写真家の小林紀晴さんのフォトエッセイ集です。
文章は少ないのですぐ読めると思います。
私は自分の人生の中でバックパッカーになったことはないし、もちろん、もしこれから先また海外に旅行するとしても名の通ったホテルに泊まるような旅行しかしないだろう。
インドに行くことは一生ないと思うし、中国だって行ったことがない。
それなのになぜかこの手のアジア旅行記がとても好きなのだ。
絶対に自分ができないことだから好きなのかなと思う。
アジアの一国に住む者としてアジアには興味があるわけだから。
アジアの景色の写真を見るのが好きだし、そこから様々な国の匂いや肌触りを想像する。
もちろん実際に行った人間にしかわからない事があるとわかっているけれど、ほんのちょっとその欠片だけでも知りたい見てみたいと思う。
日本ほど安全な国はなかなかないだろうから、この本に出てくるどの国の少年もある意味したたかで力強い。
それでもまだ子供だから、百戦錬磨の犯罪もものともしない大人の話ではないのでその姿を想像しやすい。
これは会社を辞めてスタートしたばかりの作者の自分探しの旅なのかもしれない。だからこのエッセイ集には少年の写真が多い。
この文章を読んで、そうだなと思った事がある。人が一生のうちで出会える人間の数はたかが知れている。出会えないで終わってしまう何十億の人に思いを馳せてみる。
たとえ今日すれ違った人間がいてもその人ともまた二度と会えない可能性の方が高いだろう。その一人一人に人生があり思いがある事を思える自分でありたい。すれ違えたことすら奇跡なのだから。
違う文化の者同士が触れ合うときにお互いを尊重できる関係でありたい。どちらかだけが不当に差別されたり我慢を強いられるという事がなくなって欲しいという純粋な気持ちは私の中にもある。そしてそんな綺麗事をと冷笑する気持ちもある。いつもその狭間で苦しんでいる。そんな弱い自分を自覚する。