ワンダーワールド 悪鬼災来編 第47話 鬼神到来 | 白龍のブログ 小説とかを描き続ける機械

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突如現れた謎の兵器、エクスクローMKⅡ。
れみとドクロが蹴りを決めようとすれば腕で軽く薙ぎ払われ、テリーの骨飛ばし、百戦鬼の槍からの電撃は赤い光の壁を出現させて防ぎ、ラオンと叡光鬼の斬撃には手の平から刃を射出し、それぞれの武器を叩きつける!
火竜は手から火球を放ちながら遠距離戦を仕掛けるが、エクスクローは遠距離戦にさえ特化していた。
指先から無数の弾丸を発射し、火竜を撃ちまくる!
「ぐああっ!」
既に悪鬼達との戦闘で満身創痍だった火竜はすぐに膝をついてしまう。
すかさずエクスクローはトドメを刺そうと巨大な足を振り上げる!
「させるか!」
粉砕男、エックス、剛強鬼がエクスクローの前に立ち塞がり、足を殴りつけた!
剛腕三人衆の打撃を食らっては流石に応えるようで、エクスクローはゆっくりと仰向けにひっくり返る。
飛び散る土砂に顔を覆いながら、ラオンがナイフでエクスクローの顔面を、葵が胸部に銃撃を仕掛ける!
最後にれみが顔面目掛けて落下、勢いよく踏みつける!!
三人はエクスクローから離れる。手応えはあった。


「まさか、今のは攻撃だったのか?」
エクスクローは…余裕の声を発していた。
そのまま足の力だけで仰向けから起き上がり…体に刻まれた傷がみるみる再生していく。
驚く一同を、エクスクローは面白そうに見下してた。
「おっと、これでも今の再生は最小限に抑え込んだ物だ。エクスクローの細胞が本気になれば、原子レベルまで散っても瞬時に再生可能だ。星を破壊するエネルギーでも、この肉体を消し飛ばすのは不可能だろうな!」
嘲笑うエクスクローの右腕を葵が撃つ。
風穴は空くが…瞬き一つすると直ぐ様治ってしまう。傷ついたのは服だけだ。



…このままでは…。




…そしてれなは、亜華魔姫の猛攻に悪戦苦闘していた。
それだけではない。すぐ近くに突然現れた謎の魔力…エクスクローの力に気づき、仲間達の安否を心配していた。
鬼子は地に倒れ、もはや動けない。
そして、相手する亜華魔姫はもはや全てを破壊せんばかりに向かってくる!
ひたすら左右の拳を叩き込んでくる亜華魔姫。拳を受け止めながら、れなは必死に説得を試みる。
「おい!近くに何か出てきた!お前の部下も危ないぞ!」
「るせぇ!!戦いに集中しろ!!今てめぇを殺す!!それが今の俺の全てだぁぁ!!!」
ダメだ。今の亜華魔姫はあまりにも激しい闘争心に我を失っている。
「これが…亜華魔姫の本性なのか!?」
彼女は仲間の危機より戦いを優先しているが…不思議と卑劣には見えない。
己の強すぎる本能に、鬼の本能に抗えず、暴走しているように見える。
…と、あれこれ考えている内に全力の拳がれなの腹に直撃した!!
「ゴホアッ!!!」
重苦しい叫びをあげながら地面に叩きつけられるれな。
そんな彼女にお構いなしに亜華魔姫は馬乗りになり、ひたすら殴りつけてくる!このまま死ぬまで殴る気だ。
「死ね!!死ね!!死ね!!とっとと死ねぇぇぇ!!!」
叫んでは殴り、叫んでは殴り…とんでもないやつだ。

そんな彼女を見つめるれなの目は…苦痛に満ちていた。
勿論、痛みによる苦痛もある。




しかし…何より、何やり苦痛なのは…。




「…耳障りなんだよボケがぁぁ!!」
倒れたまま拳を弾くれな。
亜華魔姫が一瞬驚いた隙に、れなは倒れた状態からバク転、同時に亜華魔姫の顔を蹴飛ばす!
怯んだ亜華魔姫に、今度はれなが拳を叩き込みまくる!
あまりの速さに、拳の一撃一撃が斬撃と化している。亜華魔姫の美しい着物が傷ついていく。
勿論されるがままではなく、亜華魔姫も再び拳を放ち、そして叫びだす!
「お前が!?お前が俺らを止められると!?悪鬼も人間もこの世の害悪!何もかも消すべきだろうが!!」
「だからそれが目障りだっつってんだろ!!これぐらい分かれやぁアホヅラが!!」
亜華魔姫の顔面に、強烈な拳を叩き込み、即座に踵落としを頭に炸裂させる!
地面に叩きつけられる亜華魔姫。倒れた彼女の腕を掴み、投げ飛ばす!!
二人が動く度に周りの土砂が飛び散る。
「てめぇや悪鬼達を見ていて、何をそんなに頑張ってるのかと思ってた…!それがまさか、消える為だったとは!見損なった!見損なう程尊敬してはいなかったけど…!見損なったぞ!!」
勢いのままに走っていき、蹴りを炸裂させるれな。亜華魔姫は痛みを無視して蹴り返す!
「だったら何だ?我々悪鬼の為に、お前が何かありがたい事でもしてくれるというのか!?」
「ああ、今すぐ教えてやる…!頭の悪いお前らに、選択肢という物を教えてやる!生きるか死ぬか!!」
れなは蹴りを腕で受け止める。
足を掴み、再び投げ飛ばした!
投げられつつも亜華魔姫は飛行して空中で一旦静止、瞬時に溜めた力を発揮してれなに突撃する!
れなも空中飛行し、大気の渦を巻き上げながら殴り合う!
この時、二人は気づいていなかったが、城からは次々に悪鬼達が飛び出し、避難していた。
恐らくエクスクローの魔力を感じているのだろう。

亜華魔姫は暴走する意志のまま、とにかくれなを倒す事しか考えていない。
ならばれなも同じだ。相手が自分を倒す事しか考えてないなら、自分も相手を倒す事だけを考えるのみ。
ひたすら拳を突き出し、相手の攻撃が視界に迫れば手足を構えて受け止める。どちらかが力尽きるまで、これを続けるのだ。

だが…あまりにも夢中になりすぎていた。
二人の戦いの余波で発生した衝撃波により、城の残っていた残骸が崩れ始めたのだ。
軋む音と共に傾いていき、岩を散らしながら倒れてくる残骸。
その下には…避難している小さな子鬼たちがいた。
「あっ…!」
れなが、その光景に気づく。
気を取られた一瞬で、亜華魔姫に顔を殴りつけられ、吹き飛ばされる!
地上に叩きつけられるれな。
れなに追撃を打ち込もうとする亜華魔姫だが…瓦礫が崩れる音と小鬼達の悲鳴が、自然と耳に入る。
それを聞き、亜華魔姫もようやく気づく。
暴走意志が、一瞬だけ消えた。
亜華魔姫は仲間を助けるべく、飛び出そうとするが…!



瓦礫が、止まった。
何者かが受け止めたのだ。

「!!」
れなも亜華魔姫も、息を呑む。

受け止めたのは…鬼子だった。
怯える小鬼の上で瓦礫を両手で受け止める鬼子は、頭から血を流し、苦痛に満ちた表情だった。
満身創痍の状態で、小鬼の命を守ったのだ。

亜華魔姫の動きが、止まった。
しかしれなは…亜華魔姫を攻撃する事なく、鬼子の方へ向かった。
一緒に瓦礫を受け止め、近くに投げ落とす。
膝をつく鬼子…。
れなは彼女の肩を軽くはたき、亜華魔姫に向き直る。


…亜華魔姫は、全く分からないというような顔だ。
先程までの勢いが嘘のように、その場に立ちすくみ、ただただ呆然としていた。
拳も、自然と解けている。
れなは一瞬、なぜこんなにも困惑しているのか分からなかった。
だが、すぐに理解する。


どうせ、何故敵なのに助けるのか、というような事を考えているのだろう。
れなは亜華魔姫に近づきながら言う。
「アタシさぁ、頭悪いから深く考えるの嫌いなんだよね」
亜華魔姫の様子は変わらない。れなが近づいているというのに、視界の変化に気づいていないかのように。
「確かにお前は敵だし、この小鬼達も敵。でも私達…敵味方とか正直どうでもいい。結局最後に、できる限り平和に終わればそれでいいんだわ」
れなは、すぐ目の前まで歩み寄った。

はっ、と気づいた亜華魔姫。
直ぐ様拳を叩き込む!


…が、れなは右手だけでその一撃を受け止めた。
いい加減もう読めてきた。彼女の拳が。
「でも、平和の為なら戦いだってする。戦って戦って、体と体で分かち合う。心と心、話し合いじゃ…限界だってあるからね」




…亜華魔姫は、膝をつく。
そして、顔を下ろす。薄汚れた髪が、重力に引っ張られた。

「わからない。なぜ、悪意から誕生した俺らがここまで慈悲をかけられるのか。なぜ、こんな気持ちになるのか」
「それは今、生きる意味を見つけられないだけだよ」
ゆっくり顔をあげる亜華魔姫。
泣いてはいない。しかし、泣きそうな顔だった。
れなが、手を伸ばす。
「私達と暮らして、探してみない?」


…亜華魔姫は、手をとった。

迷いのない動きだった。

それを見た鬼子が確信する。



亜華魔姫は、口先ではああ言いつつも、生きたかったのだ。
誰にもそれを言えず、自分達自身の存在に苦悩し、迷い続けてきた。
そんな中で、消えるという決心を固め、今回の件に発展させたのだろう。
…そんな決心も、今れなたちによって打ち砕かれた。
れなは、何だか申し訳ない気がしていた。





でも、これで良いのだ。




立ち上がる亜華魔姫。
すっかり落ち着いたようだった。

…れなは、ある方向へ向き直る。
「さあ、乱入者をしばきに行くよ!」
れなは有無をも言わさず、直ぐ様飛んでいった。




亜華魔姫は、黙ったまま後ろを見る。
膝をついたままの鬼子が、笑ってこちらを見ていた。


…どうだ、と言った感じの顔だ。


亜華魔姫は、右手から緑の光を放つ。
鬼子の体が緑の粒子に包まれ、少しずつ体を癒やしていく。


「まだ終わっていないからな」

亜華魔姫の動きに、気品が戻る。







「フハハハハ!!弱い!あまりにも弱い!!悪鬼など所詮この程度か!」
エクスクローは、右手で剛強鬼を軽々と持ち上げ、左手でエックスとドクロの渾身の突きを受け止めていた。
直ぐ様テリーが魔力で鎌を作り上げ、後頭部を斬りつけるが、やはり少し血が出ただけで即再生する。
エクスクローは振り返ると同時に剛強鬼をテリーにぶつけてくる!
吹っ飛ばされる二人を嘲笑いながら、エクスクローは打撃を続ける。
手も足も出ないとはまさにこの事だ…。

「皆ー!!!!」
丁度そこへ、れなが飛んできた!
皆はれなの参戦に僅かに笑みを浮かべる。
しかし…エクスクローはそれ以上に歓喜に満ちた笑い声をあげる。
「ははは!!雑魚が一人増えても同じだ!むしろこの力を見せつける相手が増えて嬉しいくらいだ!」
れなは勢いよく急降下し、蹴りをかまそうとするが、エクスクローの巨大な腕に阻まれ、逆に蹴りをぶちこまれる。
れなは激しく息を吐き出しつつも、この程度では負けていられない。
すぐに立て直し、拳を突き出す。
エクスクローも同じく拳で反撃。次々に拳を放ち合っていく。
消耗が大きいのは…れなの方だった。亜華魔姫との戦いのダメージがかなりでかい。
より一層力を込めて繰り出されたエクスクローの拳を両手で受け止めようとするも、力が足りず、吹っ飛ばされるれな。
岩を破壊しながら飛ばされていき、砂煙でれなの姿が見えなくなる。
仲間達は歯を食いしばりながら必死に立ち向かう!



エクスクローが暴れまわるなか…崖の上からそれを見つめる二つの影があった。
亜華魔姫と鬼子だ。
鬼子は何とか立っていられる状態だった。
亜華魔姫は、将達とれなたちが協力し合う姿を見て、確信した。

…まだ、希望はあると。
「…鬼子」
重い声に、鬼子は振り返る。
「お前は昔、悪鬼に人生を狂わされたんだったな。…どうだ。悪鬼の事は、どう思ってる」
鬼子は俯き、少し黙る。

…答えは決まっていた。
「…勿論、嫌な思い出ばかりだから好きにはなれないわ。でも」
戦うれな達に、視線を向けた。

「あなた達ばかり、苦悩を背負わせない。私達人間だって、同じように戦うわ」

それから亜華魔姫は、しばらく黙っていた。
顔は、変わらなかった。


「さすがじゃ!!」


場違いな程、明るい声が響いた。
驚いて後ろに振り返ると、薄汚れた髪の妖姫が立っていた。
どうやら今まで瓦礫に隠れていたようだ。
「妖姫!大丈夫なの!?」
「心配無用じゃ!それより鬼子!お前の心意気に感心した!流石はわらわの右腕じゃ!」
右腕になった覚えはない鬼子は呆然としている。
…いつもの妖姫と同じ様子だ。
「本当に、お前と出会えて良かった!その…わらわは今までお前達を騙していて…ビーチもたこ焼きパーティーも、素直には楽しめなかった。…じゃが、一つ心から思った事がある!」
鬼子に近寄り、その手をとる。
ヒンヤリと冷たいが、ほのかに温かい小さな手が、鬼子の手を包む。
「鬼子、そしてお前の仲間達!皆、強い信念を持って戦ってくれた!時にはわらわを守ってくれた!…素晴らしい戦士達じゃ」

…段々と、声が小さくなる。
一瞬俯き…すぐに顔をあげた。

「分かっておる。こんな事言えるような立場じゃない。わらわは…とんだ愚か者、裏切り者じゃ。…だからこそ、罪滅ぼしをさせてほしい。頼む、わらわをもう一度仲間に入れては…」

妖姫の頭に、手がのせられる。


…微笑む鬼子が、頭を撫でてくれていた。

「…私達と一緒にいる時の、パンを食べてる時のあなたの笑顔。私達、あの顔大好きなのよ。仲間に入れない訳がないでしょ?妖姫。あなたは今から本当に私達の仲間。正真正銘、本当の友達よ」

…妖姫の目が潤み…大きく頷いた。

「という事で」
妖姫から視線を離し、亜華魔姫を見る鬼子。
亜華魔姫の顔は、普段通りの無表情になっていた。
調子を取り戻したようだった。
亜華魔姫の肩に手をのせる鬼子。
「あなたも仲間。一緒に戦うわよ」




「…」
亜華魔姫は拳を握り…勢いよく飛行していった。

鬼子と妖姫は手を繋ぎ、崖から飛び降りる!
風を全身に受けながら、敵を見た。

「いくぞ鬼子!!」
妖姫が、鬼子に憑依する!




赤い光を放ちながら、鬼子の頭から黄色い角が生えた。
光は炎に変わっていき…鬼子を包み込む。


戦場に、二人の鬼神が舞い降りた瞬間だった。