小説指原莉乃リライトSP 「まいやんのピンヒール」 〜 完結編㊄話、頑張れ私のピンヒール | 散り急ぐ桜の花びらたち~The story of AKB.Keyaki.Nogizaka

散り急ぐ桜の花びらたち~The story of AKB.Keyaki.Nogizaka

小説家を目指しています。ゆいぱる推し 京都地元大好き 鴨川のせせらぎと清水寺の鐘の音の聞こえるところに住んでいます。



こんにちはマナです

 

 

次から次へと結婚というゴールへ急ぐOG達の中にあって
ぱるるがそれに抗い反旗を掲げるのもある意味痛快かも

集え世のおひとりさま達よ我のもとへ、見たいなw
ただ、そこはモノノフぱるるだからね、

騙されてはいけない

素敵なイケメンの白馬の王子様でも現れたら
おひとりさま論なんてかなぐり捨てて

勝組一直線の道へ走っちゃいますから(笑)




ということで今回は完結編
まいやんのルブタンを使っての小さな反乱は成功するのか
まいやんの想いはメンバー達に伝わるのか

乃木坂46とAKB48
昇っていく者と下っていく者

そんなエスカレーターの交差点で乃木坂が自我を主張し

AKBがプライドを持ってそれに抗う


そんな構図を白石麻衣と生駒里奈という乃木坂の象徴を戴いて

描いたまいやんのピンヒールもこれで完結



ちょっとポエムっぽくふんわりとしたエンディングだけど
まいやんらしく最後はまとまったのかなと思います
分かりにくい部分は色々想像を働かせて貰って忖度お願いします
推しへの思いを届けるだけの拙アイドル小説ですから



「あと、また最後に村重ちゃんを登場させてます、笑
使わずにはいられないキャラなんですよね彼女は
リアルでももっともっと報われて良い村重杏奈なんですけど
これからの更なる活躍もあると思います」

ちなみにこれは3年前に書いた元文の前説の一節
当時はただただ賑やかしの鉄砲キャラだった村重ちゃんは
今や一番売れてる村重杏奈だから
リトマナが推せば一番売れるそんな伝説つくりたい(笑)

ではではご覧くださいませ



𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・




 これまでのお話はこちらから⤵


㊂話 もうルブタンなんて一生履かない











               𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・




「乃木坂46の皆様、
リハーサルの準備が出来ましたのでロビーにお集まりください」


スタジオ内に響く場内アナウンスに再び私の意識は2019年に戻った。
テーブルの上に置かれたルブタンのヒールは先ほどより少し色褪せて見えた。

(履くの?ほんとに)

もう一人の私が問いかける

「もちろん!」と声に出して言ってみる


私達は私達、もうAKBグループの傘の中で踊らされている私達じゃないんだ。
今更?そう言われるかもしれない。
今の互いの状況を見てことさらあげつらうこともないのかもしれない

もう勝負付けは済んでる。世のジャッジは下された。
時と共にもっと勝者と敗者の色分けは進むだろう。

乃木坂はもう王道を行く
仰ぎ見るのは先人達
意識するのは馬鹿げてると人は笑うだろう


ただ違うんだ。
それでは違うのだ。

私達はちゃんと意思表示は誰もしていない
私達は私達だぞってこの輪の中で傘の下で

叫んだ者は誰もいないんだ
それを声高らかに叫ばないといけない

後に続く後輩たちのために

残された仲間の為に

だから私は・・・。




コンコン...乾いたノックの音
返事を待たずに開いたドアからするりと長い足が伸びた。


「良かった、まだ居た居た」

そう悪戯っぽく笑った指原莉乃は後ろを振り返り「由依ちゃん居たわよまだ」と小さく呟いた。


「指原さん・・・?」


「なんで居るの?って顔ね」



コツコツコツコツコツコッ

心地よい乾いたヒールの音を辺り響かせながら、彼女は私の手前二メートル程のところで足を止める。天井から吹き付けるエアコンの風がひゅるりと頭上を舞う。辺りに拡散するシャネルの甘ーい香り。

 
「大晦日当日はいくらなんでも入れないからねゲストじゃないんだし。
でも今ここでならみんなに会えると思って。聞いたらまいやんまだ控室だっていうから、それでついでに顔見とこうと思って」


「ふふっ、それは嘘やろ。メンバーに会えるのはどこででも会える訳やし、
ついでにって。はなからさしこのお目当てはまいやんやで」

後ろでコロコロと笑うゆいはんの声が重なるように続いた
そんな声にはさらりと目線だけで応えて、テーブルの上におかれたルブタンのピンヒールに手を伸ばす指原莉乃。
ピンヒールのラインを真っ赤なマニキュアに彩られた人差し指が舐めるように滑っていく。


「これが答えなんだ」


「えっ・・・」


「ごめんね、あの時はかばってあげられなくて
でももうわかってたんだあの時私達は。私はかな?」


何が・・・と問いかけて私は言葉を止めた。彼女の目が遠く見ていたように感じたから。私に言ってるようでそうじゃない、過ぎ去ったあの日の自分に諭しているようにも感じたから。


「AKBはもう下りのエスカレーターに乗っていて、あんたたちは上りに乗ってた
思いたくもなかったしもちろん認めたくなかったし、交差したエスカレーターの下に私達はいた。あん時の赤いピンヒールは秋元さんのうちらへのメッセージだったんだよ。
もう乃木坂を認めろってね」


 はっとした。そんなことは考えた事もなかった。
 乃木坂は今はアイドルを仰ぎ見て憧れる子達全ての目指すところ
そこに新たに何かを求めようなんて虫の良い話だってことはわかってた。

でも私達にはAKBとの変わらぬ関係性は依然とあるわけで
誰かが声をあげて私達は私達と大きな声で叫ぶことが必要だと思っていた。


「分かるよ、あんたがなぜこのルブタンにこだわるのか
他の誰もが分からなくても私には分かる」


「うちもわかるんやけど・・」


「ゆいちゃんは意味が違う。悪いけどあんたが通って来たのは真っ白で真っ直ぐな道。私達みたいにくねくしたでこぼこ道じゃないから」


「それなりに試練の対価は十二分にあったと思うけど」


「あったわよ、身に余るほどにね。でも前に立って掻き分けて進むって思いの外大変で、前からはいろんなもん飛んでくるし、後ろからはプチプチ突っつかれるし」


「ふふふ」


「あっ、笑ったまいやん…」


後ろで指を指してくるゆいさんの声がこれまでとは何故か違って聞こえた。


(後ろでコロコロと聞こえる笑い声が聞こえたらね私達は安心できるの)


里奈がいつもそう言ってたっけ、そんなゆいさんの笑い声。

里奈の顔が浮かぶ。

涙をいっぱいためてルブタンを胸に抱いていたあの日の里奈の横顔。
それは私達にとってはあまりにも大き過ぎたAKBという傘の中にいる自分たちの姿と重なった。
いくら売れても人気が出てもレコ大を連覇しても後ろにいつまでも残る大きな大きなAKBという幻影。
ただ私は今、そんな彼女の顔が記憶の中で薄らいでいくのを感じていた。


もういいよ、まいやん
もう乃木坂は大丈夫だから
あんたがいなくても走っていけるから

そんな里奈の声とともに。












「じゃあね、まいやん。客席で見てるから」

ウインクして去っていった指原莉乃の残したシャネルの残り香が消えるまでずっと私は出口の方を見つめてた。

そして一人になったあとの静寂に私はしばし身体を埋めた。

深い森の中に私はいて、あお向けになったまま私は生い茂る緑の合間に
微かに見える蒼空を見上げてる。
土の匂い木々の温もり風の囁き
森の一部になって同化してゆく自分を感じる

もういいのかもしれない。

この深い森の中で私達は生きた
声を掛け合い助け合い汗を流し時には涙に濡れ
そして徐々に私達に届く陽の光は大きくなり明るさを増した

そう天の配分は私達に微笑んだんだ。
でも森は呼吸し生き続けている。先人たちの息遣いもまだはっきり聞こえてくる

これからなんだよ、あんたたちも彼女たちも
新しいスタート、創造の新世界はここから始まるんだ

そう私の卒業とともにね。





𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・





「まぁいやんっ!?何してたのよっ、一人で!?ふんっ!?」

松村沙友理の甲高い声が耳元でびんびん響いて私は深い森の中から舞い戻る
目の前には眉間に皺を寄せ、ほっぺを膨らませ今にも爆発しそうなブータレたさゆりんがいた。

「えっえーっ、ちょっと待って、メイクもまだじゃん、髪の毛も中途半端だし。
メイクさんは何でいないの、何で一人?」

さゆりんのブータレ連射が止まらない。

「自分でするって言った…」

言われた事しか答えない、私は小学生か………ww

「もう、なにやってんの?、ほら見てあれ」

さゆりんが顎で指した控室のモニターには乃木坂や日向坂や欅坂の面々がステージに集う姿が映し出されていた。乃木坂のメンバーの中にはカメラに向かって両手を振っておいでおいでをしてるメンバーもいる。

「まいやん待ちやねんで、わかってんのん、この状況!?」

関西弁の素性が顔を出し始めたらもう彼女は警戒警報発動状態。
おとなしくその御意に従うしかない訳で。。。

「はよ、頭は私がやるから鏡の前座って」

へいへい、わかりましたでござるよと小さくボケたら、頭をペシッ!
「ほら、ふざけない。喋んならメイクしながら」



でもこうやって二人だけで過ごすのは久しぶり
もしかしたら誰も入ってこないのはこの時間をみんなが与えてくれてるのかもしれない。いろいろあったさゆりんだから一番メンバーから思われてるのは彼女かもしれない。



「ごめんね、なんか」

「別にいいけど……」

声のトーンが下がった鏡の中のさゆりんごを上目遣いで確認する。
思えばいつもこうやってなかば喧嘩をやり合うように髪の毛を弄ってもらったっけ。少し唇を尖らせながら黙々と手を動かす私の愛すべき戦友。
その見慣れた姿に熱いものがこみ上げてくる。
もうきっとやってこないんだろうな、さゆりんごとのこういう下りは……



「何よ?」

「何が?」

「ずっと見てるから、私のこと」

「見ちゃ悪い?」

「別に」

わかってるはず、もう私が泣いてることは。
あと1ミリ私が押せばこの人はもう涙の泉の中に包まれるはずだ。



「頼むね、乃木坂のこと、みんなのこと」


「ぐふぅぅぅっ、ここでそれ言うぅ、何でそれ言うのよぉ、
泣いてる時間なんてないでしょうがぁぁ・・・」

それからはもう当然のごとく二人は抱き合って号泣大会になって
心配して駆けつけた真夏とかいくちゃんとか、そんなメンバーたちに介抱されてた。




𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・




結局私はもうルブタンは履かなかった。
履く必要性をもう見いだせなかったと言うべきかな。

わたしたちが私達である為にもう私がやることは何もない
共に生きなければいけない定めの中にある
呼吸をし息遣いを感じそして時には競い時には励まし合う
それが"わたしたち"なのだから。



ただそうなったらどうしようってなって。
ルブタンなんて私の身の丈に合わないものは履けないし
真赤な原色のハートが入ったピンヒール。
それは私のクロゼットには似合うべくもなくて。
さぁどうしよう。

どうしよう、このルブタン。
さっしーかゆいはんさんにあげる?それもざぁとらしいし。

うーん………。
そうだ、村重ちゃんにあげよ、ってなったw
そうそれがいいって。オチは村重ちゃん、それでいいのだってね。ふふふ。


こうして私の私達のお騒がせのルブタンのピンヒールは然るべきところに収まってエンディングを迎えました。
最後はその顛末でお話しを締めくくろうと思います。




その一週間後、村重杏奈から届いた長文メールと返信


まいやんさんへ

その節はごめんなさい
あれから莉乃ちゃんにはボコボコに怒られて
ゆいはんさんにははんなりまったり説教されました
もう大反省してまっす

あと、物はしっかり受け取りました。
博多女の女義に任せて突っつき返すなんてそんなケチな真似は村重はしません
ただこれは乃木坂からAKBGへの再びの挑戦状と受け取ります

やってやろうじゃないの

まいやんさんと乃木坂の向こう意気、確かに受け取りました
これからHKTはAKBとともに本気見せて
乃木坂と坂道まとめてぶっ倒しにいきまっす
ご覚悟召されてくださいませ

ただ一つだけ最後に言っておかないといけなお断りが村重にはあって
まいやんさんと会ったら村重たぶん、
不覚にも泣いてしまうかも分からんけど
それはそれで打っちゃっておいてください

なぜって、
村重はもうすっかりまいやん推しだから

             
                  花は桜木、女は村重



博多に一回行かなくちゃね、村重ちゃん泣かしにね、ふふ


                  白石麻衣





まいやんが村重に贈ったルブタンのピンヒール
その真っ赤な箱の底に書かれていた言葉は
それは……




頑張れ私のピンヒール、

  乃木坂のために、そしてHKTとAKBのために

    あと親愛なる村重杏奈の為にも




             𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・





おわり