71年から89年まで販売されたロングセラーのメルセデスSL。
R107の呼称でごくごく一部の人たちに親しまれている3世代目のSLだ。
車型はロードスター、すなわちオープンの2座。
見た目はスポーツカーのようだが、
実際はまるで中年が乗る乗用車のようにおとなしい。
トルク重視のもっさりとした走りだが、
高速の安定性はメルセデスのセダンのように揺るぎない。
ちなみにこのクルマ、評論家ウケがすこぶる悪い。
要は、北米市場を見据えて販売されたクルマゆえに、
ポルシェを筆頭とする活発なハンドリングの
スポーツカー文脈は持ち合わせていないのだ。
ところが、R107は18年のモデル・ライフを通じて約30万台を売った。
2座ロードスター(SLCのクーペも含む)で、この数字は驚異的と言える。
もちろん、その三分の二は北米市場で売れた。
評論家やメディアの支持がなくとも商品は売れる。
いま、80年代リバイバルがファッション業界で巻き起こっている。
メルセデスのR107は、70年代初頭から80年代末期まで
作られているが、モデル末期の80年代後半に再び販売が伸びた不思議なクルマだ。
ごく希に街で見かけるが、いま見るとその姿はとても新鮮に映る。