吉祥寺の駅から水道道路を三鷹の方へ向かい、
大きな交差点を井の頭公園の並木道へ歩く途中に喫茶店「YAGI」はあった。
ショーウィンドウのような大きなガラス張りの窓があり、
木材を主にした内装の手作り感あふれる、いまで言うナチュラル志向の店だ。
客には、食えない音楽家、アホな美大生、吉祥寺の地元で
ワケのわからん商売をしている人などが集った。
この喫茶店のカウンター裏でせっせと濃いコーヒーを淹れていたのが、
後に写真作家として有名になる橋口譲二さんだった。
当時は食えないカメラマンで、奥さんもやはりこの店でバイトをしながら
二人で何とか生計を立てていた。橋口さんは週に一~二度ほど顔を出すだけで、
ほとんど奥さんがこの店を仕切っていた。
喫茶店はもう25~6年くらい前に閉店していて、跡形もない。
それと前後して橋口さんは写真の世界では名が知られるようになる。
商業写真ではなく、非常に作家性の強い作風で、著作としても世の中に強いインパクトを与えた。
喫茶店に入り浸っていたので、言葉を何度か交わしたことがあるが、
ちゃらい自分から見ると、僧侶のような人だったことを覚えている。
きちっと世の中を見て、自分がどう生きればいいか、何を撮るべきかがわかってるような人で、
物欲まみれの自分とは、まるで人間のクオリティが違った。
現在もNGOを創設するなどして勢力的に活動しているらしい。
ちなみに、氏の写真集は観るというよりも、
詩集を読んでいるような気分にさせられる。
『17歳 2001-2006』橋口譲二著 岩波書店刊 ¥3,990






