鉄のカーテンではないが (3-了) | EUまにあ

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EU内部からEUを観察しつつ、日々の自分にツッコミを入れるブログ。

ちょうどオバマ大統領のプラハでの演説が終わったところです。

いやはや、外国の大統領とはいえこんなに人が集まるもんですね。

一般人に囲まれて写真撮られたりサインしたり握手したり大変ですが、もっと大変なのはSPやろうな。


ブッシュ(息子)大統領時代は、ポーランドとチェコに対ロシア戦略としてなんかミサイルを設置するだのなんだのって、火に油をどぼどぼ注いでいたアメリカですが、「アメリカは核兵器のない世界を作る」だの「新しいarms treatyをロシアと作る」だの、これまでとはころっと替わった対応。

チェコの政治家の方はどう思ってるんでしょうねえ。

一般人がオバマ氏を好きなのはよくわかりましたが、これで「頼むべきはアメリカ」と、ブリュッセルにはそっぽ向いてしまうかもしれません(苦笑)。


さて、先月からぐだぐだ書いてきたこのシリーズ、今日で終わりにしたいのですが、何せ先週のことはすっかり頭から抜けてしまう今日この頃、結論なんだっけ?と思い出しながら書くことにします。


さて、カーテンが見え出した今日この頃。

この先どうなるか。


シナリオ1 - 離婚だ、離婚


東側が「助けてくれないんやったらもう出てく!」と出ていってしまう。

今すぐはムリでも、リスボン条約さえ発効してしまえば、脱退も自由になるはずなので、そこで旧・共産圏の国が結束して新しい政治・共同体を作ってしまう。

そうそう、今日もオバマ大統領が演説してくれたしね。

ブリュッセルに頼らなくてもワシントンに頼ればええんや!ってことで。


あ、この場合、既にユーロが流通してるスロヴェニア、スロヴァキアはEUに留まるかも。

旧・共産圏の中でも比較的優等生な国で、一応統一通貨で恩恵を受けているのであれば、旧・共産圏の国々と運命を共にする必要はないはず。


そのリスボン条約、確かチェコが批准(だっけ?ratify)を拒否してます。

別れるつもりであればとっとと批准して発効させるのが賢い選択かも。


シナリオ2 - とりあえず多額の投資で助けてみる


EC条約においては、87条にてstate aidが禁止されています(例外アリ)。

ある加盟国が自国の企業のみを援助するとみなされる行為が禁止されているのです。

この条文の適用を、今回の非常事態に限ってのみ見送る、とかどうでしょう。

つまり加盟各国が自国企業を保護する政策を時限的に認め、嵐が去るまでの間持ちこたえさせる。

この場合、資金が比較的な豊富な西側はともかく、ハンガリーなどIMFに助けを求めちゃった国とかにもどんどん救済措置を自国の責任で求めさせ、自国企業の建て直しを図らせる。

ああ、ブリュッセルも補助金とかあげてみたらどうでしょう。

ある程度嵐が過ぎ去ると通常通りに87条を適用。


え?その後益々西と東の格差が広がるって?

うーん。


↑の「例外アリ」は、もともと条約自体に旧・東ドイツに対する特別措置が盛り込まれているんです。

つまりある程度の旧・東ドイツに対するstate aidには目をつぶりましょう、と。

なんでドイツだけ?なんですが・・・そこらへんの駆け引きについては知りません。

ただ、もともとドイツはEEC設立時のメンバーですし、戦争に2度も負けたといってもやはりヨーロッパにおいては大国で影響力が強いことも否めないので、なんとかしてこの規定を盛り込ませたんでしょう。


シナリオ3 - 試練のときこそ甘やかすな


とりあえず加盟国一丸となってこの嵐を乗り切る、と。

state aidを認めるなんてとんでもない。

一緒に苦難を乗り越えた仲間との絆は強くなること請け合い。

必要とあれば、補助金も貸し付けちゃう。

はい、あげるのではなく、「貸す」。


。。。って、ここで例外認めちゃうと、あとはどんどん例外ができちゃうのよね。

そうなると、Common Community Marketを作るっていう壮大な野望理想が崩れちゃうし。

補助金あげても後でしっかり貸付金は回収するぞ、と。


でも加盟各国によって状況が違うのは当たり前 のことで。

旧・共産圏の国の中でさえ違いが明確にある(↑の如く、ユーロを導入してる国もあり)中、果たしてこれで乗り切れるのか。

特にドイツが財政出動には消極的で(あの漢字が読めない首相もこないだのG20でそんなこと言ってましたなあ)、これまでも貢献してるのに何でこれ以上・・・。

いえいえ、アンゲラさん、あげるのではなく、「貸す」んですよ、貸す。

必要とあれば利子もつけちゃう。

トイチでもいいくらい。

甘やかしてはいけませんぞ。あくまでもドライにビジネスライクに。

だって私の払った税金も含まれてるんやから!!!



・・・さて、どれがこの先EU各国にとって一番ベターでしょう。


金の切れ目が縁の切れ目ってことで分裂させるか。


それとも地域共同体=運命共同体で、カーテンとっぱらって頑張るか。

鉄のカーテンなんて言わせませんって。


個人的には1だとかなり観察しがいがあってオモロイんですが、政治的にもややこしくなりそうなんで(ロシアとかね)、それもどうかな、と。

あ、でもドイツはロシアの油に特別なパイプライン があるんやった。

じゃあいいかな(笑)。


2が東側にとっては一番ベストで、西側にとっても旧・共産圏は見捨てないとのメッセージを送れるかもしれないけど、一度例外を認めるとこの先どんどん例外ができる。

何せ何が起こってもおかしくない昨今、なんであの時認めたのに今回はあかんねん、とか後でぐだぐだ言われるかもしれないことを考えると、EUの官僚としてもここはふんばりどころというか、冷血に徹せざるを得ないでしょう。


となると、3でしょうか。

あ、でも3がうまくいってないから今こんなにぐだぐだもめてて、鉄のカーテンだとか言い出してる人もいるんでした。

アンゲラは倹約家というか、お金を投資するのにはかなり慎重派ですね。

まあその気持ちわからんでもないけど。

まあ利子つけて貸す分にはいいんじゃないの?

え?それももしかしたら踏み倒されるかもって?うーん。


となるといっそのこと全て投げ出して1に言ってしまうか。

もうオマエラの面倒はみてられへん!

おうおう、見てもらわなくって上等、こっちから出ていくわい!

って?

でもそれはできないのよね、きっと・・・・やっぱり政治的理由なんじゃないの?


ほらねえ、だから経済共同体に留まっとけばとかったのに、政治やら安全保障やらを持ち出すから肝心なときに困っちゃうのよん。

この先ホンマにクロアチアとかの加盟も認めるの?

まあ、まああそこは観光でかなり潤ってそうだから、入ってみるのもええかも・・・。

旧・ユーゴの国々のごたごたにも巻き込まれてないかんじだから政治的にも問題はなさそうだし。

(あ、でもスロヴェニアとの間に国境争いがあるらしい)

そうしたらまたHPのクロアチア語版を作らないといけなくなったり、クロアチア人通訳を雇わないといけなくなったり、新規加盟国のためのポストを作らないといけなくなったり・・・・(EUはそれぞれの分野にCommissionerを置いてて、各加盟国から1名ずつそのポストにつけるようになってるみたいです)・・・新しいポストを作る=新規雇用・・・経費がかさむかさむ。

いやいや、雇用促進になっていいかもやけど、どっちがいいんですかねえ。


その上、トルコ?

いやいや、みんな今金融危機の方にばっかり気がいってて、きっとトルコがEU加盟交渉をしているなんてこと、すっかり忘れ去ってるでしょうよ。

トルコのEU加盟の可能性・メリットとかについてはまたいつかぐだぐだ書きたいと思います。



まあともかく、今回の金融危機で、money talks、money mattersってことがはっきりわかりました。

民主主義を守るため・・・とか高尚なことを言って加盟させたとしても、やっぱりお金の問題が出てくるとすぐにぐだぐだになる。

人間ってなんて正直なんやろう(笑)。

個人的にはシナリオ3で乗り切って欲しいところです。