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Memories of Route 66
 昨年
12月にWEF(世界経済フォーラム:The World Economic Forum)から2019年度「世界ジェンダーギャップ報告書 The Global Gender Gap Report 2020  が発表されました。ジェンダーとは、先天的・身体的 生物学的に個体がもつ性別に対して、社会的・文化的に形成された性別のことをいい、 男性あるいは女性にとっての「性に適合した役割・思考・行動などの表象全般」を指します。WEFは毎年各国ごとのジェンダーギャップ指数(The Global Gender Gap IndexGGGI)をレポートしています。昨年発表された結果の引用符は“GGGI 2019”です。


  各国のジェンダーギャップは、政治・経済・教育・健康(保健)の各分野及び加重平均された総合GGGIによって評価され、世界各国における男女格差を示す指標となります。GGGI 2019で日本は世界153か国中の121位で、前年の110位から後退する結果となりました。


  私は政治・経済・教育・健康の各分野のなかで、職業柄もありますが、健康については、何を指標にしているのか興味をもちました。健康で日本は40位です。平均寿命において日本は先進国中のトップです。それで40位? どうも解せません。いったいトップはどの国なのか、と。


 健康のGGGIどうやって算出されているかのでしょう? 
 日本のメディアでは政治経済分野での論評こそ盛んですが、健康分野へのコメントはほとんどありません。
WEFのレポートで確認してみると健康の項目は2つ、①出生時における男女比と②健康寿命の男女比です。しかし、なぜこの指数をもってGG.といえるのかが問題です。①における質問の主旨もよくわかりませんが、②の健康寿命の意味が確定できません――日本の平均寿命が先進国No.1であることは前記の通りですが、健康寿命が「元気に活動できる年齢」だとすれば、乖離は小さくどこも70歳代前半に集中するからです。さらに読み込んで、国ごとの指数などもチェックしたいと思ったのですが、年末でバタバタしていたこともあって余裕がなく、WEF日本支局に問い合わせました。

 

一般に女性の寿命は男性より長いとされます。②の項目において女性と男性の健康寿命の差が大きいほどGGGIが上になるならば、計算上はナミビア・モザンビーク・ハンガリーなどがトップとなり、男女共世界一の日本が59位となり、アイスランドは差がもっとないため133位になってしまいます。これって「ヘン」ではないでしょうか。

女>男の健康寿命差が大きいことが、なぜその国が女性の地位が高いことになるのか、どう考えてもわかりません。むしろ女性が社会で活躍すればするほどストレスも亢進し、また事故率も増加するはずです。寿命差以前に寿命自体の長短が考慮されないのも「ヘン」――欧米の長寿国が軒並み低くなる結果となります。

世界ジェンダーギャップ報告書は、男女の違いによって生じた格差を表す世界的な指標とされています。それなりの根拠があると思います。ご教示いただければ幸甚です、と。

 

 年明けにいただいた回答は「健康寿命とは、暴力や疾患・栄養失調などの関連要因にさらされることなく、健康に生きる事ができることの指標です」ということでした。これはtautology(同意反覆)ではないかと愕然となりました。

 私自身の不明は隠しようもありませんが、どうしても知りたいと思いました。スイス本部の担当者に回付をお願いして、英文の質問状を送付しました。それがWEFにとっては年に1度のメインイベント“ダボス会議”直前だったものですから、会議が済んで落ち着いてから返事いたしますとの丁寧なメールいただきました。


 その後の世界急変大惨事は、地球上の人間なら誰もが知れるところです。誰をも責めることはできません。私は独りで結論を出しました。そのことは次回にご報告いたします。