カモネギは妻を呼び出した。
あの長年虐げられてきた義姉に自らなんらかの行動を起こすのは初めてではなかろうか。
「話があるんだ」とカモネギは静かに言った。
目の前には数ヶ月ぶりに会う還暦の妻。
若作りでケバケバしい、女が
禁煙コーナーの店で平気で電子タバコを吸う。
運ばれてきたコーヒーカップに
べったりと義姉の口紅の跡がつく。
「勝手に消えておいてなんなの。
謝る気でいるんだろうけど。
許さないから」
義姉は寡黙な夫に呼び出されて動揺していた。
「……。知ってたのか」
クソ義姉は
普段暴力をふるい、自分には逆らわない夫の
静かな声に驚き
カモネギを見つめた。
「…なんなのよ!!ようやく戻る気になったの!カネ出しなさいよ!
あんたがクソ妹と逃げてからすっからかんで大変なんだから!」
いつも通り虚勢を張る。
殴り、蹴り、食事を与えず20年支配した
年下の男を洗脳した義姉。
カモネギは深呼吸をし、安定剤を飲みながらも震えは止まらず
言葉を選びながら、疑念を告白した。
「息子のDNA鑑定の結果が出た。」
「はぁ?なに勝手なことやってんのよ!!」
クソ義姉が怒り狂う。
自分がひたすら隠し通してきた20年。
この男は逆らわない。
金づるとして骨の髄までしゃぶりつくすためだけに存在する。
カモネギのあと10数年で支給される
国家公務員の退職金を持ち逃げして
愛人のところに逃げるまでは
別れるわけにはいかない。
金切り声をあげて、いつものように罵倒する妻を冷めた目で見るカモネギ。
カモネギが口を開いた。