伸一が初めてサッカーの試合に出た日の夕方、食事での話題はもちろん試合のことでした。
「伸一、なかなかいい働きをしていたよ」
これが妻の感想でした。
「いい働きって? シュートしたの?」
「前のほうは5年生がやるから。シュートなんてしてない。守りのほう」
と、妻。
もともと足の遅い伸一です。5年生の中でいい動きをしていたとは思えません。
「伸一はどうよかったの?」
「どうって、・・・・うまくボールにからめたとか・・・・」
いいにはいいのですが、どうよかったか、説明に困るようです。
「うまいの?」
「いえ、うまくはないんだけど・・・・」
コーチも電話をくれたとき、同じようなことを言っていました。
いったい、いい働きとか、いい動きって、どんな動き?
私は伸一のサッカーに対して興味がわいてきました。
しばらくしてまたサッカーの試合があり、私はそこで初めて伸一のサッカーを見て、やっと『いい動きをしている』という意味がわかりました。