70年代後半から永年、カウボーイ・ブーツを履き続けてきた。
ネットの普及と円高のおかげで、いまや1万円そこそこで
TONY LAMAを直接アメリカから買うことができる。
適正サイズを決める試しオーダーをしたとしても多額の出費にはならない。
最近のファクトリー・ブーツ(量産ブーツ)は、
以前と違って、クッション・インソールが付いていたり、革そのものも柔らかかったり、
ウォーキング・シューズとしても十分過ぎるくらいのクオリティを備えている。
しかし、いいことばかりだはない。ひとつ問題がある。リペアだ。
「カウボーイ・ブーツのリペアできます」という看板を
掲げているものの、多くの職人さんは普通の靴のリペア技術でもって
対応してしまう傾向が強く、これまで何度も失望・失敗してきた。
TONY LAMAのようなファクトリー・ブーツは、カスタム・ブーツとは違い
エキゾチックな革素材さえ選ばなければ、とにかく安い。
安いからだろう、最初に付いているソールは革質が良くなく、オマケみたいなものなのだ。
新車を買うと、エンジンのアタリを出すために入っている
研磨オイル(2千キロくらいで交換しなければならない)と同じで、
アッパーが軽く馴染む頃(3ヵ月~半年)にはつま先が剥がれ、ウェルトの
ステッチが数センチにわたって切れたりするものだ。最初は「安靴!」と思ったが、
8足をローテーションで履くようになると、そのメカニズムがわかってきた。
繰り返しになるが、最初に付いているソールはオマケで、
きちんとリペアすることで、長持ちするブーツとしての体裁が整うわけだ。
ところが、日本の職人さんは「アッパーがまだぜんぜん新しいのに
ソールがもうダメになっている、よし、しっかり直してやろう」と
オールソール・リペアで厚盛りの丈夫なソールを付けてしまう。
そうすると、せっかくの軽く歩きやすいブーツが、重く
“返りの悪い”ブーツになるだけでなく、
足入れのフィットまで悪くなってしまうから困ったものだ。
ゆえに、永らく日本のオールソール・リペアには失望し続けてきた。
ところが、最近わかったことだが、
完璧とも言えるブーツ・リペアをやってのけるファクトリーが日本にあった。
年初に2足だけ試しにお願いしたTONY LAMAの#CY821が
見事な状態で仕上がってきた。軽く、履きやすく、オリジナルの状態を
キープしながら、耐久感やしっかり感は向上している。
ソールの見映えもTONY LAMAのオリジナルと同じだ。
リペア・プライスは約1.7万円と、アメリカから
新品で1足インポートする値段よりも高くなった。
けれども、非常に満足している。
なぜなら、アッパーが自分の足に合わせてこなれてきている状態で、
それを損なわない感じで旨くオールソール・リペアが施されており、
履き心地やフィットがさらに良くなったからだ。
ちなみに、ブーツ・リペアのファクトリーは川崎の高津にある「BENCH MARK」。
渋谷や青山で営業している「UNION WORKS」の姉妹店で、
ワーク・ブーツやカウボーイ・ブーツなどのリペアを得意としている。
残りの6足も順次、ここの職人さんにリペアをお願いしようと思っている。
「BENCH MARK」
〒213-0001 神奈川県川崎市高津区溝口5-23-8
TEL. 044-822-4443 FAX. 044-822-4443