68年の映画「華麗なる賭け」は、大好きな映画のひとつだ。
68年という時代は時代が大きく変わるポイントでもあった。
60年代初期から続いたザ・ビートルズのムーブメントは実質的な終わりを迎えて、
ヒッピーやアートロックへ転換していった時代。
カウンターカルチャーの勢いが増し、アメリカでは学生運動が激化した。
ウッドストックは、この翌年に開催されている。
数ある主演作の中でマックイーンはこの「華麗なる賭け」がお気に入りだと云う。
彼の素のキャラクターで云えば、「ブリッド」や「荒野の7人」などアクションものは
ほとんど演技していないも同然のような作品である。「栄光のルマン」に至っては、
まるで素だ。それに比べ、「華麗なる賭け」は彼のイメージを塗り替えたからだろか。
ダグラス・ヘイワードが仕立てた(ネット情報)高級な3ピース・スーツを着て、
パテクフィリップの懐中時計を身につけたその姿は、まるでマックイーンらしくない。
最初はショーン・コネリーにオファーしたが、断られた。コネリーは後にそれを後悔していたそうだ。
ともかく、「華麗なる賭け」はマックイーンらしくない映画として
時代の変革期にふさわしい作品となった。
撮影のほとんどはロケで、ボストンとマサチューセッツ、ニューハンプシャーという
旧世代の権化のような場所で行われた。
トーマス・クラウンが住む家はCharles Bulfinchという高名な建築家が設計した屋敷で
いまもベルモン通りに現存している。
劇中のキーになる墓地もケンブリッジにあるマウント・アーバーン墓地を使った。
劇中でフェイ・ダナウェイが運転したフェラーリ275GTSは、初期ロットの10台のうちの1台で、
いまでもニューヨークのコレクターが保管しているという。
ちなみに、フェイ・ダナウェイのファッションは、まさに時代の変革期を象徴していて、
いくぶんサイケ調ながら70年代へつながるアヴァンギャルドは雰囲気を、
マックイーンのクラシックな装いと対比させている点など、製作者や監督の思惑が
垣間見えておもしろい。というのも、当時のモダンなファッションを着るフェイ・ダナウェイは
旧価値観のマックイーンに翻弄され、最後は彼の策略に負ける。
それは、勢いをつけ勃興しつつあったカウンターカルチャーの風俗が
あっという間にチカラをなくした状況を象徴しているようでおもしろい。





