ワンダーワールド 光暗戦争編 第2話 テツガグマとの戦い | 白龍のブログ 小説とかを描き続ける機械

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大気圏を超えた暗黒の空間…宇宙空間。
数々の星が煌めく中、一つ黄金の輝きを放ちながら進む宇宙船があった。

宇宙船に乗り込んでいたのは、白い鎧を身に纏った怪人達だ。窓の外に広がる暗黒の宇宙を覗き、話し合っている。
「宇宙の煌めき…何としてもこの宇宙を守らなくてはならんな」
「その為に、闇の一派には何としても消えてもらう必要がある」
宇宙船は一定のルートを辿って宇宙を進み、ある場所に行き着く。

そこは、紫色のオーラを纏う惑星だった。禍々しい魔力を常に放ち続けるその星を、怪人達は睨みつけている。

…しばらく経つと、その星から何かが飛んできた。
黒いアーマーを身に纏う兵士達だ。兵士達は剣や槍を手に、宇宙船にハッキリとした敵意を向けている。
宇宙船の怪人達はハッチを開き、手元に白い槍を形成、一気に飛び出していく。
「我ら白の刺客、やつら闇の一派を迎え撃つ!殺せ!ぶち殺せー!!」
宇宙空間に飛び出していく怪人達。闇の一派と呼ばれた黒い怪人達、白の刺客と呼ばれた白い怪人達が迫り合い、互いの切っ先を突き出し合う。
彼等の腕力と槍の鋭さは、アーマーすらも貫いた。互いの胸を、腕を、腹を、頭を貫き合い、無重力で浮かび上がる血。黒、白の光景に赤色が塗られていく。

戦いの中、一つの小型ドローンがその戦いを見守っていた。

「低俗な光が…」
低く、重々しい声が、ある場所で囁かれていた。

紫の絨毯が敷かれた広間にて。玉座に座った一人の怪人が足を組んでいた。
黒く、長い髪に角を生やしている。
両手の甲をよく見ると、鱗があった。人間と似ているが、人間とはまた異なる存在だ。
「マガツカイ様!!」
広間に一人の兵士が飛び込んでくる。兵士はその男…闇王マガツカイの前で膝をつき、深く頭を下げる。
「白の刺客の勢いは予想以上、前衛部隊は全滅しました!いかが致しましょう!?」
慌ただしく語る兵士は後を追われているようだ。それに反してマガツカイは表情一つ変えない。





「闇の一派が何を怯えている。貴様のような臆病者は不要だ」




…その言葉に、兵士は何か嫌な予感がしたようだ。目を見開き、顔をあげる。
…その目には、マガツカイの手のひらが映っていた。
「面をあげろとは言っていない」
冷たい一言と共に、紫の閃光が放たれる…。


「ぎゃあああああああ!!」




…マガツカイは頬杖をついた。
目の前に散った、元々人型だった黒焦げの塵を踏みつけながら。
「やつらが掲げる光など、我らの闇の前ではクズ同然。せいぜい逃げ惑う事だ。鮫の前で小魚はどれだけ無力か、知らせる時が来たようだな」



…宇宙時間で同時刻。

白い光に満ちた神々しい王国にて、白いアーマーを纏った兵士達が慌ただしく動いていた。
「コウノシン様!コウノシン様ー!!」
宮殿のような場所に駆け込んでいく一人の兵士。
沢山の兵士が並べられた通路を駆け抜けていき、ある部屋に飛び出した。

そこには、黄金のマントを羽織り、輝く髭を持つ巨人が玉座に座っていた。
「コウノシン様!マガツカイ率いる闇の一派の一部隊を、白の刺客が全滅させたとの事です!」
「御苦労だった」
コウノシンと呼ばれた巨人は、辺りを見渡した。

…暗い表情の兵士達が俯いている。陣形こそ完璧だが、その表情は曇りに満ちていた。
…しかし、コウノシンが右手を上げると、その表情は一変。
陣形と同じく、規則正しく、明るい笑顔を浮かべる。
「闇の一派を皆殺しにするぞ」
「お任せください、コウノシン様!!」
兵士達は一斉に声を上げた。



「…」
…彼等が騒ぐ中、一人の白髪の少年だけは、どこか悲しげな表情をしていた。





二つの勢力が迫り合うなか、地球ではれなたちが修行に励んでいた。
岩山の岩盤を蹴りつけ、砕き回るれなたち。
今日のメンバーはれなとれみのアンドロイド姉妹、ドクロとテリーの死神兄妹だ。
「ふぉ〜〜〜!!」
甲高い声を発して気合を溜めるれな。聳え立つ岩の壁を見上げ、高所目掛けて飛び跳ねる。そして、岩盤を蹴飛ばす!

…すると、岩壁全てがひび割れ、土砂を巻き上げながら崩れ落ちてしまう。
崩れ落ちる岩壁をポカンと見上げるドクロとテリーの横で、れみが短い腕を振り回して怒ってる。
「あああ何やってんねん!!」
うっかり力加減を間違えたらしい。れなは頭を掻きながら、瓦礫と化した岩壁を見下ろしていた。
「これじゃ修行ができないよおおおお!!」
岩を両手で持ち上げながら泣き喚くれみ。そんな彼女の肩に、テリーの骨の手が置かれた。
「まあまあ。れなだってわざとじゃないんだから…。とりあえず今日は帰ろうぜ」
その日の修行は中止となり、それぞれの自宅へ帰る事に。


まだ昼過ぎだった。
れなとれみは自分達の研究所に帰る。
彼女らの家はこの研究所、そしてもう一つはあの事務所だ。何かしら戦いの用件がある際にはあの事務所に行くが、特に目的もない平和な日には、この研究所で過ごすのだ。
「もう帰ったのか?」
初老の優しそうな男性が二人を出迎える。彼は二人の世話をしてくれる博士だ。
「そうなの博士!!お姉ちゃんが岩をぶっ壊しちゃってさあ!!」
「はは…ヤンチャもほどほどにな、れな?」
博士の手がれなの頭に乗る。
撫でられるれなの顔は嬉しそうだった。
博士との付き合いは長い。それでもこうして撫でられる事は、言葉にならない嬉しさがある。初めての事のような嬉しさがあるものだ。

二人の自室はニ階にある。
れみはゲームでもしようかと軽やかな足取りで自室に入るが、一方でれなはやる気のない顔であくびをしている。
「ん?お姉ちゃんゲームしないの?」
「ああ、眠くて」
ベッドにその身を預けるれなの姿に、れみは驚いた。
「かーっ!真っ昼間から寝るなんて、何てやつ!!」
まあいいやとばかりにテレビをつけるれみ。コントローラーを持って準備万端だ。
れなも目を閉じて眠る準備万端。アンドロイドにだって、睡眠は必要だ。



…そんな中、一階では博士がある客人を出迎えていた。
その客人は、青い髪の女性だった。黒いスーツ姿で、高級そうな鞄を提げている。
博士は、ため息をついた。


「また貴女ですか…ブル厶博士」
ブルム博士と呼ばれた女性と博士は、机を挟んで向き合う。二人に挟まれる二つのコーヒー。立ち上る小さな煙が、二人の視界に下から入ってくる。
「改めまして、ブルム=マガブマル・ロルヴァーム・アザヤーブ・ツカイルです。本日もよろしくお願いしますよ」
長い名前が凝縮された名刺を差し出すブルム。博士は名刺を受け取って頭を下げつつもこう言った。
「お断りしたはずですよ。私は貴女方の研究には参加できません」
神妙な面持ちの博士。ブルムは彼に顔を近づけた。
「…アンコウ鉱山。あそこには人類の進歩に必要不可欠なエネルギーが集中しています。アンコウ鉱山を開拓すれば、より多くの技術、より多くの科学に繋がる多くの物資が見つかります。貴方だって科学者。夢のような話である事には変わりないでしょう?」
「確かに私とて科学者の端くれ。ですが命のリスクを伴ってまで、理想を追える程よくできた人間ではないのです」
博士は依然として表情を変えない。
…いや、よく見ると違う。ほんの僅かな変化が出ていた。
小さく、静かな怒り、そしてそれ以上の呆れを感じさせる微妙な変化が、彼の顔に表れていた。
「アンコウ鉱山のエネルギーは確かに強力。しかしそのエネルギーはまだ人類には早すぎます。以前私が勤めていた物質環研究所でもアンコウ鉱山の調査は行いましたが、そのエネルギーの波で多くの研究員が命を落としました。…また同じ過ちを犯すのですか」
ブルムはコーヒーを手に取った。湯気が揺れ動く。
「希望を得るには犠牲が必要です。昔から人類はそうしてきたではないですか。戦争だってそうです。平和と発展を勝ち取る為、犠牲者は欠かせません。貴方のその甘い考え、近い将来後悔しますよ」
彼女はコーヒーを飲み干すと、頭を下げた。
そして、鞄から何枚か資料を漁り出し、博士の前に置く。
「読めば貴方の気も変わります」
その一言を最後に、ブルムは背を向け、研究所から立ち去った。
博士はしばらくその場に座り込んでいた。
「…人間は同じ過ちを繰り返す…。何とか止められないものか」
置かれた資料紙を集め、研究室に移動させようとする博士。

「何してるんです博士?」
博士は驚きの声を上げた。
振り返ると、れなとれみが不思議そうにこちらを見つめていた。

「いや、大丈夫だ。お前達には関係ない事だ。また研究の話が来てね。どうしようか考えていたところだ」
二人は顔を見合わせた。…博士が大丈夫と言うならきっと大丈夫。二人はそう考え、適当に遊びに行こうと玄関のドアを開ける。




…その時だった。





「ぐあああああ!!て・め・え・らかーー!!!」
突然恐ろしい声が響き渡り、強風が二人の髪を激しく揺らす。
玄関のドアを開けた瞬間、何かが怒鳴りつけてきたのだ。

…現れたのは、石の鎧に身を包む熊のようなモンスターだった。
全く見た事もない相手に怒鳴られ、二人は混乱する。
熊モンスターはかなり興奮しており、両手を地面に叩きつけて乱れ怒る。その腕力で、地面が揺れていた。
「俺が気持ちよく寝てる時に大量の岩を落としてきたのはてめえらだな!!」
修行の時に岩壁を崩したあの時だ。気づかなかったが、あの時こいつが眠っていたのだ。
流石にれなは頭を下げる。
「ごめんなさいほんとにごめん!力加減を間違えちゃって」
「フンガー許さねえ!!この宇宙が滅び、再び誕生するまで呪ってやるわ!!その手始めに、この研究所を破壊してやる!」
モンスターは張り手を突き出して敵意を散らす。
「ごめん!ホントにホントにごめん!!研究所だけは壊さないで!私を殴れ!さあ殴れ!」
四肢を広げるれなだが、モンスターはれなよりも研究所の壁に平手打ち!
壁に大穴が空いてしまう。奥では博士が呆然と立っていた。
これを見て、ようやくれなとれみは拳を握る。
「悪いのはアタシだけど、ここを壊される訳にはいかない!!」
「ほざけこのクソ野郎!!このテツガグマ様の剛力で散れー!!」
ようやくれな目掛けて平手打ちを仕掛けてくる!
れなは瞬時に構えをとり、テツガグマの手を受け止める!
思った以上の力だが、受け止められない程ではない。地面に足をめり込ませ、押し返す!
テツガグマは腰を深く落として気合を高め、突進してくる!
れなは再び両手で防ごうとするが…。
「えーい!私も混ぜろ!」
れみが横から飛び込み、拳を炸裂させた!よろめくテツガグマ。
「畜生、このクソガキ!!」
拳を振り下ろすテツガグマ!れみは飛び跳ねてそれをかわす。
テツガグマはパワーはあるが、速さはいまいちだ。れなとれみは自慢のスピードを活かし、周囲の家や木の上に飛び込み、動き回ってテツガグマを撹乱する。
頭をあちこち動かし、狙いが定まらなくなるテツガグマ。完全に目を回したところで、二人は同時に飛び込んで蹴りを放った!
「ぐはああ!!」
衝撃で、テツガグマはあっという間に気絶する。仰向けに倒れたテツガグマを見下ろし、二人は地上に降り立つ。
「迷惑なやつ…って言おうとしたんだけど、悪いの私なんだよなあ」
頭を下げるれな。れみは腕を組んで、「全く」と言った様子だ。

「ん?」

…倒れたテツガグマが突然震えだした。
いや、正確には違う。テツガグマのすぐ下の地面が震えているのだ。
地震ではない。その一部分だけが揺れている。
どういう事だと、二人は間近で観察しようと顔を覗き込む…。

「ごらあああ!!俺が地中で寝てるところに変な熊を地表に叩きつけたのはてめえらかあああ!!」
怒号と共に地面に穴が空き、巨大なアリジゴクのようなモンスターが現れた…。

「またこのパターンか!!」
二人は頭を抱えた。



銃弾キャッチ