ワンダーワールド 光暗戦争編 第3話 卵泥棒ギー | 白龍のブログ 小説とかを描き続ける機械

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れなたちの事務所には、各地から様々な依頼が集まる。
一同はこの依頼をこなす事で日常の暇をつぶしている。
今日もまた、遠方から依頼がやってきた。

舞台は砂漠。
どうやらここに、卵を盗むモンスターがいるらしい。
市場に売り出された希少な卵を次々に盗むそのモンスターの名前はギー。ギーは灼熱の環境下でも素早く走り、人間の足ではとても追いつけない。
そこで今回、解決に出向いたのはドクロとテリーの死神兄妹、そして粉砕男だ。



頭上と足元、熱が挟み撃ちにしてくる砂漠の街。
恵まれた気温のテクニカルシティに暮らす三人はすっかり参っていた。
「暑いな…大丈夫かドクロちゃん。顔が赤いが」
粉砕男は顔がやたら赤いドクロを心配しているようだ。
「え、ええええ!だ、大丈夫大丈夫!」
忙しない様子のドクロ。
実は彼女は粉砕男に好意を抱いているのだ。思いを伝えられる日がいつになるかは分からないが…。

多くの市場が揃い、暑さにも負けず…というよりも、もはや慣れきった人々が行き来する町中で、三人は依頼主の卵屋のもとに辿り着いた。
卵屋は筋肉に恵まれた逞しい男。顔も強面、背丈二メートルは軽く超えている大男。粉砕男と目線を合わせられる身長だ。
「来てくれたのですね!」
嬉しそうな卵屋。見た目こそ威厳の塊だが、優しい口調だ。

三人は改めて事情を聞かされた。卵泥棒モンスター、ギーが彼の店から卵を盗み取っていく事件。立て続けに卵を盗まれ続け、昨日ついに十二回目となったらしい。
そんなに商品を盗まれてはたまったものじゃないだろう。
ギーの巣は、砂漠のサボテン地帯にあるのだという。
こうしている間にも、ギーは次の強奪計画をたてているだろう。
善は急げだ。暑さにも負けず、三人は早速砂漠へと飛び出した!

「…で、何であなたが一緒についてくるのよ」
サボテン地帯へ続く砂丘。
三人が歩いていくなか、何故か卵屋も一緒についてきていた。
卵屋は腰に手をつけて言う。
「私の店の卵です。それを奪取する為に、少しでも貴方がたのお手伝いがしたいのです」
テリーは熱を受けにくい骨の体で、卵屋に親指をたてる。
「なかなかガッツなやつだな。でも無理はするなよ」
「お気遣い感謝致します」
頭を下げる卵屋。そうこうしてる間に、すぐそこまでサボテン地帯が見えてきた。
緑の草達が絨毯のように広がっており、その上にサボテンが無数に立っている。サボテンだけではなく、小さな洞窟もある。
卵屋は洞窟を指さした。
「あそこです!あの洞窟がギーの巣です!」
それを聞くなり、ドクロは早速ファイティングポーズをとる。
「よーし!突撃ー!」
砂を散らしながら、走っていくドクロ。だがテリーが何かを予感したのか、骨の手を突き出して止めようとする。
「ま、待て!我が妹!!」
え?と走ったまま振り返るドクロだが…。

突如、ドクロの頬を何かが掠めた。

「!」
息を呑むドクロ。

凄まじい速さでドクロの横をすり抜け、頬を切りつけたのは…小型の恐竜のようなモンスターだった。
大きな目に、ピンクの模様を持つ。両手には白い爪を生やしており、これが今正にドクロに傷をつけた武器だ。
「そいつがギーです!」
卵屋の声に熱がこもる。宿敵を前に、感情が溢れてるようだ。
ギーはかなり足が速く、ドクロの周りを走り回る。
今足元は草ではなく砂。ギーが走る事で砂煙が巻き上げられ、視界が悪くなる。
テリーは魔力で骨を召喚し、ギーに投げつけるが、狙いが定まらない。ドクロは何とかギーから離れるが、ギーはこちらの照準を合わせづらくしようとしているようで、あちらこちらにとにかく動き回る。悔しそうに次弾の骨を握るテリー。
「くそ!葵がいてくれればキツイ弾丸を叩き込んでくれるってのに」
「テリー、ここは男らしくパワーで攻めるぞ」
粉砕男は地面を踏みつけ、怪力で衝撃波を走らせる!地面が砂を吹き出しながら割れていき、ギーに突き進んでいく。
…が、ギーはこれも回避してしまう。粉砕男は悔しそうに歯を食い縛りつつも、テリーに指示する。
「今だ!」
テリーは骨を投げつけ、滞空してるギーを撃ち落とそうとする。しかしギーの運動神経は異常域だ。滞空中であるにも関わらず軽やかに横に動き、テリーの攻撃を回避してしまう。
地面に突き刺さる骨。ギーは更に加速し、テリーと粉砕男目掛けて爪を振り回す!
攻撃を食らいそうになる二人だが…。
「先走った責任とるわ!」
ドクロが二人の前に飛び出し、ギーの爪の衝撃を両手で受け流し、防いでくれた。
バク転して距離を離すギー。
テリー、粉砕男、ドクロの三人が並び、動き回るギーを睨みつける。粉砕男は次の攻撃が来る前に、早口で話す。
「この砂漠はやつのテリトリーだ!街まで引き寄せ、砂漠の戦士に協力してもらおう」
確かにここでは砂煙もたつし、街よりも暑さが酷い。
何よりギーはこの環境に慣れきっている。ここではどう足掻いても不利だ。街に引き寄せ、三人より四人、四人より五人。
上手く攻撃を流しつつ、街に向かおうとしたが…。

…ギーはターゲットを切り替えた。その視線は、卵屋に向いていた。
それをいち早く察知したのはドクロだ。逃げるように伝えようとしたが、その頃には既にギーは爪を振りかぶり、飛翔していた!
「よ、避けてー!!」
そう叫ぶしかなかった。一般人が、こいつの攻撃を避けられる訳がないのに…。

「ふん!!」
…と思いきや。
「おら!!」
卵屋は、ギーの攻撃をかわし、その首を素早く掴み上げた。
「え?」
三人が呆然とする。ギーは掴まれた首を振るう事で拘束から逃れ、またもやバク転して距離を離すが、卵屋は砂の地面を蹴り、離された距離を一気に取り返す。
そして、ギーも反応できない程の速度で蹴りを打ち込んだ!
ギーは明らかにダメージを受けていた。
「よくも今まで私の卵を盗んでくれたな…!痛みで償うが良い!」
卵屋は目にも止まらない速度でギーに拳を叩き込み続け、その衝撃で彼の背後には砂の壁が展開された。
地面に叩きつけられるギー。間髪入れずに顔面を殴りつけられ、自慢のスピードを活かす前に動けなくなる。
「喰らえ!列氷掌(れつひょうしょう)!」
掌を突き出してギーに叩きつけると同時に、周囲に氷が形成される!
「破壊光弾!!」
空中に飛び上がり、両手から次々に光弾を発射、ギーの周囲に小爆発が起きる。
「100万度熱光線!!」
最後に金の光を放ち、ギーのいる場所に大爆発を発生させた!
あまりに見事な攻撃の嵐だ…。テリーが叫ぶ。
「…お前、強かったのかよ!!!」

洞窟の奥にはこれまで盗み出されてきた卵が数多く眠っていた。ギーは遠くに逃げていき、別の場所に引っ越していったようだ。
四人は街に戻り、卵の奪還を成功させた。
「ほんとに、貴方方がいなければどうなってた事か…」
「どうにでもなるだろ…」
呟くテリー。
卵屋はお礼として、卵をプレゼントしてくれた。
その数、五百個。
「どんだけ盗られてたのよ!!」
大量の卵を抱えながら、三人は砂漠を後にした…。

そんな騒がしい事件が巻き起こる最中、地球から離れたとある星にて、ある事が起きていた。

黄金の装飾品があちこちに並ぶ大広間にて、白く輝く髭を持つ巨人が、巨大な玉座に座っている。
その足元では、白いアーマーを着た筋肉質で黄金の怪人が、一人の老人に鞭を打っている。
「このクソが!コウノシン様に土下座せんか!!」
猛烈な痛みを感じさせる音が響く。老人は痛みと恐怖に震えながらゆっくりと頭を下げる。
その周りには民衆が並べられていたのだが…彼等の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。痛めつけられる老人を見つめながら、不気味に微笑んでいる。
笑顔なのに、感情がないような…無機質な笑みだった。
老人は小さな声を発する。
「コ、コウノシン…様…あなたに永遠の忠誠を…」
「声が小せえんだゴミがあ!!」
怪人は今までにない勢いで鞭を叩きつけ、思い切り蹴飛ばした。
老人は派手に転がり、壁に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。痣まみれの体が、苦痛を物語っていた。
「へっ、ゴミクズが。コウノシン様に歯向かうからこうなるのだ」
民衆達は、尚笑みを浮かべていた…。



その光景を、ある人物が柱の陰から息を潜めて見守っていた。
「お前の死は無駄にはせん、ロウコウ…」
…そこから見守っていたのは、白髪の青年。
彼の表情は、民衆とは正に真逆であった。