北朝鮮の関連のニュースを見るたびに、
あの「キューポラの街」に出ていたサンキチ家族を思い出してしまう。
サンキチ家族は、在日朝鮮人の北朝鮮帰国運動で
キューポラのある街こと川口から北朝鮮へ帰国する。
映画のラストは吉永小百合演じる主人公と
故市川好郎演じる弟のタカユキが、サンキチを
橋の上から見送る感動的なシーンだった。
サンキチはおそらくその後、北朝鮮で厳しい人生を送ることになるのだろう。
この映画の中に描かれている日本の底辺階層の人々の生活は、
何処か懐かしい。お金がなくて修学旅行に行けない主人公。
優秀でも家の事情で高校へ進学できず、昼働きながら定時制へ通う主人公。
破れた障子。長屋の共同炊事場。宅配された牛乳を盗む子供。
会社を首になり、朝から酒びたりになる父親。
朝鮮人の差別を受ける同級生。中卒の労働者。
昭和30年代は、そういう社会階層がごくごく一般的に存在した。
共産系の雰囲気が色濃い作品だが、この映画の評価できるところは、
そういう底辺階層の人々が貧しいながらも活き活きと
描かれているところにあると思う。
パッケージやポスターからは、吉永小百合と浜田光夫の
青春ラブストーリーのように見えるけれど、中身はぜんぜん違う。
中高年のリストラが常態化している今、この映画がやけにリアルに思えて仕方がない。