「男と女」のパートカラー(モノクロとカラーの構成)は
当時は斬新で、「ものすごくセンスのいい映画だ」と捉えていたが、
その理由は単に製作費用がなかっただけだと、
監督のクロード・ルルーシュはDVDの特典で語っている。
手持ちカメラで撮った躍動感のある映像も、
やはり撮影機材を揃える金がなかった結果だったそうだ。
ほぼ破産寸前のルルーシュは、ムシャクシャしてパリから2時間ほど
クルマを走らせて映画の舞台となったドービル海岸に着き、
クルマの中で眠り、朝を迎えたときに海岸を散歩する母子を眺めているうちに
「男と女」の構想が浮かんだ。
そこから、彼の人生は大きく成功へと舵が切られた。
まったく無名の監督が、貧弱な機材と手弁当の製作体制で、
クルマに自分の身体を縛り付けながら自分で撮影した映画が、
世界中を驚かせ、興行的にも大成功をもたらした。
傑作の裏側(製作過程)というのは、右往左往するし、デタラメで、
大騒ぎしながら進んでいく。成功なんてしやしないと思っていたものが、
予想に反して名作・傑作になる。周到に計算され、スマートかつ思惑通りに進み、
関係者が皆満足するようなものからはほとんど生まれない。
世に出る前は「疑問符作品」、世に出てからは「大成功作品」。
映画に限らず、よくある話だ。