場合は 『ハーメルンのバイオリン弾き』 になります。
『ハーメルンのバイオリン弾き』 は、渡辺道明氏の描いたファンタジー漫画。
「月刊少年ガンガン」連載。コミックス全37巻。
アニメは、劇場版が作られた後、テレビアニメ(全25話)が制作されました。
私はアニメ → 原作と進みました。アニメはシリアスなダークファンタジーだったのですが、原作はコメディ色が強かったので、面食らったことをおぼえています。
ジャンルは異世界ファンタジー。
人間と魔族が対立する世界観。
主人公・ハーメルは、大魔王ケストラーと、人間の女パンドラとのハーフ。
ヒロインは、人間世界の盟主的存在であるスフォルツェンド公国の王女・フルート。
スフォルツェンド公国は、大魔王ケストラーを封印した「パンドラの箱」を管理しており、魔族は大魔王を復活させるべく公国に戦いを仕掛ける。
ハーメルとフルートは、運命に導かれるように、戦いへ巻き込まれていくのだった。
――というのが、テレビアニメ版のストーリー。
で、どこにクラシック音楽が登場するのかというと――。
ハーメルの使う能力を「魔曲」といいます。早い話が、魔法効果のある音楽です。普通のファンタジーだと、呪文を唱えて魔法を発動しますが、「魔曲」は、呪文の代わりに楽曲を使用します。この楽曲が、異世界ファンタジーであるにもかかわらず、なぜか〝こちら側の世界〟のクラッシック音楽であるというわけ。ツッコんじゃダメよ。
私はそれまで、ろくすっぽ聴いたこともないくせに、クラッシック音楽は古臭くてダサい音楽だと思っていたのです。ところが、ハーメルの奏でるモーツァルトの「レクイエム」を聴いたとき、この認識が誤りであることに気付きました。クラッシックって、かっこいい! と。
ハーメルはバイオリン弾きであり、携行する巨大バイオリンで魔曲を奏でます。
漫画は音が出ませんけれど、アニメは音を出さなくてはいけません。
ミサ曲である「レクイエム」を、バイオリン用に編曲して演奏する必要があります。
音楽担当の田中公平氏は、巨匠モーツァルトの曲を自分が編曲することに、大変なプレッシャーを感じたと話しておられます。
そのプレッシャーを撥ね退けて完成したバイオリン・ソロ版の「レクイエム」がこちら。
これを聴いて痺れた私は、原作とアニメで使用されたクラッシック曲のCDをすべて購入するという暴挙、否、快挙に出ました。
とはいっても、所詮、にわかクラッシックファンなので、指揮者や楽団による音色の違いを聴き分けたり、作曲家や音楽史の薀蓄を語るといった、高度なことはできません。
ただ、聴いたことあるよ、というだけです。
そんな中で印象に残っているのが、ベートーヴェンの「交響曲 第7番 第2楽章」。
これは原作には登場せず、テレビアニメ版のみで使用されました。
魔曲としての「第7番」は、〝回復魔法〟です。生命力にあふれる曲調が傷ついた兵士を癒しました。
そう思って聴いてみると、本当に〝いかにも生命が賦活しそう〟な音楽に聴こえるので不思議です。
原作が完結していない時点でアニメ化したため、アニメは2クール目から、オリジナルストーリーとなりました。
ケストラーとパンドラの馴れ初めを描いた第24話で使用されたのが、グリーグの「ペール・ギュント」―― 第1組曲より「山の魔王の宮殿にて」。
ケストラーが魔王としての本性を顕すシーンのBGMとして流れました。怖かった。
同じく24話のラスト、ハーメルの双子の妹・サイザーが魔族に連れ去られるシーンでは、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」が使用されました。
幼いサイザーは、母と兄から引き離され、魔族の中で、独り、育つことになります。
美しくも悲しい戦慄が、物語にマッチしていて、鳥肌が立ちました。
魔曲はサントラに収録されています。
サントラなので、BGMやOP・ED曲も入っています。
1クール目の主題歌「MAGICAL:LABYRINTH//」は、アルフィーの高見沢俊彦さんが作詞・作曲を担当。
2クール目の主題歌「未完成協奏曲」の歌唱を担当したのは、オペラ歌手の錦織健さん。
何気に音楽面が豪華なアニメなのでした。
第1オープニング曲
第2オープニング曲
サントラ、当然持っていたんだけれど、引っ越しのとき、売ってしまったのよね……。