関東地方に春一番が吹いたこの日、2月中旬にしては異例の最高気温20度を観測したエリアに日帰り遠征した話である。
ちょうど前日、東海地方を襲った春の嵐に恐れをなし、傘&カッパを持参したらびっくりするほどの快晴。
万博記念公園である。
ららぽーとEXPOCITYへ向かう人々とは背を向け、階段をえっちらおっちら登ったり、駐車場を大回りさせられたりと歩くこと20分。
何も考えず真冬装備で来てしまったため、息が切れること切れること…。
本日の目的地はこちら。市立吹田サッカースタジアムである。
剥き出しのセメントにパネルを組み合わせたような屋根、武骨でシンプルな外観が実に眩しい。
こちらは、西日本では最大級のサッカー専用スタジアムで「建設費の約140億円を行政に頼ることなく寄付金を集めて作られた珍しいケース」としても大きな話題になったスタジアムである。今シーズンより、ガンバ大阪の本拠地として使用することとなっている。
そして、本日は開幕に先立ち、同スタジアムのこけら落としとなる、パナソニックカップ「ガンバ大阪VS名古屋グランパス」戦が開催される。
名古屋サポとして、何より遠征民として、新スタジアムのこけら落としに立ち会えるチャンス到来とあれば黙っているわけにはいかない。ここで引いたら「スタジアムマニア」の名折れである。誰にもそんな風に呼ばれていないが…。
まぁそんなわけで、なんとかチケットを確保し、やって来た訳である。
入場口へと続く階段。
ここで本日の試合が再入場不可であることを初めて知る。なんでも隣接する商業施設に駐車する人を防ぐための措置だとかで、少なくとも今シーズンは続くとのこと。
ということで、万博競技場時代にはスタジアム外に設営していたフードコートも、新スタジアムでは全て場内に移動。
ところが、場内は凄まじいカオス状態…。
初めての試合と言うことで運営が慣れていないかも…、とある程度覚悟はしていたものの、それにしてもこの混み具合は異常だった。
売店の列に並ぶ人とコンコースを移動する人でごった返し、全く身動きが取れない。
新スタと言うことで、到着する前は「スタジアムの隅々まで探検するぞ!」とか「スタジアムグルメたくさん食べるぞ!」など夢と希望に満ち溢れていたが、場内に入った途端一気にテンションダダ下がり…。
特にアウェイゴール裏は悲惨だったようで…。
ご覧のとおり、アウェイ側は完全隔離。アウェイサポーターは他のコンコースに移動できないという、いわゆる「鹿島スタジアム方式」。
これで再入場不可とあっては、ちょっとした軟禁と言っても過言ではないだろう。アウェイ側で観戦した知人の話によると、あっという間に売店の食べ物が完売し、大変だったとのこと。
運営上の問題がいろいろあるかと思うが、もう少し柔軟な対応はできないものだろうか…。
そんなわけで、当日Twitterでは飯を買えない名古屋サポーターが話題となっていたが、残念ながら飯にたどり着けなかったのはガンバサポも同じ。
どの売店も100人近く並んでおり、コンコースは人で溢れかえる。オペレーションも悪く、列がなかなか進まない。
この日は前座試合として、2015年シーズンをもって現役を引退した山口智と中山悟志の引退記念マッチが開催されたが、列に並んでいてほとんど見ることができなかった。
そんななか、唯一確認できたのは…。
サプライズゲストとして登場し、何故かキーパーをやっていた松平健であった。
それでもせっかく来たから…と、人ごみをかき分けてスタジアムを写真に納める。
こちらはガンバ側ゴール裏より。さすがにピッチが近い。
下層コンコースは非常に開放的な構造となっており、コンコースのどこからでもピッチが見渡せるように設計されていた。個人的な印象としては、南長野に近い構造かなぁと。
上層コンコースへは、外側に設置された建設現場の足場みたいな階段から上がる。
傾斜角度は十分。ピッチ全体を俯瞰することができ、視界は豊田スタジアムにも決して劣らない。
なお、スタンドは下層、中層、上層からなる3層構造。中層はホームゴール裏スタンドを除き、VIPフロアとなっている。
当初の計画では、ホームゴール裏も他のスタンドと同様にVIPフロアとなる予定だったが、サポーター側から出た「ゴール裏スタンドは一体感を出したい」という要望をガンバ大阪が受け入れ、 ホームゴール裏スタンドだけは中層にもスタンドが設けられたとのこと。
座席は全席背もたれ&ドリンクホルダー付き。そしてガンバカラーの青で全て統一。
個人的には、設備が少々劣っていようが、スタジアムがチームカラーで統一されていれば、それだけで十分素晴らしい雰囲気を作ることができると思っているので、この判断は非常に良いと思う。
日本のスタジアムは、どうも色をないがしろにしすぎている気がするのは自分だけだろうか…。
スタンド最前列からタッチラインまでは、国際Aマッチが開催可能なスタジアムでは最短の約7m。
そして高低差はわずか150cm。これは非常にピッチが近く感じることであろう。いつか最前列で試合を見てみたいものである。。
なお、この日スタンドを懸命に探したが、お馴染みの「勝て勝て勝て勝てホームやぞ!」の横断幕を見つけることができなかった。
ガンバの横断幕と言えばこれだと個人的に思っていたのだが、新スタでは出さないのだろうか…。
前述のとおり、140億円の募金で完成した当スタジアム、コスト削減のため、ところどころ配管むき出しの箇所も見受けられる。
ただ、限られた資金の中から優先順位を考えれば、これは仕方ないことだろう。デザインや見栄えよりも機能性、利便性、なにより観戦環境。お金を使うところと使わないところのメリハリに、いい意味で手づくり感すら感じた。
ここにいると、新国立競技場を3,000億円もの大金を使って建てることが、いかに馬鹿げたことかと言うことをつくづく実感するのである。
スタジアム内にはクラブハウスの他、オフィシャルショップ「Blu SPAZIO」とミュージアム「Blu STORIA」も常設されている。
一際目を引く、光輝く栄光の足跡…。
ガンバゴール裏。
大旗は一層目と三層目で振られていた。声が屋根に反響し、もの凄い迫力。
青色に染まった超満員のスタンドを見れば見るほど、今まで狭い万博のゴール裏にどうやって収まっていたのかという疑問がムクムクと湧き上がって仕方がない。
そんななか、今日はここから観戦。
カテゴリー4のチケットを購入したら、ガンパゴール裏の真横に飛ばされてしまった。座席番号まで選ばせてもらえるのがベストだが、せめてホーム寄りorアウェイ寄りで分けて販売しても良いのではなかろうか…。
この位置からはよく見える、アウェイ側に完全隔離された名古屋サポ。
見たところ横断幕は1つだけの模様。
「CHALLENGE FOR THE TOP」。
試合開始前の一コマ。
昨年南長野で見て感動した光景がここでも…。
選手入場直前には、ガンバサポのコレオ(この位置では分かりにくいが「HOME OF GAMBA」と書かれていた)に…。
吹田市出身のバイオリニスト、葉加瀬太郎氏による国歌演奏があったり、ビジョンに「新スタで歴史を創ろう!」的な映像が流れているうちにキックオフの時間となる。
試合を簡単に振り返り。
「監督・小倉」というネタなのか本気なのか分からない電撃就任を受け散々他サポに揶揄され、ふたを開けてみればここまで沖縄でのTMも二連敗。
特に直近の鳥栖戦は何もできなかったと聞いていたため、どれ程酷いのかとビビりながら見ていたのだが、まあ言うほどそこまで悪くはないのではという印象。
「はじめまして」の選手たち。
イ・スンヒ。対人プレーに自信を持っているのが伝わってくるプレーぶり。判断力・テクニックもあり、何より真面目そうなのが好印象。怪我で途中交代してしまったが、軽症であることを切に祈る。
古林将太。
失点に絡む判断ミスもあり、連携面もまだまだなのか若干孤立気味だった印象。
シモビッチ。前半は絶望したが、後半で希望が持てた。
この日はワンタッチ、ツータッチのプレーがほとんどで、本当にシンプル。こちらも連携面がまだまだなのか、あまり周囲と噛み合っていなかった印象。もう少しボールがおさまるようになると面白いのだが…。
安田理大。積極的な攻撃参加でチャンスを創出していた。左サイドバックは昨年の本多より良さそうな印象。
明神智和。流石の存在感。ガンバサポーターからも大きな拍手。
小倉新監督。
試合は前半26分、名古屋の失点は自軍セットプレーの被カウンターから。局面のこぼれ球争いで展開を許すと、ロングパスを引き受けたアデミウソンが飛び込んでしまった古林と入れ替わり、そのあとは一気にゴール前まで。
中央に走り込んだパトリックへのクロスを阻もうと、懸命に戻った竹内の伸ばした足は、なんとか辛うじてボールを捉えたものの、その先にはゴールマウス…。
ということで、吹田スタジアムで新たに始まった物語。1ページ目に記されたのは…、名古屋・竹内のオウンゴール。やったな竹内、歴史に名を残したぞ…。
さらに36分、G大阪はフリーキックから今野が頭であわせ追加点。
どたばたと前半のうちに2失点の名古屋。
反撃は後半2分。左サイドを上がった安田からゴール前中央へのボールをシモビッチが頭で落とすと、混戦の中を抜けた矢田が左足で押し込む。
後半開始早々の時間帯は、前半よりも受け手に動きが出てきた印象。名古屋の時間がしばらく続く。
しかし後半21分。またもセットプレーから失点してしまう。
G大阪・左からのコーナーキックに対し中央後方から走りこんだ丹羽のヘディングをマークできず、再び2点差とされるゴールを許してしまう。
試合はこのまま敗戦。
ただ、失点はカウンターとセットプレイということで、十分立て直しは効きそうな感じではある。
問題は攻撃。パスをつないで攻めていこうという意識は見えたが、つなげないとき、あるいはつなぐのを失敗したときが些か不安。
もともと新監督ということで時間がかかるのは承知の上。とにかくやると決めたのであるから、覚悟をもってやり通して欲しいと思う。
最後に帰り道。
予想はしていたものの、万博記念公園駅へと向かう道の混雑ぶりは場内のカオスっぷりに負けず劣らず、なかなかのものであった。今回は利用しなかったので分からないが、シャトルバスの方はどうであったのだろうか。
アクセス、導線、スタジアムグルメ、コンコース隔離の問題…。どんなに素晴らしい専用スタジアムができたとしても、それだけで全てが丸く収まるほど簡単ではないことを再認識させられる1日であった。
スタジアムは作ったら終わりではない。ハード面は文句ないだけに、運用面の今後の改善に期待したいところである。
そして、今後吹田に行かれる方は、ぜひ我々名古屋サポーターの尊い犠牲を無駄にすることなく、今後の観戦の参考にして頂ければと思う。ただ、個人的には、他サポでスタジアム見学を検討している方に対しては、落ち着くまではJ3の試合を選択することを強くお勧めしたい。
最後に、今日の一コマ。
ガンバ大阪のチアダンスチームの皆さま。昨年までは、試合中も万博競技場のトラックの上でチャントに合わせて踊っているシーンを見かけたが、新スタではこんな片隅でひっそりと…。
ここで躍らせるのか…。
そんなチアの皆さんだが、ガンバサポの間で
「今年は今までにないくらいセクシーな衣装でビックリした」という声がチラホラ聞こえてきたので、気になって昨年自分が撮った写真と比較してみた。
2015年4月26日
、対新潟戦のときの写真。
今回の写真。
これも新スタジアム効果なのだろうか。こちらも今後の活躍に期待したい。