相変わらず、当院には『他院修正』希望の初診患者様が大勢来院されます。

注射・注入を行ったクリニックからは、「馴染むので様子を見るように」と指示されるようですが、インターネットで検索し、かなりヤバい状態なのでは・・・とご相談にいらっしゃるのです。

過去にもいくつか、ブログで他院修正症例や執筆論文をご報告しています。

 

銀座ケイスキンクリニックトモコセンセのブログ 他院修正シリーズ

 

ヒアルロン酸血流障害~他院の修正

症例写真供覧:他院修正 目の下のヒアルロン酸注入後の酷い膨らみと凸凹を修正

 

当院には、様々な『他院の修正』治療メニューがあります。

ダイヤグリーンヒアルロン酸注入失敗の修正

ダイヤグリーンヒアルロン酸注入後の遅延型異物反応

ダイヤグリーンアクアミド・アクアフィリング・エランセなど溶けないフィラー注入後のしこり

ダイヤグリーン脂肪注入後のしこり・石灰化

ダイヤグリーン成長因子・グロースファクター注射後の腫れとしこり

ダイヤグリーン成長因子・グロースファクターなどを混ぜたPRP注射後の腫れとしこり

ダイヤグリーンボトックス注射失敗の修正

 

沢山ありますが、治療のし易さは大きく違いますし、使用した製剤や注入法でも異なります。今回はレベル1~レベル5までの総括です。

 

治療が最も容易:レベル1

ダイヤオレンジヒアルロン酸注入失敗の修正

ヒアルロン酸製剤はヒアルロン酸溶解酵素(ヒレネックス・ヒアルロニダーゼ)注射で簡単に溶かせます。ただし、長期間放置するといけません。一部にしこりが残ったり、過剰注入で伸展してしまった皮膚がたるんでシワシワになるからです。でも、照射治療を組み合わせることで、ある程度までは引き締めが可能です。

 

比較的治療しやすい:レベル2

ダイヤオレンジボトックス注射の失敗症例の修正

追加でボトックス注射することで、表情筋のバランスが取れる症例もありますし、注入部位の誤りや適応の見誤りで表情の喪失や違和感が生じている場合は、アセチルコリン製剤を2~4日毎に注射しながらボトックス注射の効果が減弱するのを待ちます。

最近では、小顔ボトックス(エラボトックス)注射後に口元が歪む事故が多発しています。口角を横に引っ張る笑筋にボトックスを誤注射したり、量が多過ぎて拡散して作用してしまうためです。咬筋の直ぐ近傍には笑筋が付着(停止)しているので、実はエラボトックス治療は難しい部位なのです。

 

何とか治療できる:レベル3

ダイヤオレンジヒアルロン酸注入後の遅延型異物反応

こちらは失敗というわけでは無く、患者様の体質で、少ない割合ですが発生してしまうものです。ただし、きちんとした治療が出来ない施設が多いようで、こじれて悪化した患者様がネットで検索して当院にいらっしゃいます。

まず異物認定されてしまったヒアルロン酸製剤を溶解します。同時に、反応性肉芽腫(しこった部分)には、適正に薄めたステロイド剤を注射します。このしこりは時に石のように硬く、27Gの針がギリギリ刺さるくらいガチガチのことがあります。

当日から、外来で投与可能な上限値のステロイド(プレドニン25~30㎎/日)を1~2カ月間内服して頂きます。2~3日毎に追加でヒアルロン酸溶解を3回程度行います。その後は、1週間毎に異物反応の改善を観察しながら、初回から1か月後に再度ステロイドを局所注射します。ステロイド局注はしこり以外の部位に入ると、脂肪萎縮を生じて、凸凹がかえって目立つことが多々あり、高い技術が求められるハイリスクな施術です。他院でケナコルト注射を大量にされて、握りこぶし大の脂肪萎縮で陥没が出た事例を複数診ています。治療方法が少なく本当に気の毒です。

 

治療に難渋し、手術以外では元には戻せない:レベル4

下三角アクアミド・アクアフィリング・エランセなど溶けないフィラー注入後のしこり

下三角脂肪注入後のしこり・石灰化
です。

これらのフィラー(注入剤)には溶解酵素が存在しないので、デコボコしたり、遅延型の異物反応が生じても外科手術以外の対処法がなく、腕の良い外科医をご紹介します。

当院での治療としては、ヒアルロン酸注入後の遅延型異物反応と同様の処置を行い、触らなければ分からない程度に軽減できればラッキーです。脂肪注入では遅延型異物反応よりも、石のように硬くなる(石灰化)ことがあります。表面に飛び出していなければ経過観察とします。ステロイドの局注も無効だからです。

 

最も難渋し厄介、手術や他の施術も困難:レベル5

下三角成長因子・グロースファクター注射後の腫れとしこり

下三角成長因子・グロースファクターなどを混ぜたPRP注射後の腫れとしこり

これは、最も厄介で罪深い治療だと、私の信頼する皮膚科専門医や形成外科専門医の友人医師たちも同意見です。

丸ブルー症状

施術後2週間から半年後、注射エリアを中心にパンパンに膨れて、一部が硬くしこります。自覚症状としては、ツッパリ感、違和感、灼熱感、圧痛です。中から疼くような、刺すような痛み(自発痛)を覚える方も多いです。

 

丸ブルー治療施設の対応

このような治療を行う施設では、

「薄めているから絶対に安心」

「腫れることは一例もない」

と患者さんに説明し、患者様が「腫れた」と訴えても「一過性なので様子を見てください」と取り合ってくれないようです。

ちなみに、医学の世界で『絶対は、ぜったいに無い』のが常識です。学べば学ぶほど、心からそう思います。

患者さんはまともに取り合ってくれないクリニックと医師への信頼を無くし、その後の経過を報告しないので『一例もトラブルにならない』などという事が言えてしまうわけですね。

 

丸ブルー難渋する理由::治療抵抗性・再燃再発・照射注入不可

その後、積極的な治療をしないでいると、どんどん悪化します。そして初めてネットで検索し、当院にご相談に見えるのです。

また、グロースファクター系注射後のトラブル治療は、難しいだけでなく、一度改善したように見えてもちょっとしたきっかけで再び腫れあがるので厄介です。誘因は風邪などの感染症、飲酒、疲れなどが多いですが、原因不明がほとんどです。

 

さらに患者さんを絶望させるのが、照射治療が一切できない事です。

目の下やほうれい線など顔全体がたるみ、凹んでいる、シワがあったから成長因子含有のPRPを受けたので、当院でしこりを何とか小さくした後にたるみ改善治療を始めたいわけです。ところが、このようなトラブル症例では、真皮から皮下組織内で、成長因子・グロースファクターがPRPの創傷治癒作用を必要以上に高めて、再生のスイッチが暴走してしまっている状態です。そこに、ウルセラやサーマクールを照射するとどうなるか・・・・想像が出来ますよね?

 

ウルセラやサーマクールほど強力ではなく、コラーゲンの再生を促す作用が少しでもあるもの、フォトフェイシャルやレーザーフェイシャル、ジェネシスのようなマイルド系なら大丈夫じゃないですか?というお声が聞こえます。実は私もそう思っていましたが、マイルド系照射でも悪化した複数の症例経験があります。グロースファクター注射から数年経過し、もう収束しただろうと考えて上記のような照射治療を行ったところまた腫れあがってしまうのです。

ちなみに、スレッドリフトのように糸でコラーゲン線維の増生を促すものも危険です。

 

つまり、シミ治療、毛穴治療、引き締め治療、リフトアップ治療、シワ治療、小顔治療、といったほとんどの美容皮膚科治療が出来なくなってしまうのです。

私の経験上、問題なく施術可能なのは、ケミカルピーリング、イオン導入、手術のみと考えています。

 

丸ブルー問題点

ある美容施術で失敗しても、別の治療で改善させることが出来れるのならば、患者さんは涙を拭き、顏を上げ、前向きな気持ちでこれからの治療効果を楽しみにていただくことができます。

美しくなりたいと願う美意識の高い女性が、たった一つの施術を受けたために、数年~十数年にわたって苦しむだけでなく、他のほとんど全ての美容医療を受けることが出来なくなることがあるのです。

実際に、特別トラブルになっていない方も大勢いらっしゃることは知っています。しかしながら、100人で1人(これは高頻度です)でも回復が難しい副反応が生じる治療は選ぶべきではないと思うのです。


何故ハイリスクなグロースファクターFGFを注入するのでしょうか?私には理解出来ません。ヒアルロン酸製剤なら溶解酵素があり、充分遜色ない治療効果を出せるのですから。

 

四角オレンジステロイド内服に関して

形成外科の先生方は専門医でもはステロイド投与が怖いと仰います。そのため、セレスタミン2~3錠やプレドニン5㎎1錠/日程度しか処方されない場合が多いようですが、これは例えるなら大火事なのにジョウロで消火しているようなものです。火事は初期消火が肝心です。

 

その点、皮膚科専門医は、膠原病などの自己免疫疾患の患者さんにパルス療法など大量使用の治療経験がありますから、自信を持って適正量を処方し管理することができます。

 

通常の皮膚炎や薬疹ですと2~3日毎に漸減し、2週間程度で中止します。ところが、『ヒアルロン酸製剤への遅延型異物反応』や『成長因子・グロースファクター単体またはPRP混合の注射後のしこり』は厄介です。1~2週間毎に5㎎ずつ減量し、1か月半~2カ月半かけてプレドニンをゆっくり減量する必要があります。特に成長因子・グロースファクターは少量注入でも厄介で、早く減らし過ぎると、ぶり返します。

 

四角オレンジ美容医療を受ける前の情報収集の大切さ

美容医療を受ける前には、起こりえる副反応とその対処法に関して、隠すことなく説明してくれる医師であることを確かめましょう。

とくに、「ぜったい安全」と根拠なく言い切る医師や「症例数日本一」などと誇る医師は警戒し、セカンドオピニオンを求めましょう。


厚労省や米国FDA承認製剤を使用していても、ヒアルロン酸に過敏反応を示す患者さんはいらっしゃいます。でも、その場合の対処経験があるかどうかが運命の分かれ道だと思うのです。


もしも、10000人に一人程度以下のごくごく少ない確率で生じうる副反応を心配されるなら、施術を受けないという判断をしても良いと思います。

美容医療の注射・注入治療はとても満足度の高い施術です。

私も毎日たくさんの方に施術し、毎回そう感じています。

でも、注射する製剤と任せる医師は十分に吟味しましょう。

 

 

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