日々折々 室内住職学と滴禅会
曹洞宗の僧侶限定の話題となる点をご容赦いただきたい。
去る2月13日、14日、仙台を会場に滴禅会の研修会が開催された。
滴禅会と言っても、会の目的も会の存在も知らない人も多いかもしれない。洞門の切紙・口伝の研究者として高名であった故杉本俊龍老師は昭和30年代から50年代にかけて曹洞宗の各宗務所の現職研修等に講師として拝請され、室内住職学の講述を行ってこられた。
室内住職学といっても、残念ながら学問分野として確立したものではない。住職としての心得、寺院における種々の作法・行礼、法具法式の意義由緒等の参究のことを意味する。近代の仏教学禅学の研究対象にはなじみにくい部分もあることから、忘れ去られた部分もあるが、寺の住職として『曹洞宗行持軌範』や『曹洞宗行持基準』には記載されていない法要・祈祷等を行なったり、葬儀法要の求めに応じなければならないことが実際に多々起きてくる。そういう時私にとって一番頼りになるのは、当寺の先住、先々住がかって購読していた『龍華』の綴りである。『龍華』とは、杉本老師が全国の宗門僧侶からの疑問質問への回答や住職として心得るべき作法とその意義由緒等を著した機関誌の名称である。当初はガリ版刷りで数百部の発行であったが、次第に購読希望者が増加して活字印刷の機関誌となった。
ちなみに、昭和44年には宮城県宗務所の現職研修ために仙台までおいでいただき、北山輪王寺で講述されている。杉本老師が高齢になられこともあり、鳥取市の天徳寺を会場に「滴禅会 講伝会(こうでんえ)」が第一期6回開催された。これは、自ら参学したことを後進の者に伝えようとする杉本老師の慈悲心、そして杉本老師が参究されてきた室内住職学の大切さを感じた方々の求道心の結集であろう。 その後、他の寺院を会場に「室内住職学 講伝会」は続いたとのことである。しかし、昭和57年に杉本老師が遷化されたことで、滴禅会は立ち消えとなったようである。
切紙と言っても、他宗の方にはピンと来ないかもしれない。師匠から弟子へと伝えられる所謂「事相」に関する口伝・口訣を書き記したものを言います。
この時の講伝会で熱心に聴講された方々は連絡を取り合い結集を重ね、杉本老師から学んで来られことを確認参究してこられたとのことである。そして、新たに同学の宗侶を呼び集め平成13年より新たな「滴禅会」を発足させ、平成13年6月に栃木県足利市の高福寺(住職 武井全補師)を会場に再発足「滴禅会」の研修会がスタートした。会場となった高福寺の先住武井哲翁老師は大本山総持寺の単頭を勤められ、正法眼蔵を提唱された本も数冊出しておられる。詩人相田みつを氏が武井老師に参禅していたことは相田みつを氏の著書の中に散見される。相田みつを氏の詩作と書には、高福寺での参禅があってこそのものと言える。
私も再発足の第1回滴禅会に参加させていただいた。今回の研修会で18回を迎えたとのこと。参加するつもりで居ても、葬式が出来たり所用が出来たり、ということもあって、急遽欠席したこともあった。新潟が会場の場合は、往復の所要時間と前後の予定を考慮した結果、毎回欠席している。実際に私が出席したのは8回だけである。皆勤の方々、10数回参加の方々に比べると誠にお恥ずかしい限りである。熱心な方々はその都度頂戴した資料を読み返したり、光岩寺御住職の度会仙定老師が杉本老師から聞き書きしたことをまとめた『室内住職学随聞録』を熟読したり、代表幹事井上義臣老師が自坊花井寺で開催している研修会に参じたりしている。そういう方々に比べると私の勉強は、まだまだと言うしかない。私は本年から始まる寺の改築事業を抱えている身であるから、当分の間滴禅会の研修会には参加できそうもない。しかし、『室内住職学随聞録』や『復刻 龍華』を参究する時間だけは作っていかなければと思っている。
曹洞宗の先人たちは発心得度以来、江湖会や行脚を通じて本師や高徳の師に教えを請い、宗乗余乗内典外典を学び法式進退を学んできた。そうした修行を経て実際に寺を維持し檀信徒の悩みや希求に応えるだけの道力を身につけてきた。そして、その道力の根幹を成すものが、「室内住職学」に他ならない。大学で学ぶ仏教学は残念ながら書物の中の仏教というしかない。実践的とは言えない。本山や地方僧堂で学ぶことで、個々の寺院の現場に生かされることは限られている。私自身を含めてもっと多くの宗門僧侶が室内住職学を参究する必要があると思う。無論、「室内住職学」自体、今後克服していかなければならない課題もあると思う。この点についてはいずれ別の機会に論じてみたい。
現在の滴禅会が再発足して6年目になるが、参加者が頭打ちになっていることが残念である。もっと多くの宗門僧侶の参加して欲しいと思う。
◎『復刻 龍華』と『室内住職学随聞録』の購入希望の方
◎滴禅会への入会希望の方
下記にお問合せ下さい。
〒326-0803栃木県足利市家富町2523 高福寺内 滴禅会事務局
電話番号:0284-21-6206
室内住職学参究の必要性にご同意の方は、下記のアドレスをクリック下さい。
[https://www.blogmura.com/ にほんブログ村]
曹洞宗の僧侶限定の話題となる点をご容赦いただきたい。
去る2月13日、14日、仙台を会場に滴禅会の研修会が開催された。
滴禅会と言っても、会の目的も会の存在も知らない人も多いかもしれない。洞門の切紙・口伝の研究者として高名であった故杉本俊龍老師は昭和30年代から50年代にかけて曹洞宗の各宗務所の現職研修等に講師として拝請され、室内住職学の講述を行ってこられた。
室内住職学といっても、残念ながら学問分野として確立したものではない。住職としての心得、寺院における種々の作法・行礼、法具法式の意義由緒等の参究のことを意味する。近代の仏教学禅学の研究対象にはなじみにくい部分もあることから、忘れ去られた部分もあるが、寺の住職として『曹洞宗行持軌範』や『曹洞宗行持基準』には記載されていない法要・祈祷等を行なったり、葬儀法要の求めに応じなければならないことが実際に多々起きてくる。そういう時私にとって一番頼りになるのは、当寺の先住、先々住がかって購読していた『龍華』の綴りである。『龍華』とは、杉本老師が全国の宗門僧侶からの疑問質問への回答や住職として心得るべき作法とその意義由緒等を著した機関誌の名称である。当初はガリ版刷りで数百部の発行であったが、次第に購読希望者が増加して活字印刷の機関誌となった。
ちなみに、昭和44年には宮城県宗務所の現職研修ために仙台までおいでいただき、北山輪王寺で講述されている。杉本老師が高齢になられこともあり、鳥取市の天徳寺を会場に「滴禅会 講伝会(こうでんえ)」が第一期6回開催された。これは、自ら参学したことを後進の者に伝えようとする杉本老師の慈悲心、そして杉本老師が参究されてきた室内住職学の大切さを感じた方々の求道心の結集であろう。 その後、他の寺院を会場に「室内住職学 講伝会」は続いたとのことである。しかし、昭和57年に杉本老師が遷化されたことで、滴禅会は立ち消えとなったようである。
切紙と言っても、他宗の方にはピンと来ないかもしれない。師匠から弟子へと伝えられる所謂「事相」に関する口伝・口訣を書き記したものを言います。
この時の講伝会で熱心に聴講された方々は連絡を取り合い結集を重ね、杉本老師から学んで来られことを確認参究してこられたとのことである。そして、新たに同学の宗侶を呼び集め平成13年より新たな「滴禅会」を発足させ、平成13年6月に栃木県足利市の高福寺(住職 武井全補師)を会場に再発足「滴禅会」の研修会がスタートした。会場となった高福寺の先住武井哲翁老師は大本山総持寺の単頭を勤められ、正法眼蔵を提唱された本も数冊出しておられる。詩人相田みつを氏が武井老師に参禅していたことは相田みつを氏の著書の中に散見される。相田みつを氏の詩作と書には、高福寺での参禅があってこそのものと言える。
私も再発足の第1回滴禅会に参加させていただいた。今回の研修会で18回を迎えたとのこと。参加するつもりで居ても、葬式が出来たり所用が出来たり、ということもあって、急遽欠席したこともあった。新潟が会場の場合は、往復の所要時間と前後の予定を考慮した結果、毎回欠席している。実際に私が出席したのは8回だけである。皆勤の方々、10数回参加の方々に比べると誠にお恥ずかしい限りである。熱心な方々はその都度頂戴した資料を読み返したり、光岩寺御住職の度会仙定老師が杉本老師から聞き書きしたことをまとめた『室内住職学随聞録』を熟読したり、代表幹事井上義臣老師が自坊花井寺で開催している研修会に参じたりしている。そういう方々に比べると私の勉強は、まだまだと言うしかない。私は本年から始まる寺の改築事業を抱えている身であるから、当分の間滴禅会の研修会には参加できそうもない。しかし、『室内住職学随聞録』や『復刻 龍華』を参究する時間だけは作っていかなければと思っている。
曹洞宗の先人たちは発心得度以来、江湖会や行脚を通じて本師や高徳の師に教えを請い、宗乗余乗内典外典を学び法式進退を学んできた。そうした修行を経て実際に寺を維持し檀信徒の悩みや希求に応えるだけの道力を身につけてきた。そして、その道力の根幹を成すものが、「室内住職学」に他ならない。大学で学ぶ仏教学は残念ながら書物の中の仏教というしかない。実践的とは言えない。本山や地方僧堂で学ぶことで、個々の寺院の現場に生かされることは限られている。私自身を含めてもっと多くの宗門僧侶が室内住職学を参究する必要があると思う。無論、「室内住職学」自体、今後克服していかなければならない課題もあると思う。この点についてはいずれ別の機会に論じてみたい。
現在の滴禅会が再発足して6年目になるが、参加者が頭打ちになっていることが残念である。もっと多くの宗門僧侶の参加して欲しいと思う。
◎『復刻 龍華』と『室内住職学随聞録』の購入希望の方
◎滴禅会への入会希望の方
下記にお問合せ下さい。
〒326-0803栃木県足利市家富町2523 高福寺内 滴禅会事務局
電話番号:0284-21-6206
室内住職学参究の必要性にご同意の方は、下記のアドレスをクリック下さい。
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