さくさく読書日記-暗い夜、星を数えて

貸本屋さんのお姉さんにオススメされて借りた本。

あの大地震からもうすぐ1年・・・早いですね。

このタイミングでこの本を読むことができて、

忘れかけていたあのときの不安や恐怖が

思い起こされました。



この本は、311日のあのとき、たまたま東北一人旅をしていた著者が、

常磐線に乗り合わせて福島県新地町で被災したときのルポと、

その後、ボランティアに参加、さらには、被災時お世話になった方々に

再会する・・・という構成になってます。


タイトルからすると、一瞬ファンタジックな美しい光景を想像してしまいますが、

中身はあのときの恐怖、不安、衝撃をシンプルな言葉で、だからこそなお、

リアルに書かれています。

ものすごい「切迫感」を感じました。

テレビや新聞などで、被災された方々の特集などを見るより、生々しかったです。

そして、薄れかけてたあのときの恐怖や不安がまざまざとよみがえりました。



著者は、あの日、仙台方面から福島に住む友人に会うため、常磐線で移動していました。

途中、線路脇で火災が発生したかも・・・ということで、乗っていた電車は

停まったり進んだりを繰り返し、結局、新地駅で安全確認がなされるまで停車することになったそうです。

その停車中に地震が起きました。

隣り合わせた二駅ほど先に住むという女性とともに、動かない電車に見切りをつけて

歩き出します。

新地駅は海から500mほどのところにある駅なのですが、著者は駅近くのコンビニで買い物をしたのち、

津波警報が流れ、後ろを振り向くと、地面がうごめいているのが見えたそうです。

急いで高台に駆け上がりますが、走ってきた道や町が水に呑み込まれるのを、ただ呆然と見守るしかなかったそうです。

その後、近くの避難所に避難し、そこで出会ったある家族に助けられます。

数日、その家族の家にとどまり、4日後、やっと東京に戻ることになります。

この5日間に、地震、津波、果ては原発問題と立て続けに発生し、

著者はいいようのない焦燥感と死を覚悟しながらただひたすら「生き抜く」ことを考えたそうです。

本当に、なんて表現したらいいんだろう・・・胸が詰まる・・・というか。

そして、後日、数回にわたる福島訪問を経て感じた、被災地とそれ以外の地域との「心理的段差」。

心無い人々の福島の人々に対する、誹謗中傷は読んでいて腹が立ちました。



今でも時々テレビで流れる、津波や地震、原発の被害の映像は、目から衝撃を受けますが、

この本は、心にずーんと衝撃が走ります。

そして、見ず知らずの人間にも優しく、親身に接してくれる人たちの善意に感動させられます。

自分だったらこんなことできるだろうか?と自問自答したくなります。


あれから1年。

地震関連の報道も少なくなり、あのときの記憶が薄れつつある今だからこそ、

読んでよかったと思います。








さくさく読書日記-しあわせのパン

原田知世さん&大泉洋さん主演で映画化された「しあわせのパン」の

原作。

監督さんが書き下ろしたと出てたので、実はあまり期待せずに読んだのですが・・・。

思いがけずよかったです。



東京から北海道・月浦に移り住み、湖が見渡せる丘の上で「マーニ」というカフェを

始めた水縞くんとりえさん。

水縞くんがパンを焼き、りえさんがそれにあうコーヒーを淹れ、料理を作る。

そこには毎日、いろいろなお客がやってくる。

北海道から出られない青年、沖縄旅行をすっぽかされた傷心のOL、

思い出の地にふたたびやってきたワケあり風な老夫婦などなど・・・。

美しい月浦の四季とともに、店を訪れた彼らの心の中の「しあわせ」を

描く・・・。



映画観たくなりましたー・・・というか、最初は映画が気になって、観にいこうと思ってたところに、

貸本屋さんで見つけた原作本・・・。

読み始めると、止まらなくなり、ほぼ一気読みしてしまいました。

映画の監督をした方が書き下ろしされたそうです。

映画を観て、この本を読むと、それぞれの登場人物についてより深く知ることができるそう・・・。

私の場合、逆になってしまいましたが、映画はそのうち絶対観ます!!

やはり、美しい風景は映像で堪能しないと・・・。


この本は、水縞くんが作るパンはもちろんですが、りえさんが作るお料理もとてもシンプルで

美味しそう。

ワケありな老夫婦のために作ったポトフは特に惹かれました。

これまた映像で見たら、マネして作ってみたくなると思います。


水縞くんとりえさんは、夫婦の設定だと思ってたのですが、実はそうではなく・・・、

これまたワケありなんだろうけど、そのへんの事情がオブラートくるみすぎて書かれてるので、

イマイチわかりませんでした。



とはいえ、全体的にポワンとあったかくなるようなお話ばかりなので、

読後感はゆったりした気分になれます。

巻末には、りえさんが昔から好きだという絵本もついていて、これまたよかったです。


こういうお話は本当にいいな・・・湖に映る月の美しさを想像しただけで、

なんだかほっこりしてしまいました。











さくさく読書日記-ユリゴコロ

なんだかんだ言ってちょっとハマっている、

沼田まほかる作品。

今まで読んだまほかる作品の後味の悪さばかりが残っているのに、

貸本屋さんで見つけて借りてしまいました。



数ヶ月の間に、恋人の失踪、父の病、母の事故死・・・と、

立て続けに不幸に見舞われた亮介。

ある日、余命いくばくもない父の書斎から「ユリゴコロ」と書かれた、

ノート4冊分の手記を見つける。

それは、ある人物が行った殺人の告白だった・・・。



きっと内容がドロドロしてて、ぐったりするんだろうなーと思いつつ読み始めたら、

止まらなくなってしまいました。

でも、後味は今までのまほかる作品とはまったく違う!!

ある日、ひょんなことから父の書斎でノート4冊分の手記を見つける亮介。

同じ箱の中には、亡き母のものと思しき遺髪が入っており、

手記の内容と母を結びつけずにはいらなれない・・・でも手記の内容は、

恐るべき殺人者の告白でした。

その内容が現実のものなのか、はたまた創造のものなのか、

それすらもはっきりしないけれども、生々しい告白に、亮介は現実に違いないと確信して

読み進めていきます。

これを書いたのが母なのか、父なのか・・・そんなことにも悩みながら中盤に差し掛かり、

ラストはちょっとびっくりな結末となっています。

ミステリマニアの方々のレビューを見ると、途中で全てがわかってしまったという方が多いようなのですが、

私は最後の最後まで気付かず、真相が明らかになったときに思わず「えーっ」と声に出してしまったほど。

読んだ後は、どろどろではなく、なんかすべてが繋がったという爽快感が強かったです。



まほかる作品、これで3作目。

以前の2作品が本当に後味悪いというイメージが強くて、それ以降、貸本屋さんで見かけても

手が出ませんでしたが、他の作品も読んでみます。