ライオネル・バートが亡くなって今年で10周年を迎える。
没後10周年である。彼はミュージカル「オリバー」の脚本・作曲者として有名だが、
もうひとつ世界的に有名な仕事がある。
それが、「ロシアより愛をこめて/From Russia With Love」のエンディングテーマだ。
マット・モンローが歌う(作詞も)この楽曲は、007映画史上もっとも美しくも
抒情的なエンディングテーマとして白眉である。
ライオネル・バートという人は、もともと美術畑での仕事を希望しており、
商業画家・デザイナーとしての教育やキャリアを歩んできた。したがって、
音楽の教育や脚本書きの教育は一切受けていないと言う。
で、あっと言う間にミュージカルを書き上げてしまうのだからすごい。
さて、彼による「ロシアより愛をこめて/From Russia With Love」をアレンジして
タイトル曲に仕上げたのがこのシリーズの音楽担当でも有名なジョン・バリーであるが、
こちらの方もライオネル・バートの原曲に匹敵するほどの見事な出来に仕上がっている。
注目すべきは冒頭の女性の裸身に映像が映し出されるシークエンスのサウンドに、
舞台となるトルコ方面のアジアを連想させるアコーディオンが使用されていることだ。
異国情緒の香りを強調するためのアイディアなのだろうか、実にすばらしい。
しかし、サウンドトラックのCDにはこのアコーディオンが入っていない。
いろんなCDを聴いてみたが、本編にしかアコーディオンは使用されていないのだ。
自分は、ライオネル・バートによるエンディングテーマも好きだが、
タイトル曲の方が構成的にも多彩で、映画音楽らしいダイナミズムにあふれていて
これも甲乙付けがたい。
ビートルズもいいけど、没後10周年ということなのでライオネル・バートの
リマスターCDなんてものが出てくれるとうれしい。