「やっぱり、野球、やめる」

「え?」

これが、我が息子、伸一がサッカーを始めることになったときの会話です。


息子の小学校にはスポーツ少年団というものがあり、3年生から野球やサッカーなどのスポーツ活動が行えるようになります。

子供には運動をさせたい。させるなら野球。

私にはそれしか頭になかったので、伸一には野球をやらせるつもりで、2年生の終わりごろからキャッチボールなどをしてきました。

先の会話は、私が伸一に新しい野球のグローブを買ってやった数日後に、妻と交わしたものです。


「野球をやらせないの?」

と、私。

「だって、野球をやりたいって子、みんな運動ができる子ばっかりだし、そんなところへ行っても、うちの子、かわいそう」

と、妻。

「でも、スポーツはやらせるべきだ」

「伸一は心臓が強いから、サッカーにする」

「サッカー?」

「サッカーなら、走り回っていればいいだけだし、伸一にはいいと思う」

「・・・・・」

確かに、伸一はそれほど運動ができるというタイプじゃないし、野球で活躍できると期待してるわけじゃないけれど。

子供がやるスポーツって、やっぱり野球じゃないの?

心の中でぶつぶつと文句を言うのですが、口に出しては言えません。我が家ではお母さんが一番の権力者なのですから。

そりゃ、伸一は短距離走は遅いけれど、マラソンは学年で一二を争うほど速い。速いというか、強い。声もでかい声を出せるから、確かに心肺機能は強そうだ。

だからサッカーがいいというのは、あまりにも発想が単純なんじゃ・・・

ま、全ての決定権はお母さんにあるのだから。


かくして、子供に買ってやったグローブは、いまだに新品同様で押入れの奥に眠っています。


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