『少女マンガの宇宙 SF&ファンタジー1970-80年代』図書の家・編/石堂藍・協力 (立東舎)
本当にこの春は発売日を心待ちにしてた本が多くて。
これもその一冊です。
全編収録されている『ユニコーンの夢』(萩尾望都)は1974(昭和49)年発表。
少女マンガならではのSF&ファンタジー感が詰めこまれた、本書の巻頭を飾るにふさわしい短編です。
ギリシア神話に出てくるような衣をまとった少女と少年の出会い。
のどかな自然の風景と、日常のごく身近に《宇宙船》が、
《よその星との戦い》がある世界。
青い目をしたユニコーンがヒロインを《永遠》にいざなう……幻想的な物語は、少女の《SF事始め》にぴったりに思えます。
続いては
萩尾望都、竹宮恵子、大島弓子、山岸凉子、青池保子、木原敏江ら「24年組」の作家たちのSF&ファンタジー作品紹介。
また雑誌別に語るページからは当時の少女マンガ状況を俯瞰的に見ることができます。
私は特別SFファンではありませんでした。
いや、それどころかSFは嫌いだと思っていました。
というのはスペースオペラが苦手だったためで、
SF=スペースオペラだと思いいたせいなのですが。
(また、小学生の頃からミステリが大好きで
「自分はミステリ派だ」という子どもじみた
アイデンティティに酔っていたせいもあるでしょう)
とは言いつつも、なんだかんだSFに触れていたのは
姉のおかげです。
本なら何でも読みたい子どもですから
隣の部屋の本棚をあさるのは当然。
オタク第1世代の姉の本棚には
『宇宙戦艦ヤマト』『サイボーグ009』のマンガに小説版、『百億の昼と千億の夜』(光瀬龍・原作/萩尾望都・マンガ)や『超人ロック』、
松本零士がカバーを描いている『大宇宙の魔女』。
竹宮恵子『地球へ…』『ジルベスターの星から』『集まる日』。
雑誌では『SFマンガ競作大全集』『リュウ』『宇宙船』なんかもあったりして。
多くの人がそうだと思いますが
星新一、筒井康隆や小松左京などは
ジャンルが何かなんて考えず読んでいましたよね?
そして、私は10代も終わり頃になってから
自分の本棚にあるヴォネガットやフレドリック・ブラウンやらを眺めつつ、気づいたのです。
「これってSFじゃん!?」
姉だけでなく、中学時代の友人の影響も大でした。
中学3年のとき、同級生が突然マンガ研究会を発足させることになり。
ちょうど2年の末にバレー部をやめてぶらぶらしてた私も
誘われるままに加入したのですが。
めちゃくちゃやる気あふれる部長(女子)は
超人ロックのFCに入っていたんですよね。
マンガはもちろんオリジナルのレターセットなんかも作っていて即売会に参加していて。
今では小中学生がコミケに行くのは珍しくないですが
80年代初頭としてはけっこう進んだオタクだったのではないかと思います。
副部長はめっちゃ萩尾望都に影響を受けた絵を描く人だったし。
友人たちが次々に貸してくれるおかげで
“進んで手を伸ばさなかった”作品に触れたことはありがたいですね。
これはSF&ファンタジーに限らずですが。
ことに10代の頃の夢中さってすごいもので。
中3のとき、右を向けば
「シャールくんがシャールくんが!」と騒ぐ
『エイリアン通り』狂、
左を向けば
『うまやどーうまやどー!」とわめく
『日出処の天子』狂がいた…
「LaLa」発売日の彼女らの狂熱ぶりは
忘れようにも忘れられません。
さて…だいぶ脱線しました。
本書でなんといっても圧巻なのは50ページ以上にのぼる、
少女マンガ家が手がけた
ハヤカワ文庫FT・SF・JAのカバーイラスト集。
山岸凉子、萩尾望都、中山星香にめるへんめーかー。
あしべゆうほ、山田ミネコ。
おおやちきに、まつざきあけみも!!
当時、お気に入りのマンガ家の美麗なイラストを手元に置きたい一心で、これらの文庫を手にとった人も多かったのでしょうね。
私が大好きな内田善美の
『ゲイルズバーグの春を愛す』(ジャック・フィニィ)
『ピポ王子』(グリパリ)も!
『ピポ王子』はつい最近、古本屋で手に入れたばかり。
グリパリという作家のことは知りませんでしたが
即ジャケ買いです。
ファンタジーなのですが
ナンセンスでコミカルなところがあり
好みストライクでした!
『少女マンガの宇宙 SF&ファンタジー1970-80年代』の読みどころをもうひとつ。
1948年から始まる「SF&ファンタジー少女マンガ」の635作品リストです。
作品、作者名、発表年、掲載誌と掲載号の表なのですが
「あれは…さすがに載ってないよね?」と思っていた
短編のタイトルを見つけてうれしくなったり。
リストを眺めているうちに
きっとまた違う感慨が浮かびあがってくるかも。
これだけ精査されたリストには資料的役割だけでなく
そうしたエネルギーがあると思うのです。