名古屋工業大学大学院 産業戦略工学専攻では
社会人のために、最短1年で修士の学位を取得可能な 「短期在学コース」 を設けております。

ただいま、2月入試の願書受付中です!

といっても、ご案内が急すぎますね。。汗汗
次のタイミングは今年8月の入試、来年4月の入学です。

ずいぶん前に、このブログで社会人修士のことを投稿したのですが
このたびの問合せを機に、あらためてご案内することにいたしました。

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産業戦略工学専攻(MOT専攻)の「社会人コース」の最大の特徴は、「ご自身の業務における課題を専攻にお持込いただき、1年かけて専攻の教員たちと共に達成する」 という点です。 「持ち込み課題を歓迎する」 という点が最大の特徴です。

なお、ここでいう課題は 「“いま” の課題」 に限りません。ご自身のキャリアアップを考えて設定された 「“将来” の課題」 も大歓迎です。問題意識の強い方、大きな挑戦意欲をお持ちの方にとって、最高の「考える場」をご提供したいと考えております。

入試における最大の評価対象は『研究計画』です。学力試験というより、研究計画評価という観点に重きが置かれます。研究計画をプレゼンテーションしていただき、その内容に対して質疑が行われます。これを通じて、ご自身の専門性の程度が評価されます。

「研究計画のプレゼンテーション」というと、なにやらとても難しそうで敷居が高いなという印象をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、それほど気負う必要はありません。早い話、「1年かけて、何をやるのか?」をお話しいただくということに過ぎません。

とはいえ、一定以上の準備は必要です。
以下で、加藤研究室を例にして解説します。


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まずは表紙です。
取組む研究のテーマをタイトルに記載ください。
以下、本論に入ります。


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(1) 研究目的
最初の記載項目は研究目的です。
以下の問いは表現違いなだけで、同じことを質問しています。
これら問いに対する答えを、研究目的欄に記載してください。
・ 1年かけて、何をするのか?
・ 1年かけて、何を明らかにするのか?
・ この研究を通じて、要するに何を実現したいのか?


(2) 背景
次の項目欄は、「背景」です。
さきと同様、以下も単なる表現違いで質問の意図は同一です。
これらの問いに対する答えを、背景欄に記載してください。
・ なぜ、それをするのか?
・ 上記の研究に取組む背景に、どのような動機があるのか?
・ 上記の研究に着目した背景として、現状における何を問題視しているのか?
 

(3) 研究に取組む上でのポイント・着眼点
本頁の最終項目欄は 「研究に取組む上でのポイント」 です。上記の背景欄は、箇条書きで記載される場合が多いため、評価者側には 「根本原因」 や 「ポイント」 がわからない場合があります。そこで以下の質問の答えを、研究に取組む上で最大のキーとなる 「決定因」 として当該記述欄に示してください。
・ 上記の背景を打破する『突破口』は何か?
・ 上記の背景をふまえると、研究目的を実現する「鍵」は何か?
・ 本研究目的を進めていく上で、最も重要なポイントは何か?


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(4) 専門知識の有無と程度
この項目では、受験者の「専門性」が評価されます。一般的な入学試験の「学力検査」に相当します。数学や物理など一般科目試験がない分、このシートの記載内容は厳しく評価されます。評価の観点は、「研究目的を遂行していくに相応しい専門性や知識を有しているかどうか」です。どれだけ立派な研究テーマを掲げても、専門性や知識の裏付けがなければ取組みは困難です。大学院での研究活動は 「なんでもかんでも教えてもらえる場」 ではありません。「自ら学ぶ場」 です。自らの問題意識に基づき、自身の既存の知識に新たな知識を加えてアイディアを生み出し、最終的な成果を自分の手で作り上げるという 「創作の場」 です。その創作過程に指導教官が関与して、成果物が仕上がるのです。「このテーマに興味はあるが、知識がない」 という方は、まずは自分で勉強していただいてからご入学することをお勧めします。

一つのイメージとして、次のことを考えてみてください。
自己評価できます。

本専攻の社会人コースでは、「リサーチペーパー」 を作成いただきます。1年かけて考えたことをまとめたものです。いわゆる 「修士論文」 に相当します。一般的なレポートが数枚~10枚程度だとすれば、「4,50枚におよぶ長編レポート」 のイメージです。リサーチペーパーの巻末には、「参考文献」 を記す欄があります。ここに掲載する文献がいまのところまったくない、ほとんどないという方は、勉強不足です。「本研究に直結する参考文献として、4,5冊はすでにある」 というレベルを目指してください。また、一般ビジネス書ばかりが挙がるのではなく、専門書論文がそのなかに含まれていることが理想的です。入試の質疑においては、「研究テーマについて、あなたが参考にした研究者と、その研究者の考えをご紹介ください」 と質問されることがあります。この質問に明確に回答できるレベルにあるのかどうかを事前に確かめるための項目欄が、本頁の 「専門知識の有無と程度」 です。


(5) 先行研究に対する問題提起
本頁にはもう一つ重要な記述欄があります。「先行研究に対する問題提起」 です。先行研究として、いくつかの文献を挙げることができたとしても、あなたのリサーチペーパーが、それらの文献と同じことを主張するのだとすれば、研究としての価値は乏しくなります。何がしかの新規性が求められます。「ポーターの言うとおりに考察してみた。結論は、ポーターの言うとおりだった」・・・ かなり極端ですが、こういうリサーチペーパーは、面白くないですよね? なにも発見が無いのです。

既存の物事を単に学ぶだけならば、大学院ではなく、様々な機関が開催するセミナーや社会人講座を受講すべきです。また、既存の考え方を自社の事例に適用してみたいという理由ならば、やはり大学院ではなく、コンサルタントに依頼すべきことでしょう。ごくまれに、加藤研究室に興味を持っていただく社会人の方のなかに、「加藤先生が考案した手法を弊社に適用してみたい」という方がいらっしゃいますが、このようなお話は加藤研究室に技術指導を依頼すべきことであって、大学院社会人課程に所属してやることではありません。

このような理由により、「先行研究に対する問題提起」 が項目として設けられています。
以下の問いに対する回答をみて、「あなたの取組みが研究として成立するか否か」を確かめます。
・ 先行研究における問題点、抜け落ちている点、未解決なことは何か?
・ 既存の手法や方法論の何がダメなのか? 不足点・欠落点は何か?
・ 既存の考え方をダメ出しせよ。既存の考え方の何が問題なのか?
・ 先行研究や既存の方法論に対して、あなたの研究はどのような新規性をもたらすのか?

本項目欄の記載内容に基づき、あなたが独自に打ち立てた研究方針が、
前頁の「研究に取組む上でのポイント・着眼点」になっている必要があります。
「研究に取組む上でのポイント・着眼点」と「先行研究に対する問題提起」の間は、
整合性が取れていますか?


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(6) 成果物イメージ
前頁の 「専門性や知識の有無と程度」 といったことは重要ですが、私自身は、次の 「成果物イメージ」 の内容を最も重視しています。本頁で示すべきことは、要するに、この研究は1年かけて何をアウトプットするのか?」 という問いの答えです。成果物イメージ (1年後のアウトプットイメージ) が明確にないと、在学期間中の取組みは、迷走する危険性が高くなります。1年間で修了することが困難になります。過去に明確な成果物イメージがないまま入学したことが災いして、入学後に右往左往を繰り返し、1年で修了できずに、2年がかりになってしまったケースがございました。当該欄の記述内容は研究室によって様々です。加藤研究室の場合、成果物としては新たな「手法」「方法論」「フレームワーク」が中心になります。繰り返しになりますが、このシートが最も重要です。十分に時間をかけて、吟味してください。


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(7) 年間活動計画
さぁ、いよいよ最終頁です。最後の最後に、在学1年間のスケジュールを示していただきます。「厳密なスケジュールを示しない」 と申し上げているのではありません。あくまで全体的な大枠としての進行イメージを示してくだされば結構です。「1年制コース」 といっても、実質的には、10ヶ月しかありません。2月初旬には、リサーチペーパー提出期限を迎えます。それまでの期間が研究期間となりますので、実際に取組むことができる期間は、4月から翌年1月までの10ヶ月間です。

ごくたまに、事前に配属希望の研究室に一度も連絡せず、入試本番に臨む方がいます。率直に申し上げて、困ります。受け入れる研究室側にとっても、その社会人本人にとっても、お互いに困ります。あらかじめ研究計画を立ててから、入試に臨みましょう。

ここまでの説明でわかることをポイントを以下にまとめてみます。
1) 1年制コースを志望する場合、実質的な活動期間は10ヶ月しかない
2) あらかじめ成果物イメージを明確に描き、計画的に過ごす必要がある
3) 大学院は何でもかんでも教えてもらえる場ではない。一定以上の専門性や知識を要する。

必ず、入試前に希望する指導教官を訪ねてください。その際、本投稿でご紹介した研究計画書を持って訪ねてください。「完全な研究計画書でなければ訪問すべきではない」 などと言うつもりはありません。自分で書ける項目だけ書いて、一度訪ねてみればよいと思います。面談を通じて、ポイントを教示してもらい、その後しばらく時間をかけて仕上げればよいと思います。

私自身の経験をご紹介します。私は社会に出てから、社会人大学院に行きました。その際、指導教官は 「居候してもいいですよ」 と仰ってくださいました。当時はまだ指導教官ではないですね。「指導教官になってほしい先生」ですね。何度か研究室に通い、事前に研究室の雰囲気に慣れると同時に、その先生の流儀を感じ取って、少しずつ研究計画を立てていきました。おかげさまで、無事、学位を取ることができました。

当時の指導教官のように、私も、できるだけ社会人のみなさんに扉をオープンにしておきたいと思っています。次の入試は、今年8月です。「まだ先だな」 という時期に映らなくもないですが、少しずつ着実に研究計画を立てるつもりなら、準備を始めてもよい時期です。いま始めれば、かなり余裕をもって進めることができるでしょう。

社会人大学院の場合、入試書類に 「推薦書」 があります。私のときも、これが意外と厄介でまいりました。事前に会社から許しを得るとなりますと、「無理をお願いして許しを得たのに不合格だった」 という事態は困りますよね。どれだけ事前準備しても、必ず合格するとは限らないのではありますが、ご自分の考えや構想が研ぎ澄まされていくことにより、その結果として合格の可能性は高まるのは確かです。

加藤研究室は、明るい未来を切り拓こうと頑張る人や組織を応援しています。加藤研究室が扱うテーマは、事業戦略、競争戦略、新製品・サービスの開発、サービスイノベーション、技術戦略、ブランドマネジメント、ロイヤルティ、エンゲージメント、顧客創造、顧客洞察手法の開発、新たな価値次元の創造、新規要求品質の継続的創造、組織マネジメント、人材育成、などなど多岐にわたります。知財など空っぷしに近い分野もありますが、結構いろいろなテーマをカバーしています。企業にお勤めの方のお一人お一人が抱える問題意識や目的意識にご一緒できる素地は大いにあると考えております。

どうかお気軽にお問合せください。お話を伺い、「そのテーマは加藤研ではないかもしれない」という場合は、そのテーマに相応しい研究室をご紹介します。最初の訪問先として、加藤研究室を訪ねるということでまったく構いません。ぜひ、名古屋工業大学大学院 産業戦略工学専攻でご一緒に取組んでまいりましょう。

加藤雄一郎