この投稿の下記の文章は、当初はさきの投稿に続けて書いてあったものなのですが、それをしてしまうと、さきの投稿がもともとの趣旨とは違うところに落っこちてしまうと思い、投稿を改めることにしました。
以下、書き出しはさきの投稿と重複していますが、本投稿の話の趣旨は「プロダクトアウトからマーケットイン、そして次のパラダイムは何か」です
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さて、
「さあ、UXストーリーを描いてみましょう」と言われて、すぐに描けるものでしょうか?UXストーリーとして表すべき内容は何か、その根幹が自らのなかにハッキリしていなければ、UXストーリーは描いているうちに、どこに落とせばいいのかわからなくなることがあるようです。では、UXストーリーづくりに先立ち、その出発点となる「根幹」とは何でしょう。
それは、
「顧客の未来は、こういうプロセスであってほしい」という、未来の顧客プロセス像だと考えます。
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このような
「顧客の未来はこういうプロセスであってほしい」という未来の顧客プロセス像が、一連の構想の出発点として明確に存在していればこそ、顧客がこれから経験する『具体的なコト(Customer Experience)』を絵で示すことができるのだと思います。それがUXストーリーです。
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UXストーリーを現実化するには、顧客の行動を支える『道具』が必要です。価値実現手段は、ハード・ソフトとして具体化されます。そうです、サービス・ドミナント・ロジックが言うところの「ハード・ソフトそのものに価値はない。ハード・ソフトは価値を実現するための道具として、その存在価値を発揮する」という主張は、UXストーリーを現実化しようとする検討を通じて、叶えられるのです。
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上図は、現時点における道具立てのラインナップですが、これらはあくまで「現時点」のものです。道具立ての整備はこれからも続いていきます。事実、現状はさきのUXストーリーの第2コマと第3コマを確実化するには道具が足りていません。企業とのトライ&エラーを通じて、今後も道具が誕生していくのです。これが、「UXストーリーがもたらす、製品・サービスの継続的創造」です。
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ここで注目いただきたいことがあります。それは、
未来の顧客プロセス像、UXストーリー、道具立てラインナップはすべて、顧客から明示的に要望されたものではないということ。顧客を深く観察し、対話を通じてゲインを推察し、その上で現状プロセスのペインに目を向けていた。そのような顧客洞察(カスタマ・インサイト)が成したことと考えています。
仮に、現状プロセスにおけるペインのみに目を向けていたなら、上図のような道具立てにはならなかったことでしょう。おそらく、ペインの個々を個別に潰していく「部分最適の繰り返し」をモグラ叩きのように際限なく続けることになると思います。
顧客のペインの一つ一つに答えていくことはもちろん決して悪いことではありません。
しかし、
それを続けていれさえすれば、長期的顧客関係性を構築することができるのだろうか。極端な低価格プロモーションを仕掛けてくる競合他社をはねのける対抗策になりうるのだろうか。なにより、一連のプロセスのなかに散在する局所的なペイン解決を繰り返したところで大きな対価を得られるのだろうか。
いずれの問いも、yesとは言い切れない場合が少なくないのではないでしょうか。
根幹のゲインに迫る。それを叶えるプロセスを組み立てる。
その上で、現状プロセスを診る。その結果として見い出されたペインと、単に顧客から解決要請されたペインは、おそらく同じではない。内容も違うし、解決することの意味合いも違う。前者ペインの解決は、理想プロセスを実現するためのホップ・ステップ・ジャンプであるのに対し、後者ペインの解決は、終わりのないモグラ叩きのようなものだ。
顧客が口にする内容(=Position)をもとに、その背後にある意図(=Interest)を推察し、ほんとは何をしたいんだろうというゲインに迫ることを続けていたからこそ、上述の「未来の顧客プロセス像」「UXストーリー」そして「道具立てラインナップ」が導かれたのだと思います。
顧客に直接的に要望を訊くのではなく、つまり、答えを顧客に直接的に求めるのではなく、
顧客自身が気づいていないかもしれない自らのニーズを、
顧客に代わって、あるいは、顧客と共に、顧客以上に考え続ける。
その結果が、仮説としての顧客プロセス像を描き出し、それを具体化したUXストーリーとして花開く。これを実現するための手段としてのハード・ソフトを手にした顧客は、琴線に触れるその革新性に感動する。
これは立派なプロダクトアウト、
もうすこし言葉を足すと、「徹底的なカスタマ・インサイトに基づくプロダクトアウト」と言い換えるのではないでしょうか。
以上のことは、マーケティングパラダイムに新たな息吹を感じずにいられません。
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マーケティングパラダイムは、プロダクトアウトからマーケットインにシフトしてきたことはみなさまもご存じのとおりです。
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プロダクトアウトからマーケットインにパラダイムシフトしたと言われる一方、いまの時代も革新的な製品・サービスはプロダクトアウト志向によるものであり、マーケットインではないという主張も存在します。
そんな中、90年代にブランド論が産業界で大変注目されました。重要なことは、売れ続けること。ブランディングの立場から見れば、sellingとmarketingは、前者が生産者志向で、後者は市場志向という立場の違いはあれど、「取引量最大化」を最大の関心事にしていることは同じ。要は「売れればいい」という考え方。その象徴的管理尺度が「市場シェア」です。
一方、brandingが重視することは、売れ続けること。新規顧客獲得に要するコストは、既存顧客維持強化に要するコストの5〜10倍と言われる今日の時代では、短期的 and/or 一時的に取引量最大を実現したとしても、それが持続しなければ事業効率が良いとは言えない。やみくもに顧客数を追い求めるのではなく、狙う顧客を絞り、その顧客から得られる生涯価値(LTV: Life Time Value)を追求した方が事業の効率性は優れたものになる。その象徴的管理尺度は市場シェアではなく、「顧客シェア」。別名「ウォレット・シェア」、狙った顧客の財布を、どれだけ当ブランドで占有するか。その前提は、長期にわたる良好な顧客関係性の構築です。
長期にわたる良好な顧客関係性を構築するには、ブランドに対する「期待喚起」が欠かせないと言われています。顧客ロイヤルティは、「ブランドに対する期待」と、「製品・サービスの使用満足度(CS)」の二軸によって形成されるのです。では、何に対して期待してもらうことが重要なのでしょうか。
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その答えは、
「顧客の未来はこういうプロセスであってほしい」という、未来の顧客プロセス像。つまり、プロダクトアウトからマーケットイン、そして次のパラダイムは「プロセスアウト」と考えてみるのはいかがでしょうか。
顧客本人以上に、
顧客のことを考え続ける。
顧客の未来のプロセスを考え続ける。
それは
B2Cなら「過ごし方」、
B2Bなら「一連の仕事のやり方」。
現状ペインを取り除くことだけでなく、
ゲイン(しかしそれは顧客自身が口にできない場合が少なくない)に目を向け、「ほんとうはこういうことしたいんじゃない?」と提案する。それがプロセスアウト。
未来の顧客プロセス像があればこそ
そのプロセスを実現する手段としてのハード・ソフトは自ずとひらめく。
このことから、プロセスアウトというのは
「徹底的なカスタマ・インサイトに基づくプロダクトアウト」と言い換えてよいのかもしれません。
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以上の「プロセスアウト」の考え方に沿って、私が自分自身の取り組みを表現したものが、ひとつ前の投稿「BM活動のUXストーリー」です。
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