ワンダーワールド 悪鬼災来編 第30話 ブラーンケット島の叡光鬼 | 白龍のブログ 小説とかを描き続ける機械

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れながとある依頼を受け、遠出した際のお話だ。
その日は、事務所に送られた一つの依頼にれなが単独で挑む事となった。
東にある島、ブラーンケット島の住人からだ。
何やら怪しい連中が島のあちこちを彷徨いているらしい。

「おけおけ。私に任せてよん」
頭を下げる島民達に頭を下げ返すれな。下げた事で勢いよく振り下ろされたツインテール髪が、目の前の島民達をひっぱたいていた。

まずは島を適当に歩き、怪しい連中を見つけたらその動きを探る事にするれな。
ブラーンケット島は岩が多い島だ。あちこちにある岩はどれも隠れるのに最適。
確かに怪しい連中が何かしらの活動をしていてもおかしくない。
「それにしても大岩が多いわなぁ。おおいわが、おおいわ、なぁ」
一人で下らない事をぶつぶつ呟きながら進んでいくれな。

そのうち海岸に辿り着く。
海岸の砂浜にも無数の岩が生えており、よく見ると蟹達も行進している。
れなは蟹達と並んでカニ歩きをしようと彼らに近寄るのだが…。

「ん?あれは…」
一つ、妙なものが見えた。

砂浜の比較的岩が少ない場所に、見慣れない連中がいたのだ。
田舎暮らしの格好をしている島民達とは違い、都会的な黒スーツを着た男達…。
誰がどう見ても部外者だ。
しかもこの男達は台車を引いており、台車の上には血管のような模様がついた不気味な石がのせられている。
(あれは…!鬼子とエックスが言っていた石…?)
台車が重くて腰を痛めた歩き方をしている男達とは違い、その石は禍々しいオーラを纏っている。どう考えても怪しい連中が持ってはいけない代物だ。
れなは迷う事なく飛び出し、男達に声をかけた。
「おい!そこの部外者感丸出しの野郎共!何を運んでるんだ!?」
高圧的なれなに驚いた男達は思わず台車を振り上げてしまう。
地獄石も真上に吹っ飛ばされ、れなは空中で石を掴みとる。
両手で抱えるくらいの大きさの石だが、れなの腕っぷしなら片手で持てた。
男達は怯えているようで、震えながら後ずさる。そして、ポケットからハンドガンをとりだし、れなに向ける。
「な、な、な、何ですかあなたはぁ…!わ、わ、私達は純粋無垢な島民ですよおおお!!」
…こんな反応をしておいて、どこが純粋無垢な島民だろうか。れなは思わず目を細めた。
「ひ、ひひひひいいいいい!!」
パニックになったのか、男達のうちの一人が発砲した!
弾はれなの額にぶつかり、勢いよく転倒させる。
「いっ…!てええええ!!いきなり何すんだ!落ち着くって事ができんのか!」
恐怖に震える相手は時折予想外のタイミングで攻撃してくる事がある。れなは銃弾を避けられず、悔しそうだ。
額を抑えながら凄まじい剣幕で迫ってくるれな。これでどう落ち着けと言うのか。

…と、その時!男のうち一人が何かに気づき、声をあげる!
「あ!?おい!地獄石が!」
台車を指差す男。

台車にのっていたはずの地獄石が無くなっていたのだ。
れなは急いで辺りを見渡す。

「…あっ!」
近くにある大岩の上を見上げると…崖際の所にスキンヘッドの老人が地獄石を持っていた。
れなは飛行し、老人のもとへと向かう。

…老人は、頭から黄色い角を生やしていた。
大岩の上に降り立ち、その姿を見た瞬間にれなは確信した。
悪鬼だと。
「おいじっちゃん!それ頂戴よ!くれないと力ずくで奪っちゃうぞ!」
「おやおや、可愛いお嬢さん…」
その老人、叡光鬼(えいこうき)は嫌らしく笑いながら地獄石を右手に持ち、自身の背後に寄せる。
れなは地団駄を踏みながら叡光鬼に向かう。そして、無理やり取り上げようと右手を伸ばしたのだが…。

叡光鬼は突然れなの右手を叩く!
れなは思わず後ろに下がる。何か強力な攻撃を仕掛けたのかと思ったのだ。
…しかし、特に何か変わった事をしたようには見えない。
「お、驚かすな!」
機嫌を損ねたれなは軽く叩き返そうとしたが…ようやく異変に気づく。

右手が上手く動かないのだ。拳を握る事はできるのだが、手首に力が入らない。
ふと前を見ると、ニヤニヤしながらこちらを見ている叡光鬼。何をした、とでも聞いてほしそうだ。
「何をした!?」
「アンドロイドの手首にある第三可動式ネジパーツを、これを使って狂わせたんですよ」
叡光鬼は、れなの右手を叩いた左手の爪に小さな棘のような部品を備えていた。
「これから発せられる電波はネジ類を動かす効果があるのです。特にアンドロイドの手首パーツは比較的狂わせやすいんですよ」
既にれなはハテナな顔をしているが、自分がアンドロイドである事がバレている事は分かった。
…これはもう、戦う流れだろう。
先手必勝とばかりにれなは蹴りを繰り出す!
しかし動きを読まれてるのか、叡光鬼は素早く下がってかわす。
「じっちゃん何で私の事を知ってる!?」
「事前情報は何も知りませんよ。今あなたの顔を見た瞬間、あなたの大まかな情報を全て読んだのです」
今度は拳を横に振るう。それも簡単にかわされてしまう。
「あなたがれなさんですね。身長約152センチ、体重約132キロ…」
何とデリカシーの無いやつだ。
ちなみにれなはアンドロイドである為、見た目は人間でも見た目以上に体重がある。
あまりそういう事を気にしないれなでもこんなに堂々と言われては何だか恥ずかしくなる。
たまらず拳を突き出し続けるが、全て動きを読まれてしまう。
「服の色は白、スカートの色はピンク、そして…」
「あああっ!!黙れぇ!!」
渾身の突きを打ち込もうとしたのだが…。

れなの動きが止まる。

足元を見ると、人間の顔のようなものが浮かび上がった草が生えており、足に絡み付いていた!
れなは懸命に足を動かすが、引き抜けない。
叡光鬼は右手に持つ地獄石を嫌らしく突きだしつつ、左手で腰元から刀を取り出した。
「おやおや、こうもあっさりかかるとは。あなたがここに飛んでくる前に、この草伸鬼(そうしんき)を地面に仕掛けておいたのですよ」
草伸鬼はみるみる伸びて、れなの肩にまで絡み付いてしまう。
れなの怪力を持ってしても引き離せない。罠にかかってしまった。
叡光鬼の刀が鈍く光る。れなは必死にもがくが、びくともしない。
「地獄石を回収できましたし、邪魔を一人排除。昇進の時が近づきますなぁ…!」
振り下ろされる刀!!


「ぐおっ!」
…れなは大ダメージを覚悟したのだが、叡光鬼は突如呻いた!
背中に痛みを感じ、思わず地獄石を手放してしまう。

「もらったー!!」
…崖から落ちる地獄石を、あの怪しい男達が受け止めてしまう。男達のうち一人は、叡光鬼にハンドガンを向けていた。
そのまま急いで海へ向かっていく。
「ま、待て!」
叡光鬼は飛行しようとしたのだが、どうやら草伸鬼達も驚いたようで、一瞬絡まる力が弱まった。
れなは渾身の力で草伸鬼を引き離し、叡光鬼に飛びかかる!
両手で掴みかかるのだが…右手が壊れた事を忘れていた。
叡光鬼はれなの左手も狂わせようと手を構えたが…。
「どうにでもなれえええ!!」
れなは左手の拳を握り、叡光鬼の顔面を思い切り殴り付けた!!
叡光鬼は吹っ飛んでいき、島より遥か離れた海の上に落ち、派手に落ちる…。
「あー…やりすぎた?」


…しかし、少しすると叡光鬼が顔を抑えながら海中から出てきたのが見えた。
そのまま飛行し始め、れなに刀を向けながら叫んだ。
「私は知将、叡光鬼!今回は油断しましたが、次会ったら完璧な頭脳であなたを倒しますよ!」
そのまま海の果てへと飛んでいった…。

何とかなったが…これで終わりじゃない。
れなは急いで飛行し、あの男達を探したのだが…。


「…く!どこ行った!?」
付近の海を探索しても、やつらは見当たらなかった。
人間も悪鬼も、地獄石で何をしようとしているのか…?