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今回は、★ジェンダーギャップ指数の諸問題(前編)→「なぜ長寿国日本がGGGI健康部門で40 位であるのか?」 の後編です。

わからない時にはスタートに戻るのは、山登りでもラビリンスゲームでも、道に迷ったときの鉄則です。ジェンダーギャップ指数GGGIの全体像を振り返ってみます。

指数は4分野14項目で、最小0の“絶対不平等”から最大1の“完全平等”までの間で算出されます。計算上現われる1を超す価はいわば女性優位指数でしょうか(笑)。

 

項目は「政治」①国会議員の男女比②閣僚の男女比③過去50年間の国家代表在任年数の男女比、

「経済」①労働力率の男女比②同種業務での供与比③勤労所得の男女比④幹部・管理職での男女比⑤専門職・技術職での男女比、

「教育」①識字率の格差②基礎教育在学率の格差③中等教育在学率の格差④高等教育在学率の格差、

「健康」①出生時の男女比②健康寿命の男女比。それに4分野の全体指数及び国ごとの総合指数となります。

日本の特異指数は教育の①②③の1.000と政治の③の0.000及び健康の②1.059がありますが、項目の内容をみればしごく当然のことで驚くほどのことはありません。

 

 GGGI 2019から少し遡ってみると、なんと日本がちゃんと健康第1位になっていた年がありました――GGGI 2017です。「なんだ40位とか言うから驚いたじゃない」と思ったのですが、それでは済みません。ちなみに過去3年分を比較してみます。

        2019 (順位) 2018 (順位) 2017 (順位)

総合  0.652 (121) 0.662 (110) 0.657 (114)

政治  0.049 (144) 0.081 (125) 0.078 (123)

経済  0.598 (115) 0.595 (117) 0.580 (114)

教育  0.983 (91) 0.994 (65)      0.991 (71)

健康①  0.944 (1) 0.944 (1) 0.944 (1)

  ② 1.059 (59) 1.059 (57) 1.060 (1)

 全体 0.979 (40) 0.979 (41) 0.980 (1)


こうやってみると、さすがに世界150余国で、ほとんど有意の差のない争いともいえます。健康に限って言えば、わずかに0.001ポイントで40も順位が下がる! これじゃ大騒ぎしてもしようがないのですが、2018年のメディアは

「ジェンダーギャップ指数を見ると、日本は「健康」の分野――出生時の男女比も健康寿命の男女比もともに1位。「教育」分野も全体で74位、識字率の格差や中等教育在学率の格差はなくて堂々の1位である。しかし「経済」が114位、「政治」は123位で国会議員の男女比となると129位となっており、これらの分野の格差の解消が求められている」とありきたりのコメントです。

 

健康分野で1位になったことがあるといっても、手放しで喜んでいる気になりません。政治や経済の分野で女性の進出が大幅に遅れているのは痛感します。最近の報道によれば、世間体もあって大企業で女性を役員・管理職に登用しようと慫慂しても、女性の側が何だかんだと理屈をこねて断るケースが多いとか。課題は女性の意識覚醒ではないかと、経営サイド嘆いていると書かれています。

健康分野で女性への障害はいっぱいあります。ピルの解禁が遅れたこと、パンプスの強制、家事の女性担当を当然視する世間、共働きへの嫌悪。そうしたことを日本の良き伝統だと擁護する保守傾向の女性が増えていること。男をおだてて食べさせてもらう楽チンはやめられないのか、おだてが育児家事介護の加重労働に転化しても女の美風を守りたいのか、よくわかりません。ともかく、未来は一直線で見通せなくなっています。

 

そして健康項目の設問意義がわかったのです!WEBを検索するうちにGGGI 2019 健康の領域で」 という黒崎伸子氏のレジメに出会い参考とさせていただきました。

 

 出生時における性比は、多くの国で行われている“消えた女の子たち”の現象を捉えることが目的だったのです。言い換えれば“男の子誕生への強い期待”の蛮行です。一人っ子政策など、積極的な産み分けあるいは間引きなどの結果は、国別の出生男女比の差として現れていると見ています。また健康寿命と平均寿命との差は、保健医療体制整っているかをチェックしているようです。

 

 しかし私は反問します。「出生時における男女比がほぼ55:45であるのは神の慈悲(天の采配)による」と教わりました。理由は、誕生から1歳までの間の乳児死亡率は非常に高く、人生でもっとも危険な時期であり、ことに女児に比べて弱い男児の死亡数は圧倒的だった。1歳となった後の男女比は5050近くなった。憐れみ深い神は産み分けられたのだ、と。教わったのは高校の保健体育の授業(昭和の時代)でした。

医学的に言っても♀の染色体はXXのシンメトリーを成し、補填し合いますが、♂はXYで一つしかないYはすり減っていってます。♀が優性であるのは発生学的真実なのです。統計確率論的に5050でなければ格差があると主張される根拠がわかりません。

また健康寿命の男女差は、むしろ社会生活のストレスや生活習慣によって生じるではないでしょうか。現代社会が男性優位社会であることは事実であるからこそ、喫煙・飲酒・闘争などで余命を縮め、あげくの果てに未だ戦争して殺し合っている男性の寿命が短いのは当たり前です。それを強調するのは「男性こそ健康を保てない格差下に置かれている」と逆宣伝することにさえなりかねません。

 

ジェンダーギャップは肉体的には優性である女性が、制度・習慣・偏見などの社会的制約によって、不当に抑圧されていることを告発し、人間総体が幸福となる目的を達成する手段です。だからこそ、WEFくらいは真面目にジェンダーギャップの撤廃を目指してほしいと 思うのです。